婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 113

アニスは時々……そう時々だけど焼き餅を焼く時がある。
カワイコちゃん達にはそんな事無いのに、侍女やメイドに対して焼き餅？なのかな？焼くのよ。
アニスの事も褒めてるのに、不思議よね。
美しい銀製のカトラリーを手に取り、並べられたケーキの一つを一口大に切り取り口に運ぶ。

「あら……？」

いつものジムのケーキと違うわ……

「お気付きですか？」

「ええ……いつもの味とは違うわね。ひょっとして……」

「はい。ジムさんの下についている料理人が作った物です。どうですか？」

ジムは甘さの中に酸味がちょっと入った物や、和菓子系が得意で職人肌だな……と思うけど、この料理人はジムよりも酸味が強めで甘さ控えめなケーキを好んでるのな？と思う。
今、口にしてるのはどこから見てもレアチーズケーキにレモンソースが掛かってる。
レアチーズにもレモンピールが入ってる……酸っぱい系が好きな人なら良いけど……

「これはお母様の所にも行ってるのかしら？」

お母様は酸っぱい系よりも甘さたっぷり系が好きなのです。しかもアンコ星人ですから、これは気に入らないかも知れない。

「はい。何か問題でも？」

「ええ。甘さ控えめの酸味強めなのよ」

ビキッ！とアニスが固まりました。分かります。だって、お母様が……

ドンドンドンドンッ！

「母さまかも！」

アニスが慌てて扉に向かって行きました。

「エリーゼ様にっ！」

エマージェンシーです！お母様が多分おこです！
エミリがものスッゴイ早歩きで来ました。怖いです。

「フェリシア様が甘い物をと！」

うん、安定のスイーツ女子はいきなりの甘さ控えめは宜しくない状態の様です。

「チャラララッララ～」

白桃の蜜漬け（特大瓶約二キロ）を取り出しエミリの目の前に差し出しました。

「ありがとうございます！」

奪うかの勢い（ただし優雅）で持ち上げると、競歩並みの速度で部屋から出て行きました。

「お母様の趣味と言うか、好みをきちんと把握して頂かないと」

「そうですね。ジムさんは何にも気がつかなかったのでしょうか？」

「分からないわ」

お口直しに別のケーキ……カボチャかしら？に手を伸ばして同じように切り取り口に運ぶ。
！！えっ！口当たり滑らかで濃厚なカボチャの味と甘さ……スポンジも一工夫してあって、爽やかな香り…、これはゆずね。