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オビオ
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なんでこんな糞みたいな村を占拠してんのかねぇ。
時々カウンターの向こう側で、俺を怖がって速足で歩き去る、青いローブの教団を見る。
俺は既に教団の者を二人も殺しているが、奴らが何かをしてくる様子はない。
(さてさて、今回の物語の主人公は誰だ? まさかこのアホな修道騎士の女じゃないだろうな?)
こいつを殺せばクリアか? だとしたら簡単すぎるな。それにしても村の周りが騒がしいな。誰かが通報して騎士がやって来たのだろう。蹄の音がする。気配から察するに、村に突入しかねているな。
人質の命を気にするなんて、中々良い貴族様じゃねぇか。
「しづれいします」
いきなり集会場に、でっかいオーガが入って来た。
「住民の諸君。このオーガが料理を作ってくれるそうだ。騎士様の気遣いに感謝だな!」
教団員の樹族が、皮肉めいた声で両手を広げて村人に伝えた。
(騎士様の気遣いか。やはり村は騎士に囲まれているってわけだな。それにしても・・・)
俺はオーガを見る。悪魔の目の力でも発動しないかと願ってみたが、そんなに都合よく発動しない。
基本的に割とどうでもいい物を見た時に発動するのだ。石とか木とかな。同じものを何度見ても無理だ。結構な時間をおかないと悪魔の目は発動しない。
こいつはアホのフリをしているがオーガじゃねぇな。オーガはもっとこう、顔の彫りが深い。この平らな顔は俺と同じ地球人だ。だが、でけぇ。ヒジリと同じくらいの身長だな。
(もしかしてこいつ・・・)
「お、おで、ご主人様に言われて食べ物をもっできました。台所はどこでづか?」
教団員は顎で台所を指す。オーガ如きに歩いて案内する気はないようだ。
「あっちだ。自分で行け。それから台所には修道騎士を閉じ込めてある。逃がすなよ? まぁ強力な悪魔に見張らせてあるから、余計な事をした時点でお前は死ぬがな。気を付けたまえ。ハハハ!」
「はい、ご忠告あでぃがとうごだいます」
オーガはお辞儀をするとこっちへ向かってきた。そして結界の効果がある扉を開くと中へ入って来る。扉は開いたままだ。
そのタイミングで寝ていたと思っていた修道騎士メリィは、腕を縛られたままオーガの金玉に頭突きして喚く。
「退いてぇ! オーガさん! あの教団の事、調べないといけないからぁ!」
しかしメリィの努力は虚しく、結界と扉は閉じてしまった。
「おでは料理をしに来ただけなので、騎士様こそ退いてつかーさい」
ほー、料理人か。もしこいつが俺の読み通り、地球人なら和食を頼みてぇな。
「そうだぜ、嬢ちゃん。あまり何度も逃げようとするなら、もっときつく縛り上げなくちゃなんねぇ」
俺がメリィに忠告すると、オーガはジロジロとこちらを見てから、彼女を丸椅子に座らせた。
(こいつも俺が地球人だと気づいたか?)
オーガはやたらと修道騎士にウィンクしている。まぁ普通に考えると助けに来たという合図だろうが、メリィは頬を赤らめて、はにかんだだけだった。ほんとアホな女だな。
オーガも通じなかった事に気付いて、黒い中途半端な長さの癖毛の頭を掻いてから料理に取り掛かった。
まぁ~出るわ出るわ。オーガの無限鞄から日本語の書かれた調理器具が。もう確定だな。
「ひゅ~。その調理器具には日本語が書かれてるな。なんだ、あんたも地球人か。やたらデカいから、普通にこの世界のオーガかと思ったぜ。まぁ所作から滲み出る上品さを見れば、普通のオーガじゃないってのはわかったけどな」
一応褒めておき、敵意がないところを見せておく。本当は人間なんて細切れにして殺してぇんだが情報が欲しい。
「異世界人か?」
流暢な日本語を喋りやがる。
「そういう事になるのか。一応2018年までは東京に住んでいたんだがよ。それ以降は異世界で暮らしてる。あんたも異世界人だろ?」
「ははは、まぁそんなとこ。じゃあ、あんたは召喚契約で嫌々カルト教団に手を貸しているのか?」
ハチャメチャとワクワクと殺意が押し寄せてくるなら、俺は何にだって手を貸すさ。
「そうだ。召喚された時にうっかりと得物を取り上げられてしまってな。まぁ武器が無くても俺は強いんだが、流石に素手で警戒中の魔法使いを相手にしたり、結界を破ったりするのは無理だ。俺の愛刀天邪鬼が手元にあればな・・・」
実際、アマリがいねぇと結界は破れねぇだろうな。何度爆発の手でドアや壁を触っても、衝撃が波紋を作って消えてしまう。
「じゃあさ、もしその刀を持ってきたら、人質救出作戦を手伝ってくれるか?」
性根の優しそうな目が俺を真っ直ぐ見つめてくる。
あぁ、わかったぞ! こいつが今回の主人公だな? どうだ? コズミックペンさんよぉ。こいつを殺せって事か?
「勿論だ。天邪鬼さえあれば結界も壊せるし、刀で魔法をもぶった斬ってみせるさ」
オーガは握手を求めてくる。俺もそれに応じようとしたが、奴の右手に光る指輪を見た途端、悪魔の目が発動した。
(上位鑑定の指輪か。やべぇな。俺が悪魔だとバレてしまう。せっかく魔法のペンダントで、ちゃんとした人間に化け直したのに。・・・樹族に化けても良かったが、いまいちイメージが固まらなかった)
俺は左利きのふりをして、左手を出して握手し、鑑定の指輪の効果を回避する。
こういった類の指輪は意識して使うか、はめた手で鑑定しないと発動しないはずだ。メイジが魔法の指輪を使う時、事前に念みたいなものを籠めてるのを見た事があるしな。
「俺はミチ・オビオ」
ビチクソみてぇな名前だな。
「俺はムラサメ・キリマル。変な名前だろ? アニメが大好きな親が名付けたからよ」
「そんなことないよ、カッコイイ。よろしく。で、あんたはどうする? 修道騎士様」
頭の足りない修道騎士の目が泳いでいる。何がどうなっているのか理解出来てねぇんだ。
「あの・・・事情が飲みこめませ~ん。どぉいう事ですかぁ~?」
「ほら、これ見て」
ビチグソはマントの下の鎧の胸の部分に浮き出るウォール家の紋章を見せた。盾と壁の紋章。絶対に王家を守るといった感じの印象がある紋章だ。
(ほぉ~。シルビィの・・・。王国近衛兵騎士団独立部隊ってのは、地球人をこき使えるほど良い身分になったんだなぁ)
「わぁ、ウォール家の・・・」
まぁ今が何年かは知らねぇが、昔からウォール家は有名だったからなぁ。メリィが驚くのも当然か。
「外にはシルビィ隊の隊員(仮)や王国から派遣された騎士もいる。きっと上手く人質を解放してくれるさ。チャンスが来るまでなんとか頑張ろう」
正義の味方風に恰好を付けてビチグソはそう言ってるが、正義漢というよりはバーのマスターのような色男だな。
多分モテるぞ、コイツ。なんか腹が立つな。今すぐ殺すか? マサヨシがここにいれば、躊躇なく「殺すべし!」とか言いそうだな。いや、もう少しこの世界の様子を見てからでもいいな。
それにしてもシルビィの部下もいるのか。参ったねぇ。あのカワイコちゃんの部下なら殺すのは止めといてやるか。その代わり他の誰かを殺させてもらうからよ。キヒヒ。
俺が誰を殺そうかカウンターの隙間から物色していると、能天気な声を出して修道騎士は手を上げた。
「は~い! チャンスが来るまで待ちま~す」
色男は修道騎士に頷くと俺を見る。髪は黒いが瞳は薄茶色。ゴールデンレトリバーのような優しい目だ。何を考えているかわからないヒジリの真っ黒な瞳とは違う。
「取り敢えず料理を作って配ってる間に、刀をなんとかして手に入れるよ」
助かるねぇ、ビチグソ君。
何となくだが、もうビャクヤのいる世界に近づいているのが分かる。あと一歩ってとこだ。
アマリを手に入れて、さっさとコズミックペンの望む世界を実現して・・・。いや、そうじゃねぇ。何を言ってんだ。ペンに抗うんだろうが、俺は。
「ああ、頼んだぜ」
俺はこれからやる賭けの結果がどう出るかを想像しながら、オビオへ手を振って壁にもたれかかった。
時々カウンターの向こう側で、俺を怖がって速足で歩き去る、青いローブの教団を見る。
俺は既に教団の者を二人も殺しているが、奴らが何かをしてくる様子はない。
(さてさて、今回の物語の主人公は誰だ? まさかこのアホな修道騎士の女じゃないだろうな?)
こいつを殺せばクリアか? だとしたら簡単すぎるな。それにしても村の周りが騒がしいな。誰かが通報して騎士がやって来たのだろう。蹄の音がする。気配から察するに、村に突入しかねているな。
人質の命を気にするなんて、中々良い貴族様じゃねぇか。
「しづれいします」
いきなり集会場に、でっかいオーガが入って来た。
「住民の諸君。このオーガが料理を作ってくれるそうだ。騎士様の気遣いに感謝だな!」
教団員の樹族が、皮肉めいた声で両手を広げて村人に伝えた。
(騎士様の気遣いか。やはり村は騎士に囲まれているってわけだな。それにしても・・・)
俺はオーガを見る。悪魔の目の力でも発動しないかと願ってみたが、そんなに都合よく発動しない。
基本的に割とどうでもいい物を見た時に発動するのだ。石とか木とかな。同じものを何度見ても無理だ。結構な時間をおかないと悪魔の目は発動しない。
こいつはアホのフリをしているがオーガじゃねぇな。オーガはもっとこう、顔の彫りが深い。この平らな顔は俺と同じ地球人だ。だが、でけぇ。ヒジリと同じくらいの身長だな。
(もしかしてこいつ・・・)
「お、おで、ご主人様に言われて食べ物をもっできました。台所はどこでづか?」
教団員は顎で台所を指す。オーガ如きに歩いて案内する気はないようだ。
「あっちだ。自分で行け。それから台所には修道騎士を閉じ込めてある。逃がすなよ? まぁ強力な悪魔に見張らせてあるから、余計な事をした時点でお前は死ぬがな。気を付けたまえ。ハハハ!」
「はい、ご忠告あでぃがとうごだいます」
オーガはお辞儀をするとこっちへ向かってきた。そして結界の効果がある扉を開くと中へ入って来る。扉は開いたままだ。
そのタイミングで寝ていたと思っていた修道騎士メリィは、腕を縛られたままオーガの金玉に頭突きして喚く。
「退いてぇ! オーガさん! あの教団の事、調べないといけないからぁ!」
しかしメリィの努力は虚しく、結界と扉は閉じてしまった。
「おでは料理をしに来ただけなので、騎士様こそ退いてつかーさい」
ほー、料理人か。もしこいつが俺の読み通り、地球人なら和食を頼みてぇな。
「そうだぜ、嬢ちゃん。あまり何度も逃げようとするなら、もっときつく縛り上げなくちゃなんねぇ」
俺がメリィに忠告すると、オーガはジロジロとこちらを見てから、彼女を丸椅子に座らせた。
(こいつも俺が地球人だと気づいたか?)
オーガはやたらと修道騎士にウィンクしている。まぁ普通に考えると助けに来たという合図だろうが、メリィは頬を赤らめて、はにかんだだけだった。ほんとアホな女だな。
オーガも通じなかった事に気付いて、黒い中途半端な長さの癖毛の頭を掻いてから料理に取り掛かった。
まぁ~出るわ出るわ。オーガの無限鞄から日本語の書かれた調理器具が。もう確定だな。
「ひゅ~。その調理器具には日本語が書かれてるな。なんだ、あんたも地球人か。やたらデカいから、普通にこの世界のオーガかと思ったぜ。まぁ所作から滲み出る上品さを見れば、普通のオーガじゃないってのはわかったけどな」
一応褒めておき、敵意がないところを見せておく。本当は人間なんて細切れにして殺してぇんだが情報が欲しい。
「異世界人か?」
流暢な日本語を喋りやがる。
「そういう事になるのか。一応2018年までは東京に住んでいたんだがよ。それ以降は異世界で暮らしてる。あんたも異世界人だろ?」
「ははは、まぁそんなとこ。じゃあ、あんたは召喚契約で嫌々カルト教団に手を貸しているのか?」
ハチャメチャとワクワクと殺意が押し寄せてくるなら、俺は何にだって手を貸すさ。
「そうだ。召喚された時にうっかりと得物を取り上げられてしまってな。まぁ武器が無くても俺は強いんだが、流石に素手で警戒中の魔法使いを相手にしたり、結界を破ったりするのは無理だ。俺の愛刀天邪鬼が手元にあればな・・・」
実際、アマリがいねぇと結界は破れねぇだろうな。何度爆発の手でドアや壁を触っても、衝撃が波紋を作って消えてしまう。
「じゃあさ、もしその刀を持ってきたら、人質救出作戦を手伝ってくれるか?」
性根の優しそうな目が俺を真っ直ぐ見つめてくる。
あぁ、わかったぞ! こいつが今回の主人公だな? どうだ? コズミックペンさんよぉ。こいつを殺せって事か?
「勿論だ。天邪鬼さえあれば結界も壊せるし、刀で魔法をもぶった斬ってみせるさ」
オーガは握手を求めてくる。俺もそれに応じようとしたが、奴の右手に光る指輪を見た途端、悪魔の目が発動した。
(上位鑑定の指輪か。やべぇな。俺が悪魔だとバレてしまう。せっかく魔法のペンダントで、ちゃんとした人間に化け直したのに。・・・樹族に化けても良かったが、いまいちイメージが固まらなかった)
俺は左利きのふりをして、左手を出して握手し、鑑定の指輪の効果を回避する。
こういった類の指輪は意識して使うか、はめた手で鑑定しないと発動しないはずだ。メイジが魔法の指輪を使う時、事前に念みたいなものを籠めてるのを見た事があるしな。
「俺はミチ・オビオ」
ビチクソみてぇな名前だな。
「俺はムラサメ・キリマル。変な名前だろ? アニメが大好きな親が名付けたからよ」
「そんなことないよ、カッコイイ。よろしく。で、あんたはどうする? 修道騎士様」
頭の足りない修道騎士の目が泳いでいる。何がどうなっているのか理解出来てねぇんだ。
「あの・・・事情が飲みこめませ~ん。どぉいう事ですかぁ~?」
「ほら、これ見て」
ビチグソはマントの下の鎧の胸の部分に浮き出るウォール家の紋章を見せた。盾と壁の紋章。絶対に王家を守るといった感じの印象がある紋章だ。
(ほぉ~。シルビィの・・・。王国近衛兵騎士団独立部隊ってのは、地球人をこき使えるほど良い身分になったんだなぁ)
「わぁ、ウォール家の・・・」
まぁ今が何年かは知らねぇが、昔からウォール家は有名だったからなぁ。メリィが驚くのも当然か。
「外にはシルビィ隊の隊員(仮)や王国から派遣された騎士もいる。きっと上手く人質を解放してくれるさ。チャンスが来るまでなんとか頑張ろう」
正義の味方風に恰好を付けてビチグソはそう言ってるが、正義漢というよりはバーのマスターのような色男だな。
多分モテるぞ、コイツ。なんか腹が立つな。今すぐ殺すか? マサヨシがここにいれば、躊躇なく「殺すべし!」とか言いそうだな。いや、もう少しこの世界の様子を見てからでもいいな。
それにしてもシルビィの部下もいるのか。参ったねぇ。あのカワイコちゃんの部下なら殺すのは止めといてやるか。その代わり他の誰かを殺させてもらうからよ。キヒヒ。
俺が誰を殺そうかカウンターの隙間から物色していると、能天気な声を出して修道騎士は手を上げた。
「は~い! チャンスが来るまで待ちま~す」
色男は修道騎士に頷くと俺を見る。髪は黒いが瞳は薄茶色。ゴールデンレトリバーのような優しい目だ。何を考えているかわからないヒジリの真っ黒な瞳とは違う。
「取り敢えず料理を作って配ってる間に、刀をなんとかして手に入れるよ」
助かるねぇ、ビチグソ君。
何となくだが、もうビャクヤのいる世界に近づいているのが分かる。あと一歩ってとこだ。
アマリを手に入れて、さっさとコズミックペンの望む世界を実現して・・・。いや、そうじゃねぇ。何を言ってんだ。ペンに抗うんだろうが、俺は。
「ああ、頼んだぜ」
俺はこれからやる賭けの結果がどう出るかを想像しながら、オビオへ手を振って壁にもたれかかった。
応援ありがとうございます!
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