史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

185話 ノマちゃんコーディネート

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「ぁうぅ、なんでこんなことに……」

 あの日……ダルマスからデート(仮)の約束を誘いを受けてそれを了承した日から。あっという間に時間は過ぎて、現在約束の日だ。
 実はあの日から、ダルマスと二人で話していない。放課後には私は生徒会の仕事があったりして忙しかったし、教室では周りに人もいるから込み入った話はできない。

 なので、連絡手段といえばお互いの端末へ、メッセージを送ることくらい。
 そこで、なにを話したかといえば……まあ、待ち合わせ時間と場所くらいだ。待ち合わせ場所については、学園内でもよかったのではないかと思ったけど……
 休日に、私服で、男女二人が出かけるなど変な勘繰りを持たれてしまうので、別々に学園から出て集まろう、という話になった。

 なので私は今、学園の外に出て、王都内にあるわりと大きな噴水の前に立っている。
 思えば、こうして誰かと町中で待ち合わせするなんて初めてかも? 大抵、その場で集まって出かけていたから。

 ……それにしても。

「ノマちゃん……絶対気づいてたよね」

 あの日から、ノマちゃんによる私のコーディネートが始まった。デート(仮)するのは私の友達だ、と言っていたのに。
 初めのうちは、友達に着せるための服、ということで私に着せていたのが、次第にただただ私に似合う服を選ぶようになっていった。

 なんだろうな……制服だと、みんなもそうだからスカートでも気にならなかったし。師匠と暮らしてるときは、師匠が買ってくれたものだから気にせず履いてたけど。
 ……休日に、学園の異性の友達(?)と一緒に出かけるためにおしゃれしてるなんて、なんか恥ずかしい。


『さあ、わたくしコーディネート、エラン・フィールドさんの完成ですわ!』


 ……と、ノマちゃんは満足そうに笑っていた。
 友達に、服を仕立ててもらう……っていうのは、実に友達同士っぽくて、憧れてすらあったんだけど。

 それが、ダルマスとのお出かけのためだと思うけどなぁ。
 というか、これはデートじゃないはずだ、と結論づけたのだから、こんなに気合い入れる必要もなかったんだけど……

 ノマちゃんのあの、気合いの入った顔を見たら、断ることはできなかった。


『いや、別に普通の服で私は……』

『なにを言っていますの! せっかく殿方とお出かけになるのに、おしゃれをしないなんてどうかしています!
 というか、せっかくお友達と服やアクセサリーを買っても、それを見せる相手がいなければ! お友達間で見せるからいいなんて、そんな甘っちょろいことは言わないでくださいまし!
 こういうときのために! おしゃれというものは! 必要なんですの!』

『あ、はい……』

『フィールドさんは、素材がいいから派手な服装はむしろエヌジー。素材の良さを引き立てるシンプルな、それでいて地味すぎないものが適してますわね。
 わたくしとしては、この白のワンピースがオススメですわ! 白こそまさに清楚! 白いから清楚なのか、清楚だから白いのか……白こそシンプルにして頂点! え、シンプルすぎるって? まったく、わかっていませんわねぇ。
 フィールドさんはあまりお胸は膨らんでないですが、脚がきれいなのでそれを武器に……やはり脚を見せなければ。するとこの、スカート部分が短いものですか』


 あの熱量に、すっかり押されてしまった。早口であれこれと説明するノマちゃんはちょっと怖かった。
 ……途中すごい失礼なことも言われた気がするけど。

 しかも、これだけじゃ終わらないんだ。


『先ほども言ったように、シンプルであるからこそ素材の良さを引き立てるのです。そして、それは服だけではなく、身につけるものすべてに言えるもの。
 フィールドさんのお師匠、グレイシア様に貰ったというこのネックレス……いつも付けているこれは、肌見放さず持っておきたいのでしょうし、ネックレスというポイントも高いので付けていきましょう。
 それと髪型。長ければ遊ばせることもできますし、それは短くても同じことですが……フィールドの髪の長さだと……こうして、髪を分けて髪留めをハメただけでも、かなり違ってきます。普段見せない髪型を見せるのも良いですが、あんまり気合いを入れすぎるのも相手に引かれてしまう可能性があるので、このくらいがちょうどいいです。
 あとは、アクセントとして帽子を被っていくのもよろしいかと。白い服とは対象的に、黒だと映えますわね』

『うぅん……帽子被ったら、髪留めなんて見えないし意味ないんじゃ?』

『まっ、そんなことはありませんわ!
 それに、いざお食事のとき、フィールドさんは帽子を脱ぎませんの? 脱ぐでしょう? すると、いつもの髪型と違うというのが、さらっと明らかになるのです!』

『食事って、するかわかんないし……』

『殿方の"お礼"が食事の可能性も充分あるでしょう! それに、帽子を被っていても意外と気づかれるかもしれませんよ』


 ……ということがあって、結果的にコーディネートは全部ノマちゃんに任せた。私はただの、きせかえ人形。
 ただ……本当に、かわいいな。私がかわいいのは知ってるけど、この格好はかわいさをより引き上げている。

 さすがはノマちゃん。日々ドリルヘアに命を注いでいるだけある。いや別に注いではいないか。
 それに……


『あら、フィールドさん、リップは初めてですの? 私たちくらいの年頃なら、こういったおしゃれは必須……休日に異性とのお出かけともなれば、軽くでもアリですわ。
 お化粧は……フィールドさんは素材が良いですし、まだそこまでする必要はありませんわね。先ほども言いましたが、あまり気合いを入れたと見せるのも、よろしくはないので』


「……なんか、私じゃないみたい」

 お店のガラス張りの壁を、鏡代わりに、自分の姿を見る。そこには、普段とはまったく違う自分の姿……それに、唇に塗られた、口紅というやつ。
 ノマちゃんは、薄い色だから相手は気づきはしないだろうと言った。気づかないなら意味なくないか、と思ったけど、またおしゃれのなんたるかを聞かされそうなのでやめた。

 うん、かわいい……自分でも、したことのない格好。かわいいんだけどさ。
 これ、充分気合い入ってるって、思われない!? なんか、たかがお出かけで舞い上がってる痛い女扱いされない!?

「……フィールドか?」

 そこへ、知った声がした。ダルマスのものだ。
 ここまで来たら、仕方ない。腹をくくろう。そう覚悟を決めて、私は声の方向へと振り向いた。
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