史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

199話 真犯人は誰

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 私自身、自分の心がきれいかどうかなんて、わからないけど……きれいだと言われて、悪い気はしない。
 それに、ルリーちゃんが私と仲良くしてくれる理由や、リーサが私に親しげにしてくれる理由も、ソレだという。

「もしかしたら、ルランも……」

「?」

「ううん、なんでもない」

 なんか、意味深に私のことをチラチラ見てくるリーサが気になる……あぁ、そうか。
 人間を恨み、無差別に殺しているルランが。黒髪黒目である私を見逃した理由もソレだと、納得しているのか。

 ……いやまあ、平穏に話して別れた、とは言えないやり取りがあった気もするけど。

「ねえ、聞いていいかな」

「なに?」

「ノマちゃんをあんな目に遭わせた……今回の事件を起こしたのは、誰だと思う?」

 犯人はルランではない……それがわかっただけで、本当の犯人には近づけない。だから、少しでも手がかりがほしい。
 とはいっても、犯行が同じ、というだけでリーサが本当の犯人の手がかりを知っているとは限らない。自分でもむちゃくちゃなことを聞いているなと思う。

 でも……せっかく会えたんだ。事件の手がかりになる可能性のあるものは、なんでも聞いておかないと。

「というか、リーサはどこで今回の事件知ったの。学園外には漏れてないはずだけど」

 事件は学園内で起こり、学園内ですら今回の事件に関する……かんこーれー、ってやつが敷かれている。
 これは、事件に関して誰にも、どこにも口外してはならない、というものらしい。なので、女子寮の生徒はともかく男子寮の生徒は事件について知らないんじゃないだろうか。

 だというのに、学園の生徒ですらないリーサが事件のことを知っている。これは、不思議だ。

「あー……実は、ここ最近学園を見張ってたの。そしたら、女子寮の方で騒ぎがあったことに気づいて……
 あ、見張ってたっていうのは、使い魔越しにってことね。私自身はルランを追っていたから」

「へー、リーサも使い魔を召喚できるんだ!
 ……で、見張ってたってなんで?」

「る、ルリーちゃんや……エランちゃんのことが、気になって」

 学園を見張ってたと話すリーサは、照れたように笑う。照れたように話すにしてはちょっと怖い内容だよ。
 まあでも、そのおかげで学園で起こった異変を察知できた、というわけか。

 リーサも使い魔を召喚できる。で、使い魔の視点を術者は見ることができる……
 ってことは、今ルランから目を離してリーサがここにいるのは、使い魔がルランを見張っているから、ってことだろうか。

「それに、学園で異常な魔力を感じたからね。気になってて」

「……魔力が暴走したときの、ってことかな」

 異常な魔力ってのが、私にはどんなのかわからないけど……ノマちゃんの体内で、魔力が暴走し一度は体内がぐちゃぐちゃになった。
 多分、そのことを言っているんだろうな。

 リーサはダークエルフだ。魔力の流れが見える。使い魔の視点越しでも、それはちゃんと発揮されるのだろう。

「ワタシが今日エランちゃんに会いに来ようと思った発端は、それ。
 で、ワタシが思う犯人だけど……ごめん、わからない」

「だよねぇ」

 "魔死事件"と同じ手口でノマちゃんを襲った人物、その手がかりがまったくない。こりゃあ、ノマちゃんから話を聞いている憲兵さんたちに、任せるしかないかな。
 ノマちゃんは当時のことを……というか朝からの記憶がないらしいけど、話しているうちに思い出すかもしれないし。

 目撃者とかいれば、話が早いんだけどなぁ。

「……あ。学園を見張ってたなら、不審な人物を見なかった? 私たちの部屋に入った誰か、とか」

「ううん……そこだけ見ていたわけじゃないからなぁ。事前に、エランちゃんの部屋で事件が起きる、ってわかってれば、そこだけ注意して見れたんだけど」

 使い魔で見張っていたというリーサも、不審な人物は見ていないか。あの血の量だし、犯行現場は私たちの部屋で間違いない。
 そこに、私やノマちゃん以外の誰かが入ったことがわかれば、その人が犯人の可能性ガ高いのに。

 そううまくは、いかないか。

「ごめんね、力になれなくて」

「ううん、犯人がルランじゃないってわかっただけでもよかったよ。
 もしそうだったら、たとえルリーちゃんのお兄ちゃんでも、どうしてたかわからないし」

 今回の事件の犯人はルランではない。でも、これまでの"魔死事件"の犯人はルランだ。何人もの命を奪っている以上、許されるものじゃあない。
 ただ、こんなこと言ったら不謹慎だけど……私の知らない人を手にかけていても、ひどいとは思ってもそこまでの怒りは覚えない。

 でも、私の大切な友達に手を出されていたら、話は別だ。
 そのときは、ルリーちゃんのお兄ちゃんであることは関係なしに、ルランをとっ捕まえに行っていたところだ。

「ただ、こういうことが起きた以上……学園側の動きも、どうなるかはわからないわね」

 リーサの言うとおりだろう。一度ならず二度も、学園内で事件が起きた。もう静観できないだろう。
 学園を封鎖し、生徒は家に帰す……ってのが手っ取り早いんだろうけど。

 私みたいに、この国の人間じゃない子もたくさんいるだろうし。そもそも私もう家ないしな。

「まあ、なるようになるよ」

「……そっか。なら、ワタシはそろそろ行くわね……」

 周囲に誰もいないし、結界も張ってあるとはいえ、長くここに居続けるのも危険だろう。
 そう思って、話を切り上げて……リーサが立ち上がった、瞬間だ。

 声が、した。

「……リーサ……ちゃん……?」

「!」

「……っ」

 どうして、予想していなかったのだろう……いや、していたのかもしれない。でも、リーサとの話に夢中で、忘れていた。多分、リーサもそうだ。
 周囲には、結界を張ったとリーサは言った。前と同じ、人払いの結界だろう。そこには、普通の人はまず入れないはず。
 そう……普通の人は。

 気づくべきだったんだ。ダークエルフの張った結界は……同じダークエルフには、通用しないかもしれないことを。

「……ルリーちゃん……」

 呆然と、立ち尽くす……ダークエルフの少女が、そこにいた。
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