料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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最後の一杯

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「列に並んだ人の分だけでも、うな丼作ってもいい?」

 俺は申し訳なさそうにリュウグに訊いてみた。

「もー。オビオはほんまにお人好しやなぁ。でも、私はオビオのそういうとこに惚れてもたんやけどな・・・。しゃーない。ええで!」

 ええで、と言いつつも目が寂しそうだ。やっぱりリュウグとの思い出作りに専念すべきか?

 俺がやきもきしていると、リュウグが気を利かせてくれた。

「オビオ・・・。私、飛空艇乗り場で待ってるから。絶対に来てな?」

「ごめん、リュウグ。俺、絶対に行くから!」

 小さなノームは流し目で俺を見てから、ポルロンド空港まで歩いて行った。

 うぅ、胸が切ない。

「加速!」

 俺は残像が出来るほど素早く動いて、魚屋のおっちゃんが捌いた鰻を焼いていく。魚屋のおっちゃんも一度見ただけで、鰻を捌けるようになるとは、流石だ。

「あ、しまった!」

 客に売るときになって、値段を決めていなかった事を思い出す。

「おっちゃん、値段はどうする?」

「銀貨二枚だ!」

「えっ! それはボリ過ぎじゃね?」

「いや、あんちゃんの料理には、それだけの価値がある! これでも遠慮したほうだぜ! バトルコック団のリーダー!」

 そうだった。俺は自分が思っている以上に有名人なんだった。噂が広まるのは早いなぁ。きっとブラッド領で活躍したのが大きかったんだ。

「じゃ、じゃあ。銀貨二枚で!」

 俺は客の地走り族に、恐る恐る値段を言ってみた。

「え?」

 ほらみろ、驚いている! やっぱ値段が高すぎたんだ。貨幣があった頃の二十一世紀の価値観でいったら、二万円だぞ。小さな茶碗一杯のうな丼が、二万円もするなんて馬鹿げている!

「安い! だってあんた戦うコックさんのオビオだろ? 金貨一枚でも良い話の種になるよ!」

 え? そんなに? 俺ってクソ有名人じゃん。

「あ、ありがとうございます!」

 俺は腰をおろして、地走り族の客の手から銀貨二枚を受け取った。そしてうな丼を渡す。

 すると魚屋のおっちゃんが指を鳴らした。

「よっしゃ! 一個目売れた! 材料代、場所代なんてケチな事は言わねぇ! 折半でいいぜ、オビオのあんちゃん!」

「まじ? 俺、どうしても買いたい物があるから助かるよ! ありがと、おっちゃん!」

「いいってことよ!」

 そう、俺はリュウグが欲しがっていたロケットペンダントを買いたいんだ。あれを絶対にリュウグに渡す!

「まいどあり! まいどあり!」

 瞬く間にうな丼が捌けていく。四十一世紀の効率の良い調理器具があれば、短時間で焼ける。

「うんまそー!」

 テーブルまで我慢できずに、渡したその場で、食べる人も出てきた。スプーンで鰻を切って、甘辛いタレの付いたご飯と食べている。

「美味しいのぉ~。美味いのぉ~」

 年老いた樹族が、しみじみとそう言ってくれるのが嬉しい。

「んん?!」

 どうした? お爺ちゃん。ご飯が喉に詰まったか?

「おお!? こ、これはぁ! はわわー! 来た! 春が来たーー!」

 なに? それってつまり・・・。

「ビンビンじゃぁぁぁ!」

 いや、どこがビンビンなのかは見ないでおこう。お爺ちゃんは、猛ダッシュでどこかに走り去って行った。

 うな丼にそんな効果があったとは・・・。

 俺は料理上手のミトンを外して、うな丼を鑑定する。

 ――――うな丼。スタミナプラス100。隠し効果、チン長プラス五センチ、強壮効果、精力剤効果あり。

 強壮効果とかはわかる。でもチン長プラス五センチってなんだよ!

 チン○ンまで伸びてしまう料理・・・。俺は凄い料理を作ってしまったのかもしれない。

 自分の料理に感動していると、どこからかボソボソと声が聞こえてきた。

「買ってはみたものの、本当にオビオの料理なんだろうな?」

 訝しむ黒ローブのメイジが、うな丼を鑑定している。

 よし、そのまま鑑定してみてくれ。俺は胸を張って言えるぜ? それは正真正銘オビオが作った料理だってな!

「おぉ・・・? これは確かに本物だ! しかも強壮効果まである!」

 お? かなりの腕前と見た。隠し効果まで見抜いたじゃんか、このメイジ!

「なんだと・・・?」

 辺りがザワザワしだした。特に樹族。

「ほんとうだ。うな丼を食べたら、下腹がカーっと熱くなってきたぞ! これでマイワイフを喜ばせる事ができる!」

 それは口に出さずに、心の中で言ってくれ。

「残り、あと一杯!」

 魚屋のおっちゃんが大声で、そう告げる。すると即席出店の前に、人だかりが一気に出来た。

 沢山の手、手、手。

 俺が誰に渡すべきか決めあぐねていると、人だかりの後ろの方で「ゴラァ!」という声が聞こえてきた。

「誰に断って市場で、店開いとるんじゃぁ!」

 わぁー。ガラの悪いオークが二人現れた。如何にもチンピラって感じ。

「ゲッ! 用心棒ギルドのオーク・・・」

 魚屋のおっちゃんは、首を引っ込め、角兜を被るオークの二人を交互に見てから応答した。

「場所代はいつもの通り収めてますぜ、旦那・・・。」

「おめぇの場所とはいえ、新しい店ができてんなら、別途料金になるのは常識だろ。よし! 罰金含め、金貨十枚な」

「そんな、旦那ぁ!」

 誰もトラブルに巻き込まれたくないのか、人だかりが瞬時に消えてしまった。

「見逃してくださいよぉ~、旦那ぁ」

 魚屋のおっちゃんが何とか食い下がっている。頑張れ、おっちゃん!

「別に払わなくてもいいんだぜ? だが、うちが暗殺ギルドと繋がりがあることを忘れんなよ?」

 暗殺ギルドだってぇ? それが本当なら、おっちゃんの怯え方も納得だな。

 こうなったら、有名人である俺が名乗るか・・・。きっと驚いて腰を抜かすだろう。

「おい、お前たち! いい加減にしろ!」

「おぉん?」

 俺よりも背の低いオークが、頭突きでもしてくる勢いで頭を上げ、睨んでくる。

「おめぇ、どこのウスノロオーガだぁ?」

 よくぞ訊いてくれました。そうでぃす、ワタスが――――。

「変なおじさんでぃす」

「あぁん?」

「違った・・・。俺はバトルコック団のミチ・オビオだ!」

 さぁ驚け。ピーターの邪悪顔に驚いたオッサンの時みたいに、M字開脚で尻もちをついてくれてもいいんだぜぇ?

「お~。お前がオビオか。活躍は聞いてるぜぇ? で? お前が金貨十枚払ってくれるのか?」

 あら? あんまり驚かないな・・・。戦士の指輪をはめれば、こいつらをこの場で気絶させるくらいの力は、俺でもある。

 でも、そんな事したら魚屋のおっちゃんが、後々面倒な事になるだろうな。

 やべぇな。しかもリュウグとの約束の時間が迫ってきているぞ。どうしよう。
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