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越境
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「あれは相当気持ちがいいのだろう?」
纏わりつくようにして見上げるエストに、ビャクヤは焦っていた。昨夜のセックスの話をエストがしているのだと直ぐに気付いたからだ。
「あ、ああいう事はッ! 前にも言いましたようにッ! エストがもう少し大きくなってからッ! 恋人とやる事なのデスッ!」
昨夜の行為を一部始終見られていた事に、ビャクヤもリンネも激しく後悔した。なぜ茂みや木陰に隠れてしなかったのかと。我慢できなくなってエストの目の届く範囲でやってしまったのは失敗だった。
「私だって気持ちよくなりたい! それにリンネはなにもしていないのに、ビャクヤからご褒美をもらえるのはずるい!」
リンネが溜息をつきながらエストを諭す。
「はぁ・・・。エストは性知識が無さ過ぎで困るわね。そういう知識は読み物や友達から得ていたでしょ? 今までどうしていたの?」
「友達なんていなかったし、読み物は騎士の典範と算数の教科書だけだ」
エストの可哀想な境遇にビャクヤは同情したが、空気を暗くさせまいと冗談を言ってみる。
「流石は商売人の国、グラス王国出身者。騎士も計算ができるように勉強しているとはッ! 吾輩、算数の教科書を見るたびに、数字の3が横向きのお尻に見えてましたよッ! プススッ!」
「どうでもいいわよ、そんな話。まぁエストは相当な箱入り娘だったのはわかったわ。で、今頃になって性に目覚めちゃったってわけね。でも知識がないから誰にでもそれを求める。見捨てておけないわ」
「いらん世話は焼くな。私だってビャクヤが気に入っている! だから私もビャクヤと昨夜のような事をしていいはずだ!」
「駄目よ。ビャクヤは私のものなの!」
「一夫多妻など珍しくはない! ビャクヤを二人でシェアすればいいだろうが!」
「呆れた! それだとエストはビャクヤと結婚するみたいな感じになるじゃない! 駄目よ! ビャクヤは私一人だけのもの!」
「まぁまぁ。二人ともッ! 吾輩を巡っての喧嘩は止してくださいッ!(いと嬉しッ!)そろそと樹族国の国境が見えてきますよ」
ビャクヤは国境の建物の前に先日リンネが眠らせた、グラス王国の騎士三人がいる事に気が付いた。
「ストップ。茂みに隠れて下さい」
三人が急いで茂みに隠れると騎士の声が聞こえてきた。地走り族は成人男性でも声が子供のようなので緊迫した状況でも緊張感がない。
「グラス王国第三騎士団ブンダ・ボンダだ。グラス王国の領主ロゲン侯爵から越境の許可は貰っている。通してもらうぞ」
それに対応する国境警備をする樹族が、見下した目で地走り族の騎士を鼻で笑う。
「貴様の国の一領主が許可を出したからといって、どうだというのだ? 通すかどうかを決めるのは樹族国側だ。正直言うと、君たちが樹族国に入国できる可能性は低い。どこの国だってそうだが 事前の通達もなく、緊急性もない他国の軍人を入国させる事などない。それに東リンクスに当然のようにグラス王国の騎士がいるのはどういう事だ?」
茂みの中で声を潜めながら、西の大陸の事情を知らないリンネがビャクヤに訊く。
「なんだか樹族国とグラス王国の騎士は揉めてるみたいだね」
「樹族国は南の反抗的な獣人国リオンとは仲が悪いですがッ! 西のリンクス共和国は大昔に、元々樹族国にいた獣人達が移住して作った国ですからねッ! 特にお互い悪感情はなく敵対もしていないのですッ! 樹族国はポルロンドの件を、モティとグラスの策略だと知っており、あまりいい顔はしていないのが実情ですッ! あの二国は樹族国でも何か悪さをするのではという危機感がありますからッ! 実際ッ! 樹族国の宗教庁は既にモティに牛耳られておりますしッ!」
「えっ! じゃあ樹族国も危ないじゃん」
「そこはほらッ! ヒジリ様がおりますゆえッ! 僧侶たちも国を助けてくれた恩人に、敵対するわけにはいかないでしょう? それに樹族国は心底ヒジリ様に心酔している聖職者だらけなのでッ! モティの手の内にありながらヒジリ様に対するッ! 理不尽な命令や要求は突っぱねている状態なんです。いや寧ろッ! ヒジリ様の言う事ならなんでも聞いていますねッ! ヒジリ様の提案で奴隷制度を廃止した時も彼らの協力があったからです」
「流石だな、我が神は」
エストが自分の事のように自慢げな顔をして頷いた。
「とはいえ、モティは今も暗殺者をヒジリ様に送っていますけどね」
「なに! では早く助けに行かねば!」
「ぷフフッ! ヒジリ様を助けるだなんて傲慢な発言ですよ、エストッ! あの方は尽く暗殺者を追い返したり、ねじ伏せたり、戦闘不能にしたりしてしまいます。更にウメボシ様の催眠術で人殺しができないようにしたりと、モティの暗殺が成功した事はありません」
「益々憧れが強くなった! 私はきっと現人神の盾になってみせるぞ!」
うんうんと微笑みながら頷くビャクヤだったが、現人神の盾はぐうたら聖騎士のフラン様がなるから君はなれないと心の中で思った。
「貴様ぁ! 外交問題になっても知らんぞ!」
怒声を上げるグラス王国騎士に対して、国境の騎士はニヤニヤしている。
「君たちこそ外交問題を起こしそうだがね。モティとグルになってリンクス共和国を分断したツケを、いつか払う事になるのでは? 優秀なる諜報員”裏側“のいる我が国が、君たちの悪行を知らないとでも思ったか?」
「くっ!」
地走り族の騎士たちは、それ以上何も言い返さずに足早に来た道を引き返していった。
「ハハッ! 馬鹿め。いい気味だな」
エストはそう言って笑っているが、ビャクヤは頭を悩ませていた。
「笑っていられるのも今の内ですよ。次は我々の番なのですからッ! エストは身分証をお持ちで? 越境許可証は? 我々はノーム国で貰ったものがありますが・・・」
「ない!」
「でしょうな・・・」
「そうだ! ビャクヤが恰幅の良い樹族に化ければいいよ」
リンネが提案するとすぐにビャクヤが彼女の意図を察する。
「なるほど、エストを抱きかかえて越境するわけですなッ! 幻術で抱き着いたエストが脂肪を蓄えた大きなお腹のように見えるわけですかッ! 賢きかなッ! リンネッ!」
「えへへ。ん」
リンネはご褒美のキスをビャクヤにせがんだ。それも口を半開きにして可愛い舌を出している。ディープキスをしろという事だ。
「もう~。ほんとリンネは甘えん坊さんになりましたねぇ!」
ビャクヤも仮面を外し、目を瞑ってリンネの舌を迎えにいったが・・・、違和感がある。舌がもう一枚増えたのだ。
「ん? なんだ? これはキスのテクニックの一つなのですかな? レロレロ。明らかに舌が二つあるレロ。ははぁ、さてはキリマルみたいにリンネは分身しているのですねッ!? ってそんなわけあるかーいッ!」
皆茂みにしゃがんでいたので勿論、背の低いエストでも二人の顔に自分の顔を近づける事ができる。
そう、エストは二人のキスに参加していたのだ。
「これは特に気持ちよくないな。唾臭いだけだ」
そう吐き捨てるエストの横で、リンネがなぜかビャクヤに怒りを向ける。
「びゃぁくやぁぁ!」
「なんでッ!? 吾輩はッ! 悪くないッ!」
電撃の手を受けそうになったビャクヤにエストが抱きついた。なのでリンネは電撃の手を止めてそっぽを向いた。
「助かった・・・」
「早く変身しろ、ビャクヤ。樹族国に行くぞ」
しかし恰幅のいい樹族の腹になる予定のエストの革のズボンが突っ張るせいか、上手く脚が広がらず、さらにつるつるとしているのでずり落ちてしまう。
エストはズボンを脱ぐと下半身だけ下着姿になった。それからもう一度ビャクヤに抱き着くとビャクヤの腰の横に浮く頑丈な魔法のポーチに、丁度脚が絡めやすくなり満足してウムと頷く。
「リンネ、ズボンとブーツを持て」
「なによ、偉そうに」
ブツブツ言いながらリンネはエストの革のズボンとブーツを拾って手に持った。
「それでは変身しマンモスッ! 恰幅の良いおじさんにな~れッ! 【変身】ッ!」
「そんな適当な詠唱するのって、ビャクヤぐらいよね・・・」
ポワンと煙が立つとそこには樹族には珍しい、恰幅の良い男爵ひげの男が現れる。
「あっひゃ。これでいいでしょう。どうです? お腹からエストははみ出ておりますかな?」
幻術の範囲から出ると勿論エストは見える。しかし、かなりのお腹が出ているので余裕をもって隠れられる。
「はみ出てないわ。問題なし!」
「あっひゃ。オーケーホーケー! 誰が包茎だッ! それでは行きますか」
「なにその笑い方・・・。気持ち悪い」
「気持ち悪いとは何ですかッ! 呑気そうな感じが出ていいでしょうが!」
「ふん。まぁそう言う事にしといてあげるわ」
リンネは機嫌が悪い。ツンデレの頃のツンが出てきている。エストが尽くビャクヤとの仲を邪魔するので怒りが蓄積しだしたのだ。
二人が国境の建物に近づくと、如何にも典型的な樹族と言った感じの緑の髪に緑の瞳の騎士が、ワンドを手に持って現れる。
彼の緑の瞳はリンネばかりを見ていた。ここ最近急激に増したリンネの色気に魅了されているのかと思ったがそうではなかった。
「ほう、珍しいな。レッサーオーガの召使いか。レッサーオーガは樹族国でも稀に見かけるが、その殆どが魔犬や強盗に殺されて道端に転がっている。生きている個体を見たのは初めてだ」
「はい。苦労したのですよ、彼女を召使いにするのは。騎士様の言う通り、中々いませんからねぇ。あっひゃ」
「だろうな。では身分証と許可証を提示してくれたまえ」
ビャクヤが二人分の書類を出すと、騎士の目が大きくなった。
「なに? ノーム国の者だと? これはレッサーオーガの召使いよりも珍しい! では貴方はノームから尊敬されているという事か?」
ノーム国の国籍を取る方法は二つ。難民として申請して狭き門を突破するか、ノームが興味を持つ研究材料や課題を提供するか。後者は樹族国の有名なウィザードでも難しい。なにせノーム達はあらゆる知識に通ずるからだ。
(上位種族でありメイン種族でもある我ら樹族が、難民申請することはまずない。となれば、この恰幅の良い髭の樹族はノームの知らない何かを見せたのだろう)
驚きと尊敬の色を目に浮かべる騎士を見て、ビャクヤは調子に乗った。
「あっひゃ! さよう。吾輩、彼らが見た事もない植物の種子とその活用法を提供したのだ。そして彼らにその研究の権利をくれてやったらッ! なんと! 泣いてひれ伏し、感謝を述べてきたのだよ」
「なんですと! あの気まぐれで礼節も知らないノームがそこまで!」
とは言いつつも、樹族は無意識下でノームが自分たちより優ている存在だと感じている。なのでそのノームの尊敬を勝ち得た目の前の男を、騎士は誇らしく思った。
「ええ・・・。あっひゃあっ!!」
突然ビャクヤが目を白黒させて叫んだ。
「どうされましたかな? ビャクヤ・ウィン殿」
「い、いえ、蚊に刺されたのだッ! 大きなやぶ蚊でもいるのかな。チクリとしましてね」
エストが股間をまさぐっているので変な声を上げてしまったのだ。
「ああ、まだ夏が終わったばかりで蚊はどこにでもいますからねぇ。ノームをひれ伏させたお方を待たせて、蚊の餌食にするのも悪い。入国の手続きを早く終わらせましょう。一応規則なので聞いておきますが、滞在期間は?」
「アルケディアの観光ですからッ! 一週間といったところですなッ! ぐひっ!」
いちもつがビキニパンツから取り出された感覚にビャクヤは冷や汗をかく。
暫くするとエストの小さな手がぎこちなく竿を扱き始めた。
(んんん聞けッ! 吾輩のアームストロング砲ッ! 勃起するなッ! 12歳の少女の手で勃起させられるなんて恥ずかしい事だぞ! ビャクヤッ! アッ!)
自分を戒めようとすればするほど、意に反してビャクヤのそれは大きくなっていく。
「(うん? ビャクヤ殿はまた蚊に刺されたようだ。手続きを急ごう)まぁ言うまでもありませんが、わが国ではノーム国人の滞在は観光のみです。政治的な活動や不法滞在等・・・。いや言わなくてもいいですね。そんなことをするノーム国人を見た事がない。ではスタンプを押してと・・・。ようこそ樹族国へ! よい観光を!」
「ありがとう、ハウッ!」
こうして難なく樹族国に入国できたビャクヤだが、騎士が見送っている間はエストの攻撃から逃れられない。
情けなくも勃起してしまった自分のイチモツに、エストはどうやって脱いだのか生の股間を擦りつけている。
(ここでエストを注意すればッ! リンネに見つかってしまうッ! かと言ってこのままではエストは吾輩のイチモツを自分のアソコに入れてしまうでしょうッ! アァ! 神様!どうしたらいいのですか! ヒジリ様!)
しかし祈り虚しく、エストは快楽に小さな喘ぎ声を漏らし始めた。
纏わりつくようにして見上げるエストに、ビャクヤは焦っていた。昨夜のセックスの話をエストがしているのだと直ぐに気付いたからだ。
「あ、ああいう事はッ! 前にも言いましたようにッ! エストがもう少し大きくなってからッ! 恋人とやる事なのデスッ!」
昨夜の行為を一部始終見られていた事に、ビャクヤもリンネも激しく後悔した。なぜ茂みや木陰に隠れてしなかったのかと。我慢できなくなってエストの目の届く範囲でやってしまったのは失敗だった。
「私だって気持ちよくなりたい! それにリンネはなにもしていないのに、ビャクヤからご褒美をもらえるのはずるい!」
リンネが溜息をつきながらエストを諭す。
「はぁ・・・。エストは性知識が無さ過ぎで困るわね。そういう知識は読み物や友達から得ていたでしょ? 今までどうしていたの?」
「友達なんていなかったし、読み物は騎士の典範と算数の教科書だけだ」
エストの可哀想な境遇にビャクヤは同情したが、空気を暗くさせまいと冗談を言ってみる。
「流石は商売人の国、グラス王国出身者。騎士も計算ができるように勉強しているとはッ! 吾輩、算数の教科書を見るたびに、数字の3が横向きのお尻に見えてましたよッ! プススッ!」
「どうでもいいわよ、そんな話。まぁエストは相当な箱入り娘だったのはわかったわ。で、今頃になって性に目覚めちゃったってわけね。でも知識がないから誰にでもそれを求める。見捨てておけないわ」
「いらん世話は焼くな。私だってビャクヤが気に入っている! だから私もビャクヤと昨夜のような事をしていいはずだ!」
「駄目よ。ビャクヤは私のものなの!」
「一夫多妻など珍しくはない! ビャクヤを二人でシェアすればいいだろうが!」
「呆れた! それだとエストはビャクヤと結婚するみたいな感じになるじゃない! 駄目よ! ビャクヤは私一人だけのもの!」
「まぁまぁ。二人ともッ! 吾輩を巡っての喧嘩は止してくださいッ!(いと嬉しッ!)そろそと樹族国の国境が見えてきますよ」
ビャクヤは国境の建物の前に先日リンネが眠らせた、グラス王国の騎士三人がいる事に気が付いた。
「ストップ。茂みに隠れて下さい」
三人が急いで茂みに隠れると騎士の声が聞こえてきた。地走り族は成人男性でも声が子供のようなので緊迫した状況でも緊張感がない。
「グラス王国第三騎士団ブンダ・ボンダだ。グラス王国の領主ロゲン侯爵から越境の許可は貰っている。通してもらうぞ」
それに対応する国境警備をする樹族が、見下した目で地走り族の騎士を鼻で笑う。
「貴様の国の一領主が許可を出したからといって、どうだというのだ? 通すかどうかを決めるのは樹族国側だ。正直言うと、君たちが樹族国に入国できる可能性は低い。どこの国だってそうだが 事前の通達もなく、緊急性もない他国の軍人を入国させる事などない。それに東リンクスに当然のようにグラス王国の騎士がいるのはどういう事だ?」
茂みの中で声を潜めながら、西の大陸の事情を知らないリンネがビャクヤに訊く。
「なんだか樹族国とグラス王国の騎士は揉めてるみたいだね」
「樹族国は南の反抗的な獣人国リオンとは仲が悪いですがッ! 西のリンクス共和国は大昔に、元々樹族国にいた獣人達が移住して作った国ですからねッ! 特にお互い悪感情はなく敵対もしていないのですッ! 樹族国はポルロンドの件を、モティとグラスの策略だと知っており、あまりいい顔はしていないのが実情ですッ! あの二国は樹族国でも何か悪さをするのではという危機感がありますからッ! 実際ッ! 樹族国の宗教庁は既にモティに牛耳られておりますしッ!」
「えっ! じゃあ樹族国も危ないじゃん」
「そこはほらッ! ヒジリ様がおりますゆえッ! 僧侶たちも国を助けてくれた恩人に、敵対するわけにはいかないでしょう? それに樹族国は心底ヒジリ様に心酔している聖職者だらけなのでッ! モティの手の内にありながらヒジリ様に対するッ! 理不尽な命令や要求は突っぱねている状態なんです。いや寧ろッ! ヒジリ様の言う事ならなんでも聞いていますねッ! ヒジリ様の提案で奴隷制度を廃止した時も彼らの協力があったからです」
「流石だな、我が神は」
エストが自分の事のように自慢げな顔をして頷いた。
「とはいえ、モティは今も暗殺者をヒジリ様に送っていますけどね」
「なに! では早く助けに行かねば!」
「ぷフフッ! ヒジリ様を助けるだなんて傲慢な発言ですよ、エストッ! あの方は尽く暗殺者を追い返したり、ねじ伏せたり、戦闘不能にしたりしてしまいます。更にウメボシ様の催眠術で人殺しができないようにしたりと、モティの暗殺が成功した事はありません」
「益々憧れが強くなった! 私はきっと現人神の盾になってみせるぞ!」
うんうんと微笑みながら頷くビャクヤだったが、現人神の盾はぐうたら聖騎士のフラン様がなるから君はなれないと心の中で思った。
「貴様ぁ! 外交問題になっても知らんぞ!」
怒声を上げるグラス王国騎士に対して、国境の騎士はニヤニヤしている。
「君たちこそ外交問題を起こしそうだがね。モティとグルになってリンクス共和国を分断したツケを、いつか払う事になるのでは? 優秀なる諜報員”裏側“のいる我が国が、君たちの悪行を知らないとでも思ったか?」
「くっ!」
地走り族の騎士たちは、それ以上何も言い返さずに足早に来た道を引き返していった。
「ハハッ! 馬鹿め。いい気味だな」
エストはそう言って笑っているが、ビャクヤは頭を悩ませていた。
「笑っていられるのも今の内ですよ。次は我々の番なのですからッ! エストは身分証をお持ちで? 越境許可証は? 我々はノーム国で貰ったものがありますが・・・」
「ない!」
「でしょうな・・・」
「そうだ! ビャクヤが恰幅の良い樹族に化ければいいよ」
リンネが提案するとすぐにビャクヤが彼女の意図を察する。
「なるほど、エストを抱きかかえて越境するわけですなッ! 幻術で抱き着いたエストが脂肪を蓄えた大きなお腹のように見えるわけですかッ! 賢きかなッ! リンネッ!」
「えへへ。ん」
リンネはご褒美のキスをビャクヤにせがんだ。それも口を半開きにして可愛い舌を出している。ディープキスをしろという事だ。
「もう~。ほんとリンネは甘えん坊さんになりましたねぇ!」
ビャクヤも仮面を外し、目を瞑ってリンネの舌を迎えにいったが・・・、違和感がある。舌がもう一枚増えたのだ。
「ん? なんだ? これはキスのテクニックの一つなのですかな? レロレロ。明らかに舌が二つあるレロ。ははぁ、さてはキリマルみたいにリンネは分身しているのですねッ!? ってそんなわけあるかーいッ!」
皆茂みにしゃがんでいたので勿論、背の低いエストでも二人の顔に自分の顔を近づける事ができる。
そう、エストは二人のキスに参加していたのだ。
「これは特に気持ちよくないな。唾臭いだけだ」
そう吐き捨てるエストの横で、リンネがなぜかビャクヤに怒りを向ける。
「びゃぁくやぁぁ!」
「なんでッ!? 吾輩はッ! 悪くないッ!」
電撃の手を受けそうになったビャクヤにエストが抱きついた。なのでリンネは電撃の手を止めてそっぽを向いた。
「助かった・・・」
「早く変身しろ、ビャクヤ。樹族国に行くぞ」
しかし恰幅のいい樹族の腹になる予定のエストの革のズボンが突っ張るせいか、上手く脚が広がらず、さらにつるつるとしているのでずり落ちてしまう。
エストはズボンを脱ぐと下半身だけ下着姿になった。それからもう一度ビャクヤに抱き着くとビャクヤの腰の横に浮く頑丈な魔法のポーチに、丁度脚が絡めやすくなり満足してウムと頷く。
「リンネ、ズボンとブーツを持て」
「なによ、偉そうに」
ブツブツ言いながらリンネはエストの革のズボンとブーツを拾って手に持った。
「それでは変身しマンモスッ! 恰幅の良いおじさんにな~れッ! 【変身】ッ!」
「そんな適当な詠唱するのって、ビャクヤぐらいよね・・・」
ポワンと煙が立つとそこには樹族には珍しい、恰幅の良い男爵ひげの男が現れる。
「あっひゃ。これでいいでしょう。どうです? お腹からエストははみ出ておりますかな?」
幻術の範囲から出ると勿論エストは見える。しかし、かなりのお腹が出ているので余裕をもって隠れられる。
「はみ出てないわ。問題なし!」
「あっひゃ。オーケーホーケー! 誰が包茎だッ! それでは行きますか」
「なにその笑い方・・・。気持ち悪い」
「気持ち悪いとは何ですかッ! 呑気そうな感じが出ていいでしょうが!」
「ふん。まぁそう言う事にしといてあげるわ」
リンネは機嫌が悪い。ツンデレの頃のツンが出てきている。エストが尽くビャクヤとの仲を邪魔するので怒りが蓄積しだしたのだ。
二人が国境の建物に近づくと、如何にも典型的な樹族と言った感じの緑の髪に緑の瞳の騎士が、ワンドを手に持って現れる。
彼の緑の瞳はリンネばかりを見ていた。ここ最近急激に増したリンネの色気に魅了されているのかと思ったがそうではなかった。
「ほう、珍しいな。レッサーオーガの召使いか。レッサーオーガは樹族国でも稀に見かけるが、その殆どが魔犬や強盗に殺されて道端に転がっている。生きている個体を見たのは初めてだ」
「はい。苦労したのですよ、彼女を召使いにするのは。騎士様の言う通り、中々いませんからねぇ。あっひゃ」
「だろうな。では身分証と許可証を提示してくれたまえ」
ビャクヤが二人分の書類を出すと、騎士の目が大きくなった。
「なに? ノーム国の者だと? これはレッサーオーガの召使いよりも珍しい! では貴方はノームから尊敬されているという事か?」
ノーム国の国籍を取る方法は二つ。難民として申請して狭き門を突破するか、ノームが興味を持つ研究材料や課題を提供するか。後者は樹族国の有名なウィザードでも難しい。なにせノーム達はあらゆる知識に通ずるからだ。
(上位種族でありメイン種族でもある我ら樹族が、難民申請することはまずない。となれば、この恰幅の良い髭の樹族はノームの知らない何かを見せたのだろう)
驚きと尊敬の色を目に浮かべる騎士を見て、ビャクヤは調子に乗った。
「あっひゃ! さよう。吾輩、彼らが見た事もない植物の種子とその活用法を提供したのだ。そして彼らにその研究の権利をくれてやったらッ! なんと! 泣いてひれ伏し、感謝を述べてきたのだよ」
「なんですと! あの気まぐれで礼節も知らないノームがそこまで!」
とは言いつつも、樹族は無意識下でノームが自分たちより優ている存在だと感じている。なのでそのノームの尊敬を勝ち得た目の前の男を、騎士は誇らしく思った。
「ええ・・・。あっひゃあっ!!」
突然ビャクヤが目を白黒させて叫んだ。
「どうされましたかな? ビャクヤ・ウィン殿」
「い、いえ、蚊に刺されたのだッ! 大きなやぶ蚊でもいるのかな。チクリとしましてね」
エストが股間をまさぐっているので変な声を上げてしまったのだ。
「ああ、まだ夏が終わったばかりで蚊はどこにでもいますからねぇ。ノームをひれ伏させたお方を待たせて、蚊の餌食にするのも悪い。入国の手続きを早く終わらせましょう。一応規則なので聞いておきますが、滞在期間は?」
「アルケディアの観光ですからッ! 一週間といったところですなッ! ぐひっ!」
いちもつがビキニパンツから取り出された感覚にビャクヤは冷や汗をかく。
暫くするとエストの小さな手がぎこちなく竿を扱き始めた。
(んんん聞けッ! 吾輩のアームストロング砲ッ! 勃起するなッ! 12歳の少女の手で勃起させられるなんて恥ずかしい事だぞ! ビャクヤッ! アッ!)
自分を戒めようとすればするほど、意に反してビャクヤのそれは大きくなっていく。
「(うん? ビャクヤ殿はまた蚊に刺されたようだ。手続きを急ごう)まぁ言うまでもありませんが、わが国ではノーム国人の滞在は観光のみです。政治的な活動や不法滞在等・・・。いや言わなくてもいいですね。そんなことをするノーム国人を見た事がない。ではスタンプを押してと・・・。ようこそ樹族国へ! よい観光を!」
「ありがとう、ハウッ!」
こうして難なく樹族国に入国できたビャクヤだが、騎士が見送っている間はエストの攻撃から逃れられない。
情けなくも勃起してしまった自分のイチモツに、エストはどうやって脱いだのか生の股間を擦りつけている。
(ここでエストを注意すればッ! リンネに見つかってしまうッ! かと言ってこのままではエストは吾輩のイチモツを自分のアソコに入れてしまうでしょうッ! アァ! 神様!どうしたらいいのですか! ヒジリ様!)
しかし祈り虚しく、エストは快楽に小さな喘ぎ声を漏らし始めた。
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