婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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乙女の夢は限りなく(ラーラルーナ)

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冴え渡る月、遠くから聞こえる音楽。数日間に渡り新年のお祝いは続けられる。
一日は付き合いのある貴族家、二日目は寄子貴族や騎士達とその家族。三日目は商人達や名家の者達。
大事なのは一日の貴族家でそれ以外は出ても出なくても良い都言われた。それは王国貴族家に輿入れする故の自由だった。
シュバルツバルト侯爵家へと輿入れしてしまえば、帝国貴族との付き合いは浅くなるだろうという考えからだ。
間違ってはいない。常に王国にいるようになれば実家である帝国にはおいそれと帰れない。

「寂しいってのとは違うのよね……立場とか家族のあり方が違うから仕方ない事だって理解出来る。今年の秋、学院を卒業したら早々に輿入れか……」

小さなノックの後、静かに入って来たのはお母様だった。

「ラーラ、最初の挨拶だけで下がっちゃうなんてどうしたの?」

お母様の心配そうな顔にちょっとだけ笑って首を振る。

「どうもしませんわ。ただ、少し疲れてしまって……でも、今回が最後ですもの後で少し皆様のお顔を見に行きますわ」

秋に輿入れだもの、今年が最後の新年のお祝いになるのよね……来年からはシュバルツバルト侯爵家の新年のお祝いに参加って事よね……同じ侯爵家だもの、規模とか一緒よね?ん?待って……確か王国って新年のお祝い一日だけが多いって言ってたわね。じゃあ、シュバルツバルト侯爵家も一日だけ?ルールが違うのかしら?お客様が少ないとか?国が違うと色々違うのがつらいわね。

「ラーラは食事はしたの?」

「えっ?ええ、はい。食堂でゆっくりいただきましたわ」

少しホッとした顔になったお母様は私から視線を外さない。

「こんなに早く輿入れしてしまうなんてね……寂しいものだわ。せめて同じ帝国ならいつでも里帰りさせれるのに……」

やっぱり領地的には隣でも国が違うというのは思うところがあるか……私もやっぱり距離感あるかな?って思うもの、生粋の令嬢だったお母様からすれば遠い隣国って感じなのかしら?

「大丈夫ですわ、お母様。私でしたら、ね!」

しょうが無いお母様。でも、お母様は娘の私を心配してるのよね。
今は帝都で仕事してるお兄様達もお父様が爵位を譲るって言えば帰って来るでしょうし、それに私の輿入れの時もお兄様達は帰って来て一緒にシュバルツバルト侯爵家に行くって話しだし。
大丈夫……私は幸せになる。
ねぇ、お兄ちゃん。私、ちゃんと良い人いして幸せになるから。
お兄ちゃんに見せれないのが少しだけ残念だけどね、でも綺麗な花嫁さんになって笑顔でお式をするの。
家族皆にお祝いして貰って……お相手も理想の人なのよ。
きっと……きっと私はずっと幸せよ。
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