史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

200話 二人のダークエルフの再会

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 この場に、私のものでもリーサのものでもない声が届いた……この場所は、結界で他の人は入れなくなっているのに。
 なのに、私たち以外の声がしたってことは、誰かが結界を抜けてきたってことだ。

 私には、ダークエルフが張った結界がどういうものかというのはわからない。でも、同じダークエルフなら抜けられるんじゃないか……
 そう思ったし、実際にそうなんだと思う。

 だって、この場に姿を見せたのは……同じダークエルフの、ルリーちゃんだったから。

「ルリーちゃん……」

「あ、えっ……と……エランさん、と……リーサちゃん、だよね?」

「……」

 同じ褐色の肌、きれいな銀色の髪……なにより、二人は幼馴染だ。長く離れていたからって、わからなくなるなんてことは、ないだろう。
 ルリーちゃんは信じられないようなものを見る目で。リーサは、複雑そうな表情を浮かべて、顔をそらしていた。

 以前会った時、リーサは自分と会ったことはルリーちゃんに内緒にしてくれ、と言っていた。会うつもりは、なかったんだろう。

「なんで……リーサ、ちゃん! なんでここに……ううん、生きてたんだ。今までどこにいたの!?
 あれから私、ずっと一人で……」

「……ルリーちゃん」

 ルリーちゃんの話では、人間たちに襲われてから気を失ってしまった。その後、目を覚ましたらお兄ちゃんであるルラン以外誰もいなかった。
 気を失う前までは、リーサも一緒にいたのにだ。ルランも、ルリーちゃんが目を覚ましたのを確認してからはどこかに行ってしまったらしい。

 その後のことは、聞いていない。けど、誰も頼れない中、一人でルリーちゃんは生きてきたんだろう。
 仲間が、全員死んでしまったと……きっと、そう思いながら。

「ずっと、ずっと死んじゃったと、思ってて……私……!」

 ついには、ルリーちゃんは涙を流し始める。ほっと安心したんだろう、死んだと思っていた相手が、生きていたことで。
 それとは対称的に……やっぱり、リーサの表情は、すぐれない。

 どうしたって言うんだろうか?

「あ、うん……ひ、久しぶり、ルリーちゃん
 その……こっちも、いろいろあって、さ」

「いろいろ……ううん、生きてくれてるならそれで……
 ね、ねえ! お兄ちゃんは……お兄ちゃんは、生きてるの!?」

「!」

 なんとか返事をするリーサだけど、ルリーちゃんからお兄ちゃんのことについて聞かれると、肩を震わせた。
 ……あぁ、そっか。

 ルランは、"魔死事件"を起こしている犯人だ。生きているか死んでいるかもわからないお兄ちゃんが、生きていてもそんなことをしているなんて……妹に伝えるのは、酷だ。
 リーサはそう思っているから、ルリーちゃんと会うのを避けていた。自分たちが会ったら、必ずルランの話になるから。

 事件の犯人だと伝えるのは難しい。生きてると言ったら、ならどこにいるんだって話にもなるし。
 かといって、死んだと嘘をつくのも、よろしくはないだろう。

「る、ルランか……あいつは……」

「生きてる、よね。みんなみたいに、死んじゃってないよね……
 私を残して、死んじゃってなんか、ないよね?」

 リーサが生きていたことで、お兄ちゃんであるルランも生きていると、希望を抱いている。
 その希望を、どう変化させるのか……それは、リーサの答えにかかっている。真実を伝えるのか、それとも嘘を伝えるのか。

 ……なんか、リーサはチラチラこっちを見てくるんだけど……いや、私を見られても、困るっていうか……
 私はルランと会ったけど、私がルランと会ったなんて話したらまたややこしくなりそうな気がするしなぁ。

「……ルランは、生きてる」

「! ほんと!? 今、どこに……」

「それは、わからない」

 悩んだ末だろう……リーサの出した答えは、真実と嘘、両方を混ぜたものだった。
 それは、一種の逃げなのかもしれない。でも、私もこれ以上の答えを知らなかった。

 表情が明るくなっていたルリーちゃんは、その表情を暗くしていく。しかし……

「そっ、か……生きてる……生きてるんだ……!」

 嬉しさを噛みしめるように、笑っていた。
 その表情を見ていると、悪いことをしているわけじゃないのになぜだか、胸の奥が締め付けられる。

 ルリーちゃんに真実を伝えるのは、どうにも……無理だと、思ってしまう。無差別に人々を手にかけている、事件の犯人だなんて。

「それにしても……どうして、エランさんとリーサちゃんが、一緒に?」

「それは……」

 あー、まあ、気になるよねぇ……友達と、死んでたと思ってた幼馴染みが一緒にいるところを見つけたら。
 ただ、これも説明が難しい。私たちが会ったのは、ルランをリーサが追ってきたから、だし。

「ほら、ルリーちゃんが仲良くしてる女の子が、どんな子か、気になってね。ご挨拶に……」

「むー、ならまず私に会いに来てよ!」

「……ごもっとも」

 またもなんとかごまかすけど、ルリーちゃんはちょっと怒ってる。そりゃそうだ、いくら仲のいい友達がいても、それよりもなによりも先に自分に会いに来て欲しいと思うもの。
 実際、リーサはルランの件がなければ、すぐにルリーちゃんに会いに行っただろうし。

 それから、ルリーちゃんはもじもじした様子で……

「ねぇ、久しぶりに会ったんだから……その……もっと、お話とか……」

「……ごめんね、ワタシそろそろ行かなきゃ」

 勇気を出して言ったであろう言葉は、リーサには受け入れられなかった。
 本当は、リーサだってルリーちゃんと話したいはずだ。でも、ルランから長い間に目を離しておくわけにもいかない。いくら使い魔が見張っているといってもだ。

 でも、その理由を知らないルリーちゃんからすれば、断られたのはショックだったのだろう。

「……そっ、か」

「……ごめんね」

 慰めの言葉をかけたいが、うまい言葉が見つからないのか……リーサは、私に目を向けてなにかを訴えてきた。
 ……私に、なんとかフォローしといてってことかな……

 リーサは、困ったような表情を浮かべながら……

「……また、ね」

 それだけを告げて、この場から消えた。
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