495 / 756
夫婦の時間 2(ハインリッヒ&フェリシア)
しおりを挟む
フェリシアの細い体はしなやかで、一見すると普通の女性と何等変わらないように見えるが実はかなり鍛えられしっかりと筋肉がついている。
己の剣が大きいのは側近であるアレクのモノと見比べた時に初めて知ったのだが、あまりの違いに内心驚いたものだ。
最初の頃は大変だったが、やがて慣れてくるとその大変さも苦にならなくなった。
フェリシアの細い体から三人もの子供が生まれたなぞ女体の神秘でしかないとハインリッヒは心の底から思っていた。
そうして愛し合い求め合って汗だくの体を互いに抱き締めあい熱い息が収まるまでそのままでいた。
やがて密やかな吐息へと変わった頃、ピッタリと密着していた体を少しだけ離した。
「フェリシア、少し良いだろうか?」
フェリシアは汗でしっとりとしたハインリッヒの胸板をソッと撫で、クスリと笑った。
「勿論よ、なぁに?」
ハインリッヒはフェリシアの額に張り付いた髪の毛をソッと撫でるように後ろへと流す。
「三人もの子供を生んでくれてありがとう」
フェリシアはキョトンとハインリッヒを見つめた。
「俺と父上は兄弟を亡くしてるからな、子供達が強く育ってるというのは有難いものだ」
「兄弟……?」
フェリシアは知らなかった。
ハインリッヒは遠くを見つめるように、どこかを見つめていた。
「俺には兄がいた」
チラリとフェリシアを見つめ、一つ息を吐く。
「兄は生まれて程なく、母上の目の前で食い殺された……と言われてる」
「食い殺されたと?」
「ああ……母上は見えてなかったが大型に襲われ、気がついた時にはどこにもいなかったそうだ」
「では、生きてる可能性だって……」
フェリシアの言いたい事は分かっていた。
「母上は倒された馬車の中、投げ出された兄が……泣き叫ぶ赤子が大きな魔物によって消えたと……それまで見えてた姿も聞こえていた泣き声も消えたのだと……」
フェリシアは眉根を寄せ、ハインリッヒを見つめた。
「何でお義母様は……」
「一刻も早くご実家の父君や母君に見せて安心させたかったのだと……」
「愚かな……」
ハインリッヒの溜息がフェリシアの耳には大きく聞こえた。
「母上は元々は父上の兄の婚約者だった……」
「え……?」
アナスタシアの年を考えれば、婚約者に死なれでもすれば先行きは不安この上無かったろう。帝国はまだしも当時の王国は更に厳しかったのだろう事は想像出来た。
己の剣が大きいのは側近であるアレクのモノと見比べた時に初めて知ったのだが、あまりの違いに内心驚いたものだ。
最初の頃は大変だったが、やがて慣れてくるとその大変さも苦にならなくなった。
フェリシアの細い体から三人もの子供が生まれたなぞ女体の神秘でしかないとハインリッヒは心の底から思っていた。
そうして愛し合い求め合って汗だくの体を互いに抱き締めあい熱い息が収まるまでそのままでいた。
やがて密やかな吐息へと変わった頃、ピッタリと密着していた体を少しだけ離した。
「フェリシア、少し良いだろうか?」
フェリシアは汗でしっとりとしたハインリッヒの胸板をソッと撫で、クスリと笑った。
「勿論よ、なぁに?」
ハインリッヒはフェリシアの額に張り付いた髪の毛をソッと撫でるように後ろへと流す。
「三人もの子供を生んでくれてありがとう」
フェリシアはキョトンとハインリッヒを見つめた。
「俺と父上は兄弟を亡くしてるからな、子供達が強く育ってるというのは有難いものだ」
「兄弟……?」
フェリシアは知らなかった。
ハインリッヒは遠くを見つめるように、どこかを見つめていた。
「俺には兄がいた」
チラリとフェリシアを見つめ、一つ息を吐く。
「兄は生まれて程なく、母上の目の前で食い殺された……と言われてる」
「食い殺されたと?」
「ああ……母上は見えてなかったが大型に襲われ、気がついた時にはどこにもいなかったそうだ」
「では、生きてる可能性だって……」
フェリシアの言いたい事は分かっていた。
「母上は倒された馬車の中、投げ出された兄が……泣き叫ぶ赤子が大きな魔物によって消えたと……それまで見えてた姿も聞こえていた泣き声も消えたのだと……」
フェリシアは眉根を寄せ、ハインリッヒを見つめた。
「何でお義母様は……」
「一刻も早くご実家の父君や母君に見せて安心させたかったのだと……」
「愚かな……」
ハインリッヒの溜息がフェリシアの耳には大きく聞こえた。
「母上は元々は父上の兄の婚約者だった……」
「え……?」
アナスタシアの年を考えれば、婚約者に死なれでもすれば先行きは不安この上無かったろう。帝国はまだしも当時の王国は更に厳しかったのだろう事は想像出来た。
154
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる