史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
272 / 1,141
第四章 魔動乱編

267話 再スタートの部屋

しおりを挟む


 さてさて、無事……と言っていいのか、ともかく私とコロニアちゃんは魔導学園に戻ってきた。新たに、ノマちゃんを加えて。
 ノマちゃんにとっては、久しぶりの学園だ。数日の話ではあるんだけど、入学してからずっとここに通っていたし、敷地内の寮に住んでいた。

「はぁー、早く皆さんに会いたいですわ!」

「そうだねー」

 ノマちゃんも、みんなに会いたくて仕方ないようだ。
 クレアちゃんにルリーちゃん、ナタリアちゃん……他にも、クラスの友達もいるだろう。

 とりあえず、ノマちゃんが今日寮に戻ることは先生たちやゴルさんたちには知らされているらしいけど、学園に復帰すると生徒たちに知らされるのは明日みたいだ。
 なので今日は、これから私と一緒に、新しい部屋に行く……いや帰ることになる。

「新しい部屋ですかぁ、どんな感じですかね」

「うーん、新しいって言っても、寮の部屋って基本おんなじ内装だからね。別に、変わり映えはしないと思うよ」

「でも、やっぱり新しい部屋ってわくわくするよねー」

 三人で、女子寮に向かって歩く。新しい部屋というのは、まだ私も見せてもらっていない。
 せっかくだから、ノマちゃんと一緒に見たいと思っていたからだ。

 そういえば、荷物とか……前の部屋にあったもので、移さないといけないものもあると思うけど。まあそのあたりは、なんかうまい具合やってくれてるんだろうと思うけど……

「……コロニアちゃん?」

「ん?」

 私は立ち止まって、振り返った。同じく、コロニアちゃんも立ち止まる。
 当然のように、コロニアちゃんがいたのだ。

「いや、もうコロニアちゃんが着いてくる必要はないっていうか……」

「ジャマー?」

「そうは言ってないけど……」

 学園に戻ってからも、なぜかコロニアちゃんは着いてくる。とはいえ、それが邪魔というわけでは断じてない。
 なぜか、私たちの新しい部屋に興味津々だ。下手したら、私とノマちゃんよりワクワクしている。

  別に邪魔じゃあないので、結局このまま着いてくることに。

「あぁ、懐かしき女子寮!」

「部屋は確か、こっちかな」

 そびえ立つの女子寮を見て、ノマちゃんは嬉しそうだ。その姿を横目で収めつつ、私は聞いていた部屋の場所を思い出す。
 確か、こっちだったな。前の部屋と、結構離れるなぁ。

 しばらく歩いて、階段を上ったり下りたりして、やがて一つの扉の前にたどり着いた。

「よし、ここだ!」

「ここですかぁ」

「わくわくー」

 ここが、新しい部屋だ。新しい部屋と言っても、新しく部屋を作ったわけではなく、要は余り物部屋みたいなもんだ。
 ただ、これは私たちにとっても都合がいいものだ。部屋を新しく用意するならそれなりに時間はかかるけど、元々空き部屋ならそこまで時間はかからない。

 それにしても、この学園には結構な数の生徒がいるのに、いくら二人一組で一部屋とはいえ、それでも余るなんて……ホント大きいよなぁこの寮。
 なんて少し感心しながらも、扉のノブに手を伸ばし、開いていく。

 扉を開けると、そこには……

「おぉー」

 一瞬、あのときの光景がフラッシュバックしそうになってしまった。扉を開け、いつもならノマちゃんが明るく迎え入れてくれる……
 でもそんなことはなくて、暗くて、冷たくて……部屋の奥では、血にまみれたノマちゃんが倒れていて。

 けれど、新しい部屋ではそんなことあるはずもなく。そこはまるで新品同然で、初めて前の部屋に入ったときと同じような感覚が広がっていた。

「新しい部屋……やっぱり、中身はそう変わりませんわね」

「あはははー」

 一瞬目を輝かせたノマちゃんだったけど、部屋の内装に冷静になる。
 わかっていたことだけど、前の部屋とほとんど同じということで、目新しさはあんまりない。

 それでも、私たちのために新しい部屋を用意してくれたのは、嬉しいけどね。

「今日からここが、私たちの新しい部屋だよ!」

「間違って、前の部屋に戻らないようにしないといけませんわね」

 この部屋に早く慣れないと。人間、慣れたものには無意識に体が動いてしまうものだ。
 ぼーっとしてたら、この部屋じゃなくて前の部屋に足が向いてしまいそうだ。この部屋と前の部屋の距離はそこそこあるから、間違えてしまったら大変だ。

 ちなみに、前の部屋は調査は終わったとはいえ、まだ中には入れないようになっているみたいだ。部屋の中はきれいにしても、だからもう使って大丈夫ですよ、ってわけではないからね。
 まあ、わざわざ入ろうって人はいないと思うけど。

「わ、いろいろ揃えてくれてるんだ」

「私たちの私物を移せばいいだけですわね」

 部屋には、すでに備え付けの家具が用意されていた。あとはここに、私たちの私物を持ってくれば完了だ。
 まあ私物といっても、そこまで量があるわけでもないんだけどね。貴重品は肌見放さず持ってたし。

 まあ、それも学園の人が回収してくれているから、そのうち持ってきてくれるだろう。

「……」

「どうしたの、コロニアちゃん」

 なんか、急に黙ってしまったコロニアちゃん。その様子を不思議に思って、私は問いかける。

「いや……私は、後から話を聞いただけだから、あんまり気持ちは伝わらないかもしれないけどさ。
 二人が無事で、よかったなって」

「……コロニアちゃん」

 こうして、二人揃って、また一緒に部屋で暮らせて、一緒に学園に通える。当たり前のようでいたことが、とても充実していたことなんだなと感じた。
 それに、そう思ってくれる人がいて、胸の奥が熱くなるのを感じた。

 いろいろなことがあったけど……ノマちゃんとの学園生活は、ここから再スタートだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

処理中です...