婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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連載

春が来た! 43

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「では御髪を結いますね♪」

アニスの楽しそうな声に少しだけ気持ちが浮上します。
……考えてはダメ……考えてはダメ……考えたら負ける……
ええ!婚姻式の時の事を考えてはダメよ!もう、負けてしまうから!
よし!楽しそうな事だけ考えるのよ!今日だって楽しかったわ!

「今日は横を編み込んで、布で作った大ぶりの髪飾りで纏めますね」

櫛を起用に使ってサイドを編み込んでいく手付きに迷いは無く、見る見るうちに髪が纏まっていく。
出された髪飾りはピンク色の桃の花や白いラナンキュラスにスノーフレークのブーケ仕立てだった。
細い糸で編まれたリボンも可愛らしいけど、お値段はきっと可愛くない。そんな髪飾りのピンがクイッと纏めた場所の上あたりに差し込まれた。
スルリと首にかけられたネックレスは花モチーフのピンクの可愛らしい物で、同じピンクの花モチーフのイヤーカフをつけられる。
シャラシャラと揺れる小さなピンクの花が可愛い……

「とても可愛らしいです」

アニスがホゥ……とため息交じりに呟く。
アニスさん……フィルターかかってますよ(笑)まぁ、ギリ似合ってるとは思いますけどね。

「それにしても春らしい色合いって良いわね」

立ち上がってクルリと回る。
華やかなドレスに心が浮き立つ、髪飾りもとっても可愛くて思わず笑顔が溢れる。

「はい!」

「では、食堂に行きましょう」

私の言葉にアニスは頷きついてくる。勿論、カワイコちゃん達にも一声掛けて一緒に歩いて行く。

食堂ではお父様とお母様、お祖父さまとお祖母さまが既にいて楽しげにお喋りしてました。
どうやら私が自室に下がってる間もサロンで一緒だったようで、思い出話に花が咲いて止まらなかったのですって。

「あら?懐かしいわね。そのお飾りのネックレス、私の娘時代に誂えて貰った物なのよ」

驚きです!お祖母さまの娘時代と言えば大分前です。
今でも通用する可愛らしい花モチーフは、お祖母さまとひいお祖母さまのセンスの良さが見てとれます。

「今着けていてもとても可愛らしいお飾り……素晴らしいですわ。私にも娘が出来たら譲りたいですわ……」

うん。娘が出来たら譲って、お祖母さまから譲って頂いたのよって自慢したいわ。
貴女にもお祖母さまやひいお祖母さまの血が流れてるから、きっと趣味も良いのよって……
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