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第七章 大陸横断編
469話 おいしいコーヒー
しおりを挟むさて、みんなと合流したところで、落ち着ける場所に移動する。
魔女さんの家でもいいけど、せっかく外出したんだし。あと外の空気吸いながらお話したい。
「あ、コーヒーを人数分。このバカうさぎのは甘めで」
「あいよ」
「ばかじゃないよ!」
私たちは近くの喫茶店に入り、席を探す。
魔女さんを含めて六人。案内されたのは店内じゃなく店外……テラス席というやつだった。
人型で二つ首、片方に猫の顔片方に犬の顔を持つ店員さんに注文をして、私たちは腰を落ち着ける。
「ふぅ。こういう場所もあるんだねぇ」
「そりゃ、村だからな」
「それに……特徴的な店員さんも」
モンスターだらけの村なので、お客も店員も当然モンスターだ。
見慣れた姿形のものもいれば、見たことがないようなモンスターもいる。
やがてコーヒーが運ばれてくる。
朝食はすでに食べていたので、飲み物のみだ。
「ズズッ……あ、おいしい」
「そうだろう。私のオススメなんだ」
この喫茶店は魔女さんがよく通っているようで、コーヒーがオススメだと。私たち人数分を注文してくれた。
確かに、一口飲んだだけでコーヒーの香りが口いっぱいに広がる。それに、体の中があったかくなるよ。
ふぅ、落ち着く。
「それでエランさん、これからどうしますか」
「そうだねぇ」
コト、とカップを置き、ルリーちゃんは口を開く。
ルリーちゃんも当然、これからのことを考えている。今日出発するのか、それともまだ準備をするのか。
私としては、ここに長居するつもりはない。けど、必要なものがあるなら揃えたい。
とはいえ、長旅になるだろうから、慎重に選ばないと。
一番はやっぱり、食料だ。量に関しては、魔法で空間に収納してしまえばいいから問題はない。
かといって、ナマモノだと腐っちゃうからなぁ。
できれば保存の効くものがいいよね。
「じゃあ今日は、旅に必要なものを揃える感じですかね」
「そうだね。今日急いで出発するよりは、万全に準備して明日出発したほうがいいだろうし」
ことを急ぐあまりに準備を怠っては、結局は準備不足で当初の予定よりも大幅に遅れてしまう可能性が高い。
そうならないために、万全に準備しておくほうがいい。
「案内ならぼくに任せて!」
「……うん、じゃあお願いしようかな」
「やったー!」
案内人はパピリに任せるとして……ただ、全員で移動するのは効率が悪いよなぁ。
ここは、二手に分かれるほうがよさそうだ。
「四人いるから、二手に分かれない?
私とラッへ、ルリーちゃんとリーメイでどうだろう」
「いいよー」
「リーモ」
「わ、私とエランさんは別ですか?」
私の提案に、ラッへとリーメイは快くうなずいてくれた。
けれど、ルリーちゃんはどこか不満そうだ。
もしかして、私と一緒がよかったのかな。
「ごめんね。でも……正直な話、この中のメンバーで一番信頼できるのは、ルリーちゃんだから」
「し、信頼……! そういうことなら!」
私はルリーちゃんの耳元に顔を近づけて、ささやく。
これは別に、ラッへとリーメイを信頼していない、というわけじゃない。
ただ、ルリーちゃん、ラッへ、リーメイと見たとき……記憶喪失のラッへは元より、マイペースなリーメイも信頼にはちょっと不安がある。
そのため、私とルリーちゃんを分けて、ラッへとリーメイをそれぞれ割り当てたほうがいいと思った。
そういう理由で、ルリーちゃんを選んだ。
私の気持ちが伝わったのか、ルリーちゃんはやる気になってくれたみたいだ。
「あ、でもそうしたら、片方にはパピリちゃんに案内をお願いするとして、もう片方は……」
「なら、その役目は私が請け負おう」
案内人パピリを片方につけるとして、もう片方は……
そう考えていたところ、自ら手を上げてくれたのは、魔女さんだった。
この村の住人で、私としても一定の信頼はおける人物。名乗り出てくれるというのなら、それに越したことはない。
「それはありがたいけど……いいの?」
「あぁ。お前たちと行動を共にできるのも、あと僅かのようだからな」
魔女さんがいいと言うのなら、遠慮なく甘えることにしよう。
それから、私たちは役割を決める。私とラッへチームは食料、ルリーちゃんとリーメイチームは必要になりそうなもの。
大雑把ではあるけど、ベルザ王国に来るまで一人で過ごしてきたルリーちゃんは、こういうときになにが必要かわかっていると言う。
そして魔女さんは私たちを。パピリはルリーちゃんたちを。
それぞれ案内することに。
「じゃ、コーヒーを飲んだらそれぞれ分かれるってことで。
集合場所は、この喫茶店でいい?」
「はい。連絡手段は……」
「これを渡しておこう。連絡用の魔石だ」
「わっ、きれいな石ぃ!」
「これが魔石……」
魔女さんから魔石を渡される。手のひらで包めるサイズの、小さなものだ。
二つの魔石を受け取り、一つをルリーちゃんチームへ。二つある魔石は、それぞれ連絡する手段として用いられる。
私たちが持っている魔石で、ルリーちゃんたちが持っている魔石と連絡が取れる。そういうことだ。
いやぁ、便利だよねぇ。さすがに、クロガネみたいに頭の中で会話するってわけにも、いかないし。
ていうかできないし。
「んくっ……ぷはぁ、ごちそうさま!」
コーヒーを飲み干し、お腹も潤ったところで。
さて、行きますか!
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