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ダーク・マター
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俺は金のないリンネの為に、迷宮に潜ってリビングアーマーを狩ってきた。
「バトルメイジの中でも防御特化のメイジになるんだろ? だったら鎧は必須だろ」
しかし、血で錆びた鎧の山を見て、リンネは口をへの字に曲げる。
「あのね、キリマル。私のためにリビングアーマーの鎧を持ってきてくれたのは嬉しいけど、コレ全部呪われてるから。呪いの装備を着れるのはキリマルみたいな悪魔か暗黒騎士だけよ」
「まじか」
今頃、悪魔の目が発動してリビングアーマーの呪いが見えた。一歩歩くごとに生命点が一減る。その代わり物理・魔法ともに高い防御力を誇る。
「十個ぐらいあるぞ。呪われているなら売れねぇだろうなぁ・・・」
「売れるんだなぁ、これが」
ピーターが小さな本を出して、とあるページを見ながらそう言った。
「ほぉ? なんでだ?」
「そりゃあ、この国にも暗黒騎士を目指す中二病がいるからさ」
「で、その本はなんだ? ピーター」
「これは本屋で盗・・・、買った職業の分布調査本みたいなものさ。一番多いのはやっぱり戦士系かな。次にスカウトとメイジ。暗黒騎士は魔法剣士の分類に入るから少ないけど、いることにはいるよ。彼らは防御力が低いから、リビングアーマーの鎧なら喜んで買うだろうね」
「幾らで売れると思う?」
「暗黒騎士は呪いを反転させるからねぇ。つまり一歩事に生命点が回復する。これはきっと聖なる鎧の劣化版ぐらいの値段で売れるよ」
「だから幾らで売れるのか聞いてんだよ」
「知るかよ! 俺は盗賊であって商人じゃないんだよ!」
ピーターが白目を多くして喚く。うるせぇ。
しゃあねぇな。以前、神殿騎士から戦利品として得た魔法剣を売りに行った武具屋に持ち込むか。
店に入ると、まるで探していた物が都合よく見つかる彼岸島のように、暗黒騎士がいた。
「ククク。店の主。我にぴったりな鎧をいくつか持ってきてくれたまえ」
ビャクヤみたいな奴がこれで三人目だ。二人目は勿論キラキだ。変人キャラの大バーゲンだな。
「な? いるもんだろ? しかも俺たちの都合に合わせたかの如く!」
ピーターはドヤ顔で、コズミックペンが怒りそうな事を言った。
それが原因かは分からないが、どこからか転移してきた大ダライが、ピーターの頭を直撃し、大きな音を店に響かせた。
店には中二病騎士と店主しかいないので、驚いてピーターを見ているのはその二人だけだ。
頭を擦るピーターもコズミックペンに負けてはいない。「タダでタライをゲットした!」と言って店を飛び出していった。多分、金物屋に売りつけるのだろうよ。
俺は中二病の全身黒革鎧の男を押しのけて、紐で数珠つなぎにしたリビングアーマーの鎧十個をカウンターの上に置く。
「今日はこれを売りに来た。幾らで売れる?」
「これはこれは、キリマル様、鎧だけ・・・でございますか? セットの脚絆や篭手等はどうされましたか?」
武器防具屋の主には似つかわしくない上品なジェントルマンは、リビングアーマーの鎧だけを見て溜息を吐く。
「俺ァ無限鞄なんて持ってねぇからよ、細々したものは置いてきた。鎧しかねぇ」
「であれば、一つ金貨一枚ですね。全部位があれば買取価格が跳ね上がるのですが、鎧だけですと残念ながら・・・」
「いや、十分だが?(金貨一枚って確か十万円くらいの価値があるだろ)」
「左様であれば、買い取らせて頂きます!」
「ククク。我は運命の邪神に愛されし者! 欲する物が今まさに目の前にある!」
うぜぇな、この暗黒騎士。ぶっ殺したくなるからさっさと帰ろう。
俺は店主から金貨十枚を受け取ると店から出た。ビャクヤに人間の姿にしてもらっているからタイムリミットがあり、元の大きな体に戻ると店の出入りが容易ではなくなるからよ。
急いで帰ろうとする俺の背後に、なぜか暗黒騎士がいる。奴は鎧を買ってない。買えるだけの金がなかったのか?
「おい、お前。鎧を買うんじゃなかったのか?」
俺は振り返らずに暗黒騎士に尋ねた。
「フハハハッ! 我の言葉、貴様の心の奥底にまで届かなかったようだな!」
「なに言ってんだ?」
「我はこう言った! 欲するものが目の前にあると! それは貴様のことだ! 人修羅キリマル!」
「わりぃが、俺は男色家じゃねぇんだわ」
一瞬キラキでも紹介してやろうかと思った。あいつは多分、そっち系だからな。
「我が名は」
暗黒騎士が勝手に名乗ろうとしたので俺は声をかぶせる。
「聞いてねぇ」
名前を聞くということは、関わりを持つということだ。
例えその後、そいつと疎遠になって存在を忘れようとも縁が出来る。無駄な縁は要らねぇ。俺には可愛い子孫さえいればいいんだからよ。
向こうからピーターが手を振って走ってくる。
「おーい! あのタライ! 千銅貨一枚で売れたよ!」
「ほぉ、良い値で売れたじゃねぇか」
「我は闇を操りし者! 暗黒騎士のダーク・マター!」
あーあ、聞いてしまった。捻りも何もない名前を。多分偽名だ。なので縁はノーカウントってことでいいな。
「キリマルの方こそ、鎧は幾らだった?」
ピーターは中二病野郎を無視して鎧の値段を知りたがったが、ダークはお構いなしで自己紹介を続ける。
「我の得物は魂を刈り取る漆黒の鎌! 負のエネルギーを極めし鎌の一振りは! 空間をも切り裂く!」
「鎧は一個、金貨一枚だった」
「すげぇーー! 呪いの鎧だったのに!」
「だろ? 金貨十枚あれば、リンネ用にアーマーメイジの鎧くらい買えるんじゃねぇかな」
「暗黒の深淵を覗いた我の体に流るるは、邪悪なるマナ!」
「お前、来週から試合が始まるのに、なにか対策とってあんのか?」
「そのためにお金を工面してんじゃないか。なにせ俺は主将だからね。俺こそチームの要! 死んだらお終いなんだから、寧ろ必死になってリーダーを庇う義務があるのはキリマルだよ!」
ピーターも中々ウザい。段々こいつが磯野カツヲに見えてきたぜ。
「それは! エントロピーの果てを! 拒絶する程の力を生み出す!」
あぁ~もう、なんだか色々とうぜぇ。黙れよ、暗黒騎士。
「小銭稼いで、なにを買うんだ? どうせまた娼館に行こうとか考えてんだろ。は~ん? さてはお前、童貞だな?」
「どどどど、童貞ちゃうわ!」
そういや、こいつからは一回も女の体液の匂いがしたことがねぇ。股間からイカ臭しか漂ってこねぇ。
「よし、今日から試合までオナ禁な。シコって腑抜けられたら困るしよ」
「シコらねぇし! ってか、シコったことねぇし!」
「ウソつけ。俺ァ臭いでわかるんだよ。五感が鋭いんだわ。なんか訳のわからん事を言いながら、後ろでストーカーしてる奴ですら、彼女がいるのが分かるぞ。な? 中二病騎士」
ここで初めてまともに相手にしてもらえらえたのが嬉しいのか、暗黒騎士ダーク・マターは革の兜の下からテンションの高い声で答える。
「如何にも! かつての古き時代に! 闇の力を会得したその時から! 我は超絶なる美顔を手に入れた! 一度でもこの顔を見た女は! 我を放置する事はできない!」
自信満々にフルヘルムの革兜を脱ぐと、至って普通の顔が現れた。可もなく不可もなく。
黒髪だから黒髪族だ。耳長族とかと同じ括りな。この島は白人種ばかりだからよ。マサヨシ以外に久々に見る東洋人顔。
オビオとかヒジリは未来人過ぎて、最早何人かわからん顔をしている。一応、東洋人顔だが。
「え、普通じゃん。まぁレッサーオーガの時のキリマルよりかは、男前だけども」
まぁ俺はイケメンではないのを承知しているからな。
カルト教団事件の件で厨房で会話していた時のオビオ曰く、俺はブラックジャックのドクター・キリコに似ているらしい。
「なんたる侮辱! 我を愛するマリアンヌは、この顔を美しいと褒めて、毎晩のように体を求めてくるのに!」
「そりゃあ、そうだろうな。多分、マリアンヌはサキュバスだぞ」
以前にビャクヤがサキュバスとまぐわっていたしな。夢魔モーラのババァもサキュバスの類だ。
それらと同じ臭いがするんだわ。なんというか、臭いような臭くないような、それでいてムワっと蒸れたような匂い。
「えっ!」
中二病はどこへやら、ダークは素の顔をする。
「付き合ってどれくらいだ?」
「一年だけど・・・」
「よく金玉が枯渇して死ななかったな。となるとオメェはかなりのスタミナの持ち主だってェ事だ。オラ、宇宙で一等おでれぇたぞ!」
「誰の物真似だい? キリマル」
邪悪なるピーター君が、訝しんで俺を見てらっしゃる。
(あぁ、ここにマサヨシがいればな。ツッコんでくれたろうに)
「あの、僕も仲間に入れてくれませんか?」
僕? 中二病設定はどこいったんだぁ? ダーク・マター。
「まぁ魔物とか含め六人までOKってことだから、入れてやってもいいがよ。どんな芸ができるんだ?」
ダークはいそいそと革のフルヘルムを被ると、ビャクヤのように顔に手を当てて笑い始めた。
「ククク。我の技を見たいと申すか! いいだろう。その目に焼き付けるが良い!」
それから道の真ん中で大鎌を振るった。
「断ち切り、吸い込め! 全てを虚無の向こう側へ! 時間差次元断!」
数秒後、空間が引き裂かれて、隙間から無が見える。その無に空気が凄まじい勢いで吸い込まれていく。
「あぶねぇ!」
俺と同じ技を使うダークに驚いていると、最悪なタイミングで走り寄ってきた幼児の体が浮く。
母親が名を叫んで我が子を捕まえようとしているが、間に合わねぇ。
その刹那ミドリの顔が浮かぶ。
「馬鹿野郎!」
そうダークに怒声を浴びせ、体を宙に浮かせる子供をキャッチして、なんとか地面に踏ん張る。
が、それでもゆっくりと裂け目に体が引き寄せられる。この技の恐ろしさは使い手が一番知っているんだわ。悪魔の力をフルに使って踏ん張っても、この状態だからな。
(このクソボケが! こんな場所で使う技じゃねぇだろうがよ!)
上位竜も簡単に吸い込む大技。俺は非常識な使い方をしたダークを睨んだ。
(こいつまさか・・・、Qか? 俺を殺りに来たってわけか! くそ!)
虚無空間に吸い込まれたらどうなるんだろうか、俺は。せめてミドリだけでも・・・。いや、このガキはミドリじゃねぇ。でも・・・。このガキだけは助けてやりてぇ。
「バトルメイジの中でも防御特化のメイジになるんだろ? だったら鎧は必須だろ」
しかし、血で錆びた鎧の山を見て、リンネは口をへの字に曲げる。
「あのね、キリマル。私のためにリビングアーマーの鎧を持ってきてくれたのは嬉しいけど、コレ全部呪われてるから。呪いの装備を着れるのはキリマルみたいな悪魔か暗黒騎士だけよ」
「まじか」
今頃、悪魔の目が発動してリビングアーマーの呪いが見えた。一歩歩くごとに生命点が一減る。その代わり物理・魔法ともに高い防御力を誇る。
「十個ぐらいあるぞ。呪われているなら売れねぇだろうなぁ・・・」
「売れるんだなぁ、これが」
ピーターが小さな本を出して、とあるページを見ながらそう言った。
「ほぉ? なんでだ?」
「そりゃあ、この国にも暗黒騎士を目指す中二病がいるからさ」
「で、その本はなんだ? ピーター」
「これは本屋で盗・・・、買った職業の分布調査本みたいなものさ。一番多いのはやっぱり戦士系かな。次にスカウトとメイジ。暗黒騎士は魔法剣士の分類に入るから少ないけど、いることにはいるよ。彼らは防御力が低いから、リビングアーマーの鎧なら喜んで買うだろうね」
「幾らで売れると思う?」
「暗黒騎士は呪いを反転させるからねぇ。つまり一歩事に生命点が回復する。これはきっと聖なる鎧の劣化版ぐらいの値段で売れるよ」
「だから幾らで売れるのか聞いてんだよ」
「知るかよ! 俺は盗賊であって商人じゃないんだよ!」
ピーターが白目を多くして喚く。うるせぇ。
しゃあねぇな。以前、神殿騎士から戦利品として得た魔法剣を売りに行った武具屋に持ち込むか。
店に入ると、まるで探していた物が都合よく見つかる彼岸島のように、暗黒騎士がいた。
「ククク。店の主。我にぴったりな鎧をいくつか持ってきてくれたまえ」
ビャクヤみたいな奴がこれで三人目だ。二人目は勿論キラキだ。変人キャラの大バーゲンだな。
「な? いるもんだろ? しかも俺たちの都合に合わせたかの如く!」
ピーターはドヤ顔で、コズミックペンが怒りそうな事を言った。
それが原因かは分からないが、どこからか転移してきた大ダライが、ピーターの頭を直撃し、大きな音を店に響かせた。
店には中二病騎士と店主しかいないので、驚いてピーターを見ているのはその二人だけだ。
頭を擦るピーターもコズミックペンに負けてはいない。「タダでタライをゲットした!」と言って店を飛び出していった。多分、金物屋に売りつけるのだろうよ。
俺は中二病の全身黒革鎧の男を押しのけて、紐で数珠つなぎにしたリビングアーマーの鎧十個をカウンターの上に置く。
「今日はこれを売りに来た。幾らで売れる?」
「これはこれは、キリマル様、鎧だけ・・・でございますか? セットの脚絆や篭手等はどうされましたか?」
武器防具屋の主には似つかわしくない上品なジェントルマンは、リビングアーマーの鎧だけを見て溜息を吐く。
「俺ァ無限鞄なんて持ってねぇからよ、細々したものは置いてきた。鎧しかねぇ」
「であれば、一つ金貨一枚ですね。全部位があれば買取価格が跳ね上がるのですが、鎧だけですと残念ながら・・・」
「いや、十分だが?(金貨一枚って確か十万円くらいの価値があるだろ)」
「左様であれば、買い取らせて頂きます!」
「ククク。我は運命の邪神に愛されし者! 欲する物が今まさに目の前にある!」
うぜぇな、この暗黒騎士。ぶっ殺したくなるからさっさと帰ろう。
俺は店主から金貨十枚を受け取ると店から出た。ビャクヤに人間の姿にしてもらっているからタイムリミットがあり、元の大きな体に戻ると店の出入りが容易ではなくなるからよ。
急いで帰ろうとする俺の背後に、なぜか暗黒騎士がいる。奴は鎧を買ってない。買えるだけの金がなかったのか?
「おい、お前。鎧を買うんじゃなかったのか?」
俺は振り返らずに暗黒騎士に尋ねた。
「フハハハッ! 我の言葉、貴様の心の奥底にまで届かなかったようだな!」
「なに言ってんだ?」
「我はこう言った! 欲するものが目の前にあると! それは貴様のことだ! 人修羅キリマル!」
「わりぃが、俺は男色家じゃねぇんだわ」
一瞬キラキでも紹介してやろうかと思った。あいつは多分、そっち系だからな。
「我が名は」
暗黒騎士が勝手に名乗ろうとしたので俺は声をかぶせる。
「聞いてねぇ」
名前を聞くということは、関わりを持つということだ。
例えその後、そいつと疎遠になって存在を忘れようとも縁が出来る。無駄な縁は要らねぇ。俺には可愛い子孫さえいればいいんだからよ。
向こうからピーターが手を振って走ってくる。
「おーい! あのタライ! 千銅貨一枚で売れたよ!」
「ほぉ、良い値で売れたじゃねぇか」
「我は闇を操りし者! 暗黒騎士のダーク・マター!」
あーあ、聞いてしまった。捻りも何もない名前を。多分偽名だ。なので縁はノーカウントってことでいいな。
「キリマルの方こそ、鎧は幾らだった?」
ピーターは中二病野郎を無視して鎧の値段を知りたがったが、ダークはお構いなしで自己紹介を続ける。
「我の得物は魂を刈り取る漆黒の鎌! 負のエネルギーを極めし鎌の一振りは! 空間をも切り裂く!」
「鎧は一個、金貨一枚だった」
「すげぇーー! 呪いの鎧だったのに!」
「だろ? 金貨十枚あれば、リンネ用にアーマーメイジの鎧くらい買えるんじゃねぇかな」
「暗黒の深淵を覗いた我の体に流るるは、邪悪なるマナ!」
「お前、来週から試合が始まるのに、なにか対策とってあんのか?」
「そのためにお金を工面してんじゃないか。なにせ俺は主将だからね。俺こそチームの要! 死んだらお終いなんだから、寧ろ必死になってリーダーを庇う義務があるのはキリマルだよ!」
ピーターも中々ウザい。段々こいつが磯野カツヲに見えてきたぜ。
「それは! エントロピーの果てを! 拒絶する程の力を生み出す!」
あぁ~もう、なんだか色々とうぜぇ。黙れよ、暗黒騎士。
「小銭稼いで、なにを買うんだ? どうせまた娼館に行こうとか考えてんだろ。は~ん? さてはお前、童貞だな?」
「どどどど、童貞ちゃうわ!」
そういや、こいつからは一回も女の体液の匂いがしたことがねぇ。股間からイカ臭しか漂ってこねぇ。
「よし、今日から試合までオナ禁な。シコって腑抜けられたら困るしよ」
「シコらねぇし! ってか、シコったことねぇし!」
「ウソつけ。俺ァ臭いでわかるんだよ。五感が鋭いんだわ。なんか訳のわからん事を言いながら、後ろでストーカーしてる奴ですら、彼女がいるのが分かるぞ。な? 中二病騎士」
ここで初めてまともに相手にしてもらえらえたのが嬉しいのか、暗黒騎士ダーク・マターは革の兜の下からテンションの高い声で答える。
「如何にも! かつての古き時代に! 闇の力を会得したその時から! 我は超絶なる美顔を手に入れた! 一度でもこの顔を見た女は! 我を放置する事はできない!」
自信満々にフルヘルムの革兜を脱ぐと、至って普通の顔が現れた。可もなく不可もなく。
黒髪だから黒髪族だ。耳長族とかと同じ括りな。この島は白人種ばかりだからよ。マサヨシ以外に久々に見る東洋人顔。
オビオとかヒジリは未来人過ぎて、最早何人かわからん顔をしている。一応、東洋人顔だが。
「え、普通じゃん。まぁレッサーオーガの時のキリマルよりかは、男前だけども」
まぁ俺はイケメンではないのを承知しているからな。
カルト教団事件の件で厨房で会話していた時のオビオ曰く、俺はブラックジャックのドクター・キリコに似ているらしい。
「なんたる侮辱! 我を愛するマリアンヌは、この顔を美しいと褒めて、毎晩のように体を求めてくるのに!」
「そりゃあ、そうだろうな。多分、マリアンヌはサキュバスだぞ」
以前にビャクヤがサキュバスとまぐわっていたしな。夢魔モーラのババァもサキュバスの類だ。
それらと同じ臭いがするんだわ。なんというか、臭いような臭くないような、それでいてムワっと蒸れたような匂い。
「えっ!」
中二病はどこへやら、ダークは素の顔をする。
「付き合ってどれくらいだ?」
「一年だけど・・・」
「よく金玉が枯渇して死ななかったな。となるとオメェはかなりのスタミナの持ち主だってェ事だ。オラ、宇宙で一等おでれぇたぞ!」
「誰の物真似だい? キリマル」
邪悪なるピーター君が、訝しんで俺を見てらっしゃる。
(あぁ、ここにマサヨシがいればな。ツッコんでくれたろうに)
「あの、僕も仲間に入れてくれませんか?」
僕? 中二病設定はどこいったんだぁ? ダーク・マター。
「まぁ魔物とか含め六人までOKってことだから、入れてやってもいいがよ。どんな芸ができるんだ?」
ダークはいそいそと革のフルヘルムを被ると、ビャクヤのように顔に手を当てて笑い始めた。
「ククク。我の技を見たいと申すか! いいだろう。その目に焼き付けるが良い!」
それから道の真ん中で大鎌を振るった。
「断ち切り、吸い込め! 全てを虚無の向こう側へ! 時間差次元断!」
数秒後、空間が引き裂かれて、隙間から無が見える。その無に空気が凄まじい勢いで吸い込まれていく。
「あぶねぇ!」
俺と同じ技を使うダークに驚いていると、最悪なタイミングで走り寄ってきた幼児の体が浮く。
母親が名を叫んで我が子を捕まえようとしているが、間に合わねぇ。
その刹那ミドリの顔が浮かぶ。
「馬鹿野郎!」
そうダークに怒声を浴びせ、体を宙に浮かせる子供をキャッチして、なんとか地面に踏ん張る。
が、それでもゆっくりと裂け目に体が引き寄せられる。この技の恐ろしさは使い手が一番知っているんだわ。悪魔の力をフルに使って踏ん張っても、この状態だからな。
(このクソボケが! こんな場所で使う技じゃねぇだろうがよ!)
上位竜も簡単に吸い込む大技。俺は非常識な使い方をしたダークを睨んだ。
(こいつまさか・・・、Qか? 俺を殺りに来たってわけか! くそ!)
虚無空間に吸い込まれたらどうなるんだろうか、俺は。せめてミドリだけでも・・・。いや、このガキはミドリじゃねぇ。でも・・・。このガキだけは助けてやりてぇ。
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