史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第三章 王族決闘編

92話 その力は下級魔導士相当

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『よかろう。それがキミ……いや、貴様の本気の表れだというのなら。それを、俺は受け止めよう』

『お、おいおい。お前こそ本気かよ、相手は新入生だぞ』

『無論、俺は常に本気だ。お前たちも知っているだろう。それに、言ったはずだ……俺は学年の差など気にしない、と。
 ……我、ゴルドーラ・ラニ・ベルザは、貴殿エラン・フィールドによる決闘の申し出を、受けよう』


 ……私が、ゴルドーラ・ラニ・ベルザに決闘を申し込み、彼はそれを受け入れた。
 その報告を先生にして、こってり怒られというか呆れられ、詳しい話はまた後日だと解放されて……

 クレアちゃんと、廊下を歩いていた。

「はぁー……」

「もう、いつまでそうやって落ち込んでるのさクレアちゃん。
 気にしても、仕方ないって!」

「むしろエランちゃんは少しは気にしてほしい……」

 王族に決闘を申し込む……さっきちょろっと説明はされたけど、その真意はクレアちゃんの方が私よりもよくわかっているだろう。
 だからこそ、その深刻さに落ち込んでいるのだ。

 私のことで、こうも感情を表してくれるなんて……こんな状況だけど、嬉しいな。

「それで……決闘の日は、いつなんだっけ」

「あれ、聞いてなかったの?」

「いきなり決闘申し込んだエランちゃんに驚いてそれどころじゃなかったわよ」

 ふむ、そっか。
 決闘は、基本的には受けた側が、日程や場所を決める。まあ、場所はほとんどが訓練所とか、さっき試合で使った会場とか……当然ながら学園内の施設で行うのが基本だ。

 私はそれを承知で、決闘を申し込んだ。そして、ゴルドーラ・ラニ・ベルザが提示した決闘の日程はというと……

「一週間後だって」

「……はぁ」

 よたよた、とクレアちゃんが壁に寄りかかる。危うく倒れてしまうところだ。
 それに、額を押さえている。頭痛いのかな。

「いっ、しゅうかん……
 たった、一週間……」

「短いの?」

「相手は、あのゴルドーラ・ラニ・ベルザ様よ!? 普通の生徒とはわけが違うの!
 準備期間に、ひと月あったって足りないわ! それを、一週間……!?
 そんなの、もう無理に決まってるじゃない! わかってるの!?」

「あ、え、はい……」

 突如として、クレアちゃんが詰め寄ってくる。まるで、これまで溜め込んでいたものを一気に爆発させたかのよう。
 いや、まるでじゃないなこれは。

 その迫力に、思わず圧倒されてしまう。
 そんな私に気づいてか気づかずか、クレアちゃんは次々まくしたてる。

「聞いた話じゃあ、この学園トップクラスの実力の持ち主……すでに、その腕前は下級魔導士に匹敵すると聞くわ!
 魔法、魔術共に優秀で、なにより頭のキレがとんでもないって!」

「下級魔導士相当……」

 ゴルドーラ・ラニ・ベルザのことは、正直王族、第一王子ということ以外知らない。けど、今のクレアちゃんの言葉の中に、興味深いものがあった。
 魔導士とは、学園在中の生徒を魔導士見習いとして扱われる。学園を卒業して、見習いではなくなるわけだ。

 そして魔導士には、上級魔導士、中級魔導士、下級魔導士の三段階に分かれると聞いた。
 その、下級魔導士に匹敵するというのだ。ゴルドーラ・ラニ・ベルザは。

「エランちゃーん? なんで笑ってるのかな? ちゃんと聞いてるよね? この意味わかってるよね?」

「もちろん。
 ……下級魔導士くらい倒せないと、師匠を超えるなんて夢のまた夢、ってことだよね!」

「全然わかってない!」

 クレアちゃんめ、なんだかんだ言って私のやる気スイッチを押すのがうまいんだから!
 まさか、今度の決闘相手が下級魔導士相当とは!

 師匠の所にいた頃は、想像すらしていなかった。
 この学園に入って、魔導剣士だというダルマスと決闘をした。魔石採取の最中、乱入してきた魔獣と戦った。クラス対抗の試合で、たくさんの生徒やゴーレムとも戦った。

 そして、次は……下級魔導士……!

「くぅー!」

「あのー、勝手に纏めないで……
 あぁもうこれ、確かにこっちがあれこれ考えるだけ無駄だわ」

 決闘は一週間後だけど、今からワクワクが止まらない。魔導士同士の真剣勝負、それが決闘!
 ただ、私の知らないこともある。

 どうやら、決闘にはなにかを賭けるものらしい。ただ、自分で自分のなにかを賭けるのではなく、相手が自分に対してなにを賭けるかを要求できるのだという。
 例えるなら……向こう一週間あなたの財布で食堂の料理食べ放題できる権利、とか。賭けの対象に上限はなく、両者合意ならなにを賭けてもいいらしい。
 決闘で賭けられたものは、絶対に覆せない。要求には従わなければならない。

 ……ということは……ゴルドーラ・ラニ・ベルザが、弟に謝罪するよう要求することも、可能だということだ。

「エランちゃん。一応言っておくけど、これって勝っても負けても問題になるわけで……」

「あのー?」

 なにかを言おうとしたクレアちゃんのセリフは、別のセリフによってかき消される。それは、私のものじゃあない。
 聞き覚えのない声だ。なんか、おっとりした感じの声。

 一旦、クレアちゃんと顔を見合わせて……声のした方向へと、首を向ける。
 そこにいた人物に、一瞬目を奪われた。

 ふわふわの、腰辺りまで伸びたブロンドヘアー。思わず触りたくなってしまう魅力を持っている。それに、整った顔立ち、タレ目なのがどこか保護欲をかきたてる。
 スタイルも抜群で、出るとこは出て締まるとこは締まっている。くそぅ。

「えぇと……?」

 初めて見る女の子だ。かわいらしい。
 今のって、私たちに話しかけてきたんだよね? 他に周りには誰もいないし……

 私が首を傾げると、なぜか彼女も首を傾げる。

「あの……」

「あなたが、エラン・フィールドちゃんよね?」

「え。あ、うん」

 初対面でちゃん付けか……まあ私が言えた話じゃないけど、距離感近いなこの子。
 胸元のスカーフは……赤色。私たちと同学年か。つまり新入生。

 ……うーん、なーんかこの子、どこかで見たような……

「あばばばばば」

「!?」

 突如、壊れたクレアちゃんが変な声を漏らしていた。どうしたんだ!?
 肩を掴んで揺らすと、ちょっと正気に戻った。

「な、ななな、なんで……こ、こここ……」

「クレアちゃん? この子のこと知ってるの?」

 呼びかけても、まともな返事が返ってこない。この子そろそろ頭がパンクしそうだ。
 そんな私たちの混乱をよそに、話しかけてきた本人は……

「さっきの試合見てたよー、お兄様のゴーレムを倒したあの魔術、すごかった!」

 なんて、言い出した。

「……お兄様?」

「うん。あ、自己紹介がまだだったね。
 私はコロニア・ラニ・ベルザ。コーロラン・ラニ・ベルザの双子の妹で、この国の第一王女でーす」

「……」

 予想外の人物が、予想外のこと言って、予想外にのほほんとしていた。
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