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禁断の箱庭と融合する前の世界(23)
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ヒジリはツィガル城の玉座で頬杖を突いて三面鏡を見つめていた。
鏡の中は以前と違って別の風景が映っている。人外の容姿をした生き物が互いを殺し合い、その風景は宛ら修羅地獄のようだった。
向こうからは此方の存在を感知できないのか彼らは観察されている事に全く気がついていない。玉座の間を守るガードナイトにに三面鏡を閉じさせ、再び開かせるとまた違う風景が見える。
今度は花畑で花飾りを作っている人間の子供たちが見える。
前皇帝であるヴャーンズとその使い魔が気まずそうにその様子を見ている。この異世界に一方通行で通じる三面鏡にヒジリを追いやろうとした事を気にしているのだ。
しかしそんな事にはヒジリは気が付かず、純粋に三面鏡を不思議がっている。
「何故この星はここまで異世界への壁が薄いのか・・・」
ヴャーンズのようなメイジにとって異世界は珍しいものではないので、三面鏡を不思議がる皇帝を見て逆に不思議がる。
「世界の壁の薄さを心配してらっしゃるのでしょうか?陛下。でしたら心配は無用です。自然界に存在する世界の合わさり目は不安定で9割9分9厘、来訪者はそのまま自分の世界に戻っていきます」
「別宇宙との合わさり目がある事自体驚きなんだがね・・・。ところでウメボシ、ツィガル城の書庫には樹族の遺跡に関する資料はあったか?」
「残念ながら・・・」
「魔法院にも手がかりは無く、ここにもない。魔法に詳しいヴャーンズも知らない。まだまだ謎が解けるのは先だな」
そう言って立ち上がると伸びをする。
「今日はもう後の事をヴャーンズに任せてゴデまで行くか。カプリコン、通信は安定しているな?」
上品な紳士のような声が頭骨に響く。
「はい、転送なら問題なく行えます」
ヒジリは頭を軽く振って不愉快な顔をした。
「相変わらず、マスターは骨伝導通信が嫌いなのですね。通信デバイスを持ち歩くのも頑なに嫌がりますし。ウメボシはいつも不安なんですよ。広域スキャニングでは離れた場所にいるマスターが何をしているのか事の詳細まで判りませんからね」
「通信前後に発生するあのキーンという音が苦手なのだ。誰にでもそういった苦手があるものだ」
「あの音は普通、感知は出来ないはずなのですが、マスターは耳が良過ぎですね」
「カプリコン、ゴデの街まで頼む」
「了解しました」
出かける皇帝にヴャーンズとサキュバスはお辞儀する。
「それでは陛下、良い午後を。私も使い魔が腹を空かせておりますのでこれにて失礼致します」
言い終わるとヴャーンズはニコニコとしているウェイロニーに押されながら隠し部屋に入っていった。
ヒジリはウメボシに悪戯っぽく聞く。
「サキュバスの食事ってなんだろうな?ウメボシ」
「あら?セクハラですか?ウメボシはその程度ではたじろぎません。それの答えはスペ・・・」
カプリコンは咳払いをすると二人をゴデの街へと転送した。
ヒジリがコーヒーを飲もうとオーガの酒場のドアの前に立つと中から奇妙な声が聞こえる。
「んん、おいじぃ~!オティムポ、おいじぃ~!」
ウメボシとヒジリは怪訝な顔をして扉を見つめた。
「今の声、ヘカティニスの声だったな?」
「そうですね」
ウメボシは酒場の中をスキャンをしようとしたが調子が悪い。
中からはベンキやスカーの笑い声も聞こえてくる。
ヒジリは困惑した。そういう事をやっているのか?あのヘカティニスがか?と。今まで感じたことがない奇妙な苛立ちを感じる。
なんだこの苛つきは・・・これも人類の革新―――ニュータイプになる兆しか?
嫉妬の感情すらヒジリには難しかった。自分が今どういった感情なのか理解できていない。
「ええい、南無三!兎に角入るぞ、ウメボシ!」
勢い良く扉を開けると思いきや、ヒジリは静かに扉を少し開けて中を覗く。その姿は親のイチャイチャシーンを恐る恐る覗く子供のようであった。
「お、ヒジリ!お前もオティムポ食うか?」
ヘカティニスは扉の隙間から顔を見せるヒジリに向かって声を掛ける。
ヒジリはホッとする。怪しい行為の最中でなくてよかったと。どうやら何かを食べているようだ。そして変な方向に想像するのは無理があったと反省した。
「オティムポとは何かね?」
一同はギョッとする。
ヘカティニスはモジモジしながら質問に答えた。
「そ、そでは・・・男の股に付いているアレで・・・」
やっぱりかー!とヒジリは焦る。どういう事か判らない。ベンキが眼鏡をクイクイさせながらヘカティニスの回答を訂正した。
「ヒジリの発音が変だったから仕方ないが、彼はオティムポ牛の事を聞いたのだ、ヘカティニス。オティムポとはこれだヒジリ」
どうもヒジリの発音だと男性器に聞こえるらしく、実際はオティムポという大型野生動物の肉料理の事だった。
「マスターがインプットした共通語は地走り族訛りが多少ありますので、どうしても変な発音になってしまうのかと。修正データを送っておきました。発音してみてください」
「うむ。オティムポ!」
オーガ達は手を叩いて上手い上手いとヒジリの発音を褒めた。
「そうだ、オティムポ!」
ヘカティニスもオティムポと言う。
正直発音の違いがいまいち判らず、うら若き乙女がオティムポと言う度にヒジリの背中がぞくりとした。
さぁ食えと出された肉はジューシーで香ばしく、和牛のように柔らかい上に癖がなくて確かに美味しかった。
「何だこの肉は・・・」
「オティムポだ」
「いや、それはさっき聞いた。なんという美味さだという意味で言ったのだヘカ」
「気に入ったか?オティムポ」
「ああ、気に入ったよ。オティムポ」
「マスターはオティムポって言いたいだけなんじゃないですか?」
ウメボシがジト目で見ている。
ウメボシの真面目な声で言う”オティムポ“も中々良いものだとヒジリは目を閉じて聞いた。声だけで言えばウメボシの声がヒジリは一番好きなのだ。
「そんなに気に入ったんなら、皆で明日狩りに行こうか。これはおすそ分けで貰ったからあまり量が無いんだわ。店の食材の仕入れも兼ねて行こう」
ゴールキ将軍がヒジリを狩りに誘った。
正直、おじさんの声でオティムポとは聞きたくなかったので、ゴールキが牛の名前を言わなかった事にヒジリはホッとした。
が、直ぐにドォスンが牛の名前を言ってしまう。
「オティムポなら絶望平野に沢山群れてるど」
ヒジリは、ドォスンのもっさりとした声での”オティムポ“に興ざめして肩を竦めた後、目を開いた。
「流石は司令官。オティムポが沢山いる場所を知っているなんて凄いな!」
スカーがゴマすりをする。文字通り手のひらをすり鉢に見立てて。
いつの間にか砦の戦士ギルドの中で司令官になっていたドォスンにゴマすってご機嫌伺いをする程、階級が厳しいようには思えないがな、とヒジリは笑う。
ヒジリは砦の戦士たちの階級制度はあまり意味のないものだと感じた。
「ヒジリ一等兵!今日はここに泊まっていけ。明日は早いぞ!」
「イエッサー!」
ゴールキに階級で呼ばれ、ヒジリはビシっと立って何故か海軍式敬礼をした。
勿論そんな敬礼はこの星にはない。ヒジリが急に滑稽な動きをしておどけたように見えたオーガ達はガハハハハと笑った。
受けたのならそれでいい、とヒジリも笑う。
夕方からヒジリはオーガ達の酒盛りに付き合わされ、酒飲み勝負を挑まれた。
勿論、ナノマシンがアルコールを毒と見なして直ぐに分解してしまうので最後まで酔いつぶれることはない。この勝負は夜中まで続き、結局オーガ達は酔い潰れて、砦で寝るように椅子や机にもたれ掛かって寝てしまった。
もう一人倒れ無かったオーガがいる。それはヘカティニスだった。意識は保っているが舌はもつれ足取りもフラフラである。大きなソファーに座るヒジリの横に来ると、手の上に手を重ねてきた。
「さすがは星のオーガだど。男らしくて素敵だった。おでは店の手伝いするから、明日は一緒に行けないけど頑張ってな」
主に急接近するヘカティニスにウメボシは警戒する。
シルビィを見てきたウメボシはヘカティニスも同じ様にマスターに飛びかかるかもしれないと考え、目を光らせた。
が、ヘカティニスはうっとりとヒジリを見つめた後、「じゃあおでは水浴びをしてから部屋で寝るから」と言って立ち去ってしまった。
主がどこか名残惜しそうにヘカティニスの背中を見つめている。もう少し傍にいて欲しそうな顔である。
ウメボシに戦慄が走った。
(ヘカティニスは厄介かもしれません!生まれ持った才能や本能だけで恋の駆け引きをしている!これまで人を魅了してきたマスターが魅了されかけているじゃないですか!あぁ、なんて恐ろしい娘でしょうか!)
もしウメボシに毛が生えていれば、間違いなくごっそりと白髪になっていただろう。
ヘカティニスは自分の考えが及ばないところで心配の種をドローン型アンドロイドに植えつけたていた。
昨日の夕方から夜中までずっと酒を飲んでいたにも関わらず、砦の戦士達はケロっとした顔で絶望平野を走っていた。
アンデッドやドラゴンの少ないルートを選んで進んで行くが、それでも途中でスケルトンやリッチやら若いドラゴンに遭遇してしまう。
リッチは魔法の効かないヒジリが拳で打ち砕き、若いドラゴンやスケルトンは砦の戦士たちで追い払ったり、倒したりした。
勿論ドラゴンの肉や角等を得てホクホク顔だ。リッチからは魔法の指輪やアミュレットが手に入る。
ヒジリはそれらを持っていても意味が無いので砦の戦士達に分け与えた。
戦士たちは鑑定をしていない、効果も判らないそれらの装備を喜んで身に着けていく。
喜ぶ砦の戦士達の中でスカーは嘆いた。
「ドォスンに続いて、ヒジリも砦の戦士ギルドに貢献してるじゃねぇか・・・。こりゃあもう昇進だな。カァー!参ったな」
「悪いな、スカー。次回からはヒジリ軍曹と呼んでもらおうか」
砦の戦士は貢献度によって階級が上がる。なのでヒジリは寄付した魔法の装備で間違いなく階級は上がるだろう。あまり意味はないが。
少し離れた場所でドォスンが若い青銅竜を倒した。
「それにしてもドォスンは日に日に強くなっているな。今も素手でドラゴンの攻撃を弾いたぞ」
ヒジリがドォスンを見て驚くとベンキが自分の事のように自慢する。
「あいつの二つ名を知っているか?有りがちな名だが誰からも一目置かれる強力な二つ名だ」
「う~ん、竜殺しだろう?きっと」
「正解。あいつはドラゴンを倒してからメキメキ強くなっている。今じゃギルドの中だと、とても硬い盾役だ。お前に教えてもらった技が凄く役に立っていると感謝していたぞ」
「そういえば戦闘スタイルが私に似ているな。グランデモニウム城偵察のクエストの前に少しだけレクチャーした程度だったのだが」
ヒジリはよく相手の攻撃に合わせて弾いたり、カウンターを放つ癖がある。
ドラゴンに大してドォスンも同じことをしていた。
ヒジリはダメージを吸収するパワードスーツがあるから冷静にそれが出来るのであって、ドォスンのような毛皮の鎧一式と、愚鈍さを表す牛の生えかけみたいな角と耳が付いたフードでは心許無い。余程の勇気がなければ恐怖や緊張で失敗するだろう。
(正直、素の戦闘能力だけで言えばドォスンのほうが上だ。凄いな・・・彼は。というかヘカティニスにも負けるのだから砦の戦士たちにも負けているだろうな、私は)
そう思うと途端にドォスンが頼り甲斐があって格好良く見えてきたが、彼はドラゴンの糞を踏んでしまいアォォと呻いて凹んでいた。
リッチや悪魔、若いドラゴンを数匹倒して辿り着いた草原にオティムポの群れはいた。
オティムポは言ってしまえば巨大な一角の牛であった。子供でもオーガ程の体高があり、大人はその二倍はある。
砦の戦士たちはヒャッハー!と世紀末のレイダーのような叫び声を上げると投げ縄を持って逃げるオティムポを追いかけ回し始める。
オティムポの逃げ足は早いので捕まえるチャンスはあまりない。
集中力を研ぎ澄ませ、投げ縄を角に引っ掛け引っ張る。角には微妙に段があり縄の引っ掛かりが良い。
ヒジリは高速移動で一際大きな一匹を狙った。オティムポは角に引っかかった縄に抗うどころか、ヒジリ目掛けて突進してきた。角で突き殺すつもりだ。
戦士たちが心配して横目で見る中、ヒジリは縄を捨て両手を上と下に構えた。
オティムポの低く下げた頭から鋭い角が迫る。このままだと角はヒジリの顔か胸を貫くだろう。
皆がもうダメだと思った瞬間、ヒジリは叫ぶ!
「真空!竜巻落とし!」
言う必要はない。言う必要はないが何かカッコイイ。それだけの理由でヒジリは叫ぶのだ。
ギュルンと円を描くように回した手から竜巻が発生して、激しく回転するオティムポは牛の丸焼きのようだ。
天地が解らなくなった牛は地面に叩きつけられて気絶してしまった。
気絶した牛に向かってヒジリは両手を合わして命の糧になってもらう事に感謝し、心臓に向かってデスパンチを放ち、止めを刺した。
「やったな!ヒジリ!」
ドォスンはオティムポを逃がしてしまい、手持ちぶたさだったのかヒジリの倒した大きな獲物を見に来た。
「この大きさだとオーガ三百人が腹いっぱいになる。見た目以上に肉が詰まっているんだど」
他のオーガ達も集まってきた。結局牛を仕留めたのは将軍とスカーとベンキだけだったのだ。
「じゃあさっさと解体すっか。あんまり時間がかかると血の匂いでドラゴンが集まってくるから素早くな」
スカーがそう言うと戦士たちはよく切れるナタを取りだして、手際よくオティムポを解体し始めた。
「きゃあ!」
「あら、可愛い悲鳴ですね、マスター」
ヒジリは解体されていくグロテスクな牛の死体を見て、女の子みたいな悲鳴をあげてしまった。
戦士たちはまさかヒジリがグロテスクなものに弱いとは思わなかったので、驚いて仲間同士で顔を見合わせた後、腹を抱えて笑いだした。
「だ、誰にだって苦手なものはあるはずだ!」
「そうだな、可愛い子ちゃん。誰にだって弱点はあるが、少なくともワシらは牛の内臓を見て悲鳴を上げたりはしない。ガハハ!」
将軍の揶揄いにヒジリはむくれた。
いつも三十路か四十路のような雰囲気を出しているヒジリだが、まだまだ二十歳になるかならないかの若者らしい要素があるのを知って、ゴールキは少し安心した。
この件以降しばらくはヒジリは暫く砦の戦士達から乙女の戦士と呼ばれるようになった。
オーガ達が街に持ち帰った大量の肉はすぐには食べない。
一週間程寝かせる必要がある。直ぐに食べても固くて美味しくはないのだ。
大量に肉があるので、皆に気前よく振る舞おうという話になり、砦の戦士たちと計画を練ってオティムポ謝肉祭の準備を始める。
よく催し物をやっている街の中央広場に、ズラッと炭焼きコンロを並べ各自で焼いてもらう事にした。コンロはカプリコンに頼みデュプリケイトしてもらって用意する。
カプリコンが宇宙から次々と―――たまに失敗して鉄くずを作りながら―――炭焼きコンロを出す様子を見て、ウメボシがブーブーと文句を言っている。
「最初はこういうチートをするなと言ってたのに結局、大規模デュプリケイトを二回もしたじゃないですか!」
と、あまりにしつこく言うのでヒジリはウメボシに許してくれと優しくキスをするとウメボシは”ン!”と白目をむいて身を震わせ満足し、静かになった。
こうしてオティムポ謝肉祭は始まった。花火が打ち上がり、広場を区切った仕切りの外で待ち構えていた住人たちがドッと雪崩れ込む。
オーガ達が大きな肉を無造作に網の上に置いていく。
ゾンビ襲来の件で少なくなった住民達には十分過ぎるほど肉は行き渡り、旅行者達にも振る舞えるほどであった。
誰もがその美味さに舌鼓を打ち喜ぶ。
あまりの美味しさに驚いた地走り族の商人は何処で仕入れられるのか取引は出来るのかと、ゴールキ将軍に商談を持ちかけるほどの人気だった。
肉は無料だが、酒は有料でゴデの街にある色んな酒場から出張してきた店員が自前の酒を売り歩く。
酒は飛ぶように売れた。吟遊詩人達はチップを貰い楽しげな音楽を奏で、踊り出す住民たちの陽気な笑い声が彼方此方に響く。
”死者の大災厄“とゴデの住人が呼ぶ大災厄以降、陰気だったこの街に活気が戻った。
ヒジリが肉を各テーブルに配っているとナンベルとミミ、ホクベルとハナ、孤児院の子供たちがはしゃぎながら肉を頬張っている姿が見える。
ミミがよそ見をした瞬間、ナンベルがミミの肉を素早く盗み食いして気づかれてしまい、ポカポカと頭を叩かれている。
「一時的とはいえ、この街に活気が戻ってきたのは何だか嬉しいな。この肉は主殿にも是非食べさせてあげたい。明日は日曜日だし持って行ってやるか」
「それは良いですね。きっと喜ぶでしょう。まだまだ元気がないですからね・・・」
ヒジリから肉を持って行くという手紙を貰ったサヴェリフェ家の姉妹たちはワクワクしながら、現人神の皇帝自らが焼く肉をまだかまだかと待っている。
貧乏時代を思い出したのか、ナイフとフォークでテーブルを叩いて笑顔で催促している。
「お肉!お肉!お肉!」
「ハハハ!そう、せっつくな。肉は逃げたりはしない。ほら出来たぞ」
皿の上のステーキからは透明な脂が滲み出ており、見ただけで肉のジューシーさが解る。
姉妹はもう堪え切れなくなりお祈りもせずに目の前の肉にがっついた。
「ンマーーイ!こんなに美味しいお肉、貴族になってからも食べた事ないよ!」
ここ最近色々あって沈みがちだったタスネはお肉を食べてこれ以上ない幸せな顔をしている。
「ほんと!美味しいわぁ!こんなお肉今まで食べたことが無い!ジューシーで柔らかくて、お肉特有の臭みも無くて、微かに甘みがあり、喉を通る頃には解けて無くなる!」
フランは食レポを勝手に始めだした。
「もぐもぐもぐ」
イグナは口でモグモグと言って咀嚼した後、目を輝かせ鼻息が荒くなった。相当美味しかったようだ。
「ウメーウメーウメー!」
コロネは口いっぱいに肉を頬張ると、何処かの二律背反の超人が蛍石を食うが如くウメーウメーと言っている。
姉妹は肉を一気に平らげてお代わりを待ちながらヒジリに聞く。
「これ、何のお肉?」
「オティムポ!」
「ええええええ!!×3」
鏡の中は以前と違って別の風景が映っている。人外の容姿をした生き物が互いを殺し合い、その風景は宛ら修羅地獄のようだった。
向こうからは此方の存在を感知できないのか彼らは観察されている事に全く気がついていない。玉座の間を守るガードナイトにに三面鏡を閉じさせ、再び開かせるとまた違う風景が見える。
今度は花畑で花飾りを作っている人間の子供たちが見える。
前皇帝であるヴャーンズとその使い魔が気まずそうにその様子を見ている。この異世界に一方通行で通じる三面鏡にヒジリを追いやろうとした事を気にしているのだ。
しかしそんな事にはヒジリは気が付かず、純粋に三面鏡を不思議がっている。
「何故この星はここまで異世界への壁が薄いのか・・・」
ヴャーンズのようなメイジにとって異世界は珍しいものではないので、三面鏡を不思議がる皇帝を見て逆に不思議がる。
「世界の壁の薄さを心配してらっしゃるのでしょうか?陛下。でしたら心配は無用です。自然界に存在する世界の合わさり目は不安定で9割9分9厘、来訪者はそのまま自分の世界に戻っていきます」
「別宇宙との合わさり目がある事自体驚きなんだがね・・・。ところでウメボシ、ツィガル城の書庫には樹族の遺跡に関する資料はあったか?」
「残念ながら・・・」
「魔法院にも手がかりは無く、ここにもない。魔法に詳しいヴャーンズも知らない。まだまだ謎が解けるのは先だな」
そう言って立ち上がると伸びをする。
「今日はもう後の事をヴャーンズに任せてゴデまで行くか。カプリコン、通信は安定しているな?」
上品な紳士のような声が頭骨に響く。
「はい、転送なら問題なく行えます」
ヒジリは頭を軽く振って不愉快な顔をした。
「相変わらず、マスターは骨伝導通信が嫌いなのですね。通信デバイスを持ち歩くのも頑なに嫌がりますし。ウメボシはいつも不安なんですよ。広域スキャニングでは離れた場所にいるマスターが何をしているのか事の詳細まで判りませんからね」
「通信前後に発生するあのキーンという音が苦手なのだ。誰にでもそういった苦手があるものだ」
「あの音は普通、感知は出来ないはずなのですが、マスターは耳が良過ぎですね」
「カプリコン、ゴデの街まで頼む」
「了解しました」
出かける皇帝にヴャーンズとサキュバスはお辞儀する。
「それでは陛下、良い午後を。私も使い魔が腹を空かせておりますのでこれにて失礼致します」
言い終わるとヴャーンズはニコニコとしているウェイロニーに押されながら隠し部屋に入っていった。
ヒジリはウメボシに悪戯っぽく聞く。
「サキュバスの食事ってなんだろうな?ウメボシ」
「あら?セクハラですか?ウメボシはその程度ではたじろぎません。それの答えはスペ・・・」
カプリコンは咳払いをすると二人をゴデの街へと転送した。
ヒジリがコーヒーを飲もうとオーガの酒場のドアの前に立つと中から奇妙な声が聞こえる。
「んん、おいじぃ~!オティムポ、おいじぃ~!」
ウメボシとヒジリは怪訝な顔をして扉を見つめた。
「今の声、ヘカティニスの声だったな?」
「そうですね」
ウメボシは酒場の中をスキャンをしようとしたが調子が悪い。
中からはベンキやスカーの笑い声も聞こえてくる。
ヒジリは困惑した。そういう事をやっているのか?あのヘカティニスがか?と。今まで感じたことがない奇妙な苛立ちを感じる。
なんだこの苛つきは・・・これも人類の革新―――ニュータイプになる兆しか?
嫉妬の感情すらヒジリには難しかった。自分が今どういった感情なのか理解できていない。
「ええい、南無三!兎に角入るぞ、ウメボシ!」
勢い良く扉を開けると思いきや、ヒジリは静かに扉を少し開けて中を覗く。その姿は親のイチャイチャシーンを恐る恐る覗く子供のようであった。
「お、ヒジリ!お前もオティムポ食うか?」
ヘカティニスは扉の隙間から顔を見せるヒジリに向かって声を掛ける。
ヒジリはホッとする。怪しい行為の最中でなくてよかったと。どうやら何かを食べているようだ。そして変な方向に想像するのは無理があったと反省した。
「オティムポとは何かね?」
一同はギョッとする。
ヘカティニスはモジモジしながら質問に答えた。
「そ、そでは・・・男の股に付いているアレで・・・」
やっぱりかー!とヒジリは焦る。どういう事か判らない。ベンキが眼鏡をクイクイさせながらヘカティニスの回答を訂正した。
「ヒジリの発音が変だったから仕方ないが、彼はオティムポ牛の事を聞いたのだ、ヘカティニス。オティムポとはこれだヒジリ」
どうもヒジリの発音だと男性器に聞こえるらしく、実際はオティムポという大型野生動物の肉料理の事だった。
「マスターがインプットした共通語は地走り族訛りが多少ありますので、どうしても変な発音になってしまうのかと。修正データを送っておきました。発音してみてください」
「うむ。オティムポ!」
オーガ達は手を叩いて上手い上手いとヒジリの発音を褒めた。
「そうだ、オティムポ!」
ヘカティニスもオティムポと言う。
正直発音の違いがいまいち判らず、うら若き乙女がオティムポと言う度にヒジリの背中がぞくりとした。
さぁ食えと出された肉はジューシーで香ばしく、和牛のように柔らかい上に癖がなくて確かに美味しかった。
「何だこの肉は・・・」
「オティムポだ」
「いや、それはさっき聞いた。なんという美味さだという意味で言ったのだヘカ」
「気に入ったか?オティムポ」
「ああ、気に入ったよ。オティムポ」
「マスターはオティムポって言いたいだけなんじゃないですか?」
ウメボシがジト目で見ている。
ウメボシの真面目な声で言う”オティムポ“も中々良いものだとヒジリは目を閉じて聞いた。声だけで言えばウメボシの声がヒジリは一番好きなのだ。
「そんなに気に入ったんなら、皆で明日狩りに行こうか。これはおすそ分けで貰ったからあまり量が無いんだわ。店の食材の仕入れも兼ねて行こう」
ゴールキ将軍がヒジリを狩りに誘った。
正直、おじさんの声でオティムポとは聞きたくなかったので、ゴールキが牛の名前を言わなかった事にヒジリはホッとした。
が、直ぐにドォスンが牛の名前を言ってしまう。
「オティムポなら絶望平野に沢山群れてるど」
ヒジリは、ドォスンのもっさりとした声での”オティムポ“に興ざめして肩を竦めた後、目を開いた。
「流石は司令官。オティムポが沢山いる場所を知っているなんて凄いな!」
スカーがゴマすりをする。文字通り手のひらをすり鉢に見立てて。
いつの間にか砦の戦士ギルドの中で司令官になっていたドォスンにゴマすってご機嫌伺いをする程、階級が厳しいようには思えないがな、とヒジリは笑う。
ヒジリは砦の戦士たちの階級制度はあまり意味のないものだと感じた。
「ヒジリ一等兵!今日はここに泊まっていけ。明日は早いぞ!」
「イエッサー!」
ゴールキに階級で呼ばれ、ヒジリはビシっと立って何故か海軍式敬礼をした。
勿論そんな敬礼はこの星にはない。ヒジリが急に滑稽な動きをしておどけたように見えたオーガ達はガハハハハと笑った。
受けたのならそれでいい、とヒジリも笑う。
夕方からヒジリはオーガ達の酒盛りに付き合わされ、酒飲み勝負を挑まれた。
勿論、ナノマシンがアルコールを毒と見なして直ぐに分解してしまうので最後まで酔いつぶれることはない。この勝負は夜中まで続き、結局オーガ達は酔い潰れて、砦で寝るように椅子や机にもたれ掛かって寝てしまった。
もう一人倒れ無かったオーガがいる。それはヘカティニスだった。意識は保っているが舌はもつれ足取りもフラフラである。大きなソファーに座るヒジリの横に来ると、手の上に手を重ねてきた。
「さすがは星のオーガだど。男らしくて素敵だった。おでは店の手伝いするから、明日は一緒に行けないけど頑張ってな」
主に急接近するヘカティニスにウメボシは警戒する。
シルビィを見てきたウメボシはヘカティニスも同じ様にマスターに飛びかかるかもしれないと考え、目を光らせた。
が、ヘカティニスはうっとりとヒジリを見つめた後、「じゃあおでは水浴びをしてから部屋で寝るから」と言って立ち去ってしまった。
主がどこか名残惜しそうにヘカティニスの背中を見つめている。もう少し傍にいて欲しそうな顔である。
ウメボシに戦慄が走った。
(ヘカティニスは厄介かもしれません!生まれ持った才能や本能だけで恋の駆け引きをしている!これまで人を魅了してきたマスターが魅了されかけているじゃないですか!あぁ、なんて恐ろしい娘でしょうか!)
もしウメボシに毛が生えていれば、間違いなくごっそりと白髪になっていただろう。
ヘカティニスは自分の考えが及ばないところで心配の種をドローン型アンドロイドに植えつけたていた。
昨日の夕方から夜中までずっと酒を飲んでいたにも関わらず、砦の戦士達はケロっとした顔で絶望平野を走っていた。
アンデッドやドラゴンの少ないルートを選んで進んで行くが、それでも途中でスケルトンやリッチやら若いドラゴンに遭遇してしまう。
リッチは魔法の効かないヒジリが拳で打ち砕き、若いドラゴンやスケルトンは砦の戦士たちで追い払ったり、倒したりした。
勿論ドラゴンの肉や角等を得てホクホク顔だ。リッチからは魔法の指輪やアミュレットが手に入る。
ヒジリはそれらを持っていても意味が無いので砦の戦士達に分け与えた。
戦士たちは鑑定をしていない、効果も判らないそれらの装備を喜んで身に着けていく。
喜ぶ砦の戦士達の中でスカーは嘆いた。
「ドォスンに続いて、ヒジリも砦の戦士ギルドに貢献してるじゃねぇか・・・。こりゃあもう昇進だな。カァー!参ったな」
「悪いな、スカー。次回からはヒジリ軍曹と呼んでもらおうか」
砦の戦士は貢献度によって階級が上がる。なのでヒジリは寄付した魔法の装備で間違いなく階級は上がるだろう。あまり意味はないが。
少し離れた場所でドォスンが若い青銅竜を倒した。
「それにしてもドォスンは日に日に強くなっているな。今も素手でドラゴンの攻撃を弾いたぞ」
ヒジリがドォスンを見て驚くとベンキが自分の事のように自慢する。
「あいつの二つ名を知っているか?有りがちな名だが誰からも一目置かれる強力な二つ名だ」
「う~ん、竜殺しだろう?きっと」
「正解。あいつはドラゴンを倒してからメキメキ強くなっている。今じゃギルドの中だと、とても硬い盾役だ。お前に教えてもらった技が凄く役に立っていると感謝していたぞ」
「そういえば戦闘スタイルが私に似ているな。グランデモニウム城偵察のクエストの前に少しだけレクチャーした程度だったのだが」
ヒジリはよく相手の攻撃に合わせて弾いたり、カウンターを放つ癖がある。
ドラゴンに大してドォスンも同じことをしていた。
ヒジリはダメージを吸収するパワードスーツがあるから冷静にそれが出来るのであって、ドォスンのような毛皮の鎧一式と、愚鈍さを表す牛の生えかけみたいな角と耳が付いたフードでは心許無い。余程の勇気がなければ恐怖や緊張で失敗するだろう。
(正直、素の戦闘能力だけで言えばドォスンのほうが上だ。凄いな・・・彼は。というかヘカティニスにも負けるのだから砦の戦士たちにも負けているだろうな、私は)
そう思うと途端にドォスンが頼り甲斐があって格好良く見えてきたが、彼はドラゴンの糞を踏んでしまいアォォと呻いて凹んでいた。
リッチや悪魔、若いドラゴンを数匹倒して辿り着いた草原にオティムポの群れはいた。
オティムポは言ってしまえば巨大な一角の牛であった。子供でもオーガ程の体高があり、大人はその二倍はある。
砦の戦士たちはヒャッハー!と世紀末のレイダーのような叫び声を上げると投げ縄を持って逃げるオティムポを追いかけ回し始める。
オティムポの逃げ足は早いので捕まえるチャンスはあまりない。
集中力を研ぎ澄ませ、投げ縄を角に引っ掛け引っ張る。角には微妙に段があり縄の引っ掛かりが良い。
ヒジリは高速移動で一際大きな一匹を狙った。オティムポは角に引っかかった縄に抗うどころか、ヒジリ目掛けて突進してきた。角で突き殺すつもりだ。
戦士たちが心配して横目で見る中、ヒジリは縄を捨て両手を上と下に構えた。
オティムポの低く下げた頭から鋭い角が迫る。このままだと角はヒジリの顔か胸を貫くだろう。
皆がもうダメだと思った瞬間、ヒジリは叫ぶ!
「真空!竜巻落とし!」
言う必要はない。言う必要はないが何かカッコイイ。それだけの理由でヒジリは叫ぶのだ。
ギュルンと円を描くように回した手から竜巻が発生して、激しく回転するオティムポは牛の丸焼きのようだ。
天地が解らなくなった牛は地面に叩きつけられて気絶してしまった。
気絶した牛に向かってヒジリは両手を合わして命の糧になってもらう事に感謝し、心臓に向かってデスパンチを放ち、止めを刺した。
「やったな!ヒジリ!」
ドォスンはオティムポを逃がしてしまい、手持ちぶたさだったのかヒジリの倒した大きな獲物を見に来た。
「この大きさだとオーガ三百人が腹いっぱいになる。見た目以上に肉が詰まっているんだど」
他のオーガ達も集まってきた。結局牛を仕留めたのは将軍とスカーとベンキだけだったのだ。
「じゃあさっさと解体すっか。あんまり時間がかかると血の匂いでドラゴンが集まってくるから素早くな」
スカーがそう言うと戦士たちはよく切れるナタを取りだして、手際よくオティムポを解体し始めた。
「きゃあ!」
「あら、可愛い悲鳴ですね、マスター」
ヒジリは解体されていくグロテスクな牛の死体を見て、女の子みたいな悲鳴をあげてしまった。
戦士たちはまさかヒジリがグロテスクなものに弱いとは思わなかったので、驚いて仲間同士で顔を見合わせた後、腹を抱えて笑いだした。
「だ、誰にだって苦手なものはあるはずだ!」
「そうだな、可愛い子ちゃん。誰にだって弱点はあるが、少なくともワシらは牛の内臓を見て悲鳴を上げたりはしない。ガハハ!」
将軍の揶揄いにヒジリはむくれた。
いつも三十路か四十路のような雰囲気を出しているヒジリだが、まだまだ二十歳になるかならないかの若者らしい要素があるのを知って、ゴールキは少し安心した。
この件以降しばらくはヒジリは暫く砦の戦士達から乙女の戦士と呼ばれるようになった。
オーガ達が街に持ち帰った大量の肉はすぐには食べない。
一週間程寝かせる必要がある。直ぐに食べても固くて美味しくはないのだ。
大量に肉があるので、皆に気前よく振る舞おうという話になり、砦の戦士たちと計画を練ってオティムポ謝肉祭の準備を始める。
よく催し物をやっている街の中央広場に、ズラッと炭焼きコンロを並べ各自で焼いてもらう事にした。コンロはカプリコンに頼みデュプリケイトしてもらって用意する。
カプリコンが宇宙から次々と―――たまに失敗して鉄くずを作りながら―――炭焼きコンロを出す様子を見て、ウメボシがブーブーと文句を言っている。
「最初はこういうチートをするなと言ってたのに結局、大規模デュプリケイトを二回もしたじゃないですか!」
と、あまりにしつこく言うのでヒジリはウメボシに許してくれと優しくキスをするとウメボシは”ン!”と白目をむいて身を震わせ満足し、静かになった。
こうしてオティムポ謝肉祭は始まった。花火が打ち上がり、広場を区切った仕切りの外で待ち構えていた住人たちがドッと雪崩れ込む。
オーガ達が大きな肉を無造作に網の上に置いていく。
ゾンビ襲来の件で少なくなった住民達には十分過ぎるほど肉は行き渡り、旅行者達にも振る舞えるほどであった。
誰もがその美味さに舌鼓を打ち喜ぶ。
あまりの美味しさに驚いた地走り族の商人は何処で仕入れられるのか取引は出来るのかと、ゴールキ将軍に商談を持ちかけるほどの人気だった。
肉は無料だが、酒は有料でゴデの街にある色んな酒場から出張してきた店員が自前の酒を売り歩く。
酒は飛ぶように売れた。吟遊詩人達はチップを貰い楽しげな音楽を奏で、踊り出す住民たちの陽気な笑い声が彼方此方に響く。
”死者の大災厄“とゴデの住人が呼ぶ大災厄以降、陰気だったこの街に活気が戻った。
ヒジリが肉を各テーブルに配っているとナンベルとミミ、ホクベルとハナ、孤児院の子供たちがはしゃぎながら肉を頬張っている姿が見える。
ミミがよそ見をした瞬間、ナンベルがミミの肉を素早く盗み食いして気づかれてしまい、ポカポカと頭を叩かれている。
「一時的とはいえ、この街に活気が戻ってきたのは何だか嬉しいな。この肉は主殿にも是非食べさせてあげたい。明日は日曜日だし持って行ってやるか」
「それは良いですね。きっと喜ぶでしょう。まだまだ元気がないですからね・・・」
ヒジリから肉を持って行くという手紙を貰ったサヴェリフェ家の姉妹たちはワクワクしながら、現人神の皇帝自らが焼く肉をまだかまだかと待っている。
貧乏時代を思い出したのか、ナイフとフォークでテーブルを叩いて笑顔で催促している。
「お肉!お肉!お肉!」
「ハハハ!そう、せっつくな。肉は逃げたりはしない。ほら出来たぞ」
皿の上のステーキからは透明な脂が滲み出ており、見ただけで肉のジューシーさが解る。
姉妹はもう堪え切れなくなりお祈りもせずに目の前の肉にがっついた。
「ンマーーイ!こんなに美味しいお肉、貴族になってからも食べた事ないよ!」
ここ最近色々あって沈みがちだったタスネはお肉を食べてこれ以上ない幸せな顔をしている。
「ほんと!美味しいわぁ!こんなお肉今まで食べたことが無い!ジューシーで柔らかくて、お肉特有の臭みも無くて、微かに甘みがあり、喉を通る頃には解けて無くなる!」
フランは食レポを勝手に始めだした。
「もぐもぐもぐ」
イグナは口でモグモグと言って咀嚼した後、目を輝かせ鼻息が荒くなった。相当美味しかったようだ。
「ウメーウメーウメー!」
コロネは口いっぱいに肉を頬張ると、何処かの二律背反の超人が蛍石を食うが如くウメーウメーと言っている。
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