史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

403話 ドラゴンの生態

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 ……ドラゴンという生き物。その数は、決して多くはない。
 生息地はまちまちで、あらゆる大陸に己の住処を築き、静かに暮らしていると言われている。

 ドラゴンについては、まだまだ謎なことが多い。
 ただ、単なるモンスターというカテゴリーには含まれず、魔物や魔獣といった、魔石により進化した生物でもない。

 その姿を見た者は少なく、ドラゴンを想像するそのほとんどは、本の中に描いてある絵などから予想されたものにすぎない。
 ただ、本に書かれている、という事実は、ドラゴンが実在するのだということを知らしめるには充分だった。

 伝説上の生き物、ドラゴン。その姿も生態も、多くが謎に包まれている。
 だからもし、ドラゴンと対峙するようなことがあれば……自分が持っている、あらゆる常識は通用しない。そう考えたほうが、いいだろう……

 ――――――

「ギャオオォオオ!」

 魔獣の頭、二つあるうちの一つが、大きな悲鳴を上げる。
 魔力を込めた足から繰り出した、かかと落とし。結構効いたはずだ。

 そして私は、浮遊魔法でクロガネの背中へと着地する。

「ちっ、やっぱつえぇなぁドラゴンってのは」

 エレガは、どこか楽しそうだ。この状況、わかっているんだろうか。
 このまま一気に、クロガネの力で倒せるんじゃないか。クロガネ様様だ。

 エレガたちさえ倒せば、下の魔族たちの戦争も終わる。倒して、ルリーちゃんに謝らせて、それから捕まえて牢屋にでもぶち込んでもらう。

「よし、クロガネ! 一気にあいつらやっつけちゃおう!」

『うむ』

 クロガネが味方で、本当に頼もしい。
 あの強力な魔獣たちも、一瞬で倒してしまった。私じゃ、あんなあっさりとはいかなかっただろう。

 まだまだ私は、クロガネより弱い。クロガネと契約している以上、クロガネにふさわしいパートナーになるために、頑張らないと!

「キャー!」

「!」

 クロガネによる、攻撃準備……そこへ、鋭い悲鳴が聞こえた。ルリーちゃんのものだ。
 私は弾かれたように、下を見た。下に残してきたルリーちゃんと、ラッヘ。二人になにかあったのか?

 目を凝らして、下を確認する。そこには、ルリーちゃんとラッヘと、その正面に……

「エレガ……!?」

 エレガが、いた。でもおかしい。
 エレガはだって、魔獣に乗ったままだ。クロガネと対峙している魔獣の上に。

 じゃあ、下にいるのは……

「まさか、分身魔法……!?」

 考えられるのは、分身魔法。ここにいるエレガも、下にエレガも……どっちかがそっくりさんでないのなら、分身していると考えるのが自然だ。
 こいつ、いつの間に……!

 今のラッヘじゃ、エレガには……
 それに、ルリーちゃんも……

『契約者よ、下が気になるなら行くがいい』 

「クロガネ……」

『あの程度の奴ら、ワレだけで充分だ』

 なんて、頼もしい言葉だろう。それに、言葉だけではない……実際に、大丈夫だという気持ちが伝わってくる。
 だから私は、クロガネに言葉を任せ……下へと、飛び降りる。

 ルリーちゃんに手は、出させない!

「せいやぁ!」

「おっと!」

 着地と同時に、飛び蹴りでもぶつけたかったけど、そうはうまくいかない。避けられてしまった。
 でも、ちゃんと来られた。ルリーちゃんを庇うように、立つ。

「てめえ……」

「ヤッホーラッヘ。ちょっとピンチだった?」

「んなわけねえだろっ」

 素直じゃないラッヘは、やっぱりピンチを認めようとはしない。まあラッヘらしいけど。

「エランさん……」

「ごめんね。あいつら全員上にいたから、ここは安全だと思ってた」

 もっといろんな可能性を、考えるべきだったか。
 これまでエレガたちは、こういう魔導を使ってこなかったから、使えないんじゃないかって無意識に思ってたのかもしれない。

「おいおい、大丈夫か?」

 二人を後ろに庇う私に、エレガが言った。

「なんのこと?」

「いやぁ……無防備に、背中さらしといてよ」

「はぁ?」

 こいつは、なにを言っているんだろう。無防備に背中をさらす?
 私の背後にいるのは、ルリーちゃんとラッヘだ。それとも、ラッヘが背中を狙っているとでもいうのだろうか。

 そんな引っ掛けには、かからない。

「手間が省けたよ。ルリーちゃんの目の前で、土下座させてやる」

「ならその女の前で、無様に殺してやるよ」

 ……その直後、私とエレガが繰り出した拳が、ぶつかりあった。
 魔力を込めた、一撃。それにエレガは、対抗してくる。

 さっきと同じだ……エレガの打撃が、必要以上のダメージを与えてくる。
 まるで、私の魔力の壁なんて、関係ないとでも言うように。

「っつつ……」

「ちっ、馬鹿力が……」

 誰が馬鹿だこの野郎。
 でも、困ったな。エレガの力は未知数だし、決め手にかける。それとも、魔術で一気に燃やしちゃうか?

 そう、考えていたときだ。

「うっ……ぐ!?」

 背後にいるルリーちゃんが、突然苦しみだしたような声を、漏らしたのは。

「! ルリーちゃん、どうかした!?」

「は、ぁ……わ、かんない、です……でも、なんだか……」

「ひひ、やっとか」

 苦しむルリーちゃん……その姿を見て、エレガが笑った。

「なにがおかしい? なにか知ってるの!?」

「知ってるの、ってお前……そりゃそうだろ。なんのために、ダークエルフをこの魔大陸に、転送させたと思ってるんだ」

 笑いをこらえきれないのか、お腹を押さえているエレガは、言う。
 ルリーちゃんに、なにかが起こっている……それは、ダークエルフだから……それは、魔大陸だから……?

 ダークエルフが魔大陸にいることが、なにか関係があるとでも、いうのか?
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