殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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灯台下暗し

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 はぁ~、めんどくせぇなぁ・・・。

「さっさと夢魔を探せよ、ビャクヤ」

「それはッ! できないんぬッ!」

「なんでよ」

「偽者とはいえッ! 主様のあられもない姿をこのまま放置できないゆえッ!」

 夢の中の幻が行う、角ニーなんかどうでもいいだろ。

「あられもないっつっても制服も着てるし、オナニーしている以外は普通だろうが」

 俺の言葉を無視してビャクヤはマントを大げさに広げると、偽者のリンネを優しく包み込んだ。

「吾輩はッ! こうやっているので二人で探してくれぼんぬッ!」

「別にお前が偽リンネに抱き着かなくても、マントを貸せばいいだろうが」

「ほんとよ! いやらしい・・・」

 偽リンネは自慰行為を止めて、ビャクヤのマントに大人しく包まれている。

「マントを貸すことはできないっ! なぜならこれはッ! 先祖の霊毛が編み込まれた大事なリフレクトマントだからッ! 早く探してきたまえ、キリマルッ!」

 お前は鬼太郎かよ・・・。

 チィー!探すのが面倒だから押し付けやがったな・・・。しかも契約の力なのか、探さないといけない気分になってきたしよぉ。くそが・・・。

「私も手伝うよ、キリマル!」

「ああ、そうしてくれ」

 俺は取り敢えず教室にある荷物用の棚を探すことにした。リンネは机の中を探している。

「無駄だと思うけどねぇ! ひっひっひ!」

 またどこからともなくババァの声がする。

「なんでそう言い切れるんだぁ? ババァ」

「ババァじゃないよ! 口の悪い人修羅だねぇ! 私は夢魔モーラ」

「お? 名前言っていいのか?」

「当たり前だろう。あたしには主様がいるのだからね。主なしの悪魔が真の名を名乗るのは間抜けだけどねぇ」

 それを聞いてビャクヤがこっちを向いた。

「君の事だよッ! キリマルッ!」

「うるせぇ!」

 ん? 微妙にビャクヤの腰がマントの下で動いているような・・・。あいつまさか・・・。

「おい! リンネ! ビャクヤが偽のお前に、いやらしい事をしているぜ!」

 ヒャハハ! リンネに怒られろ馬鹿ビャクヤ。

「えっ!」

 リンネは机の中を探すのを止めて、ビャクヤを見た。丸い目がじっと使い魔を凝視する。

 偽のリンネは机に手をついて喘いでおり、ビャクヤがリンネを後ろから突いているように見える。

 下半身はマントに隠れて見えないが、体勢で容易にそう想像がつく。

「ちょっと何してんのよ! ビャクヤ!」

「誤解なのですッ! 主殿! 入れてませんからッ! 偽者が腰を押し付けているだけなのですッ!」

「ほんとに?」

「ほんとですッ! 見ますか?」

「見ないわよ! 馬鹿!」
 
「そんな事より、早く探してくれたまえよ、キリマルッ! そうしないと吾輩が犠牲となるッ!」

 てめぇが犠牲になんかなるか。単純に尻コキで射精して賢者タイムが来るだけだろ。

「お前はほんとそういうのに弱いな。少しは理性を保って、誘惑に抗えよ」

「はん! キリマルがおかしいだけかとッ! オッサンだから性欲が薄いのデスッ!」

「うるせぇ! お前ら俺のことをオッサンオッサン言うけどな、まだ25歳なんだがぁ?」

「十分オッサンであるッ! 人生の折り返し地点にきているッ!」

「25で人生の半分ってなんだ? お前らどんだけ平均寿命短いんだよ」

「この国の人間は穏便に生きれば80くらいまでは生きるけどもッ! そんな人は稀だッ! 魔法や魔物、盗賊など襲撃が原因で、そんなに人生は長くないのだよッ!」

「なるほどな・・・。お前らが性に割と寛容な理由が理解できた。リンネもビャクヤと医務室であんな事しておいて、次の日にはケロっとしてるしな・・・。人前であんな事しておてよぉ。ヒヒヒ」

「あ、あれはマントに隠れてたからセーフっていうか! それにビャクヤだって、私の中に入れてないし!」

「別に責めちゃいねぇさ。お前らは死が身近にある世界に生きている。死と隣り合わせの人生で、人は何を残したがるかって言うとな、子孫なんだよ。子孫を残すに為にはセックスしなくちゃならねぇ。そのセックスをよぉ、俺がかつて生きていた世界みたいに下手に禁忌にしてしまうと、この世界の場合、人間はあっという間に減ってしまうだろうよ。だからお前らは、種を残す本能に従って平気でエロイ事をする」

「君の世界はそんなにッ! 性に厳しいのかいッ!?」

「ああ、女に声をかけただけで大騒ぎになる。事案発生ってやつだ。女だけじゃねぇ。子供にもだ。だから男は下手に女子供に声をかけられず、何かあってもスルーするしかねぇな。そのせいか、お前らぐらいの年頃の奴らでも、付き合っているのは二割程しかいねぇんだわ」

「なんだか、窮屈な世界だね・・・」

 リンネが口をへの字にして肩を竦める。

 まぁ俺らにしてみれば、魔法や魔物や悪魔ですぐ死ぬこの世界の人間の方可哀想だけどな。俺の手によって死ぬことができねぇんだからよ。キヒヒ。

「向こうの世界の事なんて今となっては、どうでもいい事だがな。で、話は変わるが、夢ってのはよ、己の願望が現れたりするもんよ。リンネは恋人が欲しい。セックスもしたい。子供も欲しい。しかしそれはすぐに、どうこうできるもんでもねぇ。特に素直じゃないツンデレのお嬢ちゃんにはな。そのもどかしさが自慰行為という形で、夢に現れてんだ」

「べべべべ、別にそんな事考えてないもん!」

 リンネは顔を真っ赤にして手で仰いでいる。

「いいから素直になれって。お前の秘密やプライバシーは、墓まで持ってってやるからよ。セックスしてぇんだろ? (本当はお前らの事なんかどうでもいいだわ。俺が興味があるのは、お前らの首を刎ねられるかどうか)」

「もう! そうよ! 恋人とイチャイチャしたいし、エッチな事も興味があるわよ! でも・・・」

「でも?」

「清らかでいたい気もする・・・。だから私の大事なところは、今は誰にも触れさせたくないっていうか・・・」

「よーし、わかったぜ。ビャクヤ、その偽リンネに挿し込め!」

「なんでそうなるッ!?」

「いいからお前の想いがこもったタケリタケを挿し込めって。俺様ぁ、今気がついたんだわ。灯台下暗しってやつをな」
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