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禁断の箱庭と融合する前の世界(91)
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丘陵地帯に銃声が響く。
古墳に空いた扉から連射される銃弾は、鉄騎士の守りから漏れた暗黒騎士達を容赦なく撃ち抜いていった。
「一つしかない入り口を鉄傀儡で固められては、侵入するどころか、近寄ることも叶わん。一旦暗黒騎士達を引かせる。正直、いつもの戦法では我らは足手まといのように見える。鉄騎士でなんとか強行突破は出来ないのか、リツ」
「貴様もさっき見ただろう。更に近寄れば扉からワラワラと鉄傀儡が飛んできて、爆弾が雨あられのように降ってくる。幾ら防御の高い我ら鉄騎士団でも爆弾を何度も凌げる自信はない。何よりもあのオーガがやっと一人通れる大きさの入り口が厄介だ。入り口の鉄傀儡を倒したところで更に鉄傀儡が潜んでいるのが見える」
リツは一旦、水筒から水を飲む。今日のバートラの空気は特に乾いている。そして珍しく弱気な帝国暗黒騎士団団長のセン・クロウを見て嗜虐心が持ち上がる。
「それに加えてここの鉄傀儡は魔法が効きにくい。ムロとかいうゴブリンの乗る特別な鉄傀儡は魔法を完全に遮断すると聞いたことがある。そんな化け物が出てきたら増々状況は不利になるだろうな。ヒジリ前皇帝が鉄傀儡を引き連れて襲い掛かってくるようなものだ」
自分も同じ状況にいるのだから、センだけが困っているわけではないのにリツは他人事のようにそう言った。
「直接ヒジリ聖下とは戦った事はないが・・・。それは絶望するしかない状況だな。何が謀反者の討伐だ。我らが討伐されそうではないか」
リツは夫であるヒジリを思い出し、ぼやくセンに弱みと取られない程度に小さな溜息をついた。
(あなたなら、この状況をどうしたのかしら?)
しかし、考えたところで答えは出ない。あの丘に埋もれる格納庫を破壊出来るだけの攻撃力を持って来ない限り戦いは膠着状態だ。そんな事が出来るのはヒジリとウメボシ以外いない。
仕方ないと首を振ってリツはセンに言う。
「取り敢えず、彼らはあの丘の格納庫から出てこようとはしない。一旦バートラ市街地周辺で野営をして体勢を整えるか・・・」
「うむ」
リツが撤退の花火を部下に上げさせると、二つの軍団は素早く引き上げてくる。鉄傀儡は追撃をしてくる様子はない。あくまで専守防衛のように見える。
追撃をしてこない鉄傀儡を見て、悔しさのあまりリツはあの機械人形達がこちらをあざ笑っているように思えて呟く。
「ヴャーンズめ・・・」
ヤイバは暗い部屋で、天井の絵を見つめていた。
用意された自分の部屋の天井には神である自分の父親が、降臨したと言われる森で英雄子爵と出会うシーンが描かれている。
何故か父も英雄子爵も羽衣のような薄着を纏っており、如何にも神降臨といったシーンであった。
「父上に後光が差している・・・。帝国図書館の魔法水晶で見た父上は普通のオーガみたいだったし、後光なんか差してなかったのに。しかも何でほぼ裸なんだよ・・・裸・・・」
裸という言葉を切っ掛けにヤイバの脳裏に闇の中に白く浮き上がるワロティニスの裸体が映し出される。
「あぁぁぁ!悶々とする!」
羽毛がギッシリと入ったふわふわの枕をギュッと抱きしめてヤイバは横向きになる。その背中側でノックの音がした。
急な事でヤイバはビクッとしたが、ワロティニスが夜這いに来たのかもと淡い期待をしながらドアを開けた。
「イグナ母さん!」
紺色のナイトキャップに紺色のナイトガウンを着たイグナが扉の前に立っていたのでヤイバは驚いた。
「どうしたんです?」
「晩餐会で話が出来なかったから・・・」
「あっ!ごめんなさい。イグナ母さんは沢山のメイジの方に囲まれていましたから声がかけ辛くて・・・」
「あれは大変だった。弟子にしてくれとか、息子の魔法の指導をしてくれとか」
「フフフ、流石ですね。フランさんもイグナさんも引っ張りだこで」
「私の弟子はヤイバだけ」
そう言うとイグナはヤイバに抱きついた。身長差のせいで微妙な所にイグナの顔が当たるのでヤイバは少し恥ずかしくなる。
「ヤイバ、オスの匂いがする。やらしい」
「こ、これは違うんです!僕だって成長期ですし、体から色んな匂いくらいしますよ!」
「このいやらしい匂い・・・。発情してるの?スッキリ・・・したい?」
「えっ?」
潤んだ目でイグナはヤイバを見つめ、下腹部を弄っている。ヤイバは直ぐにこのあり得ない現状に違和感を覚えた。
「はぁ・・・またお前か!今度は逃さないぞ!【捕縛】!」
魔法にレジスト出来なかった悪魔はイグナの姿からサキュバスに戻ってベッドに硬直して倒れ込んだ。
「さてと。ではお前の依頼主、或いは主の名を教えてもらおうか」
ヤイバは更に用心深く、かけてあったガウンの帯紐でサキュバスを縛り始めた。
「魔法傀儡の騒ぎでもう解ってるんでしょ?依頼主はヴャーンズよ」
「目的は?何故僕や祖父母を狙う?」
「そんなの私が知るわけないじゃない。とにかく堕落させて従わせて貴方か、他の星のオーガを連れてくるように言われているのよ」
「普通に来てくれと頼めばいいだろ。何でそんな回りくどいことをヴャーンズさんはするんだ?」
「そりゃあ今となっては、貴方は敵対している帝国の騎士なんだし仕方ないんじゃないかしら?」
「連れ去りが目的だったのか?その割には街道の鉄傀儡や中庭の魔法傀儡は殺す気でかかってきたぞ!魔法傀儡に至っては晩餐会の間を吹き飛ばす勢いだったしな!」
サキュバスは縛られた腕が痛いのか―――或いは気持ちが良いのか、乱れた金髪の下で苦悶と恍惚の混ざった表情を浮かべていた。
「だって貴方達は殺す気で向かって丁度良いぐらいじゃない。というか、殺す気で向かっても駄目だったけど」
「訳さえ話せばついて行ったさ。オーガ基準で言えば僕は物分りの良いほうなんだ。・・・ここでウダウダと話をしていても無駄だな。よし!僕がヴャーンズさんに会いに行こう。そして事の真相を聞く」
「あら?それでもいいわよ?私は契約が果たせればそれでいいんだし」
「じゃあ隊長に許可を貰ってすぐに向かう」
ヤイバは今しがたキッチリと縛り終えた結び目をまた丁寧に解き始めた。サキュバスはどこか残念そうな顔をしている。
「バートラの格納庫前で待ってるわ。出来れば軽装で来てね。武装していると格納庫を警備している鉄傀儡が攻撃してくるかもしれないから。じゃあ」
そう言ってサキュバスはコウモリに変身して窓から飛び出し、夜の闇に消えていった。
満月の中で点になっていくコウモリを見てヤイバは思う。
(そういや、彼女は何で前回は誘惑してきたんだ?あの時、ヴャーンズさんは僕に直接話が出来たはずだけど・・・)
これまでの色々な矛盾を考えながら、隊長の部屋の前までヤイバはやって来た。
一先ず矛盾は置いといて、夜中に女性の部屋の扉を叩く事に対して隊長に誤解を招かないようにしなくてはと、恐る恐るノックした。
―――コンコン―――
部屋の中からシーツが擦れる音がして、カタンと武器を手にとる音がした後、扉の向こうから声がする。
「誰だ!」
「僕です」
「何だお前か・・・誰だッ!」
「神に産み落とされしセラフ、ヤイバです(いい加減にしてくれ、この合言葉・・・)」
「よし、入れ」
扉が開くと、マーはスケスケのネグリジェでモジモジしていた。
「まさか、お前から夜這いに来てくれるとはな。意外と肉食系なんだな・・・。私は嫌いじゃないぞ、そういうのは」
マーはそう言うとヤイバの逞しい胸に頬を寄せた。大量の鼻息が胸に当たってヤイバはくすぐったかった。
ヤイバは急に頭に靄がかかったような感覚を覚える。口からは自分の意思を無視して言葉が溢れ出る。
「ふふふ、可愛い子猫ちゃん。まだ夜は長いよ?焦らないで(なんだ?!何を言っているんだ僕は!)」
「私が・・・可愛い子猫ちゃん・・だと?!ゴリラとはよく言われるが可愛い子猫ちゃんか・・・。初めて言われたが悪い気はしないな」
「今夜は子猫ちゃんを撫でてあげるつもりで来たんだけど、少し予定が変わってね・・・。少々お願いがある。聞いてくれるかい?子猫ちゃん(これは・・・サキュバスの呪いか?僕は呪いでこうなっているのか?なるほど、これは彼女の仕返しだな・・・。今頃、帰り道でほくそ笑んでいるのだろう・・・くそ!)」
「にゃ~お」
マーはヤイバの胸に顔を擦りつけながら、招き猫の様な手で自分の顔も擦る。
「(ひゃああ!寒い!隊長のこんな姿は見たくなかった!)実は先程ヴャーンズの使いがやって来て話があるから来いと言われたんだ。なのでバートラの格納庫へ単身で赴く許可をくれないかい?子猫ちゃん」
「みゃ?!駄目~!愛しい人を危険な場所に送るわけないにゃ~」
キャラに合っていない甘えた鼻声がヤイバの耳を汚す。
(わぁぁ!勘弁してくれ!悪夢のようだ!)
人差し指でヤイバの胸の上で円を描いているマーを白目の半眼で見ていると、また口が勝手に動き出した。
「嬉しい!マーは僕のこと心配してくれているんだね?愛を感じるよ。でもさ、僕を信じてくれないかい?僕は神の子だよ?危険なんて全て跳ね返してみせるさ!」
「うん・・・解った・・・。信~じるにゃ・・・・。ちょっと待っててね!」
マーはそう言うと、引き出しから羊皮紙とペンを出しサラサラと許可書を書き最後に判子を押した。
「この許可証を~現地のリツ団長・・・お義母さまに~見~せ~て~ねっ!ンッ!」
マーは「ンッ!」と言ってキスをせがんで来る。マーは鼻こそ平べったいが、よく見ると個性的なだけで不細工でもない。
が、ヤイバはやりたくもないのにマーの額にキスをして言う。
「ちゃんとしたキスは僕が返ってきてからだ。その時は君を滅茶苦茶にしてやるんだからな。覚悟しとけよ?子猫ちゃん(嗚呼、死にたい!)」
「にゃぁぁ~ん☆」
マーは頬を両手で押さえてデレデレしている。
と、その時サキュバスの呪いの効果が切れたのか、スッと体と頭が軽くなった。
(意識がハッキリしてきたぞ!チャンスだ!この魔法はあんまり使ったことがないが効いてくれ!【忘却】!)
白い煙がマーの顔を包んだ。
ヤイバはその隙に部屋から出て、扉の隙間から隊長の様子を見る。ここまでほんの一秒足らず。
「ん?何で私はこんな所で立ち尽くしているんだ?おや?これは許可証の写し・・・。ああ、そうかヤイバに格納庫へ向かう許可を出したのだった。・・・少し心配だが、向こうには団長もいるし大丈夫だろう。さて寝るかにゃん」
(にゃん、だと?わぁぁぁ!まだ少しだけ記憶が残っている!!こんな時に限ってエリートオーガの無駄に高い魔法防御力が邪魔をしている!)
ヤイバは素早くドアを開けて部屋に入ると隊長の後頭部に水平チョップを何度も食らわせる。
「ドォーーーーーン!ドーーーン!ドドーーーン!」
「うぉ?!」
マーはドッ!とベッドにうつ伏せで倒れ込むと後頭部からプスプスと煙を上げて気を失ってしまった。
(こ、これだけやれば大丈夫だろう・・・。隊長・・・ごめんなさい)
ヤイバは音をさせずに廊下を走り部屋に戻ると制服に着替えて、煌々と照らす月明かりの中、バートラへと向かった。
格納庫のモニター室に杖をつくゴブリンが入ってきた。
「どうかね?諸君」
「はい。数日前に手紙を皇帝に送りました」
「返事は?」
「まだですね」
ヴャーンズの部下らしきゴブリン達はモニターで格納庫周辺に潜む斥候を監視している。
「星のオーガ・・・いや、この星にいる地球人と交渉出来なければ我々には永遠の闇が待っているのだ。最悪彼らを殺して・・・いや殺すのは得策ではないな。彼らは何度でも蘇る。監禁してしまうのが一番だ。星の国からの干渉はあったか?」
「はい、宇宙空間から何度かスキャニングをされております。恐らく宇宙船があるのかと・・・」
「この場所は特定されたか?」
「いいえ。施設の遮蔽装置がカモフラージュしております」
「いつまでも隠れられるとは思えんな。何としてもマサムネとハルコをここに連れてこなくては・・・」
長い指の指先を何度か合わせ、何か良い策はないかと年老いたゴブリンは考える。
「神の子ヤイバと他二名が施設に近づいてきます」
「よし、モニターに映せ。奴を捕まえれば交渉が有利に運ぶかもしれん」
帝国の制服を着たヤイバと重装備の鉄騎士二人を大きなモニターが映し出した。
「余計なことするんじゃないぞ?本来なら僕一人で来るはずだったんだからな」
ヤイバはアルケディア城を抜け出す時に一緒について来たドリャップと、格納庫に入る許可をリツから貰う為に寄った野営地で一緒に来る事になったカワ―に釘を刺す。
「君一人に手柄を上げさせるわけにはいかないよ、ヤイバ」
カワーはマッシュルームのような髪をサラッと手で撫でた。
そのカワーへ鋭い視線をドリャップは向ける。
「それにしても、お前の芝居は糞だったぜ、カワー。よくもまぁあんな猿芝居を団長に披露出来たな。ヤイバが心配で僕は居ても立ってもいられないだと?常にヤイバの首を狙っているお前がよく言うぜ。少しでも変な真似したら容赦なくお前を討つからな?」
「ふん。今回は自分の力で名を挙げると言ったはずだが?ヤイバより先にヴャーンズを討伐して僕が首を持ち帰るんだ」
「お前に出来るか、アホなお坊ちゃまの癖に」
「お坊ちゃまはヤイバも同じだろう」
ヤイバはハーッと溜息をつくと二人を諌める。
「いい加減言い争いはそこまでだ。とにかく大人しくしていてくれ」
ヤイバは格納庫のある丘の前で両手を上げ、敵意がないことを鉄傀儡たちに示す。鉄傀儡達は少しドリャップとカワーを見て警戒したが、手で中に入れと合図を返した。
「やった!問題無く中に入れそうだぞ」
ヤイバは第一関門を突破した事に喜び胸を撫で下ろす。
「ここからが本番だ。絶対余計なことをするなよ?」
「へいへい」
「ふん」
ヤイバは入口を開けた鉄傀儡の横を通りながら、ふと思い出す。
(そういえば、入り口で例のサキュバスが待っているはずなんだが、いなかったな・・・。予定が変わったのか?)
疑問に思っていると、コウモリが一緒に付いて来る。
(ああ、コウモリに化けていたのか)
ヤイバは納得すると仲間と共に施設の奥へと入っていった。
格納庫でヤイバ達が待っているとカツーンカツーンと地下へ下りる階段からゴブリンの大魔法使いは現れた。半円形の鋭い目がヤイバを睨み、後ろの二人も睨んだ。
「よく来たな、ヤイバ」
「ヴャーンズさん・・・どうして謀反なんて・・・」
「私とて謀反なぞ起こす気は無かった。迎えにやらせた無人の鉄傀儡が暴走をしなければ、今頃穏便に事が運んでいただろう」
「鉄傀儡なんて使いにやらなくても良かったんじゃないですか?」
「我々は呪いでこの施設から出られないのだよ。出られるのは人の乗っていない鉄傀儡だけでね。仕方なく送ったら結果は君の知る通りとなった」
「呪い?僕が以前ここに来た時は呪いなんて無かったはずですけど・・・。では陛下にその旨を伝えて弁明したらどうです?」
そう提案するヤイバの横を透明化したコウモリが大急ぎで通り過ぎ、地下へと降りていった。
常に【魔法探知】を常駐させているヤイバには、サキュバスが変身するコウモリの姿が見えたが他の者には見えていない。
(どこに行くんだ?あのサキュバスは。凄く慌てていたように見えるけど)
「勿論、手紙を送ったが未だ返事はなく、未だ道化師皇帝殿はバートラの街から軍隊も撤退させていはいない。つまり信用はされていないというわけだ」
「で、僕に何をして欲しいんですか?というか僕も呪いを受けてこの格納庫から出られないんじゃ話をしに戻る事も出来ませんよ?」
「それは構わん。君達は人質だからな。君の祖父母を釣るための餌になってもらう」
ヴャーンズがパチンと指を鳴らすと、ヤイバ達は何処かに転送されてしまった。
「力の有り余る君達に施設を破壊されては困るのでね、そこで暫くヘトヘトになるまで戦っていてくれ」
飛ばされた部屋のどこからかヴャーンズの声が聞こえたかと思うと、渦巻く空間から何者かが現れる。
そこにはヒジリとイービルアイだった頃のウメボシが無表情で立っていた。
ヤイバ達を見つけるとヒジリは手を前に出し構え、戦闘態勢に入る。
「父上・・・ウメボシさん・・・?」
「おいおいおいおいおい、嘘だろ?神と戦えってか?」
「ハッ!下等なドリャップに教えてやるよ、あれは幻影だ。そうだろ?ヤイバ」
「ああ、どうやら訓練部屋に飛ばされたようだな。幻影には違いないが質量はある。恐らくあれは父上を分析して実体化させたものだ。きっと本物のように強いはず」
「簡単に俺たちをここから出す気は無いってワケか。カワー、足を引っ張るなよ?」
「ふん、君こそ」
ヒジリの幻影はバチンと電撃を放ってグローブをかち合わせると、獣のような雄たけびを上げて三人に襲い掛かってきた。
古墳に空いた扉から連射される銃弾は、鉄騎士の守りから漏れた暗黒騎士達を容赦なく撃ち抜いていった。
「一つしかない入り口を鉄傀儡で固められては、侵入するどころか、近寄ることも叶わん。一旦暗黒騎士達を引かせる。正直、いつもの戦法では我らは足手まといのように見える。鉄騎士でなんとか強行突破は出来ないのか、リツ」
「貴様もさっき見ただろう。更に近寄れば扉からワラワラと鉄傀儡が飛んできて、爆弾が雨あられのように降ってくる。幾ら防御の高い我ら鉄騎士団でも爆弾を何度も凌げる自信はない。何よりもあのオーガがやっと一人通れる大きさの入り口が厄介だ。入り口の鉄傀儡を倒したところで更に鉄傀儡が潜んでいるのが見える」
リツは一旦、水筒から水を飲む。今日のバートラの空気は特に乾いている。そして珍しく弱気な帝国暗黒騎士団団長のセン・クロウを見て嗜虐心が持ち上がる。
「それに加えてここの鉄傀儡は魔法が効きにくい。ムロとかいうゴブリンの乗る特別な鉄傀儡は魔法を完全に遮断すると聞いたことがある。そんな化け物が出てきたら増々状況は不利になるだろうな。ヒジリ前皇帝が鉄傀儡を引き連れて襲い掛かってくるようなものだ」
自分も同じ状況にいるのだから、センだけが困っているわけではないのにリツは他人事のようにそう言った。
「直接ヒジリ聖下とは戦った事はないが・・・。それは絶望するしかない状況だな。何が謀反者の討伐だ。我らが討伐されそうではないか」
リツは夫であるヒジリを思い出し、ぼやくセンに弱みと取られない程度に小さな溜息をついた。
(あなたなら、この状況をどうしたのかしら?)
しかし、考えたところで答えは出ない。あの丘に埋もれる格納庫を破壊出来るだけの攻撃力を持って来ない限り戦いは膠着状態だ。そんな事が出来るのはヒジリとウメボシ以外いない。
仕方ないと首を振ってリツはセンに言う。
「取り敢えず、彼らはあの丘の格納庫から出てこようとはしない。一旦バートラ市街地周辺で野営をして体勢を整えるか・・・」
「うむ」
リツが撤退の花火を部下に上げさせると、二つの軍団は素早く引き上げてくる。鉄傀儡は追撃をしてくる様子はない。あくまで専守防衛のように見える。
追撃をしてこない鉄傀儡を見て、悔しさのあまりリツはあの機械人形達がこちらをあざ笑っているように思えて呟く。
「ヴャーンズめ・・・」
ヤイバは暗い部屋で、天井の絵を見つめていた。
用意された自分の部屋の天井には神である自分の父親が、降臨したと言われる森で英雄子爵と出会うシーンが描かれている。
何故か父も英雄子爵も羽衣のような薄着を纏っており、如何にも神降臨といったシーンであった。
「父上に後光が差している・・・。帝国図書館の魔法水晶で見た父上は普通のオーガみたいだったし、後光なんか差してなかったのに。しかも何でほぼ裸なんだよ・・・裸・・・」
裸という言葉を切っ掛けにヤイバの脳裏に闇の中に白く浮き上がるワロティニスの裸体が映し出される。
「あぁぁぁ!悶々とする!」
羽毛がギッシリと入ったふわふわの枕をギュッと抱きしめてヤイバは横向きになる。その背中側でノックの音がした。
急な事でヤイバはビクッとしたが、ワロティニスが夜這いに来たのかもと淡い期待をしながらドアを開けた。
「イグナ母さん!」
紺色のナイトキャップに紺色のナイトガウンを着たイグナが扉の前に立っていたのでヤイバは驚いた。
「どうしたんです?」
「晩餐会で話が出来なかったから・・・」
「あっ!ごめんなさい。イグナ母さんは沢山のメイジの方に囲まれていましたから声がかけ辛くて・・・」
「あれは大変だった。弟子にしてくれとか、息子の魔法の指導をしてくれとか」
「フフフ、流石ですね。フランさんもイグナさんも引っ張りだこで」
「私の弟子はヤイバだけ」
そう言うとイグナはヤイバに抱きついた。身長差のせいで微妙な所にイグナの顔が当たるのでヤイバは少し恥ずかしくなる。
「ヤイバ、オスの匂いがする。やらしい」
「こ、これは違うんです!僕だって成長期ですし、体から色んな匂いくらいしますよ!」
「このいやらしい匂い・・・。発情してるの?スッキリ・・・したい?」
「えっ?」
潤んだ目でイグナはヤイバを見つめ、下腹部を弄っている。ヤイバは直ぐにこのあり得ない現状に違和感を覚えた。
「はぁ・・・またお前か!今度は逃さないぞ!【捕縛】!」
魔法にレジスト出来なかった悪魔はイグナの姿からサキュバスに戻ってベッドに硬直して倒れ込んだ。
「さてと。ではお前の依頼主、或いは主の名を教えてもらおうか」
ヤイバは更に用心深く、かけてあったガウンの帯紐でサキュバスを縛り始めた。
「魔法傀儡の騒ぎでもう解ってるんでしょ?依頼主はヴャーンズよ」
「目的は?何故僕や祖父母を狙う?」
「そんなの私が知るわけないじゃない。とにかく堕落させて従わせて貴方か、他の星のオーガを連れてくるように言われているのよ」
「普通に来てくれと頼めばいいだろ。何でそんな回りくどいことをヴャーンズさんはするんだ?」
「そりゃあ今となっては、貴方は敵対している帝国の騎士なんだし仕方ないんじゃないかしら?」
「連れ去りが目的だったのか?その割には街道の鉄傀儡や中庭の魔法傀儡は殺す気でかかってきたぞ!魔法傀儡に至っては晩餐会の間を吹き飛ばす勢いだったしな!」
サキュバスは縛られた腕が痛いのか―――或いは気持ちが良いのか、乱れた金髪の下で苦悶と恍惚の混ざった表情を浮かべていた。
「だって貴方達は殺す気で向かって丁度良いぐらいじゃない。というか、殺す気で向かっても駄目だったけど」
「訳さえ話せばついて行ったさ。オーガ基準で言えば僕は物分りの良いほうなんだ。・・・ここでウダウダと話をしていても無駄だな。よし!僕がヴャーンズさんに会いに行こう。そして事の真相を聞く」
「あら?それでもいいわよ?私は契約が果たせればそれでいいんだし」
「じゃあ隊長に許可を貰ってすぐに向かう」
ヤイバは今しがたキッチリと縛り終えた結び目をまた丁寧に解き始めた。サキュバスはどこか残念そうな顔をしている。
「バートラの格納庫前で待ってるわ。出来れば軽装で来てね。武装していると格納庫を警備している鉄傀儡が攻撃してくるかもしれないから。じゃあ」
そう言ってサキュバスはコウモリに変身して窓から飛び出し、夜の闇に消えていった。
満月の中で点になっていくコウモリを見てヤイバは思う。
(そういや、彼女は何で前回は誘惑してきたんだ?あの時、ヴャーンズさんは僕に直接話が出来たはずだけど・・・)
これまでの色々な矛盾を考えながら、隊長の部屋の前までヤイバはやって来た。
一先ず矛盾は置いといて、夜中に女性の部屋の扉を叩く事に対して隊長に誤解を招かないようにしなくてはと、恐る恐るノックした。
―――コンコン―――
部屋の中からシーツが擦れる音がして、カタンと武器を手にとる音がした後、扉の向こうから声がする。
「誰だ!」
「僕です」
「何だお前か・・・誰だッ!」
「神に産み落とされしセラフ、ヤイバです(いい加減にしてくれ、この合言葉・・・)」
「よし、入れ」
扉が開くと、マーはスケスケのネグリジェでモジモジしていた。
「まさか、お前から夜這いに来てくれるとはな。意外と肉食系なんだな・・・。私は嫌いじゃないぞ、そういうのは」
マーはそう言うとヤイバの逞しい胸に頬を寄せた。大量の鼻息が胸に当たってヤイバはくすぐったかった。
ヤイバは急に頭に靄がかかったような感覚を覚える。口からは自分の意思を無視して言葉が溢れ出る。
「ふふふ、可愛い子猫ちゃん。まだ夜は長いよ?焦らないで(なんだ?!何を言っているんだ僕は!)」
「私が・・・可愛い子猫ちゃん・・だと?!ゴリラとはよく言われるが可愛い子猫ちゃんか・・・。初めて言われたが悪い気はしないな」
「今夜は子猫ちゃんを撫でてあげるつもりで来たんだけど、少し予定が変わってね・・・。少々お願いがある。聞いてくれるかい?子猫ちゃん(これは・・・サキュバスの呪いか?僕は呪いでこうなっているのか?なるほど、これは彼女の仕返しだな・・・。今頃、帰り道でほくそ笑んでいるのだろう・・・くそ!)」
「にゃ~お」
マーはヤイバの胸に顔を擦りつけながら、招き猫の様な手で自分の顔も擦る。
「(ひゃああ!寒い!隊長のこんな姿は見たくなかった!)実は先程ヴャーンズの使いがやって来て話があるから来いと言われたんだ。なのでバートラの格納庫へ単身で赴く許可をくれないかい?子猫ちゃん」
「みゃ?!駄目~!愛しい人を危険な場所に送るわけないにゃ~」
キャラに合っていない甘えた鼻声がヤイバの耳を汚す。
(わぁぁ!勘弁してくれ!悪夢のようだ!)
人差し指でヤイバの胸の上で円を描いているマーを白目の半眼で見ていると、また口が勝手に動き出した。
「嬉しい!マーは僕のこと心配してくれているんだね?愛を感じるよ。でもさ、僕を信じてくれないかい?僕は神の子だよ?危険なんて全て跳ね返してみせるさ!」
「うん・・・解った・・・。信~じるにゃ・・・・。ちょっと待っててね!」
マーはそう言うと、引き出しから羊皮紙とペンを出しサラサラと許可書を書き最後に判子を押した。
「この許可証を~現地のリツ団長・・・お義母さまに~見~せ~て~ねっ!ンッ!」
マーは「ンッ!」と言ってキスをせがんで来る。マーは鼻こそ平べったいが、よく見ると個性的なだけで不細工でもない。
が、ヤイバはやりたくもないのにマーの額にキスをして言う。
「ちゃんとしたキスは僕が返ってきてからだ。その時は君を滅茶苦茶にしてやるんだからな。覚悟しとけよ?子猫ちゃん(嗚呼、死にたい!)」
「にゃぁぁ~ん☆」
マーは頬を両手で押さえてデレデレしている。
と、その時サキュバスの呪いの効果が切れたのか、スッと体と頭が軽くなった。
(意識がハッキリしてきたぞ!チャンスだ!この魔法はあんまり使ったことがないが効いてくれ!【忘却】!)
白い煙がマーの顔を包んだ。
ヤイバはその隙に部屋から出て、扉の隙間から隊長の様子を見る。ここまでほんの一秒足らず。
「ん?何で私はこんな所で立ち尽くしているんだ?おや?これは許可証の写し・・・。ああ、そうかヤイバに格納庫へ向かう許可を出したのだった。・・・少し心配だが、向こうには団長もいるし大丈夫だろう。さて寝るかにゃん」
(にゃん、だと?わぁぁぁ!まだ少しだけ記憶が残っている!!こんな時に限ってエリートオーガの無駄に高い魔法防御力が邪魔をしている!)
ヤイバは素早くドアを開けて部屋に入ると隊長の後頭部に水平チョップを何度も食らわせる。
「ドォーーーーーン!ドーーーン!ドドーーーン!」
「うぉ?!」
マーはドッ!とベッドにうつ伏せで倒れ込むと後頭部からプスプスと煙を上げて気を失ってしまった。
(こ、これだけやれば大丈夫だろう・・・。隊長・・・ごめんなさい)
ヤイバは音をさせずに廊下を走り部屋に戻ると制服に着替えて、煌々と照らす月明かりの中、バートラへと向かった。
格納庫のモニター室に杖をつくゴブリンが入ってきた。
「どうかね?諸君」
「はい。数日前に手紙を皇帝に送りました」
「返事は?」
「まだですね」
ヴャーンズの部下らしきゴブリン達はモニターで格納庫周辺に潜む斥候を監視している。
「星のオーガ・・・いや、この星にいる地球人と交渉出来なければ我々には永遠の闇が待っているのだ。最悪彼らを殺して・・・いや殺すのは得策ではないな。彼らは何度でも蘇る。監禁してしまうのが一番だ。星の国からの干渉はあったか?」
「はい、宇宙空間から何度かスキャニングをされております。恐らく宇宙船があるのかと・・・」
「この場所は特定されたか?」
「いいえ。施設の遮蔽装置がカモフラージュしております」
「いつまでも隠れられるとは思えんな。何としてもマサムネとハルコをここに連れてこなくては・・・」
長い指の指先を何度か合わせ、何か良い策はないかと年老いたゴブリンは考える。
「神の子ヤイバと他二名が施設に近づいてきます」
「よし、モニターに映せ。奴を捕まえれば交渉が有利に運ぶかもしれん」
帝国の制服を着たヤイバと重装備の鉄騎士二人を大きなモニターが映し出した。
「余計なことするんじゃないぞ?本来なら僕一人で来るはずだったんだからな」
ヤイバはアルケディア城を抜け出す時に一緒について来たドリャップと、格納庫に入る許可をリツから貰う為に寄った野営地で一緒に来る事になったカワ―に釘を刺す。
「君一人に手柄を上げさせるわけにはいかないよ、ヤイバ」
カワーはマッシュルームのような髪をサラッと手で撫でた。
そのカワーへ鋭い視線をドリャップは向ける。
「それにしても、お前の芝居は糞だったぜ、カワー。よくもまぁあんな猿芝居を団長に披露出来たな。ヤイバが心配で僕は居ても立ってもいられないだと?常にヤイバの首を狙っているお前がよく言うぜ。少しでも変な真似したら容赦なくお前を討つからな?」
「ふん。今回は自分の力で名を挙げると言ったはずだが?ヤイバより先にヴャーンズを討伐して僕が首を持ち帰るんだ」
「お前に出来るか、アホなお坊ちゃまの癖に」
「お坊ちゃまはヤイバも同じだろう」
ヤイバはハーッと溜息をつくと二人を諌める。
「いい加減言い争いはそこまでだ。とにかく大人しくしていてくれ」
ヤイバは格納庫のある丘の前で両手を上げ、敵意がないことを鉄傀儡たちに示す。鉄傀儡達は少しドリャップとカワーを見て警戒したが、手で中に入れと合図を返した。
「やった!問題無く中に入れそうだぞ」
ヤイバは第一関門を突破した事に喜び胸を撫で下ろす。
「ここからが本番だ。絶対余計なことをするなよ?」
「へいへい」
「ふん」
ヤイバは入口を開けた鉄傀儡の横を通りながら、ふと思い出す。
(そういえば、入り口で例のサキュバスが待っているはずなんだが、いなかったな・・・。予定が変わったのか?)
疑問に思っていると、コウモリが一緒に付いて来る。
(ああ、コウモリに化けていたのか)
ヤイバは納得すると仲間と共に施設の奥へと入っていった。
格納庫でヤイバ達が待っているとカツーンカツーンと地下へ下りる階段からゴブリンの大魔法使いは現れた。半円形の鋭い目がヤイバを睨み、後ろの二人も睨んだ。
「よく来たな、ヤイバ」
「ヴャーンズさん・・・どうして謀反なんて・・・」
「私とて謀反なぞ起こす気は無かった。迎えにやらせた無人の鉄傀儡が暴走をしなければ、今頃穏便に事が運んでいただろう」
「鉄傀儡なんて使いにやらなくても良かったんじゃないですか?」
「我々は呪いでこの施設から出られないのだよ。出られるのは人の乗っていない鉄傀儡だけでね。仕方なく送ったら結果は君の知る通りとなった」
「呪い?僕が以前ここに来た時は呪いなんて無かったはずですけど・・・。では陛下にその旨を伝えて弁明したらどうです?」
そう提案するヤイバの横を透明化したコウモリが大急ぎで通り過ぎ、地下へと降りていった。
常に【魔法探知】を常駐させているヤイバには、サキュバスが変身するコウモリの姿が見えたが他の者には見えていない。
(どこに行くんだ?あのサキュバスは。凄く慌てていたように見えるけど)
「勿論、手紙を送ったが未だ返事はなく、未だ道化師皇帝殿はバートラの街から軍隊も撤退させていはいない。つまり信用はされていないというわけだ」
「で、僕に何をして欲しいんですか?というか僕も呪いを受けてこの格納庫から出られないんじゃ話をしに戻る事も出来ませんよ?」
「それは構わん。君達は人質だからな。君の祖父母を釣るための餌になってもらう」
ヴャーンズがパチンと指を鳴らすと、ヤイバ達は何処かに転送されてしまった。
「力の有り余る君達に施設を破壊されては困るのでね、そこで暫くヘトヘトになるまで戦っていてくれ」
飛ばされた部屋のどこからかヴャーンズの声が聞こえたかと思うと、渦巻く空間から何者かが現れる。
そこにはヒジリとイービルアイだった頃のウメボシが無表情で立っていた。
ヤイバ達を見つけるとヒジリは手を前に出し構え、戦闘態勢に入る。
「父上・・・ウメボシさん・・・?」
「おいおいおいおいおい、嘘だろ?神と戦えってか?」
「ハッ!下等なドリャップに教えてやるよ、あれは幻影だ。そうだろ?ヤイバ」
「ああ、どうやら訓練部屋に飛ばされたようだな。幻影には違いないが質量はある。恐らくあれは父上を分析して実体化させたものだ。きっと本物のように強いはず」
「簡単に俺たちをここから出す気は無いってワケか。カワー、足を引っ張るなよ?」
「ふん、君こそ」
ヒジリの幻影はバチンと電撃を放ってグローブをかち合わせると、獣のような雄たけびを上げて三人に襲い掛かってきた。
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