殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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幻想的な射精

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 俺たちが中に入ると、奴隷以外は殆どが致命傷を負って死にかけか、死んでいるかのどちらかだった。

「お前の兄ちゃんは運が良かったな、ステコ」

 俺が笑うとステコは冷や汗を拭いた。

「ほんとだよ。きっとキリマルを襲撃する計画を知って、他から呼び寄せた仲間を案内する役を買ってでたのだろうけど、そのまま逃げたのだと思う」

 確かにちょっとそこまでの使いにしては荷物の量が多かった気がする。

「賢い兄ちゃんだな」

 兄を褒められて少しうれしそうな顔をするステコは、自分の装備の歪みを直している。

「まぁね。昔から兄さんは勝負ごとに強かったから。今回の襲撃はキリマルが勝つと見抜いていたのだよ」

「ほ~(まぁ実際のところ、俺は負けそうになってたがな)」

 中庭の隅で騎士とスキュラに話をするガノダを見ながら休んでいると、マサヨシがひょっこり現れた。

「おめぇどこにいたんだ?」

「拙者? ずーっと部屋で寝てたけど?」

「呑気なもんだな。よくレバシュの部下に殺されなかったな」

「なんかね、拙者は空気みたいな扱いされるんでつよ。どこに行っても」

「地球でもそうだったんだろ? 可哀想にな。クハハ!」

「ひぃ! 同情はやめて! トラウマがッ!」

 頭を抱えて苦しむマサヨシを無視して、俺はガノダを呼ぶ。

「おい! ガノダ! もう出発するぞ!」

 俺の声に気付いたガノダはグラウコスとハグをしてこちらに走って来る。太っちょの割に足は速い。

「悪いね。では行こうか」

「あいつらはどうすんだ?」

 俺はこちらを見る騎士とスキュラを顎で指した。

「この砦で暮らすそうだよ」

「いいのか?」

「まぁ決意は固いみたいだし。グラウコスの事は見なかった事にするよ。まさか自分をさらった化け物に恋をしてしまうとはね・・・」

「なんであいつらはレバシュに干物にされてたんだ?」

「レバシュがグラウコスに一目惚れしたからだよ。でも彼はスキュラの事が好きだろう? 嫉妬したレバシュの一方的な愛が憎しみに変わったってわけさ。よくある話だよ」

「ハ! 下らねぇ」

 話が終わるとトウバが俺の横に立った。俺たちを殺したくてウズウズしているのだろう。爪を出しては入れてを繰り返している。だが奴隷印の力で俺たちを襲う事はできねぇ。残念だったな、クハハ!

「どこへ向かうんだ? 主様」

 主様という言葉には怒気が含まれている。生意気な奴だな。爆発の手でぶっ殺してやろうか。

「お前らの故郷だ」

 獅子人の爪がすっと引っ込んで、声に動揺が混ざる。

「は? な、なんでだ?」

「なんでって言われても、王の盾の娘がそう願うからだ。お前らを故郷に帰したいとな」

「シルビィ・ウォールが?」

 獅子人は少し離れた場所を歩く女騎士を見つめてから、俺に向き直り黙って困惑した。

「ウォール家はどの貴族よりも王に忠誠を誓っていますからなぁ。王が奴隷制度に反対をすれば、ウォール家も反対せざるをえないでしょうな」

 知った風な口をきく豚人がいるなと思ったらマサヨシだった。

「なんでお前もついてきてんだ?」

「なんでって、暇だからでつよ。おふっ」

 そういやこいつも謎の多い豚野郎だな。俺と同じ世界から来た異世界人。

「貴族でもねぇのに、内情に詳しいのはなぜだ?」

「あ、拙者はアルケディアの酒場で雑用として、働いていた時期がありますんで。貴族が一般人のふりをして酒場を利用するなんて事はしょっちゅうでした」

「へぇ。お前の情報は役に立ちそうだな。じゃあついてきてもいいぜ」

「有難き幸せ」

 マサヨシはオフオフ笑いながらお辞儀をした。こいつは、持っている情報以外でも役に立つ男だ。マナがない場所でも周囲にマナを発生させるという支援効果を持っている上に、都合の悪い魔法は弾く。

 中々のチートっぷりだが、戦闘では全く役に立たない。使える魔法が風系魔法【衝撃の塊】だけだ。その名の通り、任意の場所の空気を弾けさせて衝撃を発生させる。

 いつだったか、マサヨシはデスボールみたいな魔法を見せつけていたが、あれも【衝撃の塊】だったんだわ。詠唱を中断していなければ、あの場で弾けていただろう。演出のために使った魔法だったってわけだ。

 自分の身すら守れないマサヨシは、弱いのであっという間に死ぬし、死ぬと自分の世界にある本体に戻ってしまう。次に会えるかどうかは運次第だ。だったら使えるうちに利用しねぇと損だな。

 俺はシルビィたちに声を掛けて集め、通達する。

「いいか、お前ら。この豚人はどんな時でも死守しろ。支援系の能力者だ。特にお前らメイジにとっては重要な存在だからよ」

 ステコとガノダがハンカチを取り出して鼻に当てた。

「この異臭がする豚人がかい?」

「一体どういう能力者なのかね?」

「マナが無い場所でもマナを発生させる能力だ。俺は以前こいつの能力で異空間から脱出できた」

 ドヤ顔で歩くマサヨシを見て、シルビィが鑑定魔法を無断で発動させる。

 しかし、勝手に自分を覗き見をする行為はマサヨシにとって都合の悪い事なのか、シルビィの手で赤く光る魔法は瞬時に消えてしまった。

「ダメだよぉ。シルビィちゃん。相変わらずせっかちさんですねぇ。オフッオフッ!」

「ん? 前からシルビィの事を知っているような口ぶりだな?」

 俺の指摘にマサヨシはあわわと口を閉じる。

(まぁ知っててもおかしくはねぇか。死ぬ度に自分の世界に戻ってまた異世界に旅立つんだもんな・・・。異世界の過去現在未来、どこだって飛べるだろう。ん? まるで俺みたいじゃねぇか。俺は死にはしねぇけど)

「まぁとにかく、こいつは重要だ。【沈黙】の魔法を食らったり、魔法遮断フィールドに入ったら、マサヨシが要となる」

「わかった。常にマサ・ヨッシュを守るとしよう。相手が王族である以上は魔法遮断効果のある広間を作っていてもおかしくはないからな」

「マサヨシな。昨日紹介したばかりだろうが」

 俺のツッコミを無視して、シルビィがウォール家の紋章が付いた盾を掲げた。多分名誉にかけてマサヨシを守るという意味だろう。

「寧ろ、守ってほしいのだがね・・・」

 戦闘に不向きなステコと、その言葉に頷くガノダを見て思う。よくこいつら騎士になれたな、と。


 

 早起きをしたリンネは隣で寝るビャクヤの股間の盛り上がりを見てモジモジしていた。

「またぁ。こんなに大きくして・・・。でもここ最近してないかったから仕方ないよね・・・。わ、私が沈めてあげないと」

 ビャクヤの体に覆いかぶさり―――、ウィン家に先祖代々伝わるマントをそっとめくると、それはビキニパンツから大きくはみ出していた。

 魔人族は体が青黒いせいか、ビャクヤのイチモツがはみ出ていてもぱっと見は違和感がない。体に浮かぶ白い幾何学模様が目を混乱させるのだ。

「エストはまだ寝ているから大丈夫だよね?」

 そう言ってリンネは別の木の洞で寝るエストの様子を探って安心し、ビャクヤの長く硬いそれを口に含む。

 リンネが心配しているのは、子供に見せてはいけない行為をしている事の他に、ビャクヤの変身が解けている事だ。

(早くビャクヤのココを楽にしてあげて、変身が解けている事を教えてあげなきゃ)

 喉奥までビャクヤのものを咥えても、まだ半分ほど陰茎が余っている。

(魔人族の男の人って皆こうなのかな? 何度見ても長さに驚く・・・)

 長い陰茎を扱きながらリンネはカリ首あたりで口を窄めると、ビャクヤの息が荒くなる。彼の気持ちよさそうな仮面の表情を見ていると、自分の股間が湿ってくるのが分かった。

 魔人族は長寿なせいか子供ができる確率は低い。樹族よりも低いと言われている。だからこそ確実に受精させる為に、膣奥で射精する事ができるように陰茎が長いのだ。

(そういえば、ビャクヤって中出ししないよね・・・。出してくれてもいいのに)

 リンネは頭を激しく動かしながら、もう一度エストが眠る木の洞を見た。エストは身動き一つせず眠っている。

(まだ起きてこない・・・、よね?)

 ビャクヤの股間から口を離して、リンネはいそいそとパンツを脱ぐ。

(スカートで隠しながらするから、見つかってもきっと大丈夫よ)

 誰に言い訳するでもなくそう心の中で呟いて、リンネはビャクヤの肉棒に手を添えてゆっくりと自分の陰部に押し付けた。

「あっ・・・」

 思わず声が漏れてリンネは口を手で押さえる。久々に味わうビャクヤのそれは脳天を貫くような快感を下腹から運んできた。

(やだ、気持ち良すぎる。生理前でムラムラしているからかな・・・)

 またエストの眠る樹洞に目をやって彼女が眠っている事をしつこく確認して、リンネは腰の動きを速くした。

(もう我慢できないよ~)

 仰向けで寝ているビャクヤの上で夢中になって腰を振るリンネは、ビャクヤの顔を想像していた。

(ビャクヤは・・・。どんな顔をしているのかな・・・。あっ! もうイキそう・・・。クール系な顔をしてくれてると嬉しいな。その方が私の好みだから・・・・)

 くちゅくちゅと大きな音があたりに響くが、リンネはもう理性が抑えきれなくなっており、音を気にする余裕もなかった。ビャクヤの下腹部に尻を叩きつけるようにして快楽を貪っている。

「ん! イっちゃう!」

 より一層激しく腰を動かした後、リンネはビャクヤに抱き着いて体を激しく震わせた。

「あーーー! あーーー!」

 切ない声を上げるリンネの―――快楽に恍惚し、虚ろとなった青い瞳は、隣でしゃがんでこちらを見るエストを見つけたが、冷静な状態に戻るのは不可能だった。

 じっと冷たい表情で自分を見るエストの視線のせいか、快楽が次から次へと押し寄せてくる。

(やだ・・・。私、子供にセックスをしているところを見られちゃってる! 見ないで! エスト!)

 そう思えば思う程、大波のような快楽が寄せては返し、自分の性癖をリンネは恥じた。

(どうして私はこうなかな。つねられたりすると気持ちいいし、辱めを受けると興奮するし)

 ビクビクと震えつつも視線を外さないリンネにエストは話しかける。

「今日はね、一時のお別れを言いに来た」

 エストはリンネの行為を気にしていない。

「あっあっあっ!」

 リンネの快楽はまだ続いており、返事の代わりに喘ぎ声が出た。

「コズミックペンが私の世界を見つけてしまった。きっと仕返しをしようとしているんだ! 私の世界を塗りつぶして、滅茶苦茶にしようとしているんだよ。だから自分の世界に戻って守らないと。私は世界を消すのは得意だけど作るのはとても骨が折れる。だから自分の世界は絶対守らないとね。でもまた来るよ。だって私はビャクヤに恋をしているのだから。こんなに綺麗な顔をした人は、これまでに見た事がないもの。次に会う日までリンネが好きにしてていいよ。ビャクヤを守ってあげてね」

 そう言ってエストは木の洞から出て行った。

 リンネの快楽はエストがいなくなるまで続き、ビャクヤの股間を愛液まみれにするほどだった。

(エストが・・・どこかに・・・、行っちゃった! ビャクヤに知らせなきゃ)

 気が狂うかと思う程の快楽が静まって、リンネはビャクヤを起こそうとしたが、彼の体の上から離れるだけで精いっぱいだった。

 退くと同時にビャクヤは勢いよく射精し、精液が仮面にかかる。

「ん? 何事ッ! まさか! 夢精してセルフ顔射ッ!? あぁ! なんたることッ!」

 ビャクヤが飛び起きるも、遅れて快楽が襲ってくる。

「ハウッ! 足が震えるほどの快楽ッ! なんですか! これはッ! おぉ!」

 ガクガク震える足元を見るとリンネが上気した顔で倒れている。

「ま、まさか! これはリンネの仕業ッ! なんたるやんちゃ姫か! 寝ている間に吾輩という名のッ! 馬を乗りこなすとは!」

 薄暗かった森に朝日が光を運んできた。冬の弱い朝日ながらも森の地面を木漏れ日が差す。

 快楽に足がふらついてクルクルと踊るように射精するビャクヤを朝日が照らし、朝露と愛液に濡れた魔人族をキラキラと輝かせた。

 もしここに吟遊詩人がいれば歌の題名はこうだっただろう。

『幻想的な射精』
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