婚約破棄されまして(笑)

連載

春が来た！ 130

全員が席についたのでパーラーメイドが全員（家族によ！）の紅茶を淹れて目の前に置いてくれる。
フワリと香る紅茶とバラの香り、でも今日はこの紅茶にバラのジャムを入れます！

「バラのジャムを」

「はい」

手渡された美しいクリスタル工芸の小さな壺、この中にバラ色のジャムが入ってます！
豪奢なティースプーンでジャムを掬って紅茶に入れて溶かします！
あ～バラの香りが増しました～！ロマンチックな気持ちになります。

「ラーラルーナお姉様、お使いになりますか？」

「ええ、エリーゼ様。とても素敵な紅茶とジャムですもの、使わせて頂きますわ」

そう言ってジャムを受け取ると優雅にジャムを紅茶に入れて溶かす。
お母様もお祖母さまも同じようにバラジャムを紅茶に入れて溶かしていく。それだけでサロン中にバラの香りが強く漂う。

「失礼致します。甘味をお持ち致しました」

並べられるバラをテーマにしたスイーツの数々。

「まぁ！バラ色にバラの形を模した物にバラの香りがする甘味ですのね！」

さすがラーラルーナ様はすぐに気が付いて瞳をキラキラさせてスイーツを眺めてます。
特にピンク色のバラの香りがするマカロンに釘付けの様です。

「ホホホ……シュバルツバルトの女性らしくなりましたね。さ、またあちらに行くのでしょう？ゆっくりお茶でも飲んで落ち着いて頂戴」

お祖母さまがゆったりと微笑みながらお茶会のスタートを即してくれました。

「ええ、我が家の自慢の甘味を楽しみましょう」

「ラーラルーナ様、今日はバラ尽くしですわ！華やいだ気分を味わって下さいませ！」

「ありがとうございます……」

あ……何かラーラルーナ様の目尻に涙が……

「ラーラルーナ様、こちらを」

マリエルがサッとやって来て可愛らしい花を刺繍した手布……ハンカチを差し出しました。
どうしたのかしら？
静かに目尻を押さえたラーラルーナ様は俯くように紅茶のカップを見詰めてます。

「申し訳ありません……私……私もエリーゼ様と同じようにこことは違う世界に生きておりましたの……」

えっ！自らカミングアウトしちゃう？

「まぁ……」

あー……お母様の目がキラキラしてきたぁ……もう、私と後で話すとかしなくて良いですよね？

「夢で見た甘味に紅茶……違う世界では簡単に手に入りましたの……勿論、口にしておりました……でも……こちらには無くて、夢の産物でしかないのかと……」

「我が家にはあるわ、だから安心して嫁いでらっしゃい。ね」

「はい……」

ラーラルーナ様がポロポロと泣いてる……お母様が貰い泣きして、湿っぽくなってしまった……