史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

224話 間違えた選択肢

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 ダークエルフに化けていた黒髪黒目の人間、そいつが操っている魔獣、そして……本物のダークエルフまで、現れた。
 ルラン……ルリーちゃんのお兄ちゃんで、"魔死事件"を起こした張本人。あれだけのことをしておきながら、事件の犯人の尻尾さえも掴めていなかった。

 そんな人物が……自分から、ここに現れた。

「ひゅー、怖い怖い。物騒なもんまで持って……おっと」

「ちっ!」

 目の前にダークエルフが現れても、余裕そうなランノーン……そりゃそうだ、ダークエルフをおびき出すために、魔獣を呼び出したんだから。
 ルランは、手に剣のようなものを持っている。それで斬りかかったけど、ランノーンに避けられた。

 ……ようなもの、という言い方なのは、それが本当に剣なのか確信が持てないからだ。
 右手に握るのは、剣の鞘だろう。でも、その先から伸びている刀身は……なんか、黒色のような紫色のような、色をしている。
 しかも、刀身がなんか……ビーム状に伸びている。

「なんだあれ、魔導具かな」

 わからないけど、魔導具か……それとも、そういう魔法か。
 ダークエルフにしか使えないような魔術も、あるんだし。

 ……なんにせよ、ランノーンはルランに任せておけば大丈夫か。まったく意図してないけど、そういう形になった。
 ランノーンは周囲に被害を及ぼしそうだけど、ルランはランノーンのみ狙っているみたいだし。まあルランまで町を壊し始めたら、さすがに対処するけど。

 ということは、私が今集中すべきは……

「お前か」

「ギュオオォオオオオ!!」

 さっきから、私が張ったバリアを割ろうとしているようで中で暴れている。奇声と、バリアを殴りつける音がうるさい。
 それも、もうすぐ終わりそうだけど。だって、バリアにヒビ入ってるんだもん。

 ……よし!

「ギルルルルゥ!」

「なんて鳴き声だよ、っと!」

 バリアが割れる。その瞬間を見計らい、私は溜めていた魔力を形として、魔導のエネルギー波を放つ。魔獣はそれを避けることなく……いや避ける隙がなかったのか、もろにぶつかった。
 やはり、気持ちの悪い雄たけびを上げているけど、それだけに効いているのだろうとわかる。

 大丈夫、通用している。以前、学園に現れた魔獣には、魔法じゃ通じなかった。今回は、魔法でも通じる!
 それは、魔獣があのときのものより弱いのか……私の魔力が、強くなったのか。

 どちらにしても、魔法だけで倒せるならそれに越したことはない! 魔術は強力だけど、詠唱中は隙が大きくなる。
 たくさんの目があるあの魔獣から目を離せない以上、魔術を使うのは……あんまり、好ましい展開ではない。

 まあ、方法がないわけじゃない。以前、ゴルさんとの決闘でやった、分身魔法。それを使って、二人のうち片方が魔獣の気を引き、片方が詠唱するやり方もあるけど……

「あれ、すごい疲れるからあんまりやりたくないんだよね」

 やるとしたら、それはもう最後の手段くらいに考えておこう。

「そりゃそりゃそりゃ!」

 私は、魔獣に狙いをつけられないように走る。魔獣の周りを移動するようにしながら、その間も魔法を撃ち続ける。
 的がでかいおかげか、攻撃はことごとく当たる。確かに効いている。

 でも……致命傷ではない。

「それに……傷も、ついてないし」

 でかいからかはわからないけど、魔法は当たってもその箇所に傷がつくことはない。目が涙を流したり、奇声悲鳴を上げているから、攻撃が効いていると思っていたけど……
 ホントに効いてるのか? これ。

 相手が獣だから、いまいちわからない。表情があればまだわかるんだろうけど、あるのはたくさんの目だけ。あんなのじゃ判断できない。

「げ!」

 私に攻撃を撃たせ続けてくれるわけもなく、魔獣の反撃。いくつかのビームが私に迫るので、私は魔力強化した杖で弾いていく。
 それと同時に、ついに他の場所にもビームが放たれようとしている。目が光っているから、わかりやすい。

 なので私は、その目の部分へと、集中的に魔法をぶつける。ビームを弾くよりも、ビームを出されるより前に対処してしまえば良い。

「思ったより対処しやすい、けど……!」

 ダメージがイッているかわからない以上、らちが明かないなこのままじゃ。

「オォオオオオンンン!!」

「!」

 次なる奇声。魔獣は、まるで駄々をこねるみたいに手を振り回し、暴れ始めた。
 あいつ、ビームが出せないからって今度は物理的にものを破壊するつもりか!

 当然、周辺にある建物は魔獣の腕が当たり、破壊されていく。すでに、建物被害がすごい。
 ……建物被害だけなら、まだマジだ。

「キャアアア!」

 落ちていく瓦礫、その下には逃げ遅れた人がいる。子供を抱きしめている、母親だろう。子供を守るために、必死に自分の内側に入れている。
 でも、だめだ。あんな大きなの瓦礫が落ちてきたら、二人ともぺちゃんこだ。

「だめ!」

 私は、魔力を足のみに集中して纏わせ、瓦礫が落ちてくる先に移動。足のみに集中したおかげか、自分でも驚くくらいの速度で、たどり着くことができた。
 そのまま、二人を抱えて脱出。直後、そこに瓦礫がおちる。

 よかった、なんとか間に合った……

「あ、ありがとうございます!」

「お姉ちゃんありがとう!」

「ううん。それより、早くここから離れ……」

 ドォン……と、音がした。それに反射的に、振り返る。
 魔獣の目から放たれたビームが、あちこちにぶつかっている。そのせいで、建物が崩れいろんなところから悲鳴が上がっている。

 私が……一瞬、この親子を助けるために意識をそらしたせいで……!

「っ、くそ!」

 選択肢を、間違えたのか? あのまま魔獣を捉えたまま、この親子は見殺しにすればよかったのか?
 いや、そんなことない。そんなこと考えちゃだめだ!

 まだ、まだ間に合う! 人に被害が出ない今なら、まだ間に合う……!
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