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ワンドリッター家の命令
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ワンドリッター家の三男・・・。
貴族の決まり事でいえば、長男は家を継ぎ、次男は良くて長男の補佐。三男に至っては、いざって時のストック、或いは邪魔者。
いくらワンドリッターの名を背負っているとはいえ、裏社会を知るチンピラに、舐められてもおかしくはない立場かも。
思ってた通り、オーク達がヘラヘラと笑う。
「ああ、聞いてるぜ。ワンドリッターの三男坊は、ソラス卿と仲が悪い。シュラス国王へ差し出された人質。今は王国近衛兵騎士だったっけか? 今日はシュラス国王の小間使で、ポルロンドに来たのか?」
へぇ。このステコって人は、父親と仲が悪いのか。それは樹族至上主義を嫌っての事かな?
「だとすれば、私は黒騎士としてではなく、朱と金で彩られた鎧を着ているはずだが?」
「じゃあ、三男坊として来たのか。何用でちゅか? チュパチュパ!」
オークは乳を吸うような仕草をして、ステコを馬鹿にしている・・・。これは、流石にひでぇ。
「フッ。大した自信だな。この私は、お前よりワンドリッターから遠いと言いたいのか?」
「そうでちゅ、バブバブ。俺らはなぁ、ポルロンドの裏側を仕切ってんだ。ワンドリッター家とは奴隷売買も・・・」
そこまで言って、オークの周りから音が無くなった。
【沈黙】の魔法を、黒騎士がオークに向けて放ったのだ。
「ワンドリッター家の名誉に関わる暴言は、控えてもらおうか。シュラスコ国王の一声で、我が国は奴隷売買を禁止した。今は奴隷売買などしておらぬ。それ以上名、誉を傷つけるようなら」
オークの一人の片足が、地面から生えた岩に挟まれて折れた。恐らく黒騎士の放った地魔法だと思うけど、地属性に攻撃魔法は無い。独自に編み出した魔法なんだろうな。すげぇ。
「ぎゃああ!」
と無音の中で叫んでいるのだと思う。音のない中で、折れた足を抱えて転げ回っているオークは、ちょっと面白かった。
「ワンドリッター家を愚弄した代金としては、安いものだろう? 地面にへばりつく豚糞がッ!」
おぉいぃ。急な悪口! このステコって人も、樹族至上主義者っぽいぞ!
「くそ! 俺たちの面子を潰しておいて、ただで済むと思うなよ! そのうち表を歩けねぇようにしてやるからよぉ! 覚えてやがれ!」
お決まりのパターンだな。怪我をした相方を肩で支えながら、チンピラは去っていった。
あれ? そう言えばオークの声が聞こえた。黒騎士がいつの間にか魔法を解除していたのか。
「覚えておくのは無理だな。オークの顔は見分けがつかぬ」
素っ気ない返しだな。
大体「覚えてやがれ!」という捨て台詞を吐くチンピラに、大した報復能力はない。更に親分に泣きついても、無駄だ。
チンピラ二人とワンドリッター家との繋がりを天秤にかけてみれば、親分だって直ぐに答えが出るだろう。
「あ、ありがとうございます! ステコ様!」
魚屋のおっちゃんが黒騎士にお礼を言ったので、俺も一緒に頭を下げた。
ワンドリッター家の三男は、お礼には何も答えず、俺の手の中の物を見ている。
「あ! そうでした! うな丼ですね?」
「う、うむ。噂では、そのうな丼とやらは、精がつくと聞いたが、本当かね?」
あれ、急に照れだしたぞ?
「ええ、それはもう! 竿が長くなりますし! でも、馬で駆けて来る程、欲しい物だったのですか?」
言ってて恥ずかしいが、竿が長くなるのは事実だ。しかも恥ずかしさで動揺し、黒騎士に失礼な事を言ってしまった。
「なんと、竿が・・・。ゴホン。お前はシルビィの知り合いのようだし、まぁいいか。教えてやろう」
急に砕けた感じになったぞ。ワンドリッター家の三男と聞いて、緊張していたけど、そんな悪い人には見えないなぁ。
「貴族の社交界は当然、夜の付き合いもある。私のようなワンドリッター家の弾かれ者とて、家の命令に従わねばならぬ時もあるのだ。私に抱かれたいという婦人がいれば、抱きに行く。それが、家の利益になるのならば、な」
ステコ・ワンドリッターは浮かない顔をしている。
そりゃそうか。抱きたくもない人を抱くのって、大変だろうな。気乗りもしないだろうし。うな丼に頼って当然だ。
「あ! しまったぁぁぁ! 急がないと!」
突然叫んだので、黒騎士とおっちゃんを驚かしてしまった。
「何をそんなに慌てている?」
「リュウグが飛空艇乗り場で待っているんだ! それから、魔法のロケットペンダントを買わないと! ああ時間がない!」
飛空艇乗り場は、市場からでも見える。
建物の隙間から、遠く離れた飛空艇の上部プロペラが回り始めたのが見えた。
「あああ!」
俺は気が動転して、頭を抱えてウロウロする。
「君が欲している物は、これだろう?」
え? 何でこの人、魔法のロケットペンダントを持っているんだ?
そうだ、この人は読心の魔法が使えるのだった。でも、漫画彼岸島の台車の如く、都合よく俺の欲しい物を持っているってのは、奇跡以外のなにものでもない!
「これは自分の思い出を再現する為に買ったのだ。四十年ほど前に一緒に冒険をした仲間の中に、奇妙な樹族の剣士がいてな。その剣士を調べようと・・・。おっとその話をする時間はなかったのだったな。さぁ、タダではやれんが、このペンダントを持っていけ。請求書は王の盾の娘に送っておく」
あ、ありがてぇ!
俺がナノマシンを加速させようとしたその時、ステコさんが声を掛けてきた。ついでに何やら魔法を詠唱している。
「シルビィによろしくな。バトルコック団のオビオ」
そう言ってステコさんが、ワンドを一振りすると、俺の視界の中で空間がぐにゃりと揺れる。
「転移魔法、ありがとうございます! ステコさん!」
細身の黒騎士が笑って頷くのを見た次の瞬間、俺はリュウグの待つ空港にいた。
貴族の決まり事でいえば、長男は家を継ぎ、次男は良くて長男の補佐。三男に至っては、いざって時のストック、或いは邪魔者。
いくらワンドリッターの名を背負っているとはいえ、裏社会を知るチンピラに、舐められてもおかしくはない立場かも。
思ってた通り、オーク達がヘラヘラと笑う。
「ああ、聞いてるぜ。ワンドリッターの三男坊は、ソラス卿と仲が悪い。シュラス国王へ差し出された人質。今は王国近衛兵騎士だったっけか? 今日はシュラス国王の小間使で、ポルロンドに来たのか?」
へぇ。このステコって人は、父親と仲が悪いのか。それは樹族至上主義を嫌っての事かな?
「だとすれば、私は黒騎士としてではなく、朱と金で彩られた鎧を着ているはずだが?」
「じゃあ、三男坊として来たのか。何用でちゅか? チュパチュパ!」
オークは乳を吸うような仕草をして、ステコを馬鹿にしている・・・。これは、流石にひでぇ。
「フッ。大した自信だな。この私は、お前よりワンドリッターから遠いと言いたいのか?」
「そうでちゅ、バブバブ。俺らはなぁ、ポルロンドの裏側を仕切ってんだ。ワンドリッター家とは奴隷売買も・・・」
そこまで言って、オークの周りから音が無くなった。
【沈黙】の魔法を、黒騎士がオークに向けて放ったのだ。
「ワンドリッター家の名誉に関わる暴言は、控えてもらおうか。シュラスコ国王の一声で、我が国は奴隷売買を禁止した。今は奴隷売買などしておらぬ。それ以上名、誉を傷つけるようなら」
オークの一人の片足が、地面から生えた岩に挟まれて折れた。恐らく黒騎士の放った地魔法だと思うけど、地属性に攻撃魔法は無い。独自に編み出した魔法なんだろうな。すげぇ。
「ぎゃああ!」
と無音の中で叫んでいるのだと思う。音のない中で、折れた足を抱えて転げ回っているオークは、ちょっと面白かった。
「ワンドリッター家を愚弄した代金としては、安いものだろう? 地面にへばりつく豚糞がッ!」
おぉいぃ。急な悪口! このステコって人も、樹族至上主義者っぽいぞ!
「くそ! 俺たちの面子を潰しておいて、ただで済むと思うなよ! そのうち表を歩けねぇようにしてやるからよぉ! 覚えてやがれ!」
お決まりのパターンだな。怪我をした相方を肩で支えながら、チンピラは去っていった。
あれ? そう言えばオークの声が聞こえた。黒騎士がいつの間にか魔法を解除していたのか。
「覚えておくのは無理だな。オークの顔は見分けがつかぬ」
素っ気ない返しだな。
大体「覚えてやがれ!」という捨て台詞を吐くチンピラに、大した報復能力はない。更に親分に泣きついても、無駄だ。
チンピラ二人とワンドリッター家との繋がりを天秤にかけてみれば、親分だって直ぐに答えが出るだろう。
「あ、ありがとうございます! ステコ様!」
魚屋のおっちゃんが黒騎士にお礼を言ったので、俺も一緒に頭を下げた。
ワンドリッター家の三男は、お礼には何も答えず、俺の手の中の物を見ている。
「あ! そうでした! うな丼ですね?」
「う、うむ。噂では、そのうな丼とやらは、精がつくと聞いたが、本当かね?」
あれ、急に照れだしたぞ?
「ええ、それはもう! 竿が長くなりますし! でも、馬で駆けて来る程、欲しい物だったのですか?」
言ってて恥ずかしいが、竿が長くなるのは事実だ。しかも恥ずかしさで動揺し、黒騎士に失礼な事を言ってしまった。
「なんと、竿が・・・。ゴホン。お前はシルビィの知り合いのようだし、まぁいいか。教えてやろう」
急に砕けた感じになったぞ。ワンドリッター家の三男と聞いて、緊張していたけど、そんな悪い人には見えないなぁ。
「貴族の社交界は当然、夜の付き合いもある。私のようなワンドリッター家の弾かれ者とて、家の命令に従わねばならぬ時もあるのだ。私に抱かれたいという婦人がいれば、抱きに行く。それが、家の利益になるのならば、な」
ステコ・ワンドリッターは浮かない顔をしている。
そりゃそうか。抱きたくもない人を抱くのって、大変だろうな。気乗りもしないだろうし。うな丼に頼って当然だ。
「あ! しまったぁぁぁ! 急がないと!」
突然叫んだので、黒騎士とおっちゃんを驚かしてしまった。
「何をそんなに慌てている?」
「リュウグが飛空艇乗り場で待っているんだ! それから、魔法のロケットペンダントを買わないと! ああ時間がない!」
飛空艇乗り場は、市場からでも見える。
建物の隙間から、遠く離れた飛空艇の上部プロペラが回り始めたのが見えた。
「あああ!」
俺は気が動転して、頭を抱えてウロウロする。
「君が欲している物は、これだろう?」
え? 何でこの人、魔法のロケットペンダントを持っているんだ?
そうだ、この人は読心の魔法が使えるのだった。でも、漫画彼岸島の台車の如く、都合よく俺の欲しい物を持っているってのは、奇跡以外のなにものでもない!
「これは自分の思い出を再現する為に買ったのだ。四十年ほど前に一緒に冒険をした仲間の中に、奇妙な樹族の剣士がいてな。その剣士を調べようと・・・。おっとその話をする時間はなかったのだったな。さぁ、タダではやれんが、このペンダントを持っていけ。請求書は王の盾の娘に送っておく」
あ、ありがてぇ!
俺がナノマシンを加速させようとしたその時、ステコさんが声を掛けてきた。ついでに何やら魔法を詠唱している。
「シルビィによろしくな。バトルコック団のオビオ」
そう言ってステコさんが、ワンドを一振りすると、俺の視界の中で空間がぐにゃりと揺れる。
「転移魔法、ありがとうございます! ステコさん!」
細身の黒騎士が笑って頷くのを見た次の瞬間、俺はリュウグの待つ空港にいた。
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