史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

395話 決戦は近し

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 私たちは、用意された席に座る。
 この部屋には、私、ルリーちゃん、ラッヘ、そしてガロアズとガローシャ。それに、私たちを案内してくれた魔族。

 昨日とは違って、この部屋に一人、増えている。
 ってことは、この魔族は結構信頼できるってことなのかな。
 だってこういう場面で一緒に居るってことは、信頼してるんだと思うし。

「戦争について話そうってもうよぉ……たったこれだけでか?」

 まず口火を切るのは、ラッヘだ。ホントこの子は、気になったことをズバズバ言ってくれる。
 確かに、戦争なんてたいそうなものの話し合いにしては、たったこれだけの人数ってのはどうなんだろうか。

「これから話すことは、私の未来予見にも関することですので」

「すでに兵の士気については、信頼できる部下に一任している」

 だけど、二人にとってはこれだけの人数は想定内らしい。
 それに、その言い方だと……あの魔族も、ガローシャの未来予見については、知っているのか。

 あんまり公にはできない力なんだろう。夢に見るってことは、自分では制御できない類いのものだし。
 ……私も、似たようなものを昨夜見たって、言うべきだろうか……

 いや、少なくとも、ルリーちゃんのいる前では……

「ま、魔族同士の争いなんざ勝手にやってくれって感じだが……私らに、なにをやらせようってんだ?」

「やらせよう、なんて物騒なことは考えていません。
 ただ、お願いしたいことがあります」

 にらみを効かせるラッヘと、涼しい顔で受け流すガローシャ。
 エルフと魔族が、対面している……不思議な、空間だ。そこに、人間である私と、ダークエルフのルリーちゃんもいるんだから、余計に。

「お願い、ですか」

「えぇ。むしろ、これはあなたたちにしかどうにかできない問題です」

 緊張感のある視線を受けて、自然と背筋が伸びた。
 私たちにしかできないこと? なんだろうそれは。

「エレガ、ジェラ、ビジー、レジー……悪意を持った人間たちが、戦争に乱入してきます。
 あなたたちには、人間たちの相手をお願いしたい」

「!」

 ここで……その名前が、出るのか。
 ルリーちゃんの故郷や仲間を滅ぼし、私たちを魔大陸へ転送させた張本人。

 横目で確認すると、ルリーちゃんの表情は強張っていた。
 仇が現れる、と聞かされれば、そうなっても不思議ではないか。

「それも、未来で見たってのか?」

「えぇ。あなたたちが私たちに協力してくれた未来、協力してくれなかった未来……
 どちらの未来でも、必ず。多数の魔獣を引き連れて、双方の魔族もろとも蹂躙します」

 そういうことか……未来でエレガたちが現れるって情報を話すわけにはいかないから、情報を伝える人数を限っているのか。

 それにしても……なんで、あいつらがこの魔大陸に? それも、たくさんの魔獣を引き連れてだなんて。
 なにを考えているのか、さっぱりわからない。

「あいつらが現れる理由は、わからないよね」

「えぇ。ただ、あなたたちが協力してくれる未来では、あなたたちの姿を見て驚いているようでした」

 ……私たちを見て、驚いていた、か。ってことは、エレガたちは私たちを魔大陸に転送させたことはわかっていても、私たちがこの場所にいるとは知らないわけか。
 同時に、エレガたちの目的は私たちじゃない、ってこともわかる。

 私たちは、あいつらにとって予想外のカード……ってことか。

「……今の話を聞く限り、お前らが戦争に負けるのは、相手国の魔族が強いからじゃなく、人間の乱入でめちゃくちゃにされるってことだな」

「はい。魔族同士の力関係に関しては、我らの方が有利ですらあります」

「じゃあ、なんで向こうは、戦争を仕掛けようなんて……」

「戦争に、絶対はない。力以外にも、運も作用するのが戦争だ。……それに、仕掛けなければならない事情があったのかもしれん」

 そんなものは知ったことではないがな、と鼻を鳴らすガロアズ。
 彼の立場は聞いてないけど、この国で結構……いやかなり偉い人なんだろうな。

 じゃないと、そもそも私たちの存在を、他の魔族が認めないだろうし。

「魔族同士のいざこざは、お前らに任せろ、ってわけだ。
 これじゃ協力ってより、お互いの敵を任せ合う協定みたいなもんだな」

「そうですね。言葉というのは、難しいものです」

 だんだんと、目的ははっきりしてきた。私たちがなにをするべきか。
 エレガたちと会ったら、聞きたいこともある。この戦争に参加することで、知りたいことがわかるとはそういうことか。

 ただ、果たして私とルリーちゃん、ラッヘであいつらに勝てるだろうか。
 エルフであるラッヘは、魔大陸では充分なパフォーマンスができない。ダークエルフのルリーちゃんにとっては好ましい環境だけど、果たしてルリーちゃんが、積極的に人を害せるのだろうか。
 相手は、仇だ。それでも、ルリーちゃんは優しいから……

 私も、ラッヘと同じくあんまり力を発揮できない……あれ? そう言えばエレガたちも人間なんだし、条件は私と同じなんじゃないのか?
 それでも、油断はできないか……

「またクロガネ頼りになっちゃうかな……」

『ワレは構わぬぞ。力も有り余っているしな』

 口の中で小さくつぶやいた言葉に、頭の中にクロガネの言葉が返ってくる。
 召喚していなくても、契約を結んだモンスターとは会話ができる。これが、契約の強みだ。

 頼もしいことを言ってくれるなぁ、クロガネは。

「敵国の魔族が攻めてくるのは、今からおよそ五時間後……その約一時間後に、人間たちが現れます。
 それまでは皆さん、どうか英気を養っていてください」

 未来予見では、エレガたちが現れるのはあと、約六時間後か……
 いよいよ、って感じだな……!
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