史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

279話 報告はこれで全部です

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 学園に戻った私は、とりあえず先生に報告した。詳細は放課後、生徒会室でということだ。
 で、教室に戻り、残り時間は通常通りの授業を受けることに。

 疲れてるし休みたい気持ちもなくはないけど、せっかく学園が再開したばかりなんだから休みたくはないかな。

「エランちゃん、冒険者とのクエスト、どんな感じだったの!?」

「ごめんね、それは教えちゃいけないんだって」

 休み時間には、私の周りに人が集まり、冒険者の手伝いについて聞かれたけど……その内容までは、みだりに話していいものではないとのこと。
 なので、企業秘密的な感じでごまかすしかなかった。

 放課後になると、生徒会室へ。せっかく学園が再開したし、ダルマスとの訓練も再開したかったけど、なかなか時間が取れないものだ。
 今となっては、学園が休みでも訓練やればよかったなと思わなくもないけど……ま、どこの建物も閉められてたし場所もなかったか。

 そして、生徒会室。

「……なるほどな」

 一連の状況を、説明。
 ガルデさんたちと問題なく魔物討伐をしたこと、突然変な獣が出てきたこと、冒険者の一人が重傷を負ったので私が足止めに徹したこと、魔術が使えなかったこと、結果として助けて貰う形になったこと、獣はギルドに引き渡したこと。

 私の説明を受け、ゴルさんはなにやら思案している。
 どうでもいいけど、ゴルさんてばいつも私より先に生徒会室にいるよな。三年生の教室からこの部屋まで離れているだろうに。

 もしかしてめちゃくちゃ走ってきてるんだろうか。

「不明の獣、か……そんな存在がいるなら、まだ冒険者と学生の職場見学は難しそうだな」

「魔物討伐とかの仕事を職場見学なんて言葉で表現してるのなんか詐欺感あるよね」

「冗談だ」

 ゴルさんの冗談は冗談に聞こえないんだよなぁ……
 まあそれはそうとして、確かにあんな危ない獣がいるなら、冒険者の手伝いで学生の経験を積ませる、はまだ早いだろう。

 私だからなんとか対応できたけど、あんなのがもしまた出てきたら他の子には荷が重いよな。
 ……私だからなんとか対応できたけど! ね!

「それにしても、気になるねぇその獣」

 と、今まで黙って話を聞いていたタメリア先輩が言う。
 彼は口と鼻の間に自分の魔導の杖を挟んで、遊んでいた。

「ギルドに引き渡したって話なら、ギルドに頼めば見せてもらえるかもしれんのぅ」

 狼の強面を歪ませ、独特のおじいちゃん口調でうなずくメメメリ先輩。
 やっぱり、先輩たちもその獣については気になるようだ。

 魔物でもなく魔獣ともまた違う、異質な獣。
 あの真っ白な特徴は、覚えがあるけど……白い魔獣を操っていたレジーは、地下牢に閉じ込められているはずだしなぁ。

「なんにせよ、無事でなによりでした。紅茶をどうぞ」

「あ、どうも」

 説明を終えて一呼吸つく私に、リリアーナ先輩が私に紅茶の入ったカップを手渡してくれる。
 香りを楽しみ、一口……うぅん、おいしい。

 冒険者とのあれこれを、生徒会に報告する。まあ私も生徒会のメンバーではあるんだけど。
 一応、生徒で詳細を知っているのはここにいるメンバーだけ、ってことになるのかな。

「とはいえ、俺たちが考えることではないな。そういった未知の生物の研究は、その道の人物に任せれば良い」

「そうですね。あ、ゴルドーラ様紅茶のおかわりを」

「すまんな」

 ゴルさんの言うとおりだ。見たことのない獣がいたからって、それについて考えるのは私たちの仕事じゃない。
 今回のはあくまで、冒険者と行動を共にして学生に経験値を積ませるという内容が、実現可能であるかを知るものなのだから。

 ただ、今回の件を思うに、ゴルさんの言うようにその道のりは遠そうだ。

「それで……報告は、これで全部だな?」

 新しく淹れてもらった紅茶を一口飲み、軽くため息をついてから……ゴルさんは、鋭い視線を私に向けた。
 まるで、心の奥底まで見透かされるかのような視線。思わず、背筋が伸びる。

 報告は……これで全部だ。あくまでも、魔物討伐、獣に対しての、だけど。
 言っていないことが、一つある。それは私自身のことで、私もよくわかっていないこと。

 ……千切れたはずなのに、生えてきたこの、腕のこと。

「なんにも……これで、全部だよ」

 とっさに、嘘をついてしまった。

「……そうか。
 今回はご苦労だったな」

 私の嘘に、気づいていないのか……それとも、気づいているのだろうか。ゴルさんは、小さく嘆息して、私をねぎらってくれた。
 なんだか、こうしてねぎらいの言葉をかけられるのは、くすぐったいなぁ。

「とはいえ、またお前に頼むことになるとは思う。その時はまた引き受けてくれるとありがたい」

「えー、もしかしてゴルさん、私のことかなり認めてくれてるー?」

 前回も今回も、ゴルさんはこの話を私に持ってきた。それは、私が生徒会の一員で、それなりの魔導士だからであろう。
 それでも、こう何度も頼まれるということは、かなり力を認めてくれているってことだろう。

 そう、冗談めかして聞いてみたんだけど……

「あぁ、そうだが」

 当たり前のように、返されてしまった。

「今更な話だ。お前の力は決闘を通じて認めている。だからこそ生徒会にも誘った。
 お前のその柔軟な対応は、他の者にはないものだ」

 恥ずかしげもなく、ゴルさんは言う。その真剣な眼差しに、褒められるとさすがに顔が熱くなってしまう。
 やだもー、ゴルさんってば私のこと好きすぎでしょ! もー、困っちゃうな私もー!

「……」

「ぁ……」

 いや……嘘ですごめんなさい、調子に乗りました。
 私は別に褒められて浮かれてなんかいないから。お願いだから、その殺気を収めてくださいリリアーナ先輩。
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