終末のダンジョンアカデミア

三國氏

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9番目のゲート その3

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 ダンジョン突入から既に15分ほど経過しただろうか。
 幸いモンスターはゴブリンにオークしかおらず、既に200を優に超えるモンスターを倒した。
 その中でも特に凄まじい活躍を見せたのは、俺がアビリティで作った大太刀を手にした後の柳生の戦い振りだろう。
 160cmそこそこの背にも関わらず、110cmほどある大太刀を使う姿は、しばしば戦いを忘れ見惚れてしまうほどに美しかった。
 俺とは違い何らかの剣術を習っているであろうその一振り一振りには、一切の無駄がなく、あの大太刀に一度も振り回されることがなかったのだからだから驚きだ。

「とりあえず持ちこたえられそうだな。先生達が来るのはもう少し掛かるけど、自衛隊やら30階層攻略に行っていないプロの攻略者がそろそろ来るはず。それまで少しの辛抱だから、みんなもう一踏ん張りするぞ」

 戦闘自体は余裕があり優位に進められているが、それでも精神的な磨耗は避けられない。
 特に決めたわけではないが、パーティーリーダー的なものを仰せつかってる以上、そういった鼓舞は俺の大切な仕事である。

 そして俺の鼓舞に返って来るそれぞれの返事は意外とあっさりしたもので、中には笑顔まで見せる余裕もあるのが数人。
 その余裕に逆にこちらが励まされるほど、このメンバーは実に頼もしかった。

 そしてそれと同時にゲートから人影がぞろぞろと現れる。
 その人影は子供のように小さい体のゴブリンや、3mに近い巨躯のオークとも違う、一般的な成人男性より少しガタイのいい程度の体躯。
 さらには迷彩色の服とヘルメットを着用し、規律の取れた動きでダンジョン内の周囲を確認していく。
 もう言う必要もないだろうが、彼らは陸上自衛隊で、おそらくダンジョン内での活動を主とする部隊の一つだろう。

 彼らはぞろぞろとゲートを通過し隊列を組んでいき、そのうちの1人が隊長らしき人物がこちらに駆け寄って来る。

「こちら陸上自衛隊第4ダンジョン特科の笹田三等陸尉だ。君達がダンジョン学園の生徒さん方でいいのかい?」

 そう名乗ったのは背は180cm以上あり、胸板もかなりの厚みのありそうな男性で、ハキハキとしたキレのある声をしていた。
 なんというか歴戦の勇士のようなオーラが漂っている気がする、頼もしい隊長だった。

「はい、そうです。ここにいる8名ともダンジョン学園の生徒です」

 こちらもそれに合わせキリッとした声で返すことにした。

「そうか、よくやってくれた。おかげで騒ぎも収まりつつある。ここは我々が引き継ぐので、君達はゲートの外で待機している、他の部隊の指示に従って避難してくれ」

「わかりました。じゃあみんな帰ろっか」

「ちぇっ、もうちょい歯ごたえあるやつが来てくれても良かったんだがな」

 強がりではなくそう返事を返す東。

「みんな怪我がなくて良かった良かった。だから私の出番も殆ど無かったけど、へへへ」

「杏花の言う通りだぜ東。あんまりやばい奴が出て来たらどうすんだよ。俺はもうあんなのと戦うのは御免だぜ」

 東とは対照的に自衛隊員の到着で、ホッと一息つき撫で下ろす杏花の笑顔には、少しばかりの疲労も見受けられる。
 まぁ、その反応の方が普通だと俺は思うが。

 そう話している間にも20名程の自衛隊員らは、ゲートを囲むように隊を組み数人の隊員が何らかの索敵系魔法を放つ。
 そしてモンスターの位置や数を他の隊員に伝えると、すぐさまそれに合わせて隊列を動かし対応する。

「へぇー、さすがダンジョン特科。出来て10年そこそことは思えない練度だね」

 慶瞬がしきりに頷き感心している横で、俺も同意し頷く。

 満10歳になると必ず行われるダンジョン内での能力調査で、強いアビリティやタレントを持つとわかった人間の多くは自衛隊ではなく、大抵ダンジョン攻略者を目指す。
 そのため自衛隊のダンジョン特科部隊は上位の攻略者より劣ると勝手に思っていたが、彼らは全く別の印象を俺達に与えた。

 これでもう安心だ。
 ダンジョン特科部隊を見て気の緩みが心に生まれたその時、索敵魔法を放っていた1人がそれまでとは違う強烈な緊張を含む声をあげる。

「前方30m先、敵影あり!……シルエットからでは判別不可」

「判別不可?太田わかるか」

 笹田の声はあくまで冷静だが、その中にあった緊張を俺は見逃さなかった。

「……影です。真っ黒い影のような体で巨大な鎌のような武器を持っています。見たことのないモンスター……いえ、」

 もう1人の索敵魔法を展開していた男性は、何か心当たりがあったように否定の言葉を言うと、驚愕に顔を酷く歪める。

 真っ黒い影の体、そして巨大な鎌。。。
 急激に周りの気温が下がったような感覚に体が震え、俺の脳裏にはある情景が浮かんだ。

 辺り一面が真っ赤に染まり、繋ぎ合わせれば数十人分にはなるだろう巨大な刃物でバラバラに切り裂かれた肉の塊。
 ひどく静かで物音一つ聞こえないその場所で呆然と立ち尽くしているのは、1人の女性と2人の少年と少女。
 血ではなく真っ赤に染まった髪の女性は、大量の血を流している脇腹を片手で抑え、苦悶の表情を浮かべているのが背中越しでもよく伝わる。


「どうした太田!何がわかった」

 叫び声ともとれる大声が隣で響き、それに負けるとも劣らない叫び声が響き渡る。

「し、し、しにっ、しにが、死神ですっ!!」

 その叫び声と共に俺の腹の底から、何もかもが逆流する。
 それはどうしようもない勢いで喉元を通り過ぎ、口からミートソースが盛大にばら撒かれ地面を真っ赤に染める。

「おええええぇぇぇえ」
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