殺人鬼転生

藤岡 フジオ

文字の大きさ
上 下
61 / 299

快楽に身を委ね

しおりを挟む
 さて、俺は村の商店街で、健気にもリンネの為に情報収集をしている。これもリンネからの好感度を上げるためだ。既に高いとは思うが、まだまだMAXまでには程遠い。

 まぁ好かれ過ぎると、今度はアマリが焼きもちを焼くから程々にしとくがよ、リンネを味方につけておけばビャクヤが出す、気に入らない命令を取り消させる事ができるかもしれねぇからな。

 イービルアイの話を聞こうとも思ったが、俺自身イービルアイがなんなのかわからねぇし、詳しい話をされても理解できるかどうかの自信はねぇ。取り敢えずアトラスの評判でも聞いておくか。

「おい、お前」

 如何にも村人Aみたいな特徴も何もない若い男は、俺を見て一瞬たじろぐ。まぁ俺を見て動揺するのはこいつに限らずだが。

「ひぃ! 悪魔!」

 前から思ってたけどな、なんでどいつもこいつも俺を悪魔と認識するのだろうか。

「そうだ俺は悪魔だ。よく解ったな。見た目は人間なのに。だが契約済みの悪魔だから、お前らに害はねぇ」

 本当は意味なくお前らを斬殺したいんだがな。

「そ、そうなのか? 主は誰だ?」

「リンネの使い魔のビャクヤだ」

「あぁ、リンネんとこの。彼女は村に帰ってきてたのか?」

「父親のアトラスが死んじまったからなぁ。それで色々事情があって、名誉回復の為にアトラスがどんな人物だったかを聞いて回ってんだ」

「なるほどね。だったら協力できるよ。アトラスさんは村一番の力持ちで、お人好しで、魔物に詳しかった」

 既にリンネから聞いた情報だな。

「他には?」

「最近、盗賊に襲われた廃城のネクロマンサーは知ってるかい?」

「ああ、騎士が盗賊を討伐して城を取り戻したネクロマンサーだろ? そん時にアトラスは敵前逃亡しようとして死んだんだ」

「その話は聞いたよ。アトラスさんが逃げるなんて僕は信じないけどね。だってあの人、武器も持たずに魔物をなぎ倒すような漢だよ? 盗賊相手にビビるわけないじゃないか」

「騎士団も同じ事を言っていた。でも今は騎士の典範に従って、アトラスの遺体は晒しものになっている」

「うん。酷い話だし、誰も見に行きたがらないけどね。村の人気者の亡骸なんて痛ましくて見てらんないよ。それに死体を晒すなんて、今の時代にはそぐわない」

「で、ネクロマンサーがなんだって?」

「あっと! そうそう。アトラスさんは、ネクロマンサーのディンゴさんに借金があったみたいなんだ。よく廃城まで足を運んでいたのを見てたからね。彼も正直者だから、借金がある事を隠さずに道端で出会った僕にそう話していくれたよ。借りたお金は毎月きっちりと返済していたよ」

「なんの借金だ?(そういや三か月前から、リンネへの仕送りが滞っているって話だったな)」

「それは流石に聞くのは失礼かと思って聞かなかった。これぐらいかな、情報は」

 そう言って男は手を出している。情報料をよこせって事なんだろうな。

 なので俺はその手にそっと、にぎりっ屁を置いて立ち去った。後方から「クサッ!」と声が聞こえてきたが知ったこっちゃねぇ。

「さてさて。今度はネクロマンサーのディンゴの城に、行く必要がありそうだな」

 俺は足を森の中にある廃城に向けた。うっそうと茂る木々の中で一際高い尖塔と城壁は前に見た時と同じく、不気味な様相をしていた。

 それにしても今頃ビャクヤは上手くやっているだろうか? クライネを、たらし込めているといいがな。




「君の顔を見ると・・・、どうしても下腹部が疼くんだ! 股間がヌルヌルしてくるし・・・。これは病気なのだろうか?」

 ビャクヤはクライネの言葉を最初は冗談だと思い、茶化した返事をしようかと思ったが、彼女の目は真剣だった。

(どういう生き方をしたら、ここまで性の知識が乏しくなろうのだろうかッ!)

「いや、それは自分の好みの異性を見るとなる、普通の状態でございます、クライネ様ッ!」

「では君も私を見て、股から変な粘液が出てくるのか?」

「いえ、吾輩はそのような事にはなりませんッ!」

「なぜだ? 君は私を魅力的だと言ってくれたじゃないか」

 クライネは押し寄せる快楽に身を委ねるかどうかは、ビャクヤの答えを聞いてからだと言わんばかりに、歯を食いしばって我慢をし、荒い息を吐いている。

「男の場合は、性器が勃起しますゆえッ!」

「勃起? どうなるんだ? 是非見せてくれないか?」

(困りましたねぇ・・・。昨日今日出会った女性に見せるようなものでは、・・・あっ!)

 ビャクヤは自分のパンツ一枚の姿を恨んだ。ビキニパンツからは、勃起したそれがはみ出ていたし、クライネに簡単に出されて握られてしまったからだ。

(つい最近、愛のない性行為は嫌いだと言ったのにッ! 吾輩はッ! 情けなくもッ! 彼女の欲情した姿に興奮してッ! 勃起してしまっているッ! どうかお許してくださいッ! 我が主様ッ!)

「これが男性器・・・。私のとは違うのだな。なぜだか解らないが、私はこれが堪らなく愛おしい」

 そう言ってクライネは整った顔に、魔人族の青黒い性器を擦りつけた。

「失礼ながらクライネ様は性の知識が乏しく思えますッ! 普通は貴方様の年齢になればッ! 男と女の間柄のッ! 酸いも甘いも知り尽くしているはずですがッ! 貴方は殊の外ッ! 初心でございますッ! これは異常かとッ!」

「仕方ないだろう。私はそういう事から遠ざけられて育ってきたのだ。両親がそういう事を非常に嫌悪する人間でな。今思い返すと自然な感じではあったが、意図的に性への知識を遠ざけられてきたのだと思う。男子を近づけないようにしたり、男女の仲睦まじい姿を見せないようにしたりと。そして、そういう事を知らぬまま成人した女はどうなると思う? 男性を全く意識しなくなるのだよ・・・。あぁッ!」

 クライネは股間を押さえて震えている。少し達してしまったのかもしれない。

 ビャクヤはクライネを可哀想な人だと思った。青春を謳歌する時期を愛しい恋人と過ごせず、生き物としての本能も封じられて生きてきたのだから。今こうして彼女が親元を離れて一人暮らしをしていても、男の匂いは全くしない。

 目頭を押さえて涙を引っ込めると、ビャクヤは美形顔をクライネに近づけて微笑む。

「きっとこれから貴方にも素敵な人が現れるでしょう。ですがその相手は吾輩ではないのです」

「そんな事を言わないでくれ! いやだ、それは切ない! 私は君の事が好きだ。だからこそ私のここがこういう事になっているのだろう? 頼む。私を苛むこの苦しみから解放してくれ、君の手で!」

 ここまで頼まれて、彼女に恥をかかせるわけにはいかない。

「解りました・・・。次からは自分でやるのですよッ!」

 そう言ってビャクヤは彼女のズボンと下着を脱がし、横に座ると胸を服の上から揉みつつ、割れ目にそっと指を添わせた。

「はうっ!」

 肉の芽に、愛液でヌルヌルになった中指の腹が当たる度に、クライネは体を震わせる。

「はぁはぁ! 気持ちいい! 気持ちいいいいい!」

 クライネは喘いだ後、本能でそうした方が良いと思ったのか、ビャクヤの青黒いそれを口に含んだ。

「ぬはっ! ぎこちない舌使いがッ! 堪らないッ!」

 そんな事をする知識もないと思っていたので、突然の彼女の口技にビャクヤの脳も蕩けそうになる。

 慰めている側の自分が先に果てるのは男として情けないと思ったビャクヤは、指を彼女の中に入れ激しく出し入れし始めた。

「あうううう!」

 より一層仰け反ってクライネは快楽に溺れる。

「痛くはございませんか? クライネ様」

「大丈夫だ・・・。寧ろ気持ち良すぎて気が変になりそうだ。んんんあああああ!」

 腰を上げてプシャァァと潮を噴くと、彼女はビャクヤのモノを咥えたまま果てた。と同時にビャクヤも彼女の口の中に出してしまった。

「ハァハァ。なんだこれは? ま、不味いし臭い・・・」

 クライネは口の中のものを、手のひらに出してまじまじと見つめている。

「それが子種でございます、クライネ様。それを貴方の膣の中に出すと子供が宿ります。なので、もし子作りをするつもりがないのであれば、今後お相手する男性には外に出すように言ってください」

「子種? ならば! 君のがいい! 君の子種が欲しい! 君のはまだこんなにいきり立っているではないか! 私の中に入れて、子種を放出してくれ!」

 しかし魔人族と人間では子供を作る事はできない。

「私の子種ではクライネ様との間に子供は作れませんゆえッ! ご容赦をッ!」

 そう言ってからビャクヤは虚しくなる。つまりリンネとも子供は作れないのだ。

「こんなに私は君の事を愛しているのに・・・。子供が作れなくてもいい。真似事だけでも頼む!」

「それは本当に愛する殿方を見つけた時まで、取っておいてくださいッ! クライネ様ッ!」

 精子の付いた手で縋ってくるので、ビャクヤは内心「うわぁ!」と思いつつも彼女を拒否しなかった。

「いやだ! 今すぐに君のモノが欲しい!」

「では一つお願いがッ!」

「なんでも聞く! だから! 早く!」

「我々がリンネ様の父上の遺体がある磔場まで、近寄る許可を下さい」

「それはできない! 騎士の典範は、騎士にとって絶対なのだ! 察してくれ!」

 自分を見つめるクライネにビャクヤは申し訳ない気分になり、暫く沈黙する。

「・・・」

 弱みにつけこむようなこちらの申し出をなんとか彼女は叶えようとしてくれているが、それは無理でどうしようもないのは表情から解る。

 願いを聞けなかった自分を置いて、この場から立ち去ってしまうのではないか、という不安の目を向ける彼女を見ると、ビャクヤの心に罪悪感が湧いてくる。

「では・・・。アトラス様の日記なり、書き物なりの資料を今すぐ返してもらいたいのですがッ!」

「それなら問題ない! 保管庫はこの家にあるッ! 鍵はテーブルの上だ! 頼みは聞いたぞ! 早くぅ! 早くぅ!」

 クライネは堪らなくなったのか尻を高々と上げて、うつ伏せになり、自慰行為をしながら待っている。

「ありがとうございます、クライネ様」

 ビャクヤは、彼女が待ちわびてヒクつかせている秘所に肉の棒を、ゆっくりと挿入していく。

「あああああああ!!」

 彼女が頭をもたげて喘ぐその声は―――、自分は今、春を謳歌しているのだ! これまで封印されてきた青春を取り戻すのだ、と宣言しているかのようだった。
しおりを挟む

処理中です...