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不幸はムロを襲う
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「ハァハァ・・・。チキ、大丈夫か?」
無我夢中で郊外の古墳まで走ってきたムロは、妹が苦しそうに息を吸ったり履いたりする姿に心配する。
「大丈夫・・・。ちょっとお胸が苦しいだけ」
ムロはしゃがみ込む妹の背中を擦ってから立ち上がり、母親が来るのを待った。
「すばしっこい母さんならきっと大丈夫だ。もうすぐ街の方からやって来るに決まっている!」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、ムロも目を閉じて呼吸を整える。
「来た! お母さんだ!」
母親の姿が遠くに見える。手には父親の形見であるペンダントを持ってヨタヨタと走ってきた。
「母さん、余程全速力で走ったんだな」
「おかあさーーーん!」
妹が手を振って叫ぶと母親に駆け寄ろうとしたが、ムロは咄嗟に止めた。何かがおかしい。
「なんだ? 様子が変だ」
彼の勘が告げる。あれは母親であって母親ではない。
「どうしたの?お兄ちゃん・・・」
目の良いムロは、生気の無い顔をしているの母親が遠くからでも解った。目は赤く血走り、口からはとても長い犬歯が生えている。
「あれはもう・・・。母さんじゃないかもしれない」
「どういうこと? お兄ちゃん」
ムロは腰の単発銃に弾と火薬を詰める。装填に時間の掛かる一発きりのラッパ銃。自分史上最高の発明品だ。
「チキは古墳の入り口に隠れて!」
「なんで? どうして? お母さんがどうかしたの?」
「早く!」
いつも優しい兄が怒鳴った。今まで一度もそんな兄を見たことがない。チキは目に涙をためて振り返ると古墳の入り口まで走っていった。
間もなくして吸血鬼と化した母親は、唸りながらムロの前に立った。
「だから言ったじゃないか! お義父さんの形見は諦めろって! 母さんの馬鹿!」
涙をダブレットの袖で拭いて、母親を見据える。
「キシャァァ!」
爪と牙を見せて威嚇する母親は、それでもしっかりと左手にペンダントは握っていた。
「今、母さんが覚えているのは、あのペンダントのことだけなんだ・・・。じゃあ、僕達の事は?」
「シャアアア!」
迫りくる母親にムロは銃を構えた。
グリップがマナを吸収する木で出来ており、火をイメージしながら引き金を引くと、火薬に魔法の火が着火して弾が発射される仕組みだ。これなら魔力の低い者でも強力な遠隔攻撃が出来る。
命中精度の問題がまだ残っているが、通常の攻撃魔法と同じく、近距離から中距離程度ならば実用的なレベルだ。
―――ズドーン!!
轟音が丘陵地帯に木霊となって響き渡る。
やはり母親を撃つとなると手が震えるし、躊躇もする。
狙ったはずの弾は胸ではなく、母親の左腕を吹き飛ばした。ペンダントが腕とともに古墳の入り口近くまで飛ぶ。
「しまった!」
シカズは勿論ペンダントを追いかけて古墳の方へと走っていき、ペンダントを右手で拾い上げると自分の娘を見つけた。
「お母さん・・・」
変わり果てた母親に恐怖して、チキは古墳の開かない小さな扉に寄りかかって気絶した。
「チキ!」
ムロは走りながらラッパ銃に火薬と弾を込める。
「間に合ってくれ! 母さんだけじゃなく、妹まで失くしたら僕はもう生きていはいけない!」
今度は躊躇なく母親の頭を狙い銃にマナを込め、火をイメージする。
―――ズドーン!!
パシャアと音がして母親の頭が弾け飛んだ。
「チキ!」
扉の前で母親の血を浴びた妹が無傷なのを確認すると、今一度母親の死体を見つめる。
体だけとなった母親は、未だにビクンビクンと動いている。
長男としてなるべく気丈に振る舞おうと思っていたムロは、血塗れになった妹を抱きかかえると、扉に背を預け呆然として座り込んだ。自分の母親を殺したという後悔が津波のように押し寄せる。
「うわぁぁぁ! なんで! なんでこんな事に! 神様は何で僕達にこんなひどい仕打ちをするんだ!」
上を向いて号泣するムロの頬をナイフが掠めて古墳の石扉に当たり落ちた。
「神様はお前さんに何もしちゃあいないさ。何かをしたのは俺たちだキャらよ。悪いが坊主。お前さんには見せしめになってもらわなきゃ困るんだわ。俺たちアサッシンギルドは、お前の父ちゃんに睨まれている。だから睨み返して脅してやらねぇと、俺たちが殺られるかもしれねぇのよ」
「僕の父さんは死んだ!」
「それは継父の方だろ? お前の父親と言ったら憎きチョールズ・ヴャーンズのいとこ、ロロム・ヴャーンズだ」
「ロロム父さんなら、奴隷商人に連れ去られた!」
「馬鹿だなぁ、お前。本気でそれを信じているのキャよ。確かにロロムは奴隷商人に連れ去られたが、それを画策したのは俺らなんよ。で、最近ロロムが帝国に帰ってきた。だから俺らはまた動き出したってわけさ。お前の父ちゃんが帰ってこなけりゃ、お前ら一家は平和に暮らせてたのになぁ。恨むなら父ちゃんを恨めよ? じゃあな? 死ね」
賊がダガーを両手に構えてムロに襲いかかろうとしたその時、何処からか感情の篭っていない男の声がする。
「施設内に付着した遺伝子から、ドーラ様の系譜であると確認。資格あり」
ムロがもたれ掛かっていた古墳の扉が開いて、妹と一緒に扉の中へ転げる。
「あ! 待て!」
ギルドの暗殺者は慌ててムロを追おうとしたが、扉は直ぐに閉じた。
扉の中では無数の鉄傀儡がロボットハンガーにて待機しており、起動はしていない。ただ一機だけ他とは形状の違う白い鉄傀儡が、ムロの前に現れ跪いた。
「私は対霧の魔物用人型兵器ビコノカミです、マスター」
鉄傀儡はそう言うと胸のハッチを開いた。ゴブリンにとっては大きいが、エリートオーガ程度の大きさしかないその鉄傀儡は乗ると言うよりは着るに近い。
「私はマスターのような弱小なるゴブリンにもエリートオーガ並の力と獣人以上の素早さを与えます。更に魔人族の魔法レベルの破壊兵器を有しております。力を欲するのであればお乗り下さい」
「弱小なるゴブリンってところがカチンとくるなぁ・・・。喋る鉄傀儡か・・・。申し出は嬉しいけど、妹をここに置いてはいけないよ。外にいるアサッシン達が忍び込んで殺しに来るかもしれないし」
「大丈夫です。許可のない者が収納庫に立ち入る事は出来ません」
「本当に?」
「ええ」
「だったら・・・」
ムロは腰のポーチから大事に使っていた紙のメモ帳を取り出すと、質の悪い鉛筆に苦労しながら書き置きを残した。それからキョロキョロと当たりを見回す。
「奥に休憩室があり、そこにソファーがあります。妹君をそこへ」
主の考えを読んだビコノカミは、妹を冷たい床の上ではなく、ソファーに寝かせろと提案してくれたのだ。
「ありがとう。優しいな、ビコノカミは。変な名前だけど」
「変ですか? 私は他の鉄傀儡と違い、ハイヤット・ダイクタ・サカモト博士に設計していただいております。私をビコノカミと命名したウィスプ様が制作に関わり・・・・」
よく判らない事を言うビコノカミの話を聞き流して、ムロは妹を抱きかかえると休憩室に向かった。透明なガラスのような壁で部屋は囲まれており、外からもソファーが何処に有るかは直ぐに解った。
「ヘンテコな機械だか調度品だかが気になる。大丈夫かな? 鉄傀儡が妹を襲ったりしないだろうな」
スイッチも何もないつるりとした白い機械と鉄傀儡ばかりでムロは心配になるが、妹をソファーに寝かして書き置きを近くのテーブルに目立つように置いた。
「母さんの血だけでも拭いておこう」
ポケットからハンカチを取り出すと妹の顔を拭って、またポケットにしまった。
「行ってくるね、チキ。お兄ちゃん、アサシンギルドの奴らと――――、母さんをあんな姿にした化物を倒してくる」
ムロは部屋からでると走り、戸惑うこと無くビコノカミに乗り込んだ。
「僕に力を貸してくれ! ビコノカミ!」
「勿論です、マスター。それでは発進の掛け声を。施設に命令しないと格納庫のハッチは開きません」
「なんて言えばいいんだ?」
「出る、でも、行く、でも大丈夫です」
「解った! ムロ、行きまーす!」
ムロの、怒りとヤケクソが綯交ぜになった掛け声に反応して、格納庫の天井が消えた。背中の翼のようなフォトンスラスターが青白く光ると、一気に古墳の上空に飛ぶ。
「うわぁぁ! びっくりした! 空を飛んでいる!」
コクピット内の全面モニターのせいで、ムロは空に浮かんでいるようにしか見えない。
「落ちたりしないよな? ビコノカミ」
「はい。マスターがマナ変換器の役割をしている限り、落ちることはありません」
「どういう事?」
「極端に気力を失ったり、気絶したり、マナを一気に使わない限り大丈夫です」
「割りと弱点が多い気が・・・」
「そうならないようにするのが私の役目です。基本的にそこにあるレバーからマスターの思考を読み取って、自動で補正して動きますが、広範囲兵器の使用やサカモト粒子砲を使用する場合、マスターが許可を出す必要があります」
「よく判らないよ・・・」
「その時が来れば教えますので、兵器の名前を叫んで下さい。それから、感情のコントロールにも気をつけて下さい。怒りによる精神的負荷が一定値以上を超えますと、バーサクモードが発動し、操縦者の負担を無視した全力の攻撃を開始します」
「うん、わかった。でもなんか不安だな」
ムロは足元が落ち着かないのと、ビコノカミの説明で不安になったが、マナを伝えるレバーを握ると街へと向かうようイメージした。
古墳に入れずに諦めて街に向かっていたアサッシンの二人は、轟音と共に空を飛ぶ鉄傀儡を見て驚く。
「何で鉄傀儡が・・・?」
「知るかよ。あれもアサシンギルドが派遣したんじゃないのキャ?」
「でも古墳の方から来なかったキャ?」
「知らねぇって言ってんだろ。行くぞ!」
二人は周りを警戒しつつ、足音を立てずにバートラの街へと向かった。
無我夢中で郊外の古墳まで走ってきたムロは、妹が苦しそうに息を吸ったり履いたりする姿に心配する。
「大丈夫・・・。ちょっとお胸が苦しいだけ」
ムロはしゃがみ込む妹の背中を擦ってから立ち上がり、母親が来るのを待った。
「すばしっこい母さんならきっと大丈夫だ。もうすぐ街の方からやって来るに決まっている!」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、ムロも目を閉じて呼吸を整える。
「来た! お母さんだ!」
母親の姿が遠くに見える。手には父親の形見であるペンダントを持ってヨタヨタと走ってきた。
「母さん、余程全速力で走ったんだな」
「おかあさーーーん!」
妹が手を振って叫ぶと母親に駆け寄ろうとしたが、ムロは咄嗟に止めた。何かがおかしい。
「なんだ? 様子が変だ」
彼の勘が告げる。あれは母親であって母親ではない。
「どうしたの?お兄ちゃん・・・」
目の良いムロは、生気の無い顔をしているの母親が遠くからでも解った。目は赤く血走り、口からはとても長い犬歯が生えている。
「あれはもう・・・。母さんじゃないかもしれない」
「どういうこと? お兄ちゃん」
ムロは腰の単発銃に弾と火薬を詰める。装填に時間の掛かる一発きりのラッパ銃。自分史上最高の発明品だ。
「チキは古墳の入り口に隠れて!」
「なんで? どうして? お母さんがどうかしたの?」
「早く!」
いつも優しい兄が怒鳴った。今まで一度もそんな兄を見たことがない。チキは目に涙をためて振り返ると古墳の入り口まで走っていった。
間もなくして吸血鬼と化した母親は、唸りながらムロの前に立った。
「だから言ったじゃないか! お義父さんの形見は諦めろって! 母さんの馬鹿!」
涙をダブレットの袖で拭いて、母親を見据える。
「キシャァァ!」
爪と牙を見せて威嚇する母親は、それでもしっかりと左手にペンダントは握っていた。
「今、母さんが覚えているのは、あのペンダントのことだけなんだ・・・。じゃあ、僕達の事は?」
「シャアアア!」
迫りくる母親にムロは銃を構えた。
グリップがマナを吸収する木で出来ており、火をイメージしながら引き金を引くと、火薬に魔法の火が着火して弾が発射される仕組みだ。これなら魔力の低い者でも強力な遠隔攻撃が出来る。
命中精度の問題がまだ残っているが、通常の攻撃魔法と同じく、近距離から中距離程度ならば実用的なレベルだ。
―――ズドーン!!
轟音が丘陵地帯に木霊となって響き渡る。
やはり母親を撃つとなると手が震えるし、躊躇もする。
狙ったはずの弾は胸ではなく、母親の左腕を吹き飛ばした。ペンダントが腕とともに古墳の入り口近くまで飛ぶ。
「しまった!」
シカズは勿論ペンダントを追いかけて古墳の方へと走っていき、ペンダントを右手で拾い上げると自分の娘を見つけた。
「お母さん・・・」
変わり果てた母親に恐怖して、チキは古墳の開かない小さな扉に寄りかかって気絶した。
「チキ!」
ムロは走りながらラッパ銃に火薬と弾を込める。
「間に合ってくれ! 母さんだけじゃなく、妹まで失くしたら僕はもう生きていはいけない!」
今度は躊躇なく母親の頭を狙い銃にマナを込め、火をイメージする。
―――ズドーン!!
パシャアと音がして母親の頭が弾け飛んだ。
「チキ!」
扉の前で母親の血を浴びた妹が無傷なのを確認すると、今一度母親の死体を見つめる。
体だけとなった母親は、未だにビクンビクンと動いている。
長男としてなるべく気丈に振る舞おうと思っていたムロは、血塗れになった妹を抱きかかえると、扉に背を預け呆然として座り込んだ。自分の母親を殺したという後悔が津波のように押し寄せる。
「うわぁぁぁ! なんで! なんでこんな事に! 神様は何で僕達にこんなひどい仕打ちをするんだ!」
上を向いて号泣するムロの頬をナイフが掠めて古墳の石扉に当たり落ちた。
「神様はお前さんに何もしちゃあいないさ。何かをしたのは俺たちだキャらよ。悪いが坊主。お前さんには見せしめになってもらわなきゃ困るんだわ。俺たちアサッシンギルドは、お前の父ちゃんに睨まれている。だから睨み返して脅してやらねぇと、俺たちが殺られるかもしれねぇのよ」
「僕の父さんは死んだ!」
「それは継父の方だろ? お前の父親と言ったら憎きチョールズ・ヴャーンズのいとこ、ロロム・ヴャーンズだ」
「ロロム父さんなら、奴隷商人に連れ去られた!」
「馬鹿だなぁ、お前。本気でそれを信じているのキャよ。確かにロロムは奴隷商人に連れ去られたが、それを画策したのは俺らなんよ。で、最近ロロムが帝国に帰ってきた。だから俺らはまた動き出したってわけさ。お前の父ちゃんが帰ってこなけりゃ、お前ら一家は平和に暮らせてたのになぁ。恨むなら父ちゃんを恨めよ? じゃあな? 死ね」
賊がダガーを両手に構えてムロに襲いかかろうとしたその時、何処からか感情の篭っていない男の声がする。
「施設内に付着した遺伝子から、ドーラ様の系譜であると確認。資格あり」
ムロがもたれ掛かっていた古墳の扉が開いて、妹と一緒に扉の中へ転げる。
「あ! 待て!」
ギルドの暗殺者は慌ててムロを追おうとしたが、扉は直ぐに閉じた。
扉の中では無数の鉄傀儡がロボットハンガーにて待機しており、起動はしていない。ただ一機だけ他とは形状の違う白い鉄傀儡が、ムロの前に現れ跪いた。
「私は対霧の魔物用人型兵器ビコノカミです、マスター」
鉄傀儡はそう言うと胸のハッチを開いた。ゴブリンにとっては大きいが、エリートオーガ程度の大きさしかないその鉄傀儡は乗ると言うよりは着るに近い。
「私はマスターのような弱小なるゴブリンにもエリートオーガ並の力と獣人以上の素早さを与えます。更に魔人族の魔法レベルの破壊兵器を有しております。力を欲するのであればお乗り下さい」
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「大丈夫です。許可のない者が収納庫に立ち入る事は出来ません」
「本当に?」
「ええ」
「だったら・・・」
ムロは腰のポーチから大事に使っていた紙のメモ帳を取り出すと、質の悪い鉛筆に苦労しながら書き置きを残した。それからキョロキョロと当たりを見回す。
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「変ですか? 私は他の鉄傀儡と違い、ハイヤット・ダイクタ・サカモト博士に設計していただいております。私をビコノカミと命名したウィスプ様が制作に関わり・・・・」
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「母さんの血だけでも拭いておこう」
ポケットからハンカチを取り出すと妹の顔を拭って、またポケットにしまった。
「行ってくるね、チキ。お兄ちゃん、アサシンギルドの奴らと――――、母さんをあんな姿にした化物を倒してくる」
ムロは部屋からでると走り、戸惑うこと無くビコノカミに乗り込んだ。
「僕に力を貸してくれ! ビコノカミ!」
「勿論です、マスター。それでは発進の掛け声を。施設に命令しないと格納庫のハッチは開きません」
「なんて言えばいいんだ?」
「出る、でも、行く、でも大丈夫です」
「解った! ムロ、行きまーす!」
ムロの、怒りとヤケクソが綯交ぜになった掛け声に反応して、格納庫の天井が消えた。背中の翼のようなフォトンスラスターが青白く光ると、一気に古墳の上空に飛ぶ。
「うわぁぁ! びっくりした! 空を飛んでいる!」
コクピット内の全面モニターのせいで、ムロは空に浮かんでいるようにしか見えない。
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「はい。マスターがマナ変換器の役割をしている限り、落ちることはありません」
「どういう事?」
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「よく判らないよ・・・」
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「うん、わかった。でもなんか不安だな」
ムロは足元が落ち着かないのと、ビコノカミの説明で不安になったが、マナを伝えるレバーを握ると街へと向かうようイメージした。
古墳に入れずに諦めて街に向かっていたアサッシンの二人は、轟音と共に空を飛ぶ鉄傀儡を見て驚く。
「何で鉄傀儡が・・・?」
「知るかよ。あれもアサシンギルドが派遣したんじゃないのキャ?」
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