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魚肉ソーセージ
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オビオは約束通り刀を持ってきた。無限鞄からアマリを取り出す時に、鞘を持って出したのは正解だな。柄を持っていたらホキキの仲間のようになっていた。
ちょび髭を扱くホキキの監視から逃れるようにして、大きな体で刀を隠しつつ、オビオは刀を死角になる場所に置いた。
「すぐに戦いに参加できますか?」
オビオはこっちを見ずにそう訊ねた。
「イメージに時間が掛かるから五分は稼いでくれ」
”結界が破れない“というイメージを固めようと思えばそれぐらいかかる。そもそも結界ってなんだぁ?
「五分・・・。短いようで長いですね。何とかしてみます」
刀を取りに行ってくれる前、人質たちに取り敢えずチャイを振舞っていたオビオとは、その最中に色々と話をしたが、こいつは俺が年上で剣士だと知るやいなや、急に敬語になったのだ。どうも自分にない戦士としての強さへの憧れがあるようだ。
なぜならオビオはただの料理人。非戦闘職だ。
しかもヒジリと違って魔法の影響を受ける。どうも魔法を信じる奴は、魔法の影響を受けるみたいだな。俺も魔法の影響を受ける。
って事はヒジリは全く魔法を信じていないという事か。まぁ科学者だしな。何でも数式で解明できると思っているのだろうよ。
なんとか苦労して持ってきたであろう魔刀天邪鬼の代わりに、オビオの村人救出作戦がバレたみたいだな。集会所でカルト教団の長に何かを言い渡されて、顔を真赤にしているオビオが見える。
彼は今から教団の儀式による処刑をされようとしているのだ。
教団員が儀式の説明をすると、”邪悪なるピーター君“とオビオに呼ばれている地走り族の小僧がその儀式をやりたがっていたが、やった後に殺されるとわかると、真っ直ぐに上げていた手をすーっと下げた。というか、敵に捕まってるのによくそんな余裕があるな。
オビオが硬い表情で台所に入ってくる。もう一人の犠牲者となるメリィにその処刑方法を告げにな。
「メリィさん、その・・・。俺とまぐわってください!」
オビオは顔を真っ赤にしてメリィに手を差し出している。
インチキ臭いちょび髭が率いる教団の儀式の一つ。生命創造の儀式。いわゆるセックスだ。公開セックス後、首を刎ねられてオビオは死ぬのだ。
(つまんねぇ死に方だな)
戦って死んだ方が楽しいだろうに。
メリィは”まぐわう“の意味が理解できてないのか、よくわからないまま「いいよぉ」と返事をした。
(生涯独身の修道騎士様が、男とまぐわっちゃいかんだろ)
しかし儀式用の天蓋付き簡易ベッドは、教団員によって着々と作られていく。一応、見えにくいカーテンで覆われているので外からは影しか見えない。
オビオもメリイも恥ずかしそうにして下着姿となり、カーテンの中へと入って行った。
「儀式を始め!」と声を張り上げたホキキに合わせて、メリィの影がいきなりオビオの股間の竿に向かう。
辺りにチュパッチュパッといやらしい音が広がり、人質の中には子供の目と耳を塞ぐ親もいた。気の毒だねぇ。
(クハハ! あいつ、上手い事時間稼ぎしているじゃねぇか。この匂いは魚肉ソーセージだ。あいつはそれを使って口淫に見立てているのか。おもしれぇ影絵だ)
しかし、これはメリィも我慢できねぇだろうなぁ。上質な、魚臭さなど微塵もない魚肉ソーセージの良い匂い。美味いにちげぇねぇ。
微かだが咀嚼音も聞こえるぜ。間違いなくメリィは食っている。美味さに抗えなかったのだ。
夢中になっている修道騎士様の荒い鼻息まで、悪魔の耳には聞こえてくるぜ。
「ちょ、メリィさん食べすぎッ!」
オビオの小さな囁きも聞こえる。メリィの頭を股間から引き離そうとしているが、メリィの方が力が上なのか疑似口淫は更に激しくなった。残り少ないソーセージの旨味を吸おうと必死なのだ。
まぁまぁ時間を稼げてはいるが、そろそろ怪しまれるぞ。
「ちょ、修道女様、テクニシャンすぎだろー!」
真っ先に声を上げたのは、邪悪なるピーター君だった。クハハ! 仲間の脚を引っ張る、ウザいタイプの地走り族だな。
「確かに・・・。直視するのは生々し過ぎるので天幕を張ったものの、奴らは本当に中で儀式をしているのか?」
ホキキが疑い始めた。
俺はそろそろ仕事をするかと考え、腰をかがめ、アマリが結界に弾かれる絵を頭に思い浮かべ続ける。
そうしてっと、天幕の布を強引に剥がしてホキキが怒鳴りだした。そんなに怒鳴るほどの儀式か? どうせお前が今考えた儀式だろ。
「貴様! 神聖なる儀式を汚したな!」
ちょび髭をプルプル震わせながら、ホキキはワンドを抜いた。
「解っているだろうな? オーガ。お前の仲間も、その修道騎士も今ここで死刑だ」
やべぇな、こりゃあ間に合わねぇ。ホキキの魔法が発動する。
「命の終わりは暗闇と共に! 【死】!」
ん? 死の魔法は闇魔法だから樹族には御法度のはずだぞ? だとしたらホキキは闇樹族という事になるが?
「風の精霊よ、敵を黙らせろ!【沈黙】!」
間一髪、オビオの仲間らしき女騎士が集会場に乗り込んで、ホキキを黙らせた。
ちょび髭を扱くホキキの監視から逃れるようにして、大きな体で刀を隠しつつ、オビオは刀を死角になる場所に置いた。
「すぐに戦いに参加できますか?」
オビオはこっちを見ずにそう訊ねた。
「イメージに時間が掛かるから五分は稼いでくれ」
”結界が破れない“というイメージを固めようと思えばそれぐらいかかる。そもそも結界ってなんだぁ?
「五分・・・。短いようで長いですね。何とかしてみます」
刀を取りに行ってくれる前、人質たちに取り敢えずチャイを振舞っていたオビオとは、その最中に色々と話をしたが、こいつは俺が年上で剣士だと知るやいなや、急に敬語になったのだ。どうも自分にない戦士としての強さへの憧れがあるようだ。
なぜならオビオはただの料理人。非戦闘職だ。
しかもヒジリと違って魔法の影響を受ける。どうも魔法を信じる奴は、魔法の影響を受けるみたいだな。俺も魔法の影響を受ける。
って事はヒジリは全く魔法を信じていないという事か。まぁ科学者だしな。何でも数式で解明できると思っているのだろうよ。
なんとか苦労して持ってきたであろう魔刀天邪鬼の代わりに、オビオの村人救出作戦がバレたみたいだな。集会所でカルト教団の長に何かを言い渡されて、顔を真赤にしているオビオが見える。
彼は今から教団の儀式による処刑をされようとしているのだ。
教団員が儀式の説明をすると、”邪悪なるピーター君“とオビオに呼ばれている地走り族の小僧がその儀式をやりたがっていたが、やった後に殺されるとわかると、真っ直ぐに上げていた手をすーっと下げた。というか、敵に捕まってるのによくそんな余裕があるな。
オビオが硬い表情で台所に入ってくる。もう一人の犠牲者となるメリィにその処刑方法を告げにな。
「メリィさん、その・・・。俺とまぐわってください!」
オビオは顔を真っ赤にしてメリィに手を差し出している。
インチキ臭いちょび髭が率いる教団の儀式の一つ。生命創造の儀式。いわゆるセックスだ。公開セックス後、首を刎ねられてオビオは死ぬのだ。
(つまんねぇ死に方だな)
戦って死んだ方が楽しいだろうに。
メリィは”まぐわう“の意味が理解できてないのか、よくわからないまま「いいよぉ」と返事をした。
(生涯独身の修道騎士様が、男とまぐわっちゃいかんだろ)
しかし儀式用の天蓋付き簡易ベッドは、教団員によって着々と作られていく。一応、見えにくいカーテンで覆われているので外からは影しか見えない。
オビオもメリイも恥ずかしそうにして下着姿となり、カーテンの中へと入って行った。
「儀式を始め!」と声を張り上げたホキキに合わせて、メリィの影がいきなりオビオの股間の竿に向かう。
辺りにチュパッチュパッといやらしい音が広がり、人質の中には子供の目と耳を塞ぐ親もいた。気の毒だねぇ。
(クハハ! あいつ、上手い事時間稼ぎしているじゃねぇか。この匂いは魚肉ソーセージだ。あいつはそれを使って口淫に見立てているのか。おもしれぇ影絵だ)
しかし、これはメリィも我慢できねぇだろうなぁ。上質な、魚臭さなど微塵もない魚肉ソーセージの良い匂い。美味いにちげぇねぇ。
微かだが咀嚼音も聞こえるぜ。間違いなくメリィは食っている。美味さに抗えなかったのだ。
夢中になっている修道騎士様の荒い鼻息まで、悪魔の耳には聞こえてくるぜ。
「ちょ、メリィさん食べすぎッ!」
オビオの小さな囁きも聞こえる。メリィの頭を股間から引き離そうとしているが、メリィの方が力が上なのか疑似口淫は更に激しくなった。残り少ないソーセージの旨味を吸おうと必死なのだ。
まぁまぁ時間を稼げてはいるが、そろそろ怪しまれるぞ。
「ちょ、修道女様、テクニシャンすぎだろー!」
真っ先に声を上げたのは、邪悪なるピーター君だった。クハハ! 仲間の脚を引っ張る、ウザいタイプの地走り族だな。
「確かに・・・。直視するのは生々し過ぎるので天幕を張ったものの、奴らは本当に中で儀式をしているのか?」
ホキキが疑い始めた。
俺はそろそろ仕事をするかと考え、腰をかがめ、アマリが結界に弾かれる絵を頭に思い浮かべ続ける。
そうしてっと、天幕の布を強引に剥がしてホキキが怒鳴りだした。そんなに怒鳴るほどの儀式か? どうせお前が今考えた儀式だろ。
「貴様! 神聖なる儀式を汚したな!」
ちょび髭をプルプル震わせながら、ホキキはワンドを抜いた。
「解っているだろうな? オーガ。お前の仲間も、その修道騎士も今ここで死刑だ」
やべぇな、こりゃあ間に合わねぇ。ホキキの魔法が発動する。
「命の終わりは暗闇と共に! 【死】!」
ん? 死の魔法は闇魔法だから樹族には御法度のはずだぞ? だとしたらホキキは闇樹族という事になるが?
「風の精霊よ、敵を黙らせろ!【沈黙】!」
間一髪、オビオの仲間らしき女騎士が集会場に乗り込んで、ホキキを黙らせた。
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