殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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冒険者たち

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「確実に仕事をこなすってぇのは、プロの必須条件だ。お前はもうプロの冒険者を名乗っていいぜ」

 蘇ってすぐに俺の指示通りに動いた、優秀なアオを褒めたつもりでそう言ったが、そもそも冒険者は迷宮に潜ったり依頼を受けたりして金を稼ぐから、プロを名乗るも糞もねぇ。最初から正真正銘のプロだ。

 俺はそう自分に心の中で突っ込みを入れたが、今更言葉を飲み込むには遅い。ちょっと恥ずかしくなりながらも侍に目をやる。

 奴は下からの灯りに気を取られていたが、俺に殺されたと思っていた冒険者たちが蘇ったのを見て、何が起きているのか把握できずに一瞬気後れをした。

「上等!」

 その一瞬で十分だった。

 パーティメンバーの影、侍の影、天井の影。全ての影から俺は飛び出して、分身共々侍大将に斬りかかる。

 四刀流は次々と分身を消していったが、真上から隠遁スキルを使って脳天目指して降って来る人修羅には、気づきようもないだろうよ!

「笑止!」

 残念ながら侍は気付いていた。落下中に見つかった俺は焦り、先走って、攻撃が空振りをしてしまう。

 更に放った五連撃を侍は刀で全て弾き返した。

「チィ!」

 俺自身も弾かれてしまい、空中で体を捻ると体勢を整えて侍の間合いの外に着地する。

「クソつえぇな、お前。隙がねぇ」

「中途半端なり」

 侍は微動だにせず俺を赤い目で見つめて、残念そうにそう言った。

「あ? 俺の事か?」

「左様。お主は侍としても忍としても。頂点までは程遠い」

「そりゃそうだろうよ。俺はまだ育ちざかり。実力値も5しかねぇからな」

「フハハハ! 5、か。雑兵の割に健闘をしたほうだ」

 もう勝負が決まったかのような言い草だな? えぇ?

「おほぉ? 俺様を雑兵呼ばわりとは豪気だねぇ。因みにお前の実力値は幾つだ?」

「三十なり」

「三十?!」

 蘇った雑魚前衛三人が声を合わせて驚く。

「さささ、三十って言えば、英雄レベルじゃねぇか!」

 驚くドン太郎の裏返った声に笑いそうになりながら、俺は侍を観察する。

 この世界では実力値が十五もあればベテランなのだ。

 そして平凡な者の成長限界がその十五だと言われている。なのでその倍をいくこの侍を見て以降、俺の本能がずっと勝ち目なしだと警告していたわけだ。

 ――――だが。

「だがなぁ・・・。ヒジリやヤイバと対峙した時程、絶望的ではねぇんだわ。ああ、そろそろ時間だな。さようなら、侍大将殿」

 俺が侍から視線を外さずにゆっくりとお辞儀をすると、侍は俺が負けを認めたと思ったのか、介錯をするが如く刀を上段に振り上げた。

 と同時に、侍の首が刎ね飛んで地面を転がり、首の付け根から血の噴水を上げた。

「えええええええ!! 一体何が起きた?」

 雑魚前衛三人は目を丸くして足元に転がってきた武者兜の頭を見つめる。

「落下攻撃時の空振りは必殺技である時間差次元断の仕込みな。一応焦ってみせたのは演技だ。俺の攻撃はよぉ、当たって貫通さえすれば一撃必殺なんよ」

 説明を始めようとしたが、侍の胴体が次元断の裂け目に吸い込まれて消えてしまった。なのでアホ前衛三人がまた驚いて、なんだなんだと騒いだので、暫く奴らが落ち着くのを待ってから話を続けた。

「ただ、俺は攻撃を当てても力が12しかねぇからよ、貫通しない場合もある。軽装な者が相手なら、いくらでも即死させる自信はあるが、良い鎧を着ている高レベルが相手となると、途端に倒すのが難しくなる。ところがな、この時間差次元断は防御不能技。俺はお前らを囮にしてずっと侍を観察してたんだわ。奴の戦い方には癖があってな。拘りがあるのか知らねぇが、侍はその場からなるべく動かずに戦うのを好んだ」

「強者の傲りってやつだな。動かずに敵を倒してみせよう的なあれだ」

 レッドが指を鳴らして、頭だけになった侍を指さした。

「そうかもな。奴の変なプライドが自身を殺したとも言える。俺は種族としては強い方だが、まだまだ実力不足だ。弱いなら弱いなりに、知恵と持てる技の全てを駆使して戦うやり方もある。今回のようにな。お前らだってそうだ。セオリー通りの一辺倒な戦い方をせずにあれこれ試せ。冒険者なんてのは卑怯な手を使おうがなんだろうが、生きて帰ったモンが勝ちなんだしよぉ」

 俺は冒険者ギルドで見たフランベルジュを背負う、歯抜け戦士を思い出した。あのオッサンは決して体躯に恵まれてはいねぇのに、何度も迷宮から帰り依頼を達成している。オッサンの顔は、どんな手を使ってでも生き延びてきた本物の冒険者のそれだ。

 こいつらも歯抜けオッサンぐらい強かになって欲しいもんよ。

「でもよ、俺らを囮にするのはもうやめてくれよな! 俺はてっきりキリマルが逃げたのかと思ったぜ!」

 レッドは腕を組んで頬を膨らませた。

「俺はちゃんと尻拭いはすると言ったろ。お前らを健康な体で生き返らせてやったんだから文句を言うな。それによ、その侍の武者兜と頬当ては良い値段で売れるんじゃねぇのか? いい土産になるぞ」

「【知識の欲】で鑑定してみますね」

 アオは恐る恐る侍の頭を拾うと魔法による鑑定を開始した。

「わぁ・・・。これは凄いです! 貴重な能力アップ系の魔法が付与されています! 武者兜は素早さが三つも上がりますよ! 頬当ては癒しの効果と毒を無効化してくれますね!」

 能力値の上がりにくいこの世界では、能力アップの永続効果は確かに貴重だ。

「だから、こいつは俺の素早さについてこれたんだな。で、この侍の種族はなんだ?」

「魔物かと思ってましたが、ただのレッサーオーガです。手が四本もあったのは・・・。迷宮の瘴気が原因ですね」

「へぇ・・・。もとはただの人間だったわけか。このカビ臭い迷宮に長いこといると化け物になるんだな。よし! じゃあ今日はこれで終わりにすっか。ドン太郎が化け物になって、チンポが二本になったら困るしよ。クハハ!」

 チンポという言葉にモモとアオが顔を赤くする。それを見たレッドが何かを想像したのか「フヒッ!」と奇妙な声を上げて喜んだ。

「え! それって喜ばしい事じゃん! 二本あったら女を二人同時に抱けるんだぜ!」

 太郎は鼻の下を指の腹で擦って「キシシ」と笑った。

「童貞が夢見てんじゃねぇぞ。そんなエロ絵草子みたいな話があるかよ」

 ブラックがレッドの肩を叩いて笑った。

「どどど、童貞じゃねぇよ!」

「ドンはいつもチラチラと、モモのおっぱいを横見してんじゃねぇか! ガハハ!」

 イエローがそう言って話に加わりレッドを茶化す。

「ふぇ? そうなのぉ?」

 モモは少し眉間を寄せて胸を手で隠してレッドを睨んだ。隠さなくても硬い胸当てで隠れているけどな・・・。

「み、見てねぇし。俺は尻派だし」

「どっちにしろ、いやらしい目で私たちを見ないで下さいね!」

 アオはスカートの後ろを手で押さえてドンを睨んだ。

「は? アオまで何言ってんだ? お前らなんてなんとも思ってねぇよ!」

 いつものようにぎゃあぎゃあと騒がしくなってきたので、俺は辟易として肩を竦めた。

「おら、うるせぇと魔物が寄ってくるだろ。さっさと階上を目指せ」

「はーい」

 パーティメンバーは小声で返事をすると、ようやく地上を目指して動き始める。ほんとガキのお守りは疲れるわ。ビャクヤといいこいつらといい。

 帰りはラビットラットやらドラゴンフライに襲われたが、数が多いだけの雑魚だったので問題なく街まで戻る事ができた。
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