婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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大晦日 20

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公国時代……うんと昔の話だ……
そんな頃からギョーム公爵家とは繋がりがあったのか……

「エリーゼは不思議そうねぇ。でも昔はこんなに人が多くなかったのよ。それに街道ももっと酷かったと思うわ。それでも、シュバルツバルト公国と付き合ってたのか……どうしてか分かる?」

正直言うと予想もつかない。

「いえ……」

「正解は塩よ。ギョーム公爵領に岩塩が採れる所が無かったの。海塩の採れるシュバルツバルト公国は大切な取引先で絶対に失う事が出来なかったのよ。それは今でも同じ。岩塩は高い。領民にとって生活を圧迫させるような事は領主として出来ない。領民のいない領地は荒れ果てる……かつてのシュバルツバルト公国を手本にギョーム公爵領は栄えたの……いえ……きっと今でもお手本にしてるのだと思うわ。だからこそ……」

お祖母さまは言い淀んで、そして口をつぐんでしまった。

「お義母様、エリーゼはまだうちのお付き合いしてる方々の事あまり教えてないんですの。だって王子妃になった時、余計な柵みが元で悩ませるのは宜しくないでしょう?」

なんと!先々の事を考えて仲の良い貴族家ぼんやりとしか教えてくれてなかったんかい!いや、私個人が仲の良い貴族家とはお付き合いしてたようだけど……って待てよ?
んー……?頭の中、王国の地図を思い浮かべる。マップじゃないよ!脳内地図だよ!各領地の貴族家を当てはめていく……
そういえばうちの周辺……ほど近い領地ばかり……
トールお兄様の婚約者、ヒルダの所は隣だしアンネローゼとミネルバも近い。お祖母さまのご実家のギョーム公爵領も……
王国を縦半分にするとその半分にうちとうちがお付き合いのある貴族家の領地が集中してる……?
何かが……悪寒のようなモノがゾクリと背筋を走る。
いや……まさか……

「ホホホ……エリーゼ、つまらない心配はする必要無くてよ」

お母様の笑顔が怖い……そうだ、お母様にとって大事なのは帝国とお母様のご実家とシュバルツバルト領と家族……家族?私も家族で……いや、まさか……王家にどうとか……え?でも国王陛下つかまえて〈あの男〉呼ばわりしてたし……

「お母様、私の大切な友人達は大丈夫なのでしょうか?」

「勿論よ。キンダー侯もロズウェル伯も我が家とはそれなりに長いお付き合いなのよ。安心なさい」

ホッと胸をなで下ろす。良かった……アンネローゼもミネルバも良い子だもの、何かあったら力になりたいって思ってるもの。
あの二人には幸せになって貰いたい。あの残念王子の側だけど、出来る限りの事はしたいんだよね。
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