史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
196 / 1,137
第四章 魔動乱編

192話 最悪の到来

しおりを挟む


 ……私は、部屋に戻ってきた。本当は生徒会の仕事があったけど、ノマちゃんが心配で、身が入っていなかったからだ。
 どうしてノマちゃんが心配か? それは、今朝一緒に部屋を出たはずのノマちゃんが、学園に行ってなかったからだ。
 いつもは一緒に登校するのに、今日は用事があるからと、別々に別れた。

 ノマちゃんが学園に……教室に来ていないと知らされたのは、ノマちゃんと同じクラスの友達からだ。なんで、どうして……そんな気持ちで、いっぱいだった。
 ノマちゃんは、無断で学園を休むような子じゃない。何事にも一生懸命で、魔導に関しても貪欲で。だから、私は、ノマちゃんが学園に来ていないなんて、想像もしてなくて。

 なんでどうしてと考えていた結果、ゴルさんたちに心配をかけ、早めに仕事を切り上げさせてもらった。
 だから私は、ノマちゃんが帰ってきてると信じて、急いで、帰ってきたのに……

「……ノマ……ちゃん……」

 部屋の扉を開いて、その奥にいたのは……壁に持たれて、座っているノマちゃんの姿。
 その全身から、血を流して……その血は、部屋中を汚していた。その姿に、私は頭が真っ白になっていくのを、どこか他人事のように感じていた。

「ノマ、ちゃ……はっ、はっ、はっ……」

 だって、おかしいじゃないか。なんでノマちゃんが、こんな、部屋の中で血を流して倒れて……それに、全身から、口からも鼻からもうつむいているからよく見えないけど多分目からも血が流れていてこんな全身から血を流して倒れているなんておかしいよだってここは学園の寮の部屋の中だしノマちゃんはそもそも今朝から行方知れずでどうして部屋の中で血まみれで倒れていてそりゃ私はノマちゃんが帰ってきてくれていることを願って帰ってきたのにでもだってこんなことになってるなんて思わないし私がもっと早く帰ってきていればノマちゃんはこんなことにならなくて済んだのだろうかいやなんでそもそもノマちゃんがこんな目にあっているんだこの全身から血を流す血まみれの現象は"魔死事件"の特徴とそっくりでそれってつまりノマちゃんが"魔死事件"の被害者つまり"魔死者"になってしまったってこといやまだ死んだって決まったわけじゃないとにかく一刻も早くノマちゃんを治療しないといけないのになんで足が動かないんだ動けよ動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け…………

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアノマちゃああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!」





 …………その後のことは、よく覚えていない。
 多分、騒ぎを聞きつけた隣の部屋の子や、その隣の部屋の子……また隣の部屋の子と、どうかしたのかと駆けつけてきた。
 部屋の扉を開けっ放しだったため、部屋の中にあるものを多くの人が、見てしまったことだろう。

 誰ともわからない、驚きの声、悲しみの声、怒りの声……いろんな声が聞こえたけど、私はそれらを聞き分ける余裕などなかった。
 ただ、目の前の現実を受け入れたくなくて……

 誰かが、部屋の中に入っていくのが見えた。誰かが、ノマちゃんに駆け寄っているのが見えた。いや、それは私が……
 手を伸ばそうとしても、動かない。いつの間にか座り込んでしまって、立ち上がろうとしても、動かない。

「……ゃん! ……ラン……ん!」

「エラ…………ん! ……ンさ……!」

 世界が、揺れている。受け入れたくない事実に、頭が揺れているのか……それとも、誰かが私の体を揺すっているのだろうか。
 そんな気がする。なんだか、誰かに触れられている……人の体温を、感じる。

 あぁ、なんでこんなことになっているんだろう……頭が痛い、なにも考えたくない。目の前で人が死ぬなんて、もうたくさんだって、そう思っていたのに、私は……

「エランちゃん!」

「エランさん!」

 最後に、聞き馴染みの強い友達の声が聞こえた気がして……私は、意識を手放した。




 ――――――





 誰かの叫び声……放課後に、それなりの数の生徒が女子寮へと帰っていた中、それは響いた。聞いたことのない、悲鳴。
 それは隣の部屋の住人、付近の住人にはすぐに伝わったが、その声はまるで寮全体に轟くかのような、声であった。そのため、集まった者は数多い。

 一人、また一人と増え。その悲鳴の主が、エラン・フィールドという名の女子生徒だということがわかった。
 彼女の人柄を知る者は戸惑うだろう。いつもひょうひょうとした彼女からは、考えられないほどの悲鳴が出たことに。
 彼女の人柄を知らない者でも、どういう人物かは知っている。入学早々、話題になった生徒だ。同級生だけでなく、上級生からも注目されている。

 そんな彼女が、部屋の前で座り込んでいた。頭をかきむしるようにして、なにかあったとひと目でわかる異常な行動。
 近くにいた者はそれを押さえ、続けて部屋の中を見て……恐怖が、伝染した。

 部屋の中には、凄惨なほどに血まみれの部屋が広がっていて……その奥に、血の主であろう人物が倒れている。
 悲鳴が悲鳴を呼び、恐怖は伝染し……教師が現れるまで、そう時間はかからなかった。

 部屋の中で血まみれになっているのは、この部屋に割り振られていたノマ・エーテンだと判明。同様に、同室であるエラン・フィールドはあまりの衝撃のためか、意識を手放していた。
 教師たちはすぐに、現場を固め、生徒たちを帰し、まだ騒ぎを知らない者に話さないよう告げるが……それを果たして、何人が守れるだろうか。

 騒然となる、女子寮……ノマ・エーテンは身体中から血を流している。この現象は、"魔死事件"のそれと類似……いや同じだ。
 魔導学園で、"魔死事件"による二人目の犠牲者が、出てしまった。


「…………ん……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【草】の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!

雪奈 水無月
ファンタジー
山と愛犬を愛する三十二歳サラリーマン・山神慎太郎。 愛犬を庇って命を落とした彼は、女神の手によって異世界へ転生する。 ――ただし、十五歳の少女・ネムとして。 授けられた能力は【草限定の錬金術】。 使える素材は草のみ。 しかしその草は、回復薬にも、武器にも、時には常識外れの奇跡を生み出す。 新しい身体に戸惑いながらも、 「生きていること」そのものを大切にするネムは、静かに世界を歩き始める。 弱そう? 地味? いいえ――草は世界に最も溢れる“最強素材”。 草を極めた少女が、やがて世界の常識を塗り替える。 最弱素材から始まる、成り上がり異世界ファンタジー!

処理中です...