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ステコ・ワンドリッター
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俺が迷っていると、市場の入口の方からやってくる黒騎士が見えた。
市場の中を馬に乗って移動するなんて、余程濡れた地面が嫌なんだろう。
俺の視線にが自分たちに向いていない事に気がついたチンピラがそちらを向く。
「あ、あれは!」
チンピラ二人が驚いている理由は何となくわかる。黒騎士と言えば、樹族至上主義のソラス・ワンドリッター侯爵の騎士だからだ。
黒騎士の馬は、俺の簡易出店の前で止まった。ちょっと嫌な予感がするなぁ。ワンドリッターは、奴隷商人と繋がりがあるし。
「何用でしょうか、黒騎士様」
揉み手で魚屋の主人が、黒騎士の前に出た。フルヘルムを被っているので怒っているのか、喜んでいるのかは、近づいて、声を聞いて判断するしかない。
「バトルコック団のリーダーは、お前か」
魚屋の店主を無視して、黒騎士は俺を見た。息がしづらいのか、コーホーコーホー言ってる。
「はい、俺ですが」
貴様を拘束する、とか言われたらすぐにでも逃げる準備をしなければ。
「うな丼とやらを所望する」
おぉ? お客さんだぁ! きっと噂を嗅ぎつけてやって来たんだな。
俺が最後のうな丼を手に取ろうとすると、チンピラ二人がそれを遮った。
「悪いが、オーガ。このうな丼は、俺たちが買う予定だったんだ」
おいおい、急にどうした? 場所代取りに来たんじゃなかったのか? それにワンドリッターの騎士相手に、喧嘩を売るつもりか?
「黒騎士の旦那ァ! あんたどの部隊に所属してんだい? 鎧に杖の紋章が入っているのは見て分かるが、部隊のマークまでは無ぇなぁ? えぇ?」
なるほど、オークたちはこの黒騎士を偽者だと判断したんだ。
「貴様らオークに答える義理はない」
「それによぉ! 黒騎士が単騎でポルロンドにいるのもおかしいぜ」
「今一度言う。答える義理はない。バトルコック団リーダー、オビオ。うな丼の値段は幾らだ?」
「はい。銀貨二枚です」
従者もいない黒騎士は、腰の革袋から銀貨を取り出そうとした。
「待てよ、偽者! その金をしまえ! 最後のうな丼! 俺らは銀貨四枚で買うぜ!」
チンピラは調理台の上に、銀貨四枚をジャラリと置いた。
「調子に乗るなよ、オークどもが」
黒騎士がワンドを取り出そうとしたが、オークは尻込みせず張り合った。
「ああ? ここは、樹族国じゃねぇんだぞ? 他国で諍い起こす気か? そんな事すりぁ、ソラス様の顔に泥を塗るんじゃねぇかなぁ?」
「ほう。お前らはソラスを知っているのか?」
「そらそうよ。偽者のお前と違って、俺達の顔は広い。直接、謁見した事もあらぁな」
オークの言っていることは、あながち嘘ではない気がする。ポルロンドの用心棒ギルド――――、いわゆるヤクザが、奴隷商人と繋がりのあるワンドリッター侯爵の顔を知っていてもおかしくはないだろうから。
「兜を脱いで顔を見せてみろよ、偽モン」
調子に乗り出したチンピラ二人は、自分の分厚いアゴ肉を持ち上げて、兜を脱ぐような仕草をして見せた。
「良いだろう。兜は脱ぐ。が、そこまでさせて、私がワンドリッターに縁のある者だった場合、貴様らはどう責任を取るのだ?」
「そん時ぁ、自分の首を持ってワンドリッター卿に土下座しにいくさ。ゲッハッハ!」
うわ~。オークは土下座フラグ立てたな。下手すりゃ、この黒騎士、ソラスその人かもしれねぇぞ。
「しかと約束した」
黒騎士はフルヘルムを脱いで、脇に抱え、じっとオークたちを見つめた。緑色のウェーブした髪と、緑色の目。端正な顔立ちは、如何にも樹族といった感じだ。髪はよく見ると金色の毛が混じっている。樹族は若い頃は金髪で、歳をとるごとに緑色になる者がいる。彼もそうなのかもしれない。
「脱いだぞ」
そう言われてオークたちは、一生懸命何かを思い出そうとしている。
「あ~っと。その顔、ソラス様じゃねぇのは確かだ。跡継ぎでもねぇ。主要な騎士の中の一人でもねぇ」
「貴様らはワンドリッターの騎士の顔を、一々覚えているのか?」
「だからこそ、ポルロンドで広い顔してられんだよ。俺たちに益する相手の顔を覚えるのも、仕事みたいなもんだ」
ん~。オークたちの様子からして、この黒騎士は偽者なのだろうか?
「知らねぇなぁ。あんたの顔」
やっぱりそうか。
オークがイキりながら、馬上の騎士のワンドを叩き落とした。
「やっちまったなぁ? 偽騎士様よぉ?」
俺は騎士が落としたワンドを急いで拾って、持ち主に返そうとする。
偽騎士がワンドの柄を掴んで、俺が末端を掴んでいる間に、指輪から情報が一瞬だけ流れてきた。
驚いた事にその情報の中に、シルビィ隊長の顔や樹族の剣士、その他の仲間と旅をしてる情景が頭に浮かんできたのだ。
うわ! この騎士、実力値三十一の英雄クラスだぞ! チンピラが敵う相手ではない。
「シルビィ隊長の知り合いですか?」
俺がそう言いながら、革鎧の分厚い金属部分を外して、ウォール家の紋章を胸に光らせた。
すると騎士とチンピラの動きが止まる。
「ほう、ウォール家の庇護下にあるとは聞いていたが、本当だったのだな。それから、気をつけ給えよ。オーガのオビオ。視るということは、視られるということでもあるのだ」
やべ。この人、読心魔法が使える。俺の情報も幾らか知られただろうな。
「どういう事だ?」
チンピラはシルビィの名前を聞いてから、動揺しっぱなしだ。
「俺は上位鑑定の指輪を身につけている。なので相手の情報を知る事ができるんだ」
「で、そいつは何者なんでぇ?」
「ワンドリッター家の三男(実際は腹違いの兄が一人いるので四男)、ステコ・ワンドリッターだ」
俺が言う前に、ステコ・ワンドリッターは自ら名乗った。
市場の中を馬に乗って移動するなんて、余程濡れた地面が嫌なんだろう。
俺の視線にが自分たちに向いていない事に気がついたチンピラがそちらを向く。
「あ、あれは!」
チンピラ二人が驚いている理由は何となくわかる。黒騎士と言えば、樹族至上主義のソラス・ワンドリッター侯爵の騎士だからだ。
黒騎士の馬は、俺の簡易出店の前で止まった。ちょっと嫌な予感がするなぁ。ワンドリッターは、奴隷商人と繋がりがあるし。
「何用でしょうか、黒騎士様」
揉み手で魚屋の主人が、黒騎士の前に出た。フルヘルムを被っているので怒っているのか、喜んでいるのかは、近づいて、声を聞いて判断するしかない。
「バトルコック団のリーダーは、お前か」
魚屋の店主を無視して、黒騎士は俺を見た。息がしづらいのか、コーホーコーホー言ってる。
「はい、俺ですが」
貴様を拘束する、とか言われたらすぐにでも逃げる準備をしなければ。
「うな丼とやらを所望する」
おぉ? お客さんだぁ! きっと噂を嗅ぎつけてやって来たんだな。
俺が最後のうな丼を手に取ろうとすると、チンピラ二人がそれを遮った。
「悪いが、オーガ。このうな丼は、俺たちが買う予定だったんだ」
おいおい、急にどうした? 場所代取りに来たんじゃなかったのか? それにワンドリッターの騎士相手に、喧嘩を売るつもりか?
「黒騎士の旦那ァ! あんたどの部隊に所属してんだい? 鎧に杖の紋章が入っているのは見て分かるが、部隊のマークまでは無ぇなぁ? えぇ?」
なるほど、オークたちはこの黒騎士を偽者だと判断したんだ。
「貴様らオークに答える義理はない」
「それによぉ! 黒騎士が単騎でポルロンドにいるのもおかしいぜ」
「今一度言う。答える義理はない。バトルコック団リーダー、オビオ。うな丼の値段は幾らだ?」
「はい。銀貨二枚です」
従者もいない黒騎士は、腰の革袋から銀貨を取り出そうとした。
「待てよ、偽者! その金をしまえ! 最後のうな丼! 俺らは銀貨四枚で買うぜ!」
チンピラは調理台の上に、銀貨四枚をジャラリと置いた。
「調子に乗るなよ、オークどもが」
黒騎士がワンドを取り出そうとしたが、オークは尻込みせず張り合った。
「ああ? ここは、樹族国じゃねぇんだぞ? 他国で諍い起こす気か? そんな事すりぁ、ソラス様の顔に泥を塗るんじゃねぇかなぁ?」
「ほう。お前らはソラスを知っているのか?」
「そらそうよ。偽者のお前と違って、俺達の顔は広い。直接、謁見した事もあらぁな」
オークの言っていることは、あながち嘘ではない気がする。ポルロンドの用心棒ギルド――――、いわゆるヤクザが、奴隷商人と繋がりのあるワンドリッター侯爵の顔を知っていてもおかしくはないだろうから。
「兜を脱いで顔を見せてみろよ、偽モン」
調子に乗り出したチンピラ二人は、自分の分厚いアゴ肉を持ち上げて、兜を脱ぐような仕草をして見せた。
「良いだろう。兜は脱ぐ。が、そこまでさせて、私がワンドリッターに縁のある者だった場合、貴様らはどう責任を取るのだ?」
「そん時ぁ、自分の首を持ってワンドリッター卿に土下座しにいくさ。ゲッハッハ!」
うわ~。オークは土下座フラグ立てたな。下手すりゃ、この黒騎士、ソラスその人かもしれねぇぞ。
「しかと約束した」
黒騎士はフルヘルムを脱いで、脇に抱え、じっとオークたちを見つめた。緑色のウェーブした髪と、緑色の目。端正な顔立ちは、如何にも樹族といった感じだ。髪はよく見ると金色の毛が混じっている。樹族は若い頃は金髪で、歳をとるごとに緑色になる者がいる。彼もそうなのかもしれない。
「脱いだぞ」
そう言われてオークたちは、一生懸命何かを思い出そうとしている。
「あ~っと。その顔、ソラス様じゃねぇのは確かだ。跡継ぎでもねぇ。主要な騎士の中の一人でもねぇ」
「貴様らはワンドリッターの騎士の顔を、一々覚えているのか?」
「だからこそ、ポルロンドで広い顔してられんだよ。俺たちに益する相手の顔を覚えるのも、仕事みたいなもんだ」
ん~。オークたちの様子からして、この黒騎士は偽者なのだろうか?
「知らねぇなぁ。あんたの顔」
やっぱりそうか。
オークがイキりながら、馬上の騎士のワンドを叩き落とした。
「やっちまったなぁ? 偽騎士様よぉ?」
俺は騎士が落としたワンドを急いで拾って、持ち主に返そうとする。
偽騎士がワンドの柄を掴んで、俺が末端を掴んでいる間に、指輪から情報が一瞬だけ流れてきた。
驚いた事にその情報の中に、シルビィ隊長の顔や樹族の剣士、その他の仲間と旅をしてる情景が頭に浮かんできたのだ。
うわ! この騎士、実力値三十一の英雄クラスだぞ! チンピラが敵う相手ではない。
「シルビィ隊長の知り合いですか?」
俺がそう言いながら、革鎧の分厚い金属部分を外して、ウォール家の紋章を胸に光らせた。
すると騎士とチンピラの動きが止まる。
「ほう、ウォール家の庇護下にあるとは聞いていたが、本当だったのだな。それから、気をつけ給えよ。オーガのオビオ。視るということは、視られるということでもあるのだ」
やべ。この人、読心魔法が使える。俺の情報も幾らか知られただろうな。
「どういう事だ?」
チンピラはシルビィの名前を聞いてから、動揺しっぱなしだ。
「俺は上位鑑定の指輪を身につけている。なので相手の情報を知る事ができるんだ」
「で、そいつは何者なんでぇ?」
「ワンドリッター家の三男(実際は腹違いの兄が一人いるので四男)、ステコ・ワンドリッターだ」
俺が言う前に、ステコ・ワンドリッターは自ら名乗った。
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