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アマリ妊娠
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「いるんだよねぇ。誰でも簡単に冒険者になれると思っている人ぉ~」
オークのような見た目の太った樹族が、声に嫌味を含ませて軽くため息をついた。
「一応、あんたらノーム国の人みたいだから冒険者登録はしてあげるけど・・・。ノーム国出身の魔人族とレッサーオーガねぇ・・・」
上から下まで舐めるようにビャクヤとリンネを見て、疑いのまなざしを向ける受付職員だったが、本物の書類が揃っている以上、この二人を冒険者にするしかなかった。
「それで登録料の事なんですがッ!」
ビャクヤは額に手を添えて悩んでいるようなポーズをとる。
「我らはスリにあって・・・」
「ノーム国の方は無料です。次~」
横柄な態度の樹族に、ビャクヤは怒りを覚える事はなかった。樹族とは往々にしてこうなのだ。
嫌な気分を振り払うようにマントを翻すと、ビャクヤはリンネの据わっている長椅子に向かう。
「どうだった? 登録料は待ってもらえた?」
「いいえッ! 待つもなにもッ! ノーム国の者は無料だと言っておりまんしたッ!」
「す、凄いね、ノーム国って」
「オーガやゴブリンは商売の為にこの国へ来れますが、冒険者にはなれない事を考えるとッ! ノームはかなり優遇されていますねッ!」
「ノームは皆親切だから。そりゃあ、優遇されてもおかしくないよね」
「一応ッ! ノームは我らと同じく闇側の種族ですがねッ! 他国を侵略した事はなく、神に愛された種族という事もありッ! 印象が良いのかもしれませんッ!」
ノームは滅多に国外に出ないが、それでもノームの旅人に助けられたという話はよく聞く。そのどれもがノームの善行を称えた後に、必ず彼らの奇妙な行動を笑い話として締めくくる。だからノームは親切で面白いという印象があるのだ。
「さて、早速依頼を見ますかッ! んんどれどれッ! できればッ! 宿代やご飯代の他に、翻訳のペンダントを購入できるぐらいの報酬がいいですねッ!」
「ごめんね、ビャクヤ」
「愛おしいリンネの為の苦労はッ! 苦労ではありませんぬッ!」
それを聞いたリンネが頬を染めて笑顔を見せたので、ビャクヤの胸がキュンと鳴る。
(ああ、可愛い。またエッチしたくなってきたッ!)
欲望をぐっと抑えて依頼票を見ていたビャクヤの隣で、リンネが「アレ?」と声を上げる。
「どうしてノームは私と会話できたのかな?」
「ああ、ノームは翻訳装置を持っていますゆえッ!」
「じゃあそれを使って、早口もゆっくりにできたんじゃないの?」
「それを忘れてしまうのがノームなのですよッ! リュウグちゃんのようにしっかりとしたノームはッ! そうそういないのですッ! 基本的にノームは興味がある事以外はおざなりでッ! 服のボタンすらチグハグだったりしますッ! 昔、神様から聞いた事がありますが、ノームが魔法や飛空石を使わない”はんじゅうりょく“の力を使った飛空艇を作ったのは良いけれどッ! 魔法や飛空石に頼らない空を飛ぶ機械を作る、という目的に執着するあまり、動力が人力だったそうですッ!」
「え? 人力以外でどうやって動かすの?」
「それは吾輩にもわかりませんが、神様曰く、”はんじゅうりょく“の装置を発明する前に、もっと効率の良い動力装置を作っていないのはおかしいと仰られておりました」
「よくわからないけど、そうなんだ? そういえばビャクヤも言葉がすぐに通じたよね?」
「吾輩には先祖代々伝わる魔法の仮面の力がありますゆえッ! 翻訳の魔法を使いつつも言葉をすぐに覚えましたッ!」
「いいなぁ~。仮面貸してよ」
「いいですがッ! ツバ臭いですよ?」
「じゃあやめとく・・・」
苦笑いするリンネを見てビャクヤは小さく笑ってから、また依頼票を物色する。
「これなんてどうでしょうか」
ビャクヤがリンネに見せた依頼票は売り子の仕事だった。
俺が宿屋に借りている部屋に入るとアマリが人の姿になってぴっちりスーツを脱ぎ始める。
「博士に貰ったスーツを気に入ってねぇのか? アマリ」
「そんな事はない。ただ下着姿が楽なだけ」
シンプルで飾り気のない白い下着を着るアマリを、俺は何となく見る。
「なぁ、お前・・・。下腹出てねぇか?」
確かにアマリの腹が出ている。だが、こいつは大便が溜まる体の構造をしていない。
「・・・。なんでもない。ただ妊娠しているだけ」
「は?」
流石に「は?」としか言えないだろ。
アマリは妊娠できない体だと思っていたがな。こいつは簡単に言うとナノマシンが作り出す、質量のある幻みたいなもんだ。ゲームのキャラクターのように主要な部分以外はスッカスカなのだ。
「お前も冗談を言うようになったんだな」
「冗談ではない」
なんでそこでシャアの物真似をした? アマリよ。どこで機動戦士ガンダムを見たんだ? 使い方を間違っているような気もする。
「私はセックスの度に、キリマルの遺伝子情報を体に蓄積させている」
「カナからヒントを得たな?」
「その通り。ナノマシンを使って、私のデータとキリマルの遺伝子データの掛け合わせ、物質化を試みた」
「今朝はお前のお腹は膨らんでいなかったし、今になってやっとそれが成功したわけだ?」
「そう。明日の朝には生まれる」
「よし、腹ボコして流産させるか」
「鬼畜。鬼畜のキリマル」
アマリがいつも通りの無表情で俺を睨む。だが怒っているのが何となく解ったので、俺は即座に折れる事にした。面倒だからな。
「まぁ産むのは構わねぇがよ、俺はガキの面倒はみねぇぞ」
「私がみるから問題ない」
問題ないわけねぇだろうが。どうやって迷宮探索中に子供の面倒を見るんだ? それとも宿屋でベビーシッターでも雇うつもりか?
「やっぱ腹ボコ・・・」
「なんで!!」
アマリが急にキレやがった・・・。目の光が消えるからこえぇわ。
「なんでカナの子は良くて! 私の子はダメなのか! 私だってキリマルの子が欲しい!!」
「いや別にいいけどよ、どうやって育てるんだって、さっきから言ってんだろうが。俺ァ、いつ死んでもおかしくない生き方してんだぞ? 主である俺様が死んだらお前はどうすんだよ。俺がいなきゃ人型にもなれねぇだろ」
「キリマルは絶対に死なせない。だから問題ない」
死ぬときは死ぬだろよ。現に俺は臭い骨の連中に消されそうになったんだが? どこから来る自信なんだ、それは・・・。
「さよか。じゃあ産め。もう何も言わねぇ。産んでしまえ」
俺はやけっぱちになってベッドに寝転んだ。
「嬉しい」
アマリは俺に覆いかぶさってキスをしてきた。そのキスはいつもセックスをせがむ時のキスと同じだ。
「腹の中に子供がいるならセックスはできねぇぞ」
「そうなの・・・?!」
「多分な? 知らねぇけど」
「解った。我慢する」
俺はアマリとの子供の話で、カナとミドリを思い出した。あいつらを思い出すとなぜか胸が苦しくなる。
あいつらは天邪鬼の力を以てしても生き返らなかった・・・。それが無性に悲しい。
(なんであいつらの事をこんなに考えてしまうのだろうか。俺にとってそんなに重要な存在だったか? 博士曰く、ミドリは厳密には俺の子ではないんだしよ、どうでもいい存在だろうが・・・)
「何を考えているの? キリマル」
「んあ? 明日生まれる子供が楽しみだなって思ってたんだわ」
息を吐くように俺は嘘をつく。
「本当に? 嬉しい。お礼に気持ち良くしてあげる」
アマリはベッドに潜ると俺のイチモツに頬ずりしてからパクリと咥えた。咥えてすぐに気持ちいい。それは食レポーターが食べ物を咀嚼する前に目を丸くして「美味しい~!」とか言ってるぐらいの早さでな。
(くそ、アマリめ・・・。日に日に上手くなってきやがる・・・。う・・・もう出そうだ)
下手すりゃ下の口よりも気持ちいかもしれない。アマリは的確に舌と唇で俺の弱点を攻めてくるからだ。
俺はなるべく意識を股間にやらず、かといってカナとミドリの事を考える事も止めて、虹色の閃光が明日持ってくるであろうコズミックノートの情報がどんなものかを予想して快楽に抗った。
オークのような見た目の太った樹族が、声に嫌味を含ませて軽くため息をついた。
「一応、あんたらノーム国の人みたいだから冒険者登録はしてあげるけど・・・。ノーム国出身の魔人族とレッサーオーガねぇ・・・」
上から下まで舐めるようにビャクヤとリンネを見て、疑いのまなざしを向ける受付職員だったが、本物の書類が揃っている以上、この二人を冒険者にするしかなかった。
「それで登録料の事なんですがッ!」
ビャクヤは額に手を添えて悩んでいるようなポーズをとる。
「我らはスリにあって・・・」
「ノーム国の方は無料です。次~」
横柄な態度の樹族に、ビャクヤは怒りを覚える事はなかった。樹族とは往々にしてこうなのだ。
嫌な気分を振り払うようにマントを翻すと、ビャクヤはリンネの据わっている長椅子に向かう。
「どうだった? 登録料は待ってもらえた?」
「いいえッ! 待つもなにもッ! ノーム国の者は無料だと言っておりまんしたッ!」
「す、凄いね、ノーム国って」
「オーガやゴブリンは商売の為にこの国へ来れますが、冒険者にはなれない事を考えるとッ! ノームはかなり優遇されていますねッ!」
「ノームは皆親切だから。そりゃあ、優遇されてもおかしくないよね」
「一応ッ! ノームは我らと同じく闇側の種族ですがねッ! 他国を侵略した事はなく、神に愛された種族という事もありッ! 印象が良いのかもしれませんッ!」
ノームは滅多に国外に出ないが、それでもノームの旅人に助けられたという話はよく聞く。そのどれもがノームの善行を称えた後に、必ず彼らの奇妙な行動を笑い話として締めくくる。だからノームは親切で面白いという印象があるのだ。
「さて、早速依頼を見ますかッ! んんどれどれッ! できればッ! 宿代やご飯代の他に、翻訳のペンダントを購入できるぐらいの報酬がいいですねッ!」
「ごめんね、ビャクヤ」
「愛おしいリンネの為の苦労はッ! 苦労ではありませんぬッ!」
それを聞いたリンネが頬を染めて笑顔を見せたので、ビャクヤの胸がキュンと鳴る。
(ああ、可愛い。またエッチしたくなってきたッ!)
欲望をぐっと抑えて依頼票を見ていたビャクヤの隣で、リンネが「アレ?」と声を上げる。
「どうしてノームは私と会話できたのかな?」
「ああ、ノームは翻訳装置を持っていますゆえッ!」
「じゃあそれを使って、早口もゆっくりにできたんじゃないの?」
「それを忘れてしまうのがノームなのですよッ! リュウグちゃんのようにしっかりとしたノームはッ! そうそういないのですッ! 基本的にノームは興味がある事以外はおざなりでッ! 服のボタンすらチグハグだったりしますッ! 昔、神様から聞いた事がありますが、ノームが魔法や飛空石を使わない”はんじゅうりょく“の力を使った飛空艇を作ったのは良いけれどッ! 魔法や飛空石に頼らない空を飛ぶ機械を作る、という目的に執着するあまり、動力が人力だったそうですッ!」
「え? 人力以外でどうやって動かすの?」
「それは吾輩にもわかりませんが、神様曰く、”はんじゅうりょく“の装置を発明する前に、もっと効率の良い動力装置を作っていないのはおかしいと仰られておりました」
「よくわからないけど、そうなんだ? そういえばビャクヤも言葉がすぐに通じたよね?」
「吾輩には先祖代々伝わる魔法の仮面の力がありますゆえッ! 翻訳の魔法を使いつつも言葉をすぐに覚えましたッ!」
「いいなぁ~。仮面貸してよ」
「いいですがッ! ツバ臭いですよ?」
「じゃあやめとく・・・」
苦笑いするリンネを見てビャクヤは小さく笑ってから、また依頼票を物色する。
「これなんてどうでしょうか」
ビャクヤがリンネに見せた依頼票は売り子の仕事だった。
俺が宿屋に借りている部屋に入るとアマリが人の姿になってぴっちりスーツを脱ぎ始める。
「博士に貰ったスーツを気に入ってねぇのか? アマリ」
「そんな事はない。ただ下着姿が楽なだけ」
シンプルで飾り気のない白い下着を着るアマリを、俺は何となく見る。
「なぁ、お前・・・。下腹出てねぇか?」
確かにアマリの腹が出ている。だが、こいつは大便が溜まる体の構造をしていない。
「・・・。なんでもない。ただ妊娠しているだけ」
「は?」
流石に「は?」としか言えないだろ。
アマリは妊娠できない体だと思っていたがな。こいつは簡単に言うとナノマシンが作り出す、質量のある幻みたいなもんだ。ゲームのキャラクターのように主要な部分以外はスッカスカなのだ。
「お前も冗談を言うようになったんだな」
「冗談ではない」
なんでそこでシャアの物真似をした? アマリよ。どこで機動戦士ガンダムを見たんだ? 使い方を間違っているような気もする。
「私はセックスの度に、キリマルの遺伝子情報を体に蓄積させている」
「カナからヒントを得たな?」
「その通り。ナノマシンを使って、私のデータとキリマルの遺伝子データの掛け合わせ、物質化を試みた」
「今朝はお前のお腹は膨らんでいなかったし、今になってやっとそれが成功したわけだ?」
「そう。明日の朝には生まれる」
「よし、腹ボコして流産させるか」
「鬼畜。鬼畜のキリマル」
アマリがいつも通りの無表情で俺を睨む。だが怒っているのが何となく解ったので、俺は即座に折れる事にした。面倒だからな。
「まぁ産むのは構わねぇがよ、俺はガキの面倒はみねぇぞ」
「私がみるから問題ない」
問題ないわけねぇだろうが。どうやって迷宮探索中に子供の面倒を見るんだ? それとも宿屋でベビーシッターでも雇うつもりか?
「やっぱ腹ボコ・・・」
「なんで!!」
アマリが急にキレやがった・・・。目の光が消えるからこえぇわ。
「なんでカナの子は良くて! 私の子はダメなのか! 私だってキリマルの子が欲しい!!」
「いや別にいいけどよ、どうやって育てるんだって、さっきから言ってんだろうが。俺ァ、いつ死んでもおかしくない生き方してんだぞ? 主である俺様が死んだらお前はどうすんだよ。俺がいなきゃ人型にもなれねぇだろ」
「キリマルは絶対に死なせない。だから問題ない」
死ぬときは死ぬだろよ。現に俺は臭い骨の連中に消されそうになったんだが? どこから来る自信なんだ、それは・・・。
「さよか。じゃあ産め。もう何も言わねぇ。産んでしまえ」
俺はやけっぱちになってベッドに寝転んだ。
「嬉しい」
アマリは俺に覆いかぶさってキスをしてきた。そのキスはいつもセックスをせがむ時のキスと同じだ。
「腹の中に子供がいるならセックスはできねぇぞ」
「そうなの・・・?!」
「多分な? 知らねぇけど」
「解った。我慢する」
俺はアマリとの子供の話で、カナとミドリを思い出した。あいつらを思い出すとなぜか胸が苦しくなる。
あいつらは天邪鬼の力を以てしても生き返らなかった・・・。それが無性に悲しい。
(なんであいつらの事をこんなに考えてしまうのだろうか。俺にとってそんなに重要な存在だったか? 博士曰く、ミドリは厳密には俺の子ではないんだしよ、どうでもいい存在だろうが・・・)
「何を考えているの? キリマル」
「んあ? 明日生まれる子供が楽しみだなって思ってたんだわ」
息を吐くように俺は嘘をつく。
「本当に? 嬉しい。お礼に気持ち良くしてあげる」
アマリはベッドに潜ると俺のイチモツに頬ずりしてからパクリと咥えた。咥えてすぐに気持ちいい。それは食レポーターが食べ物を咀嚼する前に目を丸くして「美味しい~!」とか言ってるぐらいの早さでな。
(くそ、アマリめ・・・。日に日に上手くなってきやがる・・・。う・・・もう出そうだ)
下手すりゃ下の口よりも気持ちいかもしれない。アマリは的確に舌と唇で俺の弱点を攻めてくるからだ。
俺はなるべく意識を股間にやらず、かといってカナとミドリの事を考える事も止めて、虹色の閃光が明日持ってくるであろうコズミックノートの情報がどんなものかを予想して快楽に抗った。
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