力無き能力者

カスケード

文字の大きさ
1 / 4

学校へ

しおりを挟む
ジリリリリ...


朝を告げる時計が鳴っている。


バン!


俺は時計を乱暴に止めて起き上がる。


「はぁ...」


朝が来てしまったのだとわかり、溜息が出てしまう。


それも全ては今まで受け続けてきたある行為のせいなのだが、それは別の時に話そうと思う。


高校に入学して2ヵ月、既に学校に行きたくないという思いでいっぱいになっている。


「カイトー、ご飯できてるわよー降りてきなさーい。」


そうな事を思っていると、下から母さんの俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


「はーい、すぐに行くからー!」


俺は直ぐにリビングに向かう。


リビングに着くと既に仕事の服であるスーツに着替えている母さんが


「おはよう。早く食べちゃって!」


と言ってきた。まぁ働いている母さんは忙しいから仕方のないことなのだが、朝はゆっくりと食事をしたいものである。


「わかったよ母さん」


そう言って黙々とご飯を食べる俺。


「もぐもぐ」  ゴックン


10分かけてようやく食べ終わり、食器を洗い場に持っていこうとすると母さんが


「母さんもう仕事に行くけど、ちゃんと学校に行くのよ」


そう笑顔で言ってきた。


その姿を見て何も知らない母さんは悪くないのだが、イライラしてしまう。


「わかってるよ」


なるべく顔に出ない様にしながらそう返す。


母さんが仕事に行くと、ソファーに座り、今日も学校で受けるであろうある行為について考えてしまった。


「はぁ」


また溜息が出てきた。


朝から嫌な気分になりたくないのだが、これがここ最近の日課になりつつある。


そんなことを考えていても仕方がないと思い、学校に行く準備をする。


「これと、これを入れれば終わりか」


通学用の鞄に教科書を入れると学校に行くのに丁度良い時間になっていた。


「はぁ...行くか」


溜息を出しながらも玄関を出る。


「言ってきます」


そう言って玄関のドアを閉じた。




家から学校までは、歩いて20分程かかる。


家を出て少し歩いていくと後ろから


「おっす、カイト!」


と元気な声が聞こえてくる。後ろを向いてみると、やはりというか俺のたった2人しかいない友達の内の1人であり、幼馴染みの望月健人が走ってきていた。


ちなみに健人は金髪で整った顔のせいで学校1のイケメンと言われている。


「おっす、健人」


そう返すと、健人はニッコリと微笑み俺の隣を歩きだした。


「今日は彩香はいないの?」


そう聞くと


「彩香は風邪で休むらしい」


と言われた。彩香が風邪なんて珍しい。


彩香の本名は秋山彩香といい、これまた水色の髪に、はっとするほど整った顔で10人いれば10人が振り返るであろう顔である。


ちなみに幼馴染みである。


そんなことを考えていると学校に着いてしまった。


校門を潜ると、いや校門を潜る前から俺達2人に視線が集まっていた。


学校1番のイケメンと違う意味で1番である俺が一緒にいるのだ、注目を集めないわけがない。


ヒソヒソ   「ねぇ、今日もアレと健人様が一緒にいるわよ」


そんな話し声が聞こえ、俺は健人に対する罪悪感でいっぱいになってしまったが、顔に出さないように注意する。健人が気付いて心配をかけてしまうのは嫌だ。


健人には聞こえなかったらしく、いつものように下駄箱に向かう。


靴を履き替えた俺達は、クラスが違うのでここで別れた。


「じゃーな、また後で!」


そう言って自分の教室がある方へと歩いていく。それを見届けてから俺も自分の教室へと向かう。


魔の扉である教室の扉が見えてきた。ここに来るまでの、周囲の方々から聞こえてくる話し声のせいで心が痛かったが、これから開けようとしているのは、更に心が痛めつけられる教室の扉だと思うと、このまま帰りたくなった。


が、勇気を振り絞って扉を開け、中へと入っていく。最も嫌いな奴らがいる教室へと。
するといきなり上から水が落ちてくる、女子も男子もクスクス笑っている。何もできないので大人しく席に着き眠った。もう何も見ないように、聞かないようにするために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...