婚約破棄されまして・裏

初陣 13 （ルーク）

結果から言うと、ノエルは夕方まで頑張っていた。
まだ明るい内に野営地の設営に入るが、エリーゼがいないので俺と四番隊の魔法使い達で協力して四阿とコンロの野営セットを造ったが中々大変だった。改めてエリーゼの凄さに驚く。
隊の中には料理担当の隊員もいる。彼等はソワソワしながら準備を始める。
なんでソワソワしてるのかは直ぐに分かった。

「ボクもてつだうにゃ！まかせるにゃ！こうみえてもボクはできるコにゃ！」

ノエルがパムンと音がしそうな感じで胸を叩く姿を見て、料理担当の連中がデレデレしだした。
……待てよ……何かおかしいな……バートンとルシウスの二人も妙だった。何かとノエルとルチルに対しての視線とかおかしいのが多い……なんでだ？
ん？ノエルがゴソゴソとエプロン出した……と思ったら武装の上からエプロン着けた！何だあの可愛いのは！

「なんでもイイにゃ！なにしたらイイにゃ！」

「じゃあ、スープ作って貰おうかな～♡」

ん？やっぱり変だぞ！何か語尾に♡マークつけてた気がするっ！

「わかったにゃ！まかせるにゃ～ん♡」

ノエルがコンロに跳び乗った。コンロは焼き台だけじゃなくて、物が置けるように三十センチ程の幅がある。そこに乗ったノエルが尻尾をフリフリしながら鍋を待っている。
それにしてもノエル……お前も語尾に♡マークつけてたな……
えっちらおっちら次々と大きな寸胴がコンロの上に乗せられ、コンロに火が入れられ湯気が立ってくる。
ノエルは独りぼっちでも上機嫌に唄を歌って鍋をかき混ぜる。
せっかくノエルが歌ってるなら、俺も最後の仕上げとばかりに言わないとな！

「にゃんにゃにゃ♪にゃにゃにゃ♪にゃんにゃにゃ♪にゃにゃにゃん♪にゃにゃにゃん♪にゃにゃにゃにゃにゃん♪」

「上手に出来ました！」

例のリズムで歌ったノエルが決めた後、俺もちゃんとお決まりのセリフを言った。

「できたにゃーん♡」

嬉しそうだ。目をキラキラさせて、尻尾をブンブン振って。

「上手に出来たな」

俺が声を掛けた瞬間、コンロから飛び降りて四つ足で駆け寄って俺の胸目指して飛んで来た。
ノエルを抱き留めて、俺よりも高い温度の体を撫でる。

「ボク、がんばったにゃ……」

「ああ、頑張ったな。晩ご飯が楽しみだな」

「うにゃ……」

俺の言葉に嬉しそうに体を捩って抱き付くノエルは可愛い。
辺りに良い匂いが漂って来る。
もうじき晩ご飯だ。