婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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嫁入り支度 68

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「作りを少し変えましょう!袖をこの布で膨らませましょう!」

「ほう!それは良い!」

何か着々と進んでます。

「フフ……楽しいわね、エリーゼ」

お母様が本当に楽しそうに笑って下さいます。私も笑顔でお母様に応えます。

「はい。ドレスの色も好きな色でこうして作るのはとても楽しいですわ」

前までは縛りがあったけど、何も考えずただ着たい色や似合う色で思うままのドレスを作る楽しさは初めてでテンションが上がる。
お母様と二人並んでお爺ちゃんと奥方がワチャワチャしながら、ドレスの事を決めて行く姿はどこか楽しくて幸せな気分になれた。
そうこうしてる内に奥方とお爺ちゃんが私達を見た。

「姫様、姫様に似合う様に仕上げますから安心して頂きたい。姫様が申し出てくれたおかげで新しいドレスが出来上がります、我等一同姫様に出会えた事誇りに思います」

お爺ちゃんが深々と頭を下げ、奥方も同じように頭を下げた。

「さて!姫様の希望も聞いた事じゃし、早速取りかかるかの」

お爺ちゃんがニコニコとしながら早速奥の方へと布を持って歩いて行ってしまった。

「ふふ……仕方ないですよね。同じ職人ですから良く分かります。さ、姫様。お好きな色や作ってみたいお色はございませんか?」

好きな色や作ってみたい色……作ってみたい……

「緑系の色って……私、似合わないかしら?」

「似合いますわ!薄い緑から濃い緑まで、姫様には似合いますとも!」

奥方がそう言うと棚に近づき本みたいな物を持って近寄って来る。
バサリと広げられたソレは色見本で様々な緑色が次々と私の手に当てられる。

「どのお色も映えます。薄いお色なら今からの季節に合いますし、濃い色なら秋から着れますでしょう」

奥方の声にお母様も楽しそうに頷きながら応じている。

「この色も良いわねぇ」

「はい!こちらもよろしいでしょうし……」

「そうね、では幾つか作って頂戴」

「はい!」

楽しそうです。でも私のばかりでお母様は一着も頼んでない。

「お母様は作られないの?」

ビクリとお母様が固まった。え?何で?まるでギギギ……と音がしそうな動きでお母様が凍った様な笑顔で私を振り返った。
マジで怖いんですけど!

「ホホホ……エリーゼ。今日はエリーゼのドレスを作るために来たのよ、私の事は良いのです。良いですね」

何か踏んではいけない地雷でもあったのだろうか……気を付けよう……

「分かりましたわ、お母様」

何とか笑顔で返すのが精一杯でした……
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