史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

409話 魔力を喰らう

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 ……ルリーちゃんのことは、ラッヘに任せた。本当なら、私が救ってあげたいけど。
 適材適所。ラッヘにはラッヘの、私には私のできることがある。

 クロガネを助けるため、上にいるエレガたちに向かって移動していく。
 その途中、立ち塞がったビジーちゃんに向かって、魔力弾を放った……

「アーン!」

「!?」

 ビジーちゃんは大きく口を開けて……それから思い切り、口を閉じた。
 その瞬間、私の放った魔力弾が、弾けて……消えた。

 消滅したのだ。魔法は、一度放ったらなにかにぶつかるまでは基本的には消滅しない。
 同じ魔法で相殺するとか、そういうことでもない限り、魔法が消滅することはない。

 なのに……

「今の……」

「もぐもぐ……ごくっ。
 んんっ、やっぱりお姉ちゃんの魔力さいっこぉ!」

 ビジーちゃんの口元が、動いている。そして、まるでなにかを食べて……咀嚼して、飲み込んだような。
 そんな姿が、見えた。

 今のって……いや、まさか……でも、そうとしか思えない。

「私の魔力を……食べたの!?」

「んー、そうだよー?」

 ぺろり、と舌なめずりをして、ビジーちゃんは恍惚とした表情でうなずいた。
 認めた……私の魔力を、食べたって。

 いや、でも、魔力を食べるってどういう意味だ……
 あれか、原理としては、魔石を食べるモンスターや魔物に近いのかな。あれも、魔石に込められた魔力に惹かれているんだろうし。

 そういう意味では、魔力を食べるって行為自体は、不思議ではないのか……?

「ぷはっ……ねぇ、もっとちょうだいよ」

「!」

 ビジーちゃんが、にたりと笑った。
 あれは……だめだ。なんでかはよくわからないけど、とにかくあれ以上、ビジーちゃんに魔力を喰わせてはだめだ。

 遠距離からの魔法攻撃だと、さっきみたいに魔力を喰われる。
 なら、接近してしまえば……!

「今のお姉ちゃんとまともにやりあっても勝てないよね。だから……むん!」

「!」

 ビジーちゃんへと急接近し、拳を繰り出す……その瞬間に、ビジーちゃんの魔力がどっと上昇する。
 急激な魔力の増加……それだけではない。

 この魔力……って、私の……?

「とりゃ!」

 私の拳を、ビジーちゃんは受け止める。

「それって……」

「ひひっ、驚いた? 私は、食べた魔力を自分のものにできるんだよ」

 食べた魔力を、自分のものにだって……?
 それって、さっき私の魔力を食べたから、私の魔力を自分の力にした……ってこと?

 そのせいか、拳を受け止めるビジーちゃんの手を、押しきれない。
 それに……だ。触れたところから、魔力が吸われて……

「っ」

「あっ、もう気づいたんだ。ちぇー」

 私はとっさに、ビジーちゃんから距離を取る。
 今、魔力を……喰われていた。口からだけではない。手からも魔力を、喰えるのか。

 私は、クロガネとの契約のおかげで、飛躍的に魔力が上昇している。
 対してビジーちゃんは、相手の魔力を喰らい自分の力にすることができる……

 相性、最悪じゃないか。

「それでも……」

 私は、止まらない。止まれない。
 クロガネが、ルリーちゃんが、ラッヘが。待っているから。ここで止まるわけには、いかないんだ。

 ……やってみるか。

「はぁーっ!」

 私は、自分の中に流れる魔力に集中し、一気に跳ね上げる。
 自分一人じゃ、ここまでの魔力を出すことはできない……自分でも、未知の領域。

 そして、これだけの魔力があれば……さっき、クロガネがやっていたことを、私も実践できる。
 ルリーちゃんの力は、暴食……魔力を喰らう力。それが食べる力なら……食べきれないほどの量を、ぶつけてしまえばいい。

 現にさっきルリーちゃんは、クロガネの魔力を「お腹いっぱい」と途中で魔力を喰らうのを中断した。

「せいや!」

「!」

 さっきと同じように、ビジーちゃんに向かって拳を突き出す。
 それを、ビジーちゃんは手のひらで受け止めるけど……その直後、なにかに気づいたように距離を取った。

 触れた部分からも魔力を喰えるというのなら、拳を防ぐのだって効果は発動しているはず。

「魔力を……」

「これなら、どうだ!」

 やっぱり、大きすぎる魔力はビジーちゃんにとって、よくないものみたいだ。
 魔大陸とはいえクロガネと契約している今の私なら、多分魔力の上限はない。可能な限り、魔力を引き上げられる。

 だから……

「ビジーちゃんのことは、好きだったけど……」

「くっ……」

 私は距離を詰めて、ビジーちゃんとの接近戦に持ち込む。
 本当なら、体が触れ合うだけで魔力を吸い取られる。でも、魔力を吸い続けると、ビジーちゃんに影響が出る。

 私の魔力を自分の力にするよりも先に、お腹いっぱいの限界がくる……!

「せやぁ!」

「くぁっ……!」

 何度も拳を繰り出し、意識を私の手に集中させたところで、体を回転させて蹴りを、放つ。
 放たれた蹴りは、ビジーちゃんの首元へと直撃した。

 魔力を喰われるという心配がなければ……体術で、私はビジーちゃんに負けない。

「あ、ぅ……」

 蹴りが良いところに入ったのか、そのままビジーちゃんの意識は刈り取られた。
 それを確認して、私は結界を作り、ビジーちゃんを閉じ込める。

 これで、一人目……!
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