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第十四章 他学年試合編
1047話 全力の残り火まで
しおりを挟む「ぐぅっ、ぅあぁ……!?」
身体中を、風の刃と雷が襲ってくる。全身を魔力強化で纏い鎧のようにして攻撃を防いでいるけど、それでも防ぎきれないほどの威力。
魔術に負けるとも劣らない威力の魔導を、立て続けに二発も。一切の容赦がない。
体感にして、まるで数分食らっているような感覚。だけど実際には、数秒程度。
それでも、技が切れたのと私が地面に落下したのは、ほとんど同時だった。
「ぐぇっ」
背中から、受け身も取れずに落下してしまった。変な声出た。
うぅう、全身が痺れてる……これ結界なかったらもっとやばかったんだろうな。
ゆっくりと立ち上がる。ダルマスはまだ構えたままだ。
「まだ立つのか」
「追撃してこないんだ?」
「不用意に仕掛ければどんな反撃を食らうかわからんからな」
今優勢なのはダルマスだろうに、ちゃんと警戒してる……いや、そうじゃなかったとしたら?
警戒はしているにしても、今の数秒無防備だった私に仕掛けてこなかった理由は?
ダルマスは魔術に匹敵する威力の技を、あんなに放った。だけど、果たしてその代償がなにもないだろうか?
魔術ならば、並の魔導士なら一発……撃てても二発だ。魔術とはちょっと違うとは言え、ダルマスはあれだけの数を放った。
魔法のように、自分の魔力を消費するのか。魔術のように、周囲の魔力を使う代わりに精神力を消費するのか。
どちらかは、わからないけど……
「ダルマス、実は結構疲れてる?」
「……」
あれだけの魔導を連撃して、疲れないはずがない。ぱっと見平気に立っているけど……
もし疲れているなら、仕掛けてこなかった理由もうなずける。
それに、さっきの「まだ立つのか」って台詞。あれが、自分も限界が近いから倒れててくれ……って意味の裏返しだったとしたら。
「答えないんだ?」
「わざわざ教えてやる理由もないだろう」
そりゃそうだ。でも、よーく見れば……平気そうな顔はしているけど、冷や汗は流れているし呼吸も荒い。
やっぱり、あんな威力の魔導を撃つだけでも、かなりの消耗なんだろう。
私が立ち上がったのは、予想外……とまではいかなくても、もっと追い詰められたつもりだったんだろうな。
ま、やばかったけど。
「私はまだ、やれるよ」
「あれだけ撃ち込んだのに、その余裕。なかなかにへこむな」
「余裕ってほどでもないよ。あちこち痛いし、今すぐノマちゃんの膝枕で眠っちゃいたいくらい」
「余裕じゃないか。……俺もやれるさ」
私は杖を構え、ダルマスは剣を構える。
それぞれ切っ先を相手に向け、周囲が静まり返る。相手にしか、集中していない。
多分、ダルマスはあと一撃が限界……その一撃に、全力をぶつけてくるはずだ。
いや、もしかしたらさっきの連撃で全力を叩き込み、私を戦闘不能に追い込むつもりだったのだろう。
だから……これは全力ではなく、残り火だ。
「行くぞ……魔剣、火の型……!」
ダルマスが、鞘に剣を収める。けれど、魔力が剣に集中していくのがわかる。
彼の持つ魔導剣は、莫大な魔力を吸収し魔剣へと昇華する。本当に、残りの全てを注ぎ込んでいる。
だったら……私も残った力、全部注ぎ込むくらいでいかないと!
「我が魔力を糧とし、精霊の力を借り受けお互いの魔力を一つとし……さらなる魔導の力をここに、誕生させる」
自分の中の魔力と、周囲の魔力を混ぜ合わせる。本来自分の魔力だけでは不可能なそれを、周囲の魔力を借りることで補う。
さっきの全身強化で、私自身の魔力もだいぶ持っていかれた。本当にすごい威力だったよ。
でも……私だって、負けないからね!
「極・炎天狼牙!!!」
「魔の始まりたる真名を魂へと刻め!
魔零!!!」
先ほどよりもさらに膨大な魔力が、ダルマスの魔剣に収束していく。真っ赤に燃える炎のように全身に纏い、光速……いや炎速の抜刀を斬り放つ。
私も、膨大な魔力を杖に収束。魔法と魔術と、その両方を組み合わせた魔導の力を、全身に纏わせる。迫ってくるダルマスを迎え撃つように、私もまた飛び出す。
私もダルマスの全力が、ぶつかり合う。膨大な魔力を纏った魔導の杖と膨大な魔力を纏った魔剣が衝突し、周囲に強烈な風圧が放たれる。
けれど、周りのことは気にしていられない。目に入るのは、目の前の男ただ一人。
「……っ」
「ぃやぁ!」
衝突したお互いの武器……だけど、それは一瞬だった。あまりの衝撃に武器が弾かれ、無防備な身体がさらされる。
それを見逃すことなく、私は……素早く杖を握り直した。
そして、ダルマスの腹部へと一閃を叩き込んだ。
「! っ、か……」
それは……多分、一瞬のことだった。私とダルマスは真正面からぶつかり合い、そして今は私の後ろにダルマスがいる。
背中に目はついていない。でも、ダルマスが膝から崩れ落ちるのを感じていた。
振り向き、ダルマスが倒れているのを確認する。ただ、うつぶせに倒れていたけど……仰向けに、体勢を変えていた。
結界の中だからか、まだ意識は保っているみたいだ。
「っ、はぁ、はぁ……」
それを理解した瞬間、どっと汗が吹き出してくる。それに、一気に疲労が襲ってきた。
私は膝に手を置き、なんとか倒れないように踏ん張るけど……
け、結界の中でこれか……私も、だいぶやばかったかも。
でも、この汗は……気持ちのいい汗だ。
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