1,163 / 1,198
第十五章 最高の魔導士編
1150話 月夜の下で
しおりを挟む「すぴーっ」
「すー……」
その日の夜。部屋の中には、心地よさそうな二人の寝息が聞こえていた。
私は隣に寝ていたフィルちゃん、そしてルリーちゃんを見た。実に安らかな寝顔だ。
特に、毎日見ているフィルちゃんと違ってルリーちゃんの寝顔は久しぶりに見る気がする。
「ふふ、よく寝てるな」
フィルちゃんは、結局ずっとはしゃいでたもんな。もふもふを召喚して飛び回ったり、精霊さんとお話してたり。
ルリーちゃんも、ここに来てからはわりとはしゃいでいた。主に家の中……私が使っていた部屋にいた。
なので、二人とも疲れてしまったのだろう。
以前は、わりと広いベッドで一人だと広すぎると思っていたけど……こうして、三人でも一緒に寝られるのはありがたい。
「そーっと」
私はそっと二人の頭を撫でて……二人を起こさないように、気をつけながらベッドから降りる。
そして、二人ともすやすやのままなのを確認して……部屋を出た。
それから私は、家の中を歩き回って……目的の人物がいないことを確認した。
「やっぱり」
まったく、家の中で寝ろって言ったのに。
私はやれやれと感じながら、家を出る。そして……探すまでもなく、見つけた。
まん丸の月が出ている夜空の下。月を見上げるようにして座る、金色の髪が揺れる後ろ姿を。
「……」
その姿に、私は少しばかり見とれてしまった。
森の妖精……とはよく言ったものだ。自然や精霊に愛され、自然の中に暮らすとされるエルフ。
自然に愛されているから魔力は純粋かつ膨大で、精霊に愛されているから魔術を得意とする。そんな、特別とも言える存在。
私はゆっくりと、足を進めていく。
「! お前か」
草を踏む音に気づいたのか、アスィーは首を動かす。私を見て、特に驚いた様子もない。
私だって気づいていたのか……それとも、背後から不意打ちする輩がいても対処できるからか。
私は彼の隣まで移動して、その場に腰を下ろした。
「家の中で寝ろって言ったのに。なんで、こんなところにいるかなぁ」
「もうずっとこの生活なんだ、慣れてるんだよ」
……夜風に当たりたかったとか、月が見たかったとか。いろいろと言い訳はあるだろうに。
やっぱり、外で寝るつもりだったのか。
私は空を見上げる。こんな風に、落ち着いて空を見上げるのなんて久しぶりな気がするなぁ。
いつもこの時間帯は寮にいるし、外に出ていることもあまりないからね。
「お前こそ、寝てないじゃないか」
「私はちょっと目が覚めただけだよ。……はー、風が気持ちいい」
少しひんやりするけど、夜風が気持ちいい。目を閉じて、全身で風を感じる。
それにここは、空気がおいしい……っていうのかな。やっぱり自然が近くにあるからかな。
魔物になりかけっていうモンスターを食べて意外とおいしくて。みんなで話して、遊んで。久しぶりにこの場所でお風呂に入って。懐かしいベッドに横になって。
月を見上げて、夜風に当たって。こうした時間も、なんだか良いな。
「アスィーはさ、ずっとここにいるの?」
「ん?」
「家を守ってくれてるのは、嬉しいよ。他にも、モンスターが魔物にならないように見張ってくれてたり、ひどいことにならないようにしてくれてる。それは嬉しいし、ありがたいことなんだけど……」
一人で、この先もずっと続けるのか。精霊さんが傍にいるかもしれないけど、それでもこの場所でずっと、ここを守っていくのか。
それはなんだか……寂しい、気がする。
私は月を見上げたまま、続ける。
「だからさ……もしよかったら、アスィーも……魔導学園に来ない?」
「……は?」
私の言葉に、アスィーは間の抜けた声を上げた。しかもぽかんとした顔をしている。
ふふ、今日会ってから初めてこんな顔と声を引き出せた。
「いきなりなにを言い出すかと思えば」
「別に冗談ってわけじゃないよ。学園は楽しいし。
あ、エルフがどうのって言うのなら心配しなくていいからね。学園にはウーラスト先生ってエルフがいて、みんなから人気なんだから」
「……ウーラスト?」
ベルザ国には、学園に居るウーラスト先生を除いてエルフがいない。
そのことを気にしている。……と思ったのだけど。
反応したのは、別の所だった。
「そいつ、もしかしてウーラスト・ジル・フィールドか?」
「え? うん、そうだけど……知ってるの?」
「先生にくっついてたお邪魔虫だ」
アスィーは、苦々しい表情を浮かべた。
またも新鮮な顔を見ることが出来たけど……その感情は一体なんだろう。
……あ、ウーラスト先生も師匠の弟子を名乗ってたんだよな。
「もしかして、師匠の弟子って名乗ってたのと関係あったり?」
「……あいつは、俺と先生の時間をことごとく邪魔するお邪魔虫だ」
あー……これもしかして、アスィーも結構師匠のこと好きだな?
自分との時間が減るから、師匠の近くに居るウーラスト先生のことが気に入らなかったと。
てか、あの人本当に師匠の弟子だったんだな。いやまあ、信じてなかったわけでもないんだけどさ。
「あいつが、学園の先生ねぇ……ますます行きたくないな」
ありゃ、これは地雷を踏んじゃったかな?
10
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
追放された公爵令嬢はモフモフ精霊と契約し、山でスローライフを満喫しようとするが、追放の真相を知り復讐を開始する
もぐすけ
恋愛
リッチモンド公爵家で発生した火災により、当主夫妻が焼死した。家督の第一継承者である長女のグレースは、失意のなか、リチャードという調査官にはめられ、火事の原因を作り出したことにされてしまった。その結果、家督を叔母に奪われ、王子との婚約も破棄され、山に追放になってしまう。
だが、山に行く前に教会で16歳の精霊儀式を行ったところ、最強の妖精がグレースに降下し、グレースの運命は上向いて行く
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる