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その顔は
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夜の裏庭で朧月蝶が青い光を放って、花壇の花に群がって飛んでいる。
東屋で物思いに耽るヒジリは、子孫を残す為に命を燃やして踊るダンスに魅入られていた。
本来、生物とはああやって今の時間を必死に生き、命のサークルに未来を託して、螺旋を紡いでいく。
「命のサークルか・・・。その輪から外れた地球人には、あの蝶の踊りが滑稽に見えるのだろうな」
ウメボシはメンテナンス中なので、ヒジリは独り言ちてテーブルに頬杖を突く。
「あら、ウメボシはいないのですわね」
シルクのパジャマを着たリツが、ヒジリ―ハウスの方から歩いてきた。
「君も眠れないのかね」
「ええ。ここ最近悪夢ばかり見ますの」
「ほう。それでその熊のぬいぐるみを抱きしめているわけか。リツは可愛いな」
リツは頬を赤くして、いつもの癖で前髪をギュッと押さえた。
「そういうわけでは・・・。このぬいぐるみは、セイバーが私に為に作ってくれたのです」
「セイバー・・・? ああ、君の弟の方か」
ヒジリは一瞬、自分の息子であるヤイバを思い浮かべた。彼が名乗ったセイバーという名は、リツの末弟から取ったからだ。
「最近は体の具合も良くなってきて、ぬいぐるみを作る余裕が出てきましたの。あの子は手先が器用なのと戦術を立てるのが得意ですから」
「そういえば、第一次リザードマン掃討作戦は彼の手柄だったな」
「ええ。当初、帝国は正攻法でゲリラ戦を挑むリザードマンと戦っていましたが、敵は足場の悪い沼を、自由に移動して神出鬼没なうえ、外皮が固くてかなり手こずっていました。ですが、途中からセイバーが軍師として参加してから戦況は一変しました。リザードマンは水の影響を受けやすいと言って、前線にシャーマンを置き、沼に麻痺毒の魔法を染み込ませたのです。誰もがリザードマンは水に強い、それは愚策だと言っていた中で、セイバーは血だまりにいるリザードマンの皮膚が、薄らと赤くなっている事に気づいていました」
「ほう。洞察力に優れているのだな。わが軍にも一人は欲しいタイプだ。・・・おっと! 我が国に、軍隊はなかった」
ヒジリの冗談にリツは笑う。
「世界中でも、軍隊がない国なんてヒジランドだけですわ」
「まぁうちは、砦の戦士達がいるからな。在野で有能な戦士も多いし。欠点はヒーラーとメイジが少ない事か。ところでセイバーは、何の病気かね?」
「生まれつき体が弱いとしか、聞いていませんわ」
「遺伝的なものかね・・・。とは言え治せるが」
「それが・・・。私がヒジリに治してもらうよう頼もうかと聞いたところ、彼は自力で克服すると言ってましたわ。例え生まれつきのものであれ、知恵や工夫で克服して見せると」
「気骨があるのだな。ヤイバもセイバーのそういった強さを見て、名前を借りたのだろう」
「そういえば、我が一族にヤイバという名前の者はおりませんでした。彼は何者なのかしら?」
「もう言ってもいいか・・・。彼は未来の私達の子供だ」
リツは縫いぐるみを落としそうになって、慌ててキャッチする。
「ではあの自由騎士は! ヒジリと私の息子ですの?! 道理で顔がヒジリに似てると思いましたわ! でもどうやって時間を遡ったのかしら? あり得る可能性としては、影人とかいう時間の管理者に頼んだのかも・・・」
「なんだと? そんな者がいるのかね? それは恐ろしい話だぞ。もし彼らが時間に干渉すれば・・・」
「彼らは【姿隠し】の魔法を常時発動させているかのように、この世界に干渉が出来ない、と魔法の本で読んだ事があります。干渉できるのは、誰かが自分たちの守る時間の魔法具を盗もうとしたり、勝手に使おうとした場合だけだそうです。まぁお伽話の類かもしれませんけど」
「ではヤイバは、彼らを説得したというのかね?」
「それは私にはなんとも・・・」
「しかし・・・。そんな大それた感じで時間移動をしていたようには見えなかったが・・・。ううむ、この星は本当に謎が多い。サカモト博士は、一体どの程度まで謎を解き明かしていたのか。・・・もし彼が、影人の詳細を知っているのであれば悔しいな」
そんな事よりも、と言ってリツはヒジリの横に座った。座った時に巻き起こった僅かな風に、女性特有の甘い匂いが混じる。
「その・・・。私達・・・。いつかそういう事をするのですよね?」
可愛い顔をした熊の縫いぐるみの手を掴んで、リツは顔を真っ赤にして、にぎにぎしている。
「そうなるな」
「私が正妻って事ですか?」
「何を以て正妻と言うのかは知らないが、ヤイバは自分を長男だと言っていた。上に姉がいる感じではなかったと思う」
「じゃあヒジリの初めては、私が貰うという事でよろしい?」
「それはどうかな。単にリツが我が子を産むのが早かっただけかもしれない」
「そ、そうですわね・・・。はぁ・・・。いつなのかしら。その素敵な時間が訪れるのは」
リツはヒジリに寄りかかった。
「さぁ・・・。それは今かもしれないし、何年か先かもしれない」
ヒジリはリツの頭をそっと撫でて、花壇の花の上を飛び交う朧月蝶を眺めた。
樹族の遺跡はノームやサカモト博士の施設と違い、大抵はオーソドックスな寂れた古代遺跡、といった見た目をしている。獣人国との国境近くにある洞窟の遺跡も例外ではなかった。
レンガで出来た道を注意深く見るコロネは、松明を地面に近づけた。
「落とし穴の魔法罠があるよ。ヒジリ、ここ踏んで」
コロネは魔法罠の端をヒジリに踏むよう指示する。勿論、一緒に来た姉妹やヒジリやウメボシの目には、罠は見えない。
魔法無効化能力があるヒジリは、コロネが指をさした場所を踏むと、フラフープのような円が一瞬光って消えた。
「これは、別の場所に落とす落とし穴だな? これだけは我々にとっても厄介なのだ。穴の真ん中に足を置いてしまうと、しっかりと罠の影響は受けるし、一方通行だからな。かといってエネルギーが有限のヘルメスブーツで、いつまでも飛んでいるわけにもいかない」
「地下だと太陽光でエネルギーチャージできませんからね。地上だとほぼ無限に浮いていられるのですが。ウメボシのようにあらゆるエネルギー源から、エネルギーを摂取できるように改造してはどうでしょうか?」
「そうなるとボランティアポイントが必要な技術を使う事になる・・・」
何か良い改造法は無いかと、ヒジリは立ち止まって考えだしたので、タスネが尻を突っついた。
「ほら、行くよ、ノーガ(ノームとオーガを混ぜた造語)のヒジリ陛下」
ヒジリは急にお尻を突っつかれてビクリとしてから尻を撫でて、のそのそと歩き出した。
その後もコロネは魔法の罠を解除して歩く。時々違和感を覚えるも、罠を見抜けなかった場合に限って、イグナが【魔法探知】や【解除】の魔法で、妹を助けて先を進んだ。
強力な魔物や悪魔も出てきたが、ヒジリやウメボシの敵ではなく一撃で沈んでいく。雑魚のスライムや魔犬や凶悪な亜人は姉妹が倒した。
何度目かの戦いで操っていた大コウモリが魔物にやられてしまい、タスネは申し訳ないという気持ちで、その大コウモリを手に持った。
直ぐにフランが祈りで大コウモリを回復すると、魅了効果が切れた大コウモリは通路の奥へと消えていく。
大コウモリを見送って、タスネはしみじみと言う。
「改めて思うけど、ヒジリってやっぱり強いよね・・・。手練れの冒険者達が束になって何とか倒せる敵を、拳骨一発で倒すんだから・・・。馬鹿な事を言った友達を叩く感じで叩いたら、魔物はもう地面に伸びてるし」
タスネはヒジリの無敵の力を羨ましく感じるのだ。
「何、今更そんな事を言ってるのぉ? お姉ちゃんは・・・」
「だってあれこれと手段を講じて、必死になって敵を倒す私たちが馬鹿みたいじゃない。コロネなんてけん制や目くらましとかして、何とか敵の背後を取って、ようやっと大ダメージを与えられるんだよ」
コボルト相手にチョロチョロと動き回っていたコロネを、タスネは思い返す。
「お姉ちゃんなんかまだいいじゃない。魔物を操るだけなんだし。私なんて誰かを守りながら、回復もするのよぉ。その誰かって、勝手に前衛に飛び出ていくお姉ちゃんの事なんだけどぉ?」
「だって・・・。アタシの可愛い魔物ちゃんが、危くなったらそりゃ出ていくでしょうが!」
「【沈黙】」
「もごご」
「ふんがぐっぐ」
姉二人の喧嘩をうるさく思ったイグナが、魔法で強引に黙らせた。
「この部屋の中に誰かがいる」
イグナの【魔法探知】が、マナを纏う存在を扉の向こうに感じたのだ。
「まぁ十中八九、遺跡守りだろうな」
ヒジリが肩を竦める。
「マスター、この部屋の中に、例の装置らしきものが見えます」
「ほう、探索初日で見つかるとは思っていなかった。今日は軽い下見のはずだったのだが」
「もごごご(アークデーモンやスケルトンロードと戦っといて、何が軽い下見よ!)」
タスネが地団駄を踏んで抗議するも、ヒジリには主がなにを言っているかは判らない。
「ヒジリ、大好きキスしてだって? よしてくれ、主殿」
「もごご!(そんな事言ってないよ! 馬鹿ヒジリ!)」
「さて主殿の愛の告白も済んだところで部屋に入るか。皆気を付けてくれたまえ」
タスネに脛を蹴られながら、ヒジリは部屋の扉を開けた。
「やぁ、ようこそ。諸君。それから初めまして! 星のオーガ」
そこには見覚えのある顔があった。つばの広い尖がり帽子の下からこちらを見るその顔は、アルケディア城の地下で魔法によって厳重に拘束されているはずの、元魔法院院長のチャビン・ジブリットであった。
東屋で物思いに耽るヒジリは、子孫を残す為に命を燃やして踊るダンスに魅入られていた。
本来、生物とはああやって今の時間を必死に生き、命のサークルに未来を託して、螺旋を紡いでいく。
「命のサークルか・・・。その輪から外れた地球人には、あの蝶の踊りが滑稽に見えるのだろうな」
ウメボシはメンテナンス中なので、ヒジリは独り言ちてテーブルに頬杖を突く。
「あら、ウメボシはいないのですわね」
シルクのパジャマを着たリツが、ヒジリ―ハウスの方から歩いてきた。
「君も眠れないのかね」
「ええ。ここ最近悪夢ばかり見ますの」
「ほう。それでその熊のぬいぐるみを抱きしめているわけか。リツは可愛いな」
リツは頬を赤くして、いつもの癖で前髪をギュッと押さえた。
「そういうわけでは・・・。このぬいぐるみは、セイバーが私に為に作ってくれたのです」
「セイバー・・・? ああ、君の弟の方か」
ヒジリは一瞬、自分の息子であるヤイバを思い浮かべた。彼が名乗ったセイバーという名は、リツの末弟から取ったからだ。
「最近は体の具合も良くなってきて、ぬいぐるみを作る余裕が出てきましたの。あの子は手先が器用なのと戦術を立てるのが得意ですから」
「そういえば、第一次リザードマン掃討作戦は彼の手柄だったな」
「ええ。当初、帝国は正攻法でゲリラ戦を挑むリザードマンと戦っていましたが、敵は足場の悪い沼を、自由に移動して神出鬼没なうえ、外皮が固くてかなり手こずっていました。ですが、途中からセイバーが軍師として参加してから戦況は一変しました。リザードマンは水の影響を受けやすいと言って、前線にシャーマンを置き、沼に麻痺毒の魔法を染み込ませたのです。誰もがリザードマンは水に強い、それは愚策だと言っていた中で、セイバーは血だまりにいるリザードマンの皮膚が、薄らと赤くなっている事に気づいていました」
「ほう。洞察力に優れているのだな。わが軍にも一人は欲しいタイプだ。・・・おっと! 我が国に、軍隊はなかった」
ヒジリの冗談にリツは笑う。
「世界中でも、軍隊がない国なんてヒジランドだけですわ」
「まぁうちは、砦の戦士達がいるからな。在野で有能な戦士も多いし。欠点はヒーラーとメイジが少ない事か。ところでセイバーは、何の病気かね?」
「生まれつき体が弱いとしか、聞いていませんわ」
「遺伝的なものかね・・・。とは言え治せるが」
「それが・・・。私がヒジリに治してもらうよう頼もうかと聞いたところ、彼は自力で克服すると言ってましたわ。例え生まれつきのものであれ、知恵や工夫で克服して見せると」
「気骨があるのだな。ヤイバもセイバーのそういった強さを見て、名前を借りたのだろう」
「そういえば、我が一族にヤイバという名前の者はおりませんでした。彼は何者なのかしら?」
「もう言ってもいいか・・・。彼は未来の私達の子供だ」
リツは縫いぐるみを落としそうになって、慌ててキャッチする。
「ではあの自由騎士は! ヒジリと私の息子ですの?! 道理で顔がヒジリに似てると思いましたわ! でもどうやって時間を遡ったのかしら? あり得る可能性としては、影人とかいう時間の管理者に頼んだのかも・・・」
「なんだと? そんな者がいるのかね? それは恐ろしい話だぞ。もし彼らが時間に干渉すれば・・・」
「彼らは【姿隠し】の魔法を常時発動させているかのように、この世界に干渉が出来ない、と魔法の本で読んだ事があります。干渉できるのは、誰かが自分たちの守る時間の魔法具を盗もうとしたり、勝手に使おうとした場合だけだそうです。まぁお伽話の類かもしれませんけど」
「ではヤイバは、彼らを説得したというのかね?」
「それは私にはなんとも・・・」
「しかし・・・。そんな大それた感じで時間移動をしていたようには見えなかったが・・・。ううむ、この星は本当に謎が多い。サカモト博士は、一体どの程度まで謎を解き明かしていたのか。・・・もし彼が、影人の詳細を知っているのであれば悔しいな」
そんな事よりも、と言ってリツはヒジリの横に座った。座った時に巻き起こった僅かな風に、女性特有の甘い匂いが混じる。
「その・・・。私達・・・。いつかそういう事をするのですよね?」
可愛い顔をした熊の縫いぐるみの手を掴んで、リツは顔を真っ赤にして、にぎにぎしている。
「そうなるな」
「私が正妻って事ですか?」
「何を以て正妻と言うのかは知らないが、ヤイバは自分を長男だと言っていた。上に姉がいる感じではなかったと思う」
「じゃあヒジリの初めては、私が貰うという事でよろしい?」
「それはどうかな。単にリツが我が子を産むのが早かっただけかもしれない」
「そ、そうですわね・・・。はぁ・・・。いつなのかしら。その素敵な時間が訪れるのは」
リツはヒジリに寄りかかった。
「さぁ・・・。それは今かもしれないし、何年か先かもしれない」
ヒジリはリツの頭をそっと撫でて、花壇の花の上を飛び交う朧月蝶を眺めた。
樹族の遺跡はノームやサカモト博士の施設と違い、大抵はオーソドックスな寂れた古代遺跡、といった見た目をしている。獣人国との国境近くにある洞窟の遺跡も例外ではなかった。
レンガで出来た道を注意深く見るコロネは、松明を地面に近づけた。
「落とし穴の魔法罠があるよ。ヒジリ、ここ踏んで」
コロネは魔法罠の端をヒジリに踏むよう指示する。勿論、一緒に来た姉妹やヒジリやウメボシの目には、罠は見えない。
魔法無効化能力があるヒジリは、コロネが指をさした場所を踏むと、フラフープのような円が一瞬光って消えた。
「これは、別の場所に落とす落とし穴だな? これだけは我々にとっても厄介なのだ。穴の真ん中に足を置いてしまうと、しっかりと罠の影響は受けるし、一方通行だからな。かといってエネルギーが有限のヘルメスブーツで、いつまでも飛んでいるわけにもいかない」
「地下だと太陽光でエネルギーチャージできませんからね。地上だとほぼ無限に浮いていられるのですが。ウメボシのようにあらゆるエネルギー源から、エネルギーを摂取できるように改造してはどうでしょうか?」
「そうなるとボランティアポイントが必要な技術を使う事になる・・・」
何か良い改造法は無いかと、ヒジリは立ち止まって考えだしたので、タスネが尻を突っついた。
「ほら、行くよ、ノーガ(ノームとオーガを混ぜた造語)のヒジリ陛下」
ヒジリは急にお尻を突っつかれてビクリとしてから尻を撫でて、のそのそと歩き出した。
その後もコロネは魔法の罠を解除して歩く。時々違和感を覚えるも、罠を見抜けなかった場合に限って、イグナが【魔法探知】や【解除】の魔法で、妹を助けて先を進んだ。
強力な魔物や悪魔も出てきたが、ヒジリやウメボシの敵ではなく一撃で沈んでいく。雑魚のスライムや魔犬や凶悪な亜人は姉妹が倒した。
何度目かの戦いで操っていた大コウモリが魔物にやられてしまい、タスネは申し訳ないという気持ちで、その大コウモリを手に持った。
直ぐにフランが祈りで大コウモリを回復すると、魅了効果が切れた大コウモリは通路の奥へと消えていく。
大コウモリを見送って、タスネはしみじみと言う。
「改めて思うけど、ヒジリってやっぱり強いよね・・・。手練れの冒険者達が束になって何とか倒せる敵を、拳骨一発で倒すんだから・・・。馬鹿な事を言った友達を叩く感じで叩いたら、魔物はもう地面に伸びてるし」
タスネはヒジリの無敵の力を羨ましく感じるのだ。
「何、今更そんな事を言ってるのぉ? お姉ちゃんは・・・」
「だってあれこれと手段を講じて、必死になって敵を倒す私たちが馬鹿みたいじゃない。コロネなんてけん制や目くらましとかして、何とか敵の背後を取って、ようやっと大ダメージを与えられるんだよ」
コボルト相手にチョロチョロと動き回っていたコロネを、タスネは思い返す。
「お姉ちゃんなんかまだいいじゃない。魔物を操るだけなんだし。私なんて誰かを守りながら、回復もするのよぉ。その誰かって、勝手に前衛に飛び出ていくお姉ちゃんの事なんだけどぉ?」
「だって・・・。アタシの可愛い魔物ちゃんが、危くなったらそりゃ出ていくでしょうが!」
「【沈黙】」
「もごご」
「ふんがぐっぐ」
姉二人の喧嘩をうるさく思ったイグナが、魔法で強引に黙らせた。
「この部屋の中に誰かがいる」
イグナの【魔法探知】が、マナを纏う存在を扉の向こうに感じたのだ。
「まぁ十中八九、遺跡守りだろうな」
ヒジリが肩を竦める。
「マスター、この部屋の中に、例の装置らしきものが見えます」
「ほう、探索初日で見つかるとは思っていなかった。今日は軽い下見のはずだったのだが」
「もごごご(アークデーモンやスケルトンロードと戦っといて、何が軽い下見よ!)」
タスネが地団駄を踏んで抗議するも、ヒジリには主がなにを言っているかは判らない。
「ヒジリ、大好きキスしてだって? よしてくれ、主殿」
「もごご!(そんな事言ってないよ! 馬鹿ヒジリ!)」
「さて主殿の愛の告白も済んだところで部屋に入るか。皆気を付けてくれたまえ」
タスネに脛を蹴られながら、ヒジリは部屋の扉を開けた。
「やぁ、ようこそ。諸君。それから初めまして! 星のオーガ」
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