殺人鬼転生

藤岡 フジオ

文字の大きさ
8 / 299

生き返った死人

しおりを挟む
「うわぁぁぁ!」

 普段は割と飄々としているビャクヤだが、アンデッドは怖いんだな。ハハハ!

 俺は前転してその場を離れるビャクヤを見て笑った。なんで前転で逃げたんだよ。

「たすけ・・・、ゴホゴホ!」

「ん?」

 緑の何かを吐きながらレイナールは四つん這いになって俺たちに助けを求めてきた。よし、殺そう。

 俺が刀を構えると、ビャクヤが俺の腕を掴んで止める。くそが。

「待ちたまえ、キリマルッ! 彼はアンデッドなどではなさそうだ。生きている」

 そんな事なんでわかる? ゾンビかもしれねぇだろうが。まぁ生きてても死んでいても殺すがな。

 もう一度刀を構えると手に半透明のロープが絡まった。チッ! ビャクヤの魔法か・・・。

「待てと言っているッ! 大丈夫かい? レイナール君」

「ビャ・・・ビャクヤ? ここはどこだ?」

「そんなことよりもッ! 吾輩は君の体が心配だよ! 急いで学園の医務室に行こう。ンン、ロケーションヌ・ムゥゥーブッ!」

 おい、俺は置いてけよ? ここが気に入ってんだ。おい!

 一瞬目の前が暗くなったと思ったら学園の校庭にいた。

「チッ!」

「キリマル、レイナールに肩を貸してやってくれたまえ」

 くそ、なんか逆らえないな・・・。レイナールに肩を貸さないといけない気分になってくる。これが契約の力か?

 俺は内心ムカムカしながらレイナールに肩を貸して医務室へと向かった。

「レイナール君!」

 医務室の養護教諭が、レイナールを見て驚いている。そりゃあ死人が蘇ったのだからな。しかしなんでだ? あの館には死人が蘇る魔法か何かかかっているのか?

「君は死んだはずでは・・・。取り敢えずベッドに寝るといい。私は学園長を呼んでくるから」

 青天の霹靂ともいえる出来事が起きたんだ。白衣を着た女の慌てっぷりは尋常じゃないな。

「死人が生き返る魔法ぐらいあるだろ。なんであそこまで慌ててんだ?」

「死者の蘇生は簡単じゃないからね。復活条件が色々と厳しい上にッ! 莫大な金がかかる。おいそれと誰でも復活できるわけじゃないのさッ!」

「ほーん。じゃあ殺し甲斐があっていいな。ホイホイ生き返られると、殺しの重みがなくなる」

「全く君は・・・。それにしてもなぜレイナール君は生き返ったのかッ! 謎だなッ!」

 悩むのは構わねぇが、シュバシュバうるせぇな。止まると死ぬのかな? こいつは。今度羽交い絞めにしてみるか。

「聞こえているのだがねッ!」

「はいはい、すまんすまん」

 俺の願いが通じたのか、ビャクヤは動きを止めて、顎を摩っている。なんか思い当たる節でもあるのか?

「キリマル・・・。そう言えば君は刀なんて持ってなかったね・・・。なんだい? その刀は」

「これか? 妖刀天邪鬼って刀だ。さっきまでいた館の中庭に突き刺さっていたんだ。それを俺様が頂いた。気に入ってんだ。やらんぞ」

「そんな妖しい刀なんていらないよッ! ちょっと鑑定させてもらってもいいかな?」

「てめぇは俺様の主なんだろ? 勝手にぶんどって鑑定すりゃあいいだろ」

「吾輩は野蛮ではないのでねッ! そんれではッ! 刀を拝借ッ!」

 普通に取れ、糞が。相撲取りが賞金貰った時みたいな仕草をして刀を受け取るな。

 ん? 鞘を持って鑑定するビャクヤの仮面の目が丸くなったな。どうした?

「ふんむふんむ。ふえぇ! こ、これは! どえぇ?」

 桂小枝かっつーの。なんだその驚き方は。殺すぞ。

「この刀は未だに声を発していないがッ! インテリジェンスウェポンだねッ! 刀の狂気の呪いを跳ねのけた者を主として認めるらしい。で、主の性格の真逆の効果を発揮する刀とある。呪いの武器なのでッ! 条件を満たさないと外れないようになっている。その条件は・・・!」

「条件は?」

 いつものようにシュバシュバとポーズを決めている。早く喋れ! ぶちのせめすぞ!

「僕の拙い鑑定魔法【知識の欲】では解りかねるッ!」

 死ねッ! もったいつけやがって。

「何を戯けた事を。今、ビャクヤに刀を渡せているだろうが。それは装備を外せているって事だ」

「見たまえ、これを。鞘がカタカタしている。刀がキリマルに引っ張られているのだよ!」

「つまり刀は俺がどこにいても近づいて来るって事か? 健気で可愛らしいじゃねぇか。しかし持ち主の性格の真逆の効果ってなんだ?」

「それは今ッ! 考え中」

 メトロノームみたいに上半身を動かして考えるな! 一々ムカツクぜ!

「チーン! なるほど! アハハ! そういう事か! これはいい! 君という殺人鬼のッ! 悪なる力を封じたに等しい効果だッ!」

「いいから早く言え!」

「結論から言うと君は人を殺せないって事さ。君は人を殺したくて殺したくて仕方がない。しかし、この妖刀んんん天邪鬼んぬはッ! 殺した相手を蘇らせる効果がある! つまり君がどんなに人を殺そうが、天邪鬼が生き返らせてしまうのさッ!」

 おげぇ~! 吐きそうだ! 気分がわりぃ!

 俺の唯一の楽しみを、この刀が奪っているって事か?

 そんな糞な話があるか!

 しかし・・・腹立たしくて不本意ではあるが合点はいく。あの館で変態どもを殺したはずなのに、生きていたのはこの刀の力だろう・・・。

 レイナールを刺した時も殺すつもりで刺したからな・・・。

「んんん! 残念だねッ! キリマルッ! 君はその刀を使う時、どんなに心を騙そうが殺気を放っている。なのでッ! どう足掻いても人を生き返らせてしまうのだよッ!」

「ってか、この妖刀天邪鬼で人を殺せる奴なんていないだろうがよ! 誰だって殺意を持って武器を使うものだからな!」

「ノンノンノン! 無心で人を斬る事の出来る達人もいる。しかし生粋の殺人狂である君がッ! その域に達するのは永遠に無理無理!」

 ああああああああああ!!! 糞だ! この世界は糞に成り下がった! 俺はこの世界で人を殺しまくる予定だったのに! 殺しても生き返ってしまう! くそくそくそくそくそ!

「ビャクヤ、レイナールが生き返ったって本当? アッ! キリマルもいたんだ? どうしたの? 頭を抱えて」

 ドアが開いてリンネが入って来た。今、こいつを殺せたら気分良いだろうなぁ・・・。

 ビャクヤが俺に耳打ちをする。

(解ってるだろうね? 君は彼女の前では良い人でいなければいけないんぬッ!)

 チッ! ストレスで死にそうだわ。

「なんでもねぇよ。ビャクヤが俺に意地悪を言うから、頭を掻きむしっていただけだ」

「ビャクヤ! 酷いじゃないの!」

 ひひひ! リンネに怒られろ、ビャクヤめ。

「彼は暗くて真面目な顔をしているから本気にしてしまうかもしれないが、今のはジョークだよッ! んんん、主殿!」

「え? そうなの?」

 俺は哀れみを誘おうとビャクヤが怒られそうな嘘をつこうとしたが、咄嗟に思い浮かばねぇ・・・。意外と頭が悪いな、俺。まぁいいさ。

「ああ、冗談だ」

「だ、だよね。ビャクヤって優しいし・・・」

「惚気か? ご馳走様」

「そんなんじゃないんだから!」

「おおおお! 主殿! とうとう吾輩に心を開いてくれまんしたか! それでは愛の抱擁をば・・・」

「死ねッ!」

 ハハハ! ビャクヤの野郎! リンネに抱き着こうとして腹に正拳突き入れられた! ざまぁ!

 俺がニヤニヤしていると、空きっぱなしの医務室のドアの向こうで、小さなジジイが顔を覗かせた。

「レイナール君が生き返ったのは本当かな? おおおお! 確かに! 彼の遺体が消えて、自警団団長がワシに相談に来ておったが、さっき帰ってしまったわい。一足遅かったの・・・」

 ハリー・〇ッターとかに出てきそうな校長を小さくした感じだな。あのコーンハットの上から、脳天唐竹割りしたら気持ちいいんだろうなぁ? ええ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...