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第十五章 最高の魔導士編
1146話 帰ってきた我が家
しおりを挟むついに周りが木だらけだった景色に変化が訪れた。
視界の先から光が差し込み……自然と、足取りが軽くなる。この道は、覚えている。
前を歩くアスィーを追い抜き、私は光へ……森の外へと、駆け出た。
「……あ」
自然と、声が漏れた。まだ結構先ではあるけど……私の目の先には、見慣れた一軒家が建っていたからだ。
木製の、大きいとも小さいとも言えない家。私にとって、毎日目にしていた……思い出の家。
懐かしい……光景もだけど、空気が懐かしい、と言えべきだろうか。
「あそこが、エランさんの……?」
「うん、そうだよ!」
逸る気持ちを抑えきれない。早く、あそこに向かいたいと私の頭が、脚が、全身が言っているかのよう。
自分が今どんな顔をしているのかはわからないけど、ルリーちゃんはふふっと笑って。
「楽しそうですね」
そう言ったのだ。私、そんなに顔に出ちゃってるかなぁ。
まあ事実だから、否定はしないんだけどね。
周りはとてもきれいな風景だ。振り返れば森、見渡せば草の生えた丘……ここで毎日遊んでたよなぁ。
そんなことを思い出しながら歩いていると……ふと、懐かしい気配を感じた。
私は、振り返る。そこには……
「ぁ、精霊さん!」
そこには、淡く光り輝く存在……精霊さんがいた。
私にとって、初めて会話をして……仲良くなった精霊だ。師匠が外出して留守にしていたとき、精霊さんとよく遊んでいた。
精霊さんはどうやらこの地から離れられないようで。着いてきてほしいと思っていた私は、残念に感じていたっけ。
でも、精霊さんが後押ししてくれたのだ。それが、とても嬉しかった。
「わ、きれい! この子って、ママのお話に出てきた子?」
「そうだよー」
フィルちゃんには、学園に来る前の私の話をした。その時に、この子の話も当然した。
だからだろう、フィルちゃんは人懐こい笑顔を浮かべながら、精霊さんに手を振っている。
……今じゃ複数の魔術を使うために、いろんな精霊と契約している私だけど……初めての友達となったこの子のことは、特別だ。
「精霊……」
「うん、この子が……あ、大丈夫だよ。怖くないから」
近寄ってくるルリーちゃんに精霊さんを紹介しようとするけど、精霊さんは私の後ろに隠れてしまう。
そういえば、精霊とダークエルフって相性が悪い……んだっけ。精霊はエルフと、ダークエルフは邪精霊との親和性が高い。
これは、ダークエルフが人々から嫌われているのとは、また違った問題だ。わかりやすく言うなら……生理的に無理?
「すみません、エランさん。私には、精霊の姿が見えなくて……」
「あ……そっか」
そうだ、なにも精霊さんの姿はみんなに見えるわけじゃないんだよな。それぞれ、人と精霊にも相性ってものがある。
魔術を使うために精霊と契約、契約するためにはまず精霊と見て触れ合わなければ……という風に段階がある。
魔導士としての力があっても精霊は見えない、と言う人もいると聞く。それに、ルリーちゃんの場合はダークエルフだからまた特殊なのかもしれない。
「あははは、わーいわーいっ」
「……ルリーちゃん、精霊さんが見えてるのか……」
さらっと流してしまっていたけど……ルリーちゃんは、当たり前のように精霊さんが見えているのか。
今まで聞いたことなかったけど、これまでにもそういうことはあったのかもしれない。精霊は、世界のいろんなところに存在しているから。
魔物と使い魔契約をして、使い魔の力を自分のものにして……精霊まで見えている。やっぱりフィルちゃんには、魔術を使える才能があるのかもしれないな。
「さて……みんな、行こっか。精霊さんも一緒にっ」
私が師匠に拾われて、それから十年間暮らしていた家。そこに今日、私は帰ってきた。友達を連れて。
もし師匠がいたら……友達を紹介しに、ちょくちょく帰ってきたりしたんだろうか。
一歩一歩と足を進めて……丘を登り、ついに私は家の前にまでたどり着く。
「……ふぅ」
なんだか、すごく緊張するな。久しぶりに帰ってきたとはいえ、誰もいないのに……それでも、胸がドキドキ言ってる。
私は軽く気持ちを落ち着かせて、扉に手を伸ばした。
そして、ゆっくりと扉を開く。
「……っ」
その瞬間、過去の映像がフラッシュバックしてくるよう。
私と師匠ガ過ごしていた面影が残っている。二人で生活していた光景が、頭の中によみがえる。
そこに師匠がいて、「おかえり、エラン」と言ってくれてるかのよう。
「ここが、エランさんが暮らしていた部屋なんですね」
「ひろーい!」
ルリーちゃんもフィルちゃんも、部屋の中に入る。フィルちゃんなんかは、多分寮の部屋と比べてるんだろうな。
あそこと比べたら、さすがに広いよね。
でも……久しぶりだからだろうか。暮らしていたときはそんなこと思わなかったのに、少し狭く感じる。私が大きくなったってことだろうか。
「……懐かしいなぁ」
師匠と一緒に食事をしたテーブルをなでる。ここで、私が作った料理を、師匠はおいしいって食べてくれたっけ。
あそこで食器を洗って……あっちの部屋で眠って……外に出て、魔導の訓練をして。
本当に、懐かしい。そして、友達にここを見せられたことが、とっても嬉しい。
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