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第六章 魔大陸編
410話 忘れていた魔法
しおりを挟むビジーちゃんを退けた私は、休む間もなく上へと向かう。
ビジーちゃんに翻弄されて時間を食っちゃったけど、クロガネはまだ無事だ。
……クロガネを結界に閉じ込めたは、いいけど、その後はどう対処したら良いのか、わかっていないのかもしれない。
それならそれで、こちらとしてはありがたいことだ……
「っと……次は、あなた?」
飛んでいく私の目の前に、再び人影が立ちはだかる……
それは、レジー……かつて王都で魔獣と暴れ、その後捕まえていたはずの女。
その後、魔導大会に乱入してきた。いったい、どうやって王城の牢屋から、抜け出したのかと思っていたのだけど……
「ははっ、なんだよビジーの奴、あっさりやられやがって」
「仲間なのに、ずいぶんな言い方だね」
「仲間ぁ? まあ、アタシを牢から出してくれたのには感謝してるが……
あいつ、ガキのくせにえらそうで嫌いなんだよな」
……なるほど、やっぱり仲間に助けてもらってたのか。
魔力を封じる拘束具で、拘束していたと聞いていた。そこから抜け出すなんて、他の人の助けがないと不可能だ。
その、自分を助けてくれた相手に、嫌な言い方だな。
「ふぅん。ま、私には関係ないけど」
「お前から聞いたんだろ、ドライな奴だな」
「……それより、ビジーちゃんの次はあんたって……あんたの次は、ジェラかエレガが出てくるの?」
こいつらに仲間意識は……少なくとも、レジーにはなさそうだ。
仲間の仇だ、って感じで襲ってくるわけでは、なさそうだ。ただ、それでも私に襲いかかってくる理由は……
「なんだその言い方、まるでアタシがお前に負けるみてえな言い方じゃねぇか」
「いや、さすがにそんなことになったら、めんどくさいなって。もう全員いっぺんにかかってきてくれたほうが……わっ」
私が喋り終わる前に、レジーが私に迫り蹴りを放つ。
それを間一髪避けたのが、レジーには気に入らなかったようだ。
「ちっ、相変わらずムカつく野郎だ!」
「野郎って、私は女なんだけどな。
ていうか、忘れてない? あんた、私に一度負けてるの」
「あぁ!? あのダークエルフもいて不意をつかれただけだ!」
……王都での戦いで、私はルリーちゃんのお兄さんであるルランと共闘して、レジーを捕まえた。
確かにあのときとは状況が違うけど……
……あれ? なんだか大事なことを忘れているような……
「そういえば、アレってどうなってるんだろ」
「……?」
レジーを捕まえ、その処分をどうするかという話になったとき。
すぐに殺したいルランと、情報を聞き出したい私とで意見がわかれて……
結果として、私のかけた『絶対服従』の魔法で、レジーを暴れさせないようにした上で牢屋にぶち込んだ。
『絶対服従』の魔法は、術者が意図的に解除するか、かけられた者が死なない限り、半永久的に維持されるものだって師匠は言ってたけど……
あれからしばらく時間が経った今も、『絶対服従』の魔法は機能してるのか? 私は解除した覚えはないし。
……試してみるか。
「おい、どうした。なにを黙って……」
「動くな」
「……っ!?」
私が、その言葉を口にした瞬間……レジーの体は、なにかに拘束されたように、動かなくなった。
それは、本人が一番驚いているようだ。
ただ、これだけでは確証がないので……
「右手上げて。左手はピースして、その場で三回回って思い切り笑って見せて」
「は、はぁ? てめえなに言って……っ、な、なんだこりゃ……体が、勝手に……!」
ちょっと複雑な命令をして、その通りにレジーの体が動くのか確認。
とどめに、笑顔。動きだけなら、私を騙すために偽ってる可能性もあるけど、笑顔ばかりは無理だ。
それを続け、バッチリと笑顔を浮かべたことで、私は確信した。
「すごいすごい、まだ生きてるんだ、『絶対服従』の魔法。
いやぁ、ずいぶん前のことだから、忘れちゃってたよー。だいたい半年くらい?」
「くっ……っ、んだこりゃ……!」
まだ生きていた『絶対服従』の魔法のおかげで、レジーの動きは封じた……いや、私の思いのままだ。
確かクロガネは、レジーの力を『怠惰』の力だと言っていたな。
言葉の意味はよくわかんないけど、その力を受けた私は急に気力がなくなり、動けなくなった。
あんなことになったら、戦いどころではない。なので……
「レジー、私に協力して。エレガとジェラと戦いなさい。能力も魔力も使って、全力で」
「はぁ!? んなもん聞くわけ……っ、おい、体が勝手に……やめろぉ!」
とりあえず、邪魔されないように、レジーを二人にぶつけることにしよう。
レジーは、口では嫌がりながらも体は、上にいるエレガとジェラに向かっていく。
うぅん、体は正直っていうか……師匠は言ってたな。『絶対服従』の魔法は、極めれば精神まで支配することができるって。
つまり、レジーは私に逆らう意思すらなくなり、命令に従うと……
私がやっているのは、まだ極めてもないから体だけが私の命令に従うのだ。
なんかちょっとえっちな響きだ。こんな状況じゃなければ、いろいろ試したいところだ。
「ん? おいレジー、なに戻って……お、おい、なんのつもりだ!」
「あんた、正気!?」
「違う! これは……」
お、上で始まったようだね。
今の隙に、私はクロガネを助けるとしよう……!
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