殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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肉棒の剣戟

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 虹色の閃光の報告を聞きながら、俺は我が子をしている。

 俺の横に座るアマリは、嬉しそうにその様子を眺めていた。

「随分と刃の分厚い脇差ですね」

 アオが我が子に興味を持った。俺が答えようとしたが、アマリがにっこりと笑って返事をする。

「キリマルのおちんちんをイメージしたから」

「おちん・・・! どういうことです? アマリが作ったのですか?」

 アオは顔を真っ赤にしてアマリを見るが悪びれた様子がないので、セクハラの類ではないと思った。

「(きっと天然なんだ、この人・・・。いや刀・・・)太くて短いのですね、キリマルのは」

「それでも半分までしか入らない。私のアソコが小さいから」

「その話、興味があります! 悪魔とのセックスとはどんな感じなのですか? 悪魔のアレは細くて小さいと聞いたのですが! 太くて短いならその話はどうなんでしょう?」

「朝っぱらから何言ってんだ、お前ら・・・。」

 俺が呆れながら脇差を柔らかい布で拭いていると、アオが興味深そうに脇差を見てくる。

「カッコイイ脇差ですね。刃が分厚い以外は、シンプルでオーソドックスというか。使い込むごとに味が出てきそうで」

「だろう? 名前はまだ決めてないがな。俺とアマリの子だ。かっこいい名前にしてやるぜ。クハハ!」

 俺とアマリの子、という衝撃の事実にアオは驚きもせず「なるほど」と一言っただけだった。

「悪魔とインテリジェンスウェポンの間からは、魔法の武器が生まれると」

「ああ、俺はてっきり普通に子供が生まれると思ってたんだがよ、アマリの腹が凹んだと思ったら、テーブルの上にこれがあったんだわ。因みにこの脇差はアマリみたいな人格はねぇ」

「ちょっと【知識の欲】で、その脇差を視てもいいですか?」

「構わねぇぜ」

 アオが脇差を鑑定している間に、俺はレッドの報告をちゃんと聞いてやる事にした。

「・・・は、魔法の武器でも魔法もダメで、圧倒的な力で物理的に壊すしかないってよ」

 話を聞いてなかったので、俺はもう一度レッドに聞き直す。

「何が魔法の武器も魔法もダメなんだ?」

「コズミックノートを守っているダイアモンドゴーレムだよ。聞いてなかったのか?」

「ダイアモンドなら火で焼けばいいだろ。消えて無くなるぞ」

「魔法を弾くから無理なんだってば」

「あほか、お前。だったら魔法ではない火を使えばいいだろうが」

「!!」

 レッドは「そうか!」という顔をして手を叩いたが、ブラックが俺の意見に首を振った。

「大きなダイアモンドの塊を燃やし尽くすほどの炎を、どうやって発生させるんだよ」

「・・・確かにそうだな。ダイアモンドは100℃くらいじゃ燃えないだろうしよ。石炭でも敷き詰めて火をつけるって手もあるが、その準備をしている間、ゴーレムが大人しくしてくれるとは限らねぇしな。油とか使ってもしコズミックノートに燃え移ったら最悪だ」

「まぁ俺らが思いつくような事は、先輩冒険者がやってると思うぜ」

 イエローがそう言うとモモも頷いた。

「コズミックノートに辿り着いた冒険者は皆、実力のある人たちばっかりだったしぃ、話によるとダイアモンドゴーレムを少し砕くだけでも、コズミックノートは実力を認めてくれるみたいだよ。こればっかりは自力でなんとかしないとダメなんじゃないかなぁ」

 クソ雑魚どもにそれができるなら、俺にもできるってこった。

「まぁなんとかなるだろうよ。ところでアオ、俺の子供の鑑定は終わったか?」

「そ、それが。私の実力が足りなくて何もわかりませんでした」

 まぁ急にレベルアップしても【知識の欲】の練度は低いままだから仕方ねぇか。しょんぼりするアオの頭を撫でて気にするなと言い、俺は席を立つ。

 それからテーブルの上に置いていた脇差を持つと、鞘に納めてベルトに挟んだ。別にそうする必要はねぇけどな。魔法武器は浮遊しながら持ち主の体に密着するからよ。

「じゃあ地下十階のコズミックノートんとこまで行くぞ、お前ら」




「右や~左の旦那様~」

「それは物乞いの口上だから! 私たちは売り子でしょ!」

 リンネは隣に立つクール系美少女に、裏手でツッコミを入れると客がドっと笑う。

「んんん、ところで皆さんッ! 体を洗う時に何をお使いですかなッ?」

 黒髪のレッサーオーガは、喋る度に奇妙なポーズをとるのでマントが翻る。

 その翻ったマントの中から白い肌と黒いビキニが見え、様々な種族の男性がそれを密かに楽しんでいた。

 体を何で洗っているのかと黒髪の美少女に指を刺された地走り族の男は、袖で素早く鼻血を拭いて答える。

「俺? 俺は毎日アワダチカズラで体を洗ってるぜ! へへっ!」

 アワダチカズラという植物は葉、茎、根を叩き潰すと洗剤のような効果がある粘液を出すので、体や頭を洗うためのアイテムとしてそこかしこで売られている。

 地走り族の男は、綺麗好きアピールができて自慢げな顔をしていると、黒髪マントの美少女は大きな胸を揺らして笑いだした。

「ぬはッ! 失礼ながらッ! プーーークススス! アワダチカズラですかッ! 時代遅れッ! 圧倒的時ッ! 代遅れんぬッ!」

「な、なんだと! じゃあ何が時代の最先端だっていうんだよ! え!」

 ムキになる地走り族が欲しい答えを出したので、彼をなだめるように抱きしめて美少女は笑顔を見せる。その笑顔に魅了されない男は、皆無だと言っていい。

 絶世の美女とはこの少女の事だ。心の芯まで魅了されはじめた男たちは、黒髪の少女を食い入るように見ている。

「よくぞ聞いてくれましたッ!」

 美少女の大きな胸に挟まれる地走り族を見て、他の男たちが嫉妬で小さく舌打ちをする。

「はわぁ・・・。桃源郷・・・」

「ちょっと、ビャクヤ。やりすぎ」

 リンネがたしなめると、ビャクヤと呼ばれた美少女は「おっと!」と言って地走り族を無下に放り投げた。

 地面に放り出された地走り族を見てスカっとしたのか、野次馬の男たちはまたドッと笑う。

「さて、皆さん。ここに取り出したる石鹸はッ! っと、その前に・・・、皆さんは石鹸をお知りですか?」

「オラ、知らねぇ!」

 犬人がそう答えて鼻をスンスンさせる。

「でもそれ、良い匂いがするな! それになんだか美味そうな見た目だ!」

「確かに美味しそうではありますがッ! 食べない方が良いでしょうッ! この石鹸は体や顔を洗う物ですからッ!」

「汚れは綺麗に落ちるのか?」

 犬人は何かの作業をした後なのか、手が汚れていた。

 それを見たリンネが、屋台の下から木桶に入った水を出した。

「早速石鹸を使ってみてはいかがでしょうか? まずは普通に洗ってどの程度汚れが落ちるか試してみてください」

 リンネに言われて犬人は取り敢えず木桶の水に手を入れて手を洗ってみる。水は見る見る黒くなるも、犬人の毛むくじゃらの手にはまだ汚れが残っていた。

「では失礼して」

 ビャクヤが石鹸を泡立てて、その泡の付いた手で犬人の手を包み込む。

「大きくて逞しい手ですねッ!」

 クールビューティ系の美少女の黒い目に見つめられながら、手を洗ってもらっている犬人は、舌を出してハッハと喜んでいる。

「気持ちいいワン・・・」

「見て下さいッ! 皆さんッ! しつこかった汚れが落ちて、こんなに綺麗に!」

 周りからは良い目に遭う犬人に嫉妬する男の野次が飛ぶが、当の犬人は幸せそうな顔をして、この至福の時間よ永遠に続けと願っていた。

 が、終わりは直ぐにやって来る。

 ビャクヤは犬人から手を離して、自分用の水桶に手を入れて泡を水で落とすとハンカチで拭く。そして笑顔のまま犬人に顔を寄せてから囁いた。

「ここまでやったんだ、勿論石鹸を買うよなぁ? ノビータ」

 美少女の豹変ぶりに犬人はビクリとしたが、暫くしてから尻尾を振り緩い顔になった。彼女が自分の名前を知っている事がとても嬉しいのだ。

「なぜオラの名を?」

「こまけぇこたぁいいんだよ。買うよなぁ? ノビータ」

 キリマルの口調を意識して、ビャクヤがそう言うと犬人はビシッと敬礼をする。

「は、はぃぃ! お姉様! 勿論、十個ほど買わせていただきますワン!」

「お買い上げありがとうございま~すッ! 千銅貨一枚になりまんもすッ!」

 犬人は値段に一瞬戸惑ったが、素直に財布から千銅貨を一枚だしてビャクヤに渡した。

 値段を聞いていた近くの猫人が顎を撫でた。

「一個百銅貨か・・・。アワダチカズラが十個買えるな・・・。だがっ! 俺も買うぜ!」

 ビャクヤが地走り族の男の時と同様に犬人にもハグしたので、男たちは石鹸を買えばハグしてもらえると思ったのか長い列を作る。

 列ができると、他の通行人も何事かと思って列に並ぶので列は余計に長くなった。

 ビャクヤは石鹸を買ってくれた人が、男だろうが女だろうがハグをする。

 時々胸を触って逃げていく男もいたが、ビャクヤは魔法で変身しているので、偽りの胸を触られたところでなにも感じない。

 そうこうしている間に千個ほどあった石鹸は売り切れてしまった。

「凄い・・・。千個売れと言われた時は絶望したけど、あっという間に売れたね! ビャクヤ!」

「吾輩、アンデッド退治以外ならッ! なんだってできてしまう天才ですからッ!」

 そうだったかしら? 他にも苦手があったような・・・、とリンネは思いつつも売上金の入った袋を、屋台備え付けの魔法の金庫に入れて扉を閉めた。

 ちゃんと売り子をしているかどうかを見回りに来ていた依頼主の使いは、短時間で石鹸が売り切れた事を驚き疑ったが、金額が合わないとブザーが鳴る魔法の金庫が静かなので二人を信じた。

「ごくろうさん。ポルロンドはアワダチカズラの生産地で、石鹸が中々普及しなくて困っていたんだ。君たちのお陰で今後も売れるような気がするよ。はい、これね」

 使いの地走り族の男から依頼達成票を貰うと、ビャクヤとリンネはそのまま冒険者ギルドまで歩いた。

「路地裏を通りましょう。近道ですからッ!」

 もうこの町の作りを把握しているビャクヤに驚きながらも、リンネは疲れていたので頷く。

「ポルロンドは治安がいいから大丈夫だと思うけど、強盗とかでないよね?」

 暗い路地はやはり不安なのかリンネは、まだ美少女の姿をするビャクヤの腕にしがみ付いた。

「吾輩がいるのですから安心してくださいッ!」

「でもビャクヤはまだ女の子の格好しているし、女二人でこんなところを歩いていると・・・。その・・・、花売りに思われないかしら?」

 路地裏の隅で人生の落後者たちが目を光らせてこちらを見ている。

「ってかいい加減変身を解きなさいよ」

「んんん! そうしたいのは山々ですがッ! この【変装】の上位魔法【完璧なる変装】は見破られたりしないというメリットがあるのですが、時間が来るまで解けないというデメリットがあるのですッ!」

 そんな話をしていると、暗い壁際に座っていた浮浪者がおもむろに立ち上がってズボンをずり下げた。

「やだ! あの人、勃起してるッ!」

 ビャクヤが浮浪者の下半身のそれにすぐに気が付いて、乙女らしく驚いてみせる。

「うぇ・・・」

 リンネが何日も体を洗ってなさそうな浮浪者から少し距離を置く。

「姉ちゃんたち。俺は金はねぇがイイモン持っているだろう? 使わせてやってもいいぜ?」

「は? 貴方がそうしたいのではッ? もう少し劣情を制御してみてはッ! いかがでしょうかッ!」

「うるせぇ! 俺は溜まりに溜まってんだ! お前らがスッキリさせぃ!」

 いきり立つそれの竿を握って浮浪者は襲い掛かってくる。本能でビャクヤが女ではないと感じ取ったのか、或いはリンネの方が好みだったのか、浮浪者はビャクヤの横を通り過ぎてリンネを狙った。

 と同時にビャクヤの変身が解ける。

「しめたッ! そうはさせませんよッ!」

 ビャクヤは素早く股間からいきり立ったイチモツを取り出し、剣のように構えて浮浪者のそれと鍔迫り合いを始めた。

 ハエが周囲を飛ぶ浮浪者は、黄色くなった歯を見せてニカッと笑う。

「ほぉ! おめぇさん、中々良い物持ってんじゃねぇか!」

 カキーンと音をさせてペニス同士で叩き合い、なぜか火花まで散っている。

 彼らにしてみれば、雄々しいペニスでの格好良いチャンバラをしているつもりだが、傍から見れば狭い路地裏でせせこましく竿合わせをしているだけにしか見えない。

 その肉棒の剣戟が繰り広げられる後ろで、リンネは二人を白眼視していた。

(なにやってんのかしら、この二人・・・。さっさと冒険者ギルドに帰ろっと・・・)
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