史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

390話 いつの間にか祀り上げられました

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 この国が、他国との戦争に突入することになる未来……それは、いったいいつなのか。
 未来と言うからには、どこか遠い出来事なのかと思っていた。

 それが……まさか、明日だなんて。

「明日戦争が起こるにしては、落ち着き過ぎじゃない!?」

 その未来をいつ知ったのかはわからないが、戦争をするなんて未来を知っている割には、落ち着きすぎている気がする。
 ガローシャも、ガロアズも。他の魔族も。

 その疑問に、ガロアズが口を開いた。

「そもそも、ガローシャの未来予見の力は、わし含め、少数しか知らん。ほとんどの魔族は、明日戦争が起こるなど夢にも思っていないだろう」

「それはそれでどうなの!?」

 未来を予見するなんて力、とんでもないものだというのはわかる。軽々しく話でいいものではないことも。
 とはいえ、事が事だ。未来についてはともかく、明日戦争が起こると知りもしないのはひどくない!?

 ほとんどの魔族は、明日になったらいきなり戦争に巻き込まれるわけか……

「戦争が起こる……そう伝えたところで、なにが変わるとも思えんのでな」

「少なくとも、戦いの準備はできるんじゃない!?」

「いや、そもそも我らは、いついかなる時も不測の事態に備えるよう、準備はしている。争いなど、いつ起こるかわからんのでな」

「うっ、それっぽいことを……!」

 とにかく、明日戦争が起こる。今、下で魔物と紛争している魔族は、それを知らない。
 そして、私たちがいれば、その戦争には勝てると言うのだ。

「つぅか、戦争ってなぁ……まさか、てめえらから仕掛けるんじゃねぇだろうな」

「いいえ。予見した未来では、その時、空を黒い影が覆い……強大な力に、我らは滅ぼされるのです」

「わしは、ガローシャの力を疑いはしていない。しかし、ガローシャが見た夢を、わしも見ることはできん。
 話を聞く限りだと……それは、戦争と言うよりもむしろ虐殺に近い」

 黒い影、か……それが、この国を滅ぼす。
 どうやら、こちらから攻めるわけではなく、相手側から攻められるようだ。

「おそらくは、なんらかの兵器だと考えている。他国は、我らよりも技術が発展しているからな」

「戦争を仕掛けてくる理由って?」

「理由などいくらでもある。資金調達、領土拡大、人材確保……気に入らないから、というのもあるだろうな」

 ……おんなじ魔族同士でも、そんなことで争いが起こってしまうのか。
 いや……人間だって、おんなじ人間なのに争ったりしている。おんなじ種族だって、みんなが仲良しなわけではない。

 それにしても、明日戦争が起こるんだとして……

「……なんで私を見んだよ」

「いやぁ……ラッへの意見を聞きたいなって」

「ちっ。……まあ、明日ってんなら日にちの心配はねぇ。クロガネに乗ってりゃすぐに大陸を渡れるだろうが、どのみちどこかでクロガネは休ませなきゃいけねぇし。
 どうせ、一日はどっかで過ごすはずだったしな」

 明言こそしないけど、ラッへはここに残ることに賛成してくれたみたいだ。
 どうせ魔大陸のどこかで一日過ごすなら、屋根もあるこの場所がいい。

 クロガネも、ずっと移動しっぱなしで、疲れているだろうから。休ませてあげないといけないし。

「ま、ドラゴンなんてタフな生き物、普通のモンスターと比べて良いのかわかんねぇけどな。
 普通、契約した使い魔を召喚し続けておくのは、魔力の消費が激しいんだ。なのに、てめえの魔力はどうだ、尽きているか?」

「ん……そういえば、あんまりしんどくないかも」

「つまりは、クロガネが自前の魔力で、現界し続けてるってことだ。
 クロガネ自身の魔力が凄まじいのか、それとも魔大陸の環境が適してるのか……どっちにしろ普通じゃねぇな」

 そういえば、師匠も言っていたな。使い魔を召喚しておくと魔力を使い続けるから、あんまり召喚し続けないように、と。
 それは召喚者にも、使い魔自体にも、影響を及ぼす。

 平気な顔をしているけど、クロガネも疲れているのかもしれない。

「ただでさえ契約からここまで、ずっと無理させてんだ。
 戦争には、十中八九クロガネの力が必要だ……充分、休ませておくんだな」

「わかった。ありがと」

「けっ」

 けど、こういうのって……どうすればいいんだろ。クロガネに、使い魔の魔法陣の中に戻って、と念じればいいのかな。
 でも、今は確か魔物たちを相手にしているんだっけ。じゃあいきなり戻したら、迷惑だよね。

 ひとまず、クロガネのところに行こう。

「あの、では……」

「ん、あぁそうだった。協力するよ、あなたたちに」

 立ち上がる私に、ガローシャは声をかけてくる。
 そういえばまど結論を言ってなかったなと、言葉を返した。

 それを聞いた瞬間、ガローシャの表情が明るくなった。

「それは、ありがとうございます! では、早速行きましょう!」

「へ? 行くって……」

 どこへ……と、言葉を続ける間もなく、ガローシャに引っ張られてしまう。
 私はそれに逆らわず、ルリーちゃんとラッへも後についてきた。

 長い廊下を渡り、向かう先は……少し、大きな場所に出た。壁がなく、いわゆるバルコニーのような場所。
 下には、多くの魔族がいる。その更に下にクロガネ……地上には、魔物たち。

 それを前に、一歩前に出るガロアズは、大きく息を吸って……

「注目!!」

 と、言い放った。
 大気を震わせるほどの大きな声。自然と、背筋が伸びてしまう。
 それは魔族たちも同じようで、魔物すらあっけにとられている。

 みんなの注目が集まったのを確認して、ガロアズは笑みを浮かべた。

「諸君らには突然の話となるが! 明日! 隣国のラゼーナ国から戦争を仕掛けられる可能性が高い! このまま行けば、我らは敗れるだろう!
 しかし! ここにいる人間! エルフ! そしてダークエルフの力により、我が国は勝利する!」

 ……それは、いきなりの戦争の話……それだけじゃない。
 私と、ルリーちゃんと、ラッへが……協力して、勝つってことまで、言っちゃってる!

 なに言ってんのこのおっさん!?
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