殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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神殿騎士

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「大丈夫かねッ! キリマルッ!」

 ビャクヤの仮面が色んな表情になる。それは混乱しているという事なのか? どんな時もふざけてやがるな、お前は。

 敵は誰だ?

「ぬんっ!」

 俺は左肩に剣を刺されたままだが、後ろを見ずに刀を後方へ突き出す。手ごたえは・・・へへへ、有りだ! 馬鹿な敵だ。不意打ちを狙い過ぎて、近寄り過ぎたな? 恐らくだが相手の顔に切っ先が命中したはずだ。

「ひえ・・・」

 ビャクヤが小さく呻く。変態仮面の視線はわかりづらいが、その悲鳴は俺が刺した相手へのようだ。

「ぐぃ!」

 人は予期せぬ攻撃を受けると、奇妙な声を出すもんだ。背後の糞野郎が声を上げて怯んだ。

 左肩のロングソードが急に軽くなる。敵が柄から手を離した証拠。

 俺はすぐにビャクヤに近づいて背中を見せた。

「剣を抜いてくれや、ビャクヤ」

「承知ッ!」

 なるべく引っ掛かからないように、傷口を広げないように抜いてくれたのか、スムーズに剣が抜ける。

 ビャクヤは暫く血塗れの剣を光る手で触れていた。戦闘時にもかかわらず、この変態仮面は剣を鑑定しているのだ。

 これから生死のやり取りをする現状を見て尚、冷静に鑑定魔法を唱えるビャクヤの胆力。嫌いじゃないねぇ。

「この剣はッ! ロングソード+3の魔法剣だッ! 滅多にお目にかかれないレア物ッ! 吾輩の防御魔法を貫通してもおかしくはないッ!」

「へぇ、良い剣をくれたもんだな」

 誰もくれるとは言ってないその剣を、俺はもう貰った気になっていた。なんならこの剣で敵を討ってもいい。

 急に肩の傷が治りだして痛みが引いていく。

 左目を手で押さえて痛みでのた打ち回る騎士と、その集団を俺が睨んでいる間にリンネが回復魔法をかけてくれたようだ。リンネはヒーラーではないのにどうやったんだ?

「ビャクヤもそうだったが、メイジでも回復魔法が使えるんだなぁ?」

「水魔法の【再生】よ。僧侶の奇跡の祈りみたいに、直ぐには治らないからあまり無茶はしないでね!」

「十分だわ。ありがとよ、リンネ。さてと・・・」

 アマリを右手で握り直し、左手でロングソード+3の柄を握ろうとしたが、なぜか左手に力が入らず持つ事ができなかった。

「浮気はさせない」

 この魔刀に感情がある事を思い出した。抑揚もなく平坦な声だが、怒っているのだ。

「他の武器を持つ事が浮気になるってのか、アマリ」

「なる。ダメ!」

「チッ! 俺の相棒は思いの外嫉妬深かった。魔剣はビャクヤが持っててくれ」

 ビャクヤは頷くと空間に開いた穴に剣を放り込んだ。便利だねぇ、それ。鞄要らずだな。

 左目を失った騎士に、禿げた僧侶が近寄って傷を癒す。グリ・ズリーに似たパワータイプの黒髪短髪の男は、治療を受けながらも俺を睨んでいる。まだ目は死んでいねぇな。いいぞ。

「常人で・・・あれば、肩を貫通する剣の一撃を食らえば、痛みで動きが止まるはず。中々の精神力だな、人修羅」

 もう騎士の片目が治った。奇跡の祈りを終えた僧侶を押しのけて立ち上がると、部下らしき騎士の腰にある剣を勝手に借りて構える。

「俺は王国神殿騎士団二番隊隊長のシンベーイ・アバウンドだ。悪いがここで死んでもらうぞ、自然の摂理を壊しし悪魔よ」

 なるほどね。俺は宗教関係者から睨まれたって事か。中世の国だと思って舐めていたが、情報が巡るのは早いのだな。

 こいつらにとって、俺みたいにホイホイと死人を生き返らせる奴がいるのは、目の上のたん瘤だろうよ。皆が俺様を頼るようになると、べらぼうに高い蘇生代金を貰えなくなるからなぁ?

「ハ! 不意打ちしてから名乗るのかよ。この国の騎士は騎士道精神がないのか? どいつもこいつも背後から攻撃しやがって」

「悪魔に見せる騎士道はない」

「都合のいい騎士道だな。で、クドウはお前らの手先だったわけだ? どうせエリーを殺すとか言って脅して、暗殺するように仕向けたんだろ?」

「さて何の事だろうな」

 かぁ~、白々しい。それにしてもどうやって小隊はやって来たんだ? 馬の嘶きも激しい鎧の音もしなかったが?

 騎士達の後ろに光る扉が見える。

 なるほど、どこでもドアみたいな魔法があるんだな? ビャクヤみたいにシュッと転移する魔法とはまた別か?

 さてさて、ニヤニヤしている神殿騎士様を、挑発でもしてみますかな。

「いけないなぁ、君たち。神様は、神の下僕たる君たちの嘘を一瞬で見抜くんだがぁ? あ~、きたきた! 今、我が身に神様が憑依しましたよ! そしてこう言っています! ヒヒヒ! 神の名を汚す不届き者の神殿騎士を討てと!」

「戯言を!」

 ハッハー! 安い挑発に雑魚騎士たちが乗ってきた!

「俺の中の神様は、君たちを懲らしめてもいいが、殺生はするなと言っています。なので罰として少々手足を切り落とさせてもらいます、達磨の刑な? ヒハハ!」

 契約上、なるべくリンネの前では邪悪さを見せてはいけねぇんだが、今のセーフか? ビャクヤの仮面が険しい表情をしているな。

「蘇生ができる君の場合、敵は殺された方が幸せなんだがねッ!」

 うむ、やはり怒られたぜ。キヒヒ。

 でもよ、少しは情報を仕入れておきてぇ。情報は金に勝る。何人かはまじで達磨にして生かしておくか。

「俺たちは何も悪さをしてねぇのに、討伐しに来るような質の悪い騎士には、お仕置きが必要だな! これまでの出来事も全部お前たちが仕組んでいたんだな? 裏でコソコソしやがって」

 シンベーイはニヤニヤした顔のまま言った。

「もう一度言うぞ? さて、何の事だろうな」

 あ~、こいつみたいな表情は、日本でも見た見た。薄汚い大人が建前だけで通そうとする時の顔だわ。

 イジメがあった事を保護者から隠し通し、建前だけで対応する校長の顔。

 不正の事実を指摘されたらデマだと言ってみたり、記憶にございませんと言い通す政治家の顔。

 詐欺に近い商売をしても、法的に問題はないと言い張る社長の顔。

 だから俺はそういう輩を日本で沢山斬り殺したんよ。気持ちよかったわ~。

 そういや、クズは死に際も汚かったなぁ。

 最後の最後まで足掻いて生き延びようと必死なって、金をやるから見逃せとか、急に自分語りを始めて同情を誘おうとしたりよ。一般ピーポーはただ悲鳴をあげて死ぬだけなのに、クズはションベン漏らしながら逃げ回り、しつこく足掻く。

 それを容赦なく叩き斬るんだ! あぁ~! 思い出しただけで射精しそう! 俺も中々のクズだなぁ! ハハハ!

 おっと! いけねぇ。思い出に耽ってしまった。

 ビャクヤが今の心の内を見たかもしれぇが、俺は気にせず鼻で笑って現実に戻ると刀を構えた。

「さーてやりますか。神殿騎士だがなんだか知らねぇが、謀ばかりするクズは痛い目を見てもらうぜ」
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