殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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核爆発

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(全てを無にするババァか。ってことは相手を瞬時に消したりもできるのか? しかし、ビャクヤに聞いた事があるぞ。本物の神や悪魔はそう長い事、現世に具現化できないし、本来の力を発揮できないと。俺は常に”殺し“という贄を得ているからこの世界に留まれる。こいつの具現化の元となる贄はなんだ?)

 色々考えているうちに、ババァがロングスタッフを振って魔法攻撃をしてきた。

 普通に風属性の【切り裂きの風】だ。意外と正攻法なので俺は驚きを隠せない。簡単に魔法を斬ってアマリをまた鞘に納める。

「どうした? ババァ。俺には魔法は効かねぇぞ」

 自身に苛ついたのか、ニュウは頬を両手で叩いて憤慨した。

「役立たずの体だよぉ! もっと良い依り代を見つけるべきだったね。エストのような体が良かったさぁ!」

(なるほど、Qは具現化なんかしていねぇ。ニュウという使用人に憑依しているだけだ)

「やめろ! ニュウ婆さん! なぜキリマルを攻撃する? 婆さんはワンドリッターの騎士でもなんでもないだろう!」

 トメオが必死に説得するもニュウは返事をせず、俺をずっと睨んでいる。その漬けすぎた梅酒の梅みたいな顔を止めろ。

「あまり焼け焦げた生首は持っていきたくないんだけどねぇ。仕方ないよぉ」

 ババァはロングスタッフを横にして何かを詠唱しだした。その詠唱の一小節を聞いただけでシルビィが驚く。

「【核爆発ニュークリアブラスト】の魔法!」

「馬鹿な! ニュウはただの使用人だぞ! メイジの才能も中の下くらいだ! 十位階の魔法を唱えられるはずがない!」

 トメオが癖毛を震わせて驚いている。樹族は相手の魔力の強さなどをオーラを見てある程度測れるからな。シルビィやトメオには、Qの詠唱が偽物ではない事が理解できるのだ。

「おめぇら核がなんだかわかっているのか?」

 俺は詠唱前にババァを斬ればいいと思っているので、余裕を持って訊いてみた。

「太古の魔法で凄まじい威力の爆発と毒をまき散らす。その毒は長年にわたってその場に残り、人々を蝕むのだ!」

「偉いな。知ってんじゃねぇか。きっと大昔にサカモト博士が、核爆発を魔法で再現する実験でもしたのだろうさ。碌な事しねぇな、あの爺」

「悠長な事を言っている場合か! 私は黙って殺される気はないぞ! 地獄の炎よ! あの老婆を燃やし尽くせ! 【業火】!」

 ワンドの無いシルビィは手をQに向けて横に振った。ワンドがないと威力は半減するが、相手の詠唱を止めるには十分だ。

 しかし魔法はQの前で霧散する。
 
「神属性の者に魔法なんて効きやぁしないよぉ! ヒッヒッヒ! これっぽっちもねぇ。あぁ! それにしてもこの体、全く使えないねぇ。詠唱に時間がかかり過ぎてもどかしいよ!」

「キリマル!」

 シルビィがすがるような目で俺を見ている。昔の少年漫画の主人公のような短い癖毛の赤い髪。気の強そうな短い眉。ウォール一族の特徴である炎のような赤い瞳。

 相変わらず好みの顔だねぇ。だが、こいつは将来ヒジリに惚れる。奴と穴兄弟になるのは絶対に嫌だな。

「奴の詠唱を止めたら頬にキスぐらいくれよ? お前ら」

 最後に”お前ら“という言葉を付けておいた。シルビィだけではなくトメオにもキスをしろという事だ。お陰でアマリはそれほど嫉妬していない。

「そんなものでいいなら何回でもする!」

 トメオがそう言って出来る限りの防御魔法を唱えている。そんなもん、放射能の前では焼け石に水だ。

「ではでは、詠唱が完成する前にババァ殺しますか」

 俺は腰を下ろしてアマリを正面に構える。

「微塵切りとは名ばかりのっ! 白雨微塵切り!」

 最近は俺が必殺技名を言ってしまうのでアマリの出番はない。超高速の瞬歩でQに近づくと俺は夏の夕立のような、激しい縦の斬撃を何度も繰り出す。

「クハハハ! スライスチーズのようになれ! ババァ!」

 技名に微塵切りとあるが、正確には千切りだ。ただ太く鈍い斬撃(その斬撃にも五回分の攻撃が乗る)が敵を何度も切り刻んで肉片が細かくなるから微塵切りなんだわ。

「?」

 手応えが妙だ。柔らかい物を斬って徐々に力を吸収されていく中途半端な感覚。

「なにぃ!」

 俺の攻撃は確かにQに命中しているが、手前にある衝撃吸収ゲルのような壁に遮られて届いちゃいねぇ!

「あたしゃもマサヨシも本当は神様なんかじゃないんだよぉ。だけどコズミックペンのルールがそう認識する。そしてそれなりの力をあたしに与えてくれるのさぁ。残念だったねぇ、キリマルの坊や。あんたは神様にはなれなかった!」

 Qは詠唱中にもかかわらず、ロングスタッフを俺の腹に叩きつけた。

 平凡な魔法使いが詠唱中に、杖で敵を攻撃なんかすれば魔法は中断する、はずだが・・・。

「グヘェ!」

 三下の雑魚が攻撃を受けた時のような声を出して、俺はババァのすぐ近くで両手を地面について痛みに抗う。

「坊やは撃たれ弱いねぇ・・・。非力な婆さんの一撃でもそんなに痛がるなんてさぁ・・・」

 ババァのもう一撃が俺の頭を狙う。二度も食らうか! アホが。

 俺は残像を残して、素早くシルビィたちがいる位置まで飛びずさる。

「さぁ、もう手はないのかい? あたしゃもうすぐ詠唱が終わって【核爆発】の魔法が完成してしまうよぉ?」

 俺はアマリを鞘に納めて構えるのを止める。

「キリマル!」

 構えを解いた俺を見て、シルビィが不安そうに短い眉を下げる。

「私は・・・。父上を見返したいのだ・・・」

 まだここで死にたくないという事か? くそが・・・。涙目の情けねぇ顔も可愛いな・・・。

 俺はあまりしない笑顔を見せて、シルビィを安心させてやる。

「おめぇはここでは死なねぇ。40年後くらいに、突然現れた星のオーガに惚れるんだからよぉ」

「??」

 困惑するシルビィをいつまでも見ていたい気持ちを振り切って、俺はQに手のひらを見せて笑った。

「クハハハ! 悪魔の力を舐めるなよ! 弾けて爆ぜろ! 地面!」

 俺が拳を握るとQの足元が爆発する。俺が無駄に痛がって地面に手をついたのはこういう事だ。

「なんだい?!」

 ババァの脚が弾け飛び、凶悪な魔法の詠唱が中断される。

 しかも俺の爆発はそこで終わらない。

 空いた穴の底の土も爆ぜる。Qはその度に穴に落ち、落ちながら体が爆発で砕け散っていく。

「あたしゃ、諦めないよ!」

 肉片となって喋る事の出来ないはずのババァの声が聞こえてきて、眩い光球が現れた。

 クソな事に、その光球は空に上りながらイタチの最後っ屁を放ちやがった。

「残念だったねぇ! 詠唱はキリマルの起こした爆発と同時に完成していたんだよぉ! 次の依り代を見つけたら、あんたの死体を拾いにくるからさぁ! それまで無事でいるんだよぉ? 【核爆発】!」

 死体に無事でいろとはどういう事だ。まぁ良い状態で死んでろって事だろうな。

 核爆発を間近で受けて良い状態でいるのは無理だろう、ババァ。意外とアホだな。

 成す術もなく立ち尽くす俺たちの真上5メートル辺りで無音の爆発が起こる。
 
 そして世界が白くなったと錯覚するような閃光が辺りを包んだ。
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