史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

435話 人魚との出会い

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 広大な『ウミ』を見ていたら、誰かが溺れているのを発見した。クロガネが。
 そのため、溺れている人を救出するため、『ウミ』へと近づいていく。

 『ウミ』との距離が近づくに連れ、先ほどまでは聞こえなかったザザァ……という音が、超えてきた。
 水が波打ち、音を立てているんだ。

 ここまで近付けば、さすがに誰かが溺れているというのは、私の目から見てもわかる。
 バシャバシャと水を叩いて、沈んでしまわないように必死な姿だ。

「え、エランさんっ」

「わかってる。よい、しょ」

 私は魔導の杖を抜き取り、魔力を込める。
 魔大陸を抜けたおかげか、魔力の調子もいい。クロガネの補助がなくても、大丈夫そうだ。

 私は、溺れている人に魔法をかける。浮遊魔法だ。
 魔法にかかった人は、水から打ち上がり、宙へと浮いた。

 そしてそのまま、クロガネの背中へと移動させるわけだけど……

「えっと……」

「これは……」

 溺れていた人物の姿を見て、私もルリーちゃんも言葉を失った。
 だって……その人の下半身は、お魚だったのだから。

 本来人の足が生えている部分が、魚の尾ひれになっている……だと?
 え、なにこれ。どういう状態なの?

「ぶぇっ、げぼ! ぶふっ、ぶぁっ、は! た、助かったぁ!」

 下半身お魚さんは、しばらくぐったりしていたけど……口から大量の水を吐き出して、ぜーぜーと息をしていた。
 背中に水をぶっかけられたクロガネは、あんまりおもしろくなさそうだった。

「えぇと……」

「おぉ、人魚じゃねぇか! 生で見るの初めてだ!」

 彼女になにを聞こうかな、と思っていたところで、声を弾ませたのはエレガだった。
 どうやら、この子のことを知っている……いや、この子の種族を知っている、のか。

 なんかいろいろ知ってるなぁこいつ。

「ニンギョ?」

「なんだそれも知らねえのか。上半身が人間で、下半身が魚の種族のことだよ。実際に見るのは初めてだな」

 なんだよ、見たまんまじゃないか。使えない情報だな。
 それにしてもエレガのやつ、なにをニヤニヤして人魚を見ているのか……

 ……あっ、こいつ!

「な、なんで裸なの!?」

「?」

 ニンギョは、服を着ていなかった。代わりに、おっぱいには貝殻が貼り付いていて、大事なところは見えないようになっているけど……

「服着てたら、濡れるからじゃねーの」

「それもそっか……じゃなくてっ、見るなばか!」

「っ、アーッ!?」

 冷静に考えれば、服を着たまま水には入れない。まあそれが理由かはわからないけど。
 ともかく、エレガがニヤニヤしていたのは、ほとんど裸のニンギョを凝視していたためだ。

 なので私は、エレガの目に指先で目潰しをする。
 エレガは倒れた。

「ふぅ。……それにしても、結構大きいな。ルリーちゃんとどっちがあるかな」

「エランさんまで変な目で見るのやめてください!?」

 ルリーちゃんをちらっと見ると、ルリーちゃんは胸元を隠してしまった。
 別に、そんなつもりではなかったんだけど……こほんと咳払い。

 改めて、ニンギョを見る。上半身は人間、下半身は魚……髪の毛は薄い青色で、瞳は海のように深い青だ。
 この子、さっきからきょとんとしたままだな……こんな格好でも、恥ずかしくないのかな。

「さっきはありがト! おかげで助かったヨ!」

「えっ。あぁ、うん」

 初めて見るニンギョを観察していたら、いきなり明るい声をかけられてしまった。
 て、テンション高いな、この子。

「いやぁ、リーは人魚なのに、泳げなくってネ! 泳ぐ練習をしていたんだけど、溺れちゃって、どうなることかと思ってたんだヨ!
 あ、リーはリーメイって名前なノ! よろしくネ!」

 ……なんか、すごい喋るよこの子。
 ニンギョ……リーメイという名前の、女の子。下半身が魚なので、泳げるんだろうと思っていたし、実際にニンギョは泳げるものらしい。

 なのに、リーメイは泳げない。だから、泳ぐ練習をしていたと。
 まあ、人には得手不得手があるから、そこのところは深く突っ込むつもりはないけどさ。

 なんか、明るい子だな。それに、語尾がいちいち高く声を上げているのが、なんかかわいらしい。
 見た感じ、私たちと同じくらいってところだろうか。

「ねえ、クロガネはニンギョ族って知ってる?」

『名前くらいはな。人魚族は、あまり人前に姿を現すものではない。主に水中で生活しているからな』

 普段は水中で生活しているのか、ニンギョって。それを見ることができるのは、ラッキーってことなんだろう。
 リーメイの場合、泳げないなら普段は陸地で生活しているのだろうか。

 主に水中で生活しているってことは、ニンギョは陸地でも生活はできるんだろうし。

「あの、なんとなく助けちゃったけど……」

「うん、ありがト!」

「……どこか、近くまで送ったほうがいい?」

「ところで、あなたのお名前ハ?」

「えっ、あ、あぁ……まだ名乗ってなかったね。エランだよ」

「エラン! いい名前だネ!」

 おおぅ、この子なんだかすごくマイペースって感じだ。
 ただ、話していて不思議と楽しくなるな。

「エランたちは、ドラゴンに乗って魔大陸からお散歩?」

「いや、魔大陸に飛ばされちゃって、今から元の国に帰るところだよ」

 クロガネに乗って魔大陸からお散歩……そう見えちゃうのか。
 それは違うと否定して、軽く説明する。

 するとリーメイは、目を輝かせた。

「エランの国! 人間の国!? リー、行ってみたイ!」

 手を組むようにして、人間の国に行ってみたいと、口にした。
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