史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第五章 魔導大会編

315話 素晴らしい試合

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「……っ」

 ゴルドーラの放った魔術と、ヨルの放った魔法……
 互いに、二重に重ねた魔術と、魔術クラスの威力の魔法、というとんでもない魔導のぶつかり合い。
 それが周囲を巻き込むのは、必然だった。

 水属性と火属性の魔術、雷をイメージした魔法……それらがぶつかり合い、激しい音を立てて舞台上の人間を包み込んだ。
 結界があるため舞台外の人に影響はないが、それでもその衝撃まで殺されるわけではない。

 衝撃から生じた風圧が、会場を揺らした。

「ぅ……」

「うひゃー!?」

 観戦していたエランも、ノマも、その影響を受ける。
 立ち見をしていたため、油断すれば吹き飛ばされてしまうそうだ。

『こ、これは凄まじい衝撃!
 か、会場の皆さん! 飛ばされてしまわないようにしっかりとへぶら!?』

 司会も、人々への注意勧告をするが、その最中ゴンッという音が聞こえた。
 多分、飛んできたなにかにぶつかったのだ。

 吹き荒れる突風は、人々を吹き飛ばす危険だけでなく、物を不意飛ばしそれが当たる危険もある。
 皆一様に、事が過ぎるまで待つ。

 そして、突風がやむのと、舞台を覆っていた土煙が晴れたのは、ほとんど同時だった。
 ようやく、目にすることができる。あの激しい魔導のぶつかり合いの後、誰が勝ち残り、立っているのかを……

『こ……これは!?』

 司会が、息を呑んで叫んだ。
 それを見ていた人々も、一様に驚いていた。

 舞台上に、立っていたのは……

『……ぜ、全員が倒れている!? ゴルドーラ選手も、ヨル選手も、他の選手も……
 みんな、倒れています!』

 ……立っている者は、いなかった。

『参加者全員が倒れています! 選手は誰一人として立ち上がれず、使い魔も一体残らず消失しています!
 これは……!』

 舞台の様子を、司会はできるだけ正確に伝えようとしている。しかし、その声は震えていた。
 動揺を隠しきれていないのだ。それほどに、予想もしていなかった光景だ。

 使い魔は、召喚者が自ら消すか、召喚者が気を失うなどの状態に陥った場合、消失する。
 サラマンドラさえも消えている時点で、ゴルドーラの意識がないのは明白だ。

 それから数秒……数分……時間は経つ。しかし、誰も動かない。
 誰も、最後に立ってはいない……こんなこと、滅多にない。しかし、こうして起こった以上……試合結果は、こう判断するしかない。

『えー……どうやら、誰も起きれないようです。
 よって、Bブロックの試合は、勝者なしとなります! Bブロック試合終了! 勝者はなし!』

 その宣言の直後……人々が感じた思いは、いったいどのようなものであっただろう。
 勝者の居ない試合……それを、認めないとする者はいるのか。
 それとも……


 パチパチ……


 まばらなそれは、すぐに増え……観戦席から、惜しみない拍手が送られる。
 会場を包み込む拍手は、絶賛の嵐だ。不服を訴える者など、誰もいない。

 運ばれる選手を見守りながら、ノマはつぶやいた。

「素晴らしい試合でしたわ。みんな、死力を尽くしてよくぞ戦い抜きましたわ―」

「死力は言いすぎだと思うけど……でも、そうだね」

 Aブロックとはまた違った、白熱した試合だった。
 ほとんどの人がゴルドーラに目をつけていた中、彼と互角に渡り合った黒髪黒目の少年、ヨル。その戦いは、皆の胸を熱くさせた。

「まあでも、ヨルは他の人の魔力を吸い取って自分の魔力を上げてたわけだし。本当の一対一なら、ゴルさんに軍配が上がったと思うけどね私は」

「手厳しいですわねぇ」

 エラン的には、まだヨルを認める気にはなれない。あの力はすごいが、もしも決闘のような一対一なら、ゴルドーラが勝っていたはずだ。
 まあ、あの力がすごいことは……認めざるを得ないが。

 もしエランなら、あの力にどう対応したか。
 やはりゴルドーラのように、力押し、だっただろうか。

「やー、でもまさか、ゴルさんが分身魔法使って魔術を二発放つとは」

「フィールドさんのアレを参考になさったんでしょうか」

 ゴルドーラは、エランとの決闘で、彼女が最後に使った方法を、確かに参考にした。
 普通、魔術を放つのは一人一発……技量によってはそれ以上放てるが、それでも多少の時間は置かなければならない。

 そのため、分身魔法で自らを増やした上で、それぞれが魔術を使うなど、普通ならば考えられないことだし、できないことだ。
 それを、ゴルドーラはやってのけた。

「練習とかしてたのかな。私はぶっつけ本番でやったし、ゴルさんならそれでもできるかも」

「……ぶっつけ本番? アレを?」

「え、うん。思いついたのだって、決闘の最中だったしね」

 分身魔法&魔術の重ね技……それを、試したのはおろか思いついたのすらその場だとエランは言う。
 その発言に、ノマはしばし言葉を失った。

 やはりこの人は、規格外だなぁと……そう、思っていた。

「あ、そろそろCブロックの試合、始まりそうだよ」

「あ、そ、そうですわね」

「ほらほら、愛しのコーロランが出るんだから、しっかり応援しないと」

「い、愛しのって……おっほん。フィールドさん、フィールドさんはDブロック、この試合の次なのですから、準備しておかなくてはなりせんわ」

「はーい」

 二人で話しているうちに、次の試合、Cブロックの準備ができたようだ。
 この試合にはコーロラン・ラニ・ベルザも出場する。Aブロック、Bブロック、Cブロック……それぞれに、王族の出場しているこの大会。

 コロニアもゴルドーラも、惜しくも敗退してしまったが……今度こそ、王族で勝ち残る者が出てくるだろうか。
 それとも、それを阻む者がまた、現れるのだろうか。
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