婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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婚姻式の日 ~証立ての儀・グレース~

ーコンコンー
軽いノックの音と共に王子が出入りする扉が開き、ジークフリートが契りの間に入室してきた。

紺色に染められた毛織のガウンを身に纏い、現れた息子の顔は上気し軽い興奮状態なのだと見てとれた。
…………なんと下卑た顔だろう………あれは本当に私が産んだ息子だろうか………
私は自分の顔が強張るのを止められなかった。

「なんて顔をしてるんだ……」

夫は小声で呟いたのに、私には大きく響いた。
夫も気が付いている……

「母上……大丈夫ですか?お顔が真っ青です。」

パトリクスがそっと声を掛けてきた。
パトリクスは見た目がきつく、いかにも厳しそうだが本当は優しく思いやりのある子だ。
王太子として申し分なく育ったと、私は思っている。

「あれでは母上のお顔が青くなっても仕方あるまい。兄上も気が付いておいででしょう。」

第2王子ウィルフレッドが私に近寄り小声でパトリクスに話し掛けて来た。
2人が近寄った事で、義娘達も近寄り全員が室内に居るジークフリートを見た。
私はそっと義娘達を見やると、義娘達は顔を強張らせ眉根を寄せていた。
女であれば、あの顔を見れば今からどんな無体な扱いを受けるのか……と逃げてもおかしく無い程下卑た顔で待ち構えているのだ。
私だって、もし夫があんな顔をしていたら泣いて許しを請うていたかもしれない。
只でさえ多勢の中での儀式故、なるたけ優しく気遣い怖がらせぬ様にコトを進めるよう教えられるのだが………
ジークフリートは何を教えられてきたのだろう?
いや………そうだ、何か………確か昔………学園に入るより前に………
……………教育係の者達は、第3王子は逃げてばかり……そう、報告していなかったか?
まさか……まさか、この証立ての儀においての注意事項を聞かなかったのか?
……いや、聞いたが碌々覚えなかった?………ならば、どれ程…………どれ程愚かなのか…………
王子としての矜持など持ち合わせず育ったのか?!
あれは………あの子は………ただ、王家に生まれただけの暴君に成り下がったのかっ!
母としての気持ちより、王妃としての気持ちの方が強くなる。
いくら位の低い貴族の令嬢とはいえ、あの顔を見ると哀れな気がする。
これがもしシュバルツバルト侯爵家令嬢エリーゼであれば、どう思っただろうか……
あの様な顔をした男の妻になるなぞ……あの顔を見て初めて理解できる。
婚約破棄を二つ返事で受け入れ、位の低いあの娘に押し付けたのを………
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